【インタビュー】イン・フレイムス「アルバムは、外部環境にも左右される」

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スウェーデンの現在進行形メタル・シーンをリードする存在となったイン・フレイムスが2016年11月に発表した新作『バトルズ』は、ヘヴィで攻撃的なアプローチを維持しながらメロディをさらに強化、プログラミングを加えてモダンな触感を加えるなど、さらなる進化を遂げたアルバムだ。

◆イン・フレイムス画像

アルバム発売に先駆けて<ノットフェス>参戦のために日本上陸を果たした彼らは、スリップノットやアンスラックス、ラム・オブ・ゴッドら強豪勢の中でインパクトのあるステージで観衆を蹂躙、新作から「ジ・エンド」と「ザ・トゥルース」をワールド・プレミア披露して、ひときわ大きな歓声を浴びていた。

「約1年ぶりのライブだった。緊張したよ」と、アンダース・フリーデン(Vo)とビョーン・イエロッテ(G)は笑う。新作を引っ提げて新たな戦い(=バトルズ)に挑む彼らに、その意気込みを訊いた。



──<ノットフェス・ジャパン>で約1年ぶりのライブを行った感想を教えて下さい。

アンダース:ステージに戻ってくることができて、最高の気分だよ。正直少しナーバスになったけど、それよりも新しいことがいくつもあってエキサイトしていた。新しいアルバム、新しいドラマー…ジョー(・リカード)は素晴らしい仕事をしてくれた。<ノットフェス>には大勢の人々が集まるし、過去の曲や新曲を披露するには良い機会だった。

──イン・フレイムスは今回の<ノットフェス>に加えて<ラウド・パーク>、<ビースト・フィースト>など、日本のあらゆるメタル・フェスに出演してきました。日本のメタル・ファンの反応は他の地域と較べて、どのように異なるでしょうか?

アンダース:日本の観衆はお気に入りバンドだけでなく、すべての出演バンドに興味があるように見える。どのバンドに対しても愛情を感じるよ。日本に来ると最高のもてなしを受ける。それはお客さんはもちろんだけど、クルーや関係者みんなにも敬意を感じる。日本のスタッフは規律がしっかりしているんだ。素晴らしくオーガナイズされているよ。唯一残念なのは、最近フェスティバルでの日本行きが多くて、少ししか滞在できないことなんだ。次回はヘッドライン・ツアーで、じっくり日本を知りたいね。東京や大阪は最高だけど、他の都市も見てみたいんだよ。

──<ノットフェス>でのステージは40分というものでしたが、その長さについては?


ビョーン:『バトルズ』は12枚目のアルバムなんだ。それぞれのアルバムから1曲だけピックアップしても、40分では足りないよね。だからこそ次回はヘッドライナー・ツアーで日本に行きたいんだ。

──新曲に対する日本のファンの反応はどんなものでしたか?

ビョーン:久しぶりのライブだったし、あまりお客さんの様子を見る余裕がなかったんだ。でも何度か彼らの方を見たら、まだ発売前なのにコーラスを歌っていた。曲のフックが彼らのハートを捕らえたということだから、嬉しかったね。

アンダース:アルバムを作って、その音楽に対する直接的な反応を得ることができる場がライブ・ショーなんだ。新曲への反応が良ければ、アルバムも気に入ってもらえる可能性が高いということだよ。

──『バトルズ』の音楽性はどのようなものでしょうか?

アンダース:イン・フレイムスというバンドの本質を捉えた、現在の俺たちが何者であるかを体現したアルバムだと思う。たくさんのメロディがあって、時にアグレッシヴで、ダイナミック…メロディとメタルが軸にあるんだ。

ビョーン:自分の音楽を言葉で説明するのは苦手なんだ。「このアルバムは最高だぜ!」とか自画自賛しても、結局それを判断するのはリスナーだからね。誇りにしているアルバムだし作って楽しかったから、とにかく聴いて欲しい。聴くのに費やした時間の価値はきっとあるよ。

アンダース:当初11曲を書く予定が15曲書いてしまったことからも、俺たちが『バトルズ』の作業を楽しんでいたことがわかるだろ?2~3枚組でも作れそうな勢いだった(笑)。

──『バトルズ』ではフックのあるコーラスが強化されていますね。


ビョーン:うん、<ノットフェス>で「ジ・エンド」と「ザ・トゥルース」をプレイしたのは、アルバムの個性をよく表している曲だからなんだ。発売前にウェブ公開したのも、アルバムの音楽性を集約した曲だからだよ。

──何故そのような方向に進むことになったのでしょうか?

