2017年1月31日、ジョン・ウェットンが亡くなった。享年67歳。癌との戦いを経ての死だった。

◆ジョン・ウェットン画像

キング・クリムゾンやエイジア、UK、ロキシー・ミュージック、ユーライア・ヒープ、ウィッシュボーン・アッシュなどで活動、ブリティッシュ・ロックを代表するヴォーカリスト兼ベーシストとして知られてきた彼は、ドーセット州ボーンマスの自宅で就寝中、午前5時25分に息を引き取った。

ジョンの死を知ったとき、最初に思い出したのが2012年9月、エイジアの来日時のインタビュー現場である。TV収録用にひとつのソファにメンバー4人が座ることになっていたが、まずジョンとジェフ・ダウンズが姿を現して座ると、既にソファの2/3が埋まってしまった。

あと2人の座るスペースがない…と一瞬スタッフに緊張感が走る。そこにスティーヴ・ハウとカール・パーマーが「やあ、遅れてごめん」と登場。スリムな2人ゆえ、ちょうど4人全員がぴったり座ることができた。プログレッシヴ・ロック界で活動してきた4人のミュージシャンによるスーパーグループだったエイジアだが、異なったサイズ・異なった個性の4人がひとつのソファにぴったり収まったバンドだった。「ヒート・オブ・ザ・モーメント」「時へのロマン」などが時代を超えて愛されるヒット曲となったのも、そんな一体感が絶妙な調和を生み出したからだった。


その4人の中で、ひときわ“大きな”存在だったのがジョンだった。エイジアのビッグなロック・サウンドとビッグなヴォーカル。バンド名を巨大な大陸ASIAにすることを提案したのはマネージャーだったブレイアン・レインで、深い意味はなく思いつきだったそうだが、後になってみるとジョンのような“ロックの巨人”を擁するグループに相応しいビッグなネーミングだった。

それゆえに、ジョンが2016年12月1日にツイッター上で公開した結婚写真は、ファンにとってショッキングなものだった。11月29日にガールフレンドだったリサさんと結婚式を挙げたジョン。彼が闘病中であることは発表されていたものの、その写真での激痩せぶりは、“その日”が決して遠くないことを予感させた。

だが、ジョンは日々を楽しみながら過ごした。クリスマスにキング・クリムゾン時代からの旧友ロバート・フリップ宅を訪れた写真も公開された。彼はまたグレッグ・レイクやジョージ・マイケル、キャリー・フィッシャー、デビー・レイノルズの死やデヴィッド・ボウイの一周忌を悼み、ニューヨークのお気に入りの食堂が閉店することを残念がった。彼が生を享受していることは、パソコンの画面を通じても伝わってきた。


かなり直前まで、ジョンは自分が送られる側になることは考えていなかった筈だ。彼は2017年2月の『クルーズ・トゥ・ジ・エッジ』クルーズにソロとして参加することを発表していたし、3月からエイジアとしてジャーニーのアメリカ・ツアーを行うことを発表していた。直前になって「回復を優先したい」という理由で不参加になったものの、彼は最後まで病気に屈しなかった。

2014年にエイジアとしてのアルバム『グラヴィタス~荘厳(そうごん)なる刻(とき)』を発表したジョンは、筆者にこう話してくれた。

「アルバムを完成させると一時的に、歯ミガキのチューブを搾り尽くしたみたいに、何も残っていない状態になる。でも1ヶ月もすると、また曲を書きたくてたまらなくなるんだ。創造力が尽きるのは、私がオーク材か柳で作られた箱に入れられるときだよ」



彼がジョーク交じりに話していた、その日が来てしまったことが残念でならない。ジョンはエイジアとしての新作にも着手していた。それがどこまで完成に近づいていたのか、いつか我々が聴くことができるのかは不明だが、本当に最後まで、彼の創造力は尽きることがなかったのだ。

ジョンはまた、エイジアの2013年、ブルガリアのプロヴィディフでのオーケストラとの共演ライヴを収めた映像作品『シンフォニア~ライヴ・イン・ブルガリア 2013』(2月10日発売)の制作にも携わっていた。この作品は生前の彼が関わった最後の作品となった。

「ローラーコースターの旅路、終点を決めるのは運命/何が訪れようと、今日を楽しむ。“非凡なる人生”を」

ジョンはエイジアの「アン・エクストラオーディナリー・ライフ」でこう歌った。“非凡なる人生”を歩み、素晴らしい音楽を世に出してくれたジョン・ウェットンに感謝を捧げたい。

Photo by Isao Nakamura
文:山崎智之


ジョン・ウェットン映像遺作 エイジア『シンフォニア~ライヴ・イン・ブルガリア 2013』

2017年2月10日日本先行発売
【初回限定盤Blu-ray+2CD】¥8,800+税
【初回限定盤DVD+2CD】¥8,800+税
【通常盤Blu-ray】¥6,800+税
【通常盤DVD】¥6,800+税
【2枚組CD】¥3,000+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/日本語字幕付き
【Blu-ray/DVD収録予定曲】
《2013年9月21日ブルガリア/プロヴディフ公演》
1.孤独のサヴァイヴァー
2.タイム・アゲイン
3.フェイス・オン・ザ・ブリッジ
4.マイ・オウン・タイム
5.ホーリー・ウォー
6.アン・エクストラオーディナリー・ライフ
7.デイズ・ライク・ディーズ
8.永遠の輝き
9.時へのロマン
10.ドント・クライ
11.ヒロイン
12.偽りの微笑み
13.この夢の果てまで
14.ヒート・オブ・ザ・モーメント
【ボーナス映像】
メンバー・ インタビュー
【2枚組CD収録予定曲】
[CD DISC 1]
1.孤独のサヴァイヴァー
2.タイム・アゲイン
3.フェイス・オン・ザ・ブリッジ
4.マイ・オウン・タイム
5.ホーリー・ウォー
6.アン・エクストラオーディナリー・ライフ
7.デイズ・ライク・ディーズ
8.永遠の輝き
[CD DISC 2]
1.時へのロマン
2.ドント・クライ
3.ヒロイン
4.偽りの微笑み
5.この夢の果てまで
6.ヒート・オブ・ザ・モーメント
《日本盤限定ボーナストラック》
7.ワルキューレ(2014年10月19日カリフォルニア/ザ・キャニオン・クラブ公演)

【メンバー】
ジョン・ウェットン(ベース/ヴォーカル)
ジェフ・ダウンズ(キーボード)
サム・コールソン(ギター)
カール・パーマー(ドラムス)

◆エイジア『シンフォニア~ライヴ・イン・ブルガリア 2013』オフィシャルページ