ビョーン:前作『サイレン・チャームズ』をベルリンの寒空の下で作って、『バトルズ』をLAでハワード・ベンソンと作ったことが影響を及ぼしているんじゃないかな。天気が良くて暖かくて、ビールとバーベキューを主食にしながら作ったアルバムだよ。

アンダース:アルバムのムードは、自分たちではどうにもならない外部環境にも左右されるんだ。だから誰と、どこでアルバムを作るかは、大事な決断だった。

ビョーン:俺たちの人生は決して複雑ではない。メタルをプレイして、ビールと食事を楽しんで、クールな人たちと会う。バンドを始めた頃とは、音楽への向き合い方が異なるんだ。いつまでも若くて怒りと不満に満ちているわけではない。別の焦点を持たねばならないんだ。LAでアルバムを作ったことで、創造性が刺激されたよ。

アンダース:オープンな気持ちでLAに向かったんだ。ハワードと一緒にやるのは初めてだったし、彼のような知名度のあるプロデューサーと作業をするのも初めてだったからね。

ビョーン:これまでは曲を書いていきなりレコーディングしていたけど、今回はハワードに全曲のデモを作るよう言われたんだ。設計図を作ってからスタジオに入るようにってね。これまで俺たちはクリエイティブな作業に第三者を介入させたことがなかったけど、今回はそれに近かったかな。でも、これまでの習慣の殻から抜け出てみて、新しいインスピレーションを得ることができた。『サイレン・チャームズ』のとき、俺は様々なことに苛立ちを感じていた。今から思うと、それもまたインスピレーションの源になった。ある意味、惨めな気分になることを必要として、欲していたとも言えるんだ。そのせいでアルバムの完成後は精神的にかなり参って、もう二度とやらない!と思ったぐらいだよ。立ち直るのに時間がかかったし、『バトルズ』の制作に先駆けても身構えてしまった。ただ今回はすごく前向きで高揚感のあるフィーリングがあって、それがアルバムのサウンドと全体のノリに表れていると思う。あ、もちろん『サイレン・チャームズ』も好きなアルバムだけどね(笑)。ベルリンの『ハンザ・スタジオ』でレコーディングできたのは凄い経験だった。俺の音楽キャリアが終わった後も、ハンザでレコーディングしたことは死ぬまで誇りにできるよ。デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、U2、ディペッシュ・モードがレコーディングしたスタジオだもんね。クールだよ。


アンダース:『サイレン・チャームズ』がなければ『バトルズ』も存在し得なかった。重要なアルバムだし、俺も気に入っているよ。

──これまでデモは作ったことがなかったのですか?今回をきっかけに、今後もデモを作ってからレコーディングしますか?

アンダース:すごくラフなデモは録ったことがあったけど、今回ほどキッチリしたものではなかった。歌詞やヴォーカル・メロディはいつもスタジオで書いていたしね。今回はスタジオに入る前にやるべきことが決まっていたし、時間の節約になった。今後もやるかはわからないけど、刺激になって楽しかったよ。

後編では最新アルバム『バトルズ』についてさらに掘り下げるのと同時に、バンドの将来、そして元メンバーのイェスパー・ストロムブラードとの交流について語ってもらうつもりだ。

取材・文:山崎智之
Photo by Patric Ullaeus, Anne Swallow


イン・フレイムス『バトルズ』

2016年11月11日 世界同時発売
【100セット通販限定メンバー直筆サイン入りカード付きCD+Tシャツ】¥6,000+税
【完全生産限定CD+Tシャツ】¥5,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ドレインド
2.ジ・エンド
3.ライク・サンド
4.ザ・トゥルース
5.イン・マイ・ルーム
6.ビフォー・アイ・フォール
7.スルー・マイ・アイズ
8.バトルズ
9.ヒア・アンティル・フォーエヴァー
10.アンダーニース・マイ・スキン
11.ウォールフラワー
12.セイヴ・ミー
《ボーナストラック》
13.グレイテスト・グリード
14.アス・アゲインスト・ザ・ワールド
《日本盤限定ボーナストラック》
15.ヒア・アンティル・フォーエヴァー(オルタネイト・ヴァージョン)

【メンバー】
アンダース・フリーデン(ヴォーカル)
ビョーン・イエロッテ(ギター)
ピーター・イワース(ベース)
ニクラス・エンゲリン(ギター)
ジョー・リカード(ドラムス)

◆イン・フレイムス『バトルズ』オフィシャルページ
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