ニュージャージー出身のスラッシュ・メタルの重鎮オーヴァーキルが、オリジナル・アルバムとしては通算18枚目となる『THE GRINDING WHEEL』を完成させた。

◆オーヴァーキル画像

『IRONBOUND』(2010年)、『THE ELECTRIC AGE』(2012年)、『WHITE DEVIL ARMORY』(2014年)の3作ではスピーディーでタイトな楽曲が中心となる作風を提示した彼らだが、そうした側面を維持しつつも、新作では彼らの音楽の重要な要素の1つだった壮大で劇的な構造性強調、過去3作とは少しばかり異なる傾向を示すという仕上がりとなっている。

2016年の年の瀬、この意欲的な出来栄えの最新作について、ボビー“ブリッツ”エルズワース(Vo)が語ってくれた。なお、最新のバンド写真には家庭の事情で一時バンドを離れているロン・リップニッキ(Dr)ではなく臨時要員のエディ・ガルシアが写っているが、アルバムでドラムスをプレイしているのはロンだ。




――新作『THE GRINDING WHEEL』は、これまでのオーヴァーキルを思い起こさせつつ、新しいタイプと呼べる曲もあって新鮮に聞こえます。あなた自身はどのような手応えを得ていますか?

ボビー“ブリッツ”エルズワース:今回のアルバム制作は大きな満足感が味わえる経験になったよ。音楽ビジネスのどのジャンル、どの分野でも、誰もが最新作がベストだと言うのは知っている。だが、今回のアルバムのミックスが終わって「よし、これで完成だ」と言った時、全員がニヤリとした。秘密を共有しているという感じでね。スタジオで俺達がそういう印象を持ったというのは凄く良い兆候だ。そして、君がそういう印象を持ったのも納得できる。俺がこのアルバムをできる限り客観的に見て気付いたのは、オーヴァーキルの様々な面が自然に出ているということだからだ。1つの面、2つの面だけを見せているアルバムではない。たくさんの面を見せているアルバムだ。例えばロックン・ロールがあり、クラシック・ヘヴィ・メタルがあり、ハードコアがあり、グルーヴがあり、スラッシュのエネルギーがある。それが、完成した時に俺達が、ダーティーな秘密を共有したような感覚を覚えた理由でもあるんだ。凄くユニークに、俺達はそういった色々な要素を全部見せることができているから、特別なものが完成したと感じたんだよ。

――話は少し遡りますが、『WHITE DEVIL ARMORY』というアルバムで成し遂げたこととツアーの成果はいかがでしたか? 2015年には5年振りに日本公演を行ないました。『THRASH DOMINATION』でのショウは最高でした。

ボビー“ブリッツ”エルズワース:日本に行くのは、俺達、いつも凄く楽しんでいるよ。それにマサ・イトウとは随分早い時期から親しくさせてもらっている。俺達が日本に初めて行ったのは1990年だけど、彼のラジオ番組を通じて彼のことは早い時期から知っていた。<THRASH DOMINATION>への出演も確か3回目だったと思うけれど、いつも素晴らしいショウになる。それに俺達は必ず時間を作って寺を訪ねたり、家族のためのショッピングをしたり、古くからの友人との再会を楽しんだりする時間を作るようにしている。だから、いつも最高だ。そして『WHITE DEVIL ARMORY』のツアー自体が、かなり長いものになった。日本にも行けたし、ヨーロッパにも2回行けたし、フェスティバルにもたくさん出て、北欧ツアー、UKツアー、ヨーロッパ本土のツアーとあちこちを廻れた。アメリカ全土でも2回ツアーをし、カナダ、メキシコ、中央アメリカでもプレイした。あのアルバムでは、かなりたくさんの活動をすることができたよ。

――『IRONBOUND』『THE ELECTRIC AGE』『WHITE DEVIL ARMORY』の3枚は、似通っているという意味ではありませんが、共通するヴァイブやムードのようなものがあったように思います。しかし『THE GRINDING WHEEL』は更に多様で、オーヴァーキル・サウンドの違った一面にも焦点を当てているような気がしました。作ったご本人としてどのような実感がありますか?


ボビー“ブリッツ”エルズワース:それに関しては、さっき話したこととも関係があると思うけれど、その3枚は三つ子のようなアルバムだったと思う。あの3枚のアルバムを書いていた時に俺達が捉えたウェイヴとヴァイブがあったと思うし、ドラマーのロン・リプニッキがあの3つのプロジェクトに持ち込んだエネルギーも関係があったと思う。素晴らしいプロジェクトだった。だが、あの3枚には姉妹のようなところもあった。三姉妹のような。従兄弟や兄弟や叔父でもいいが(笑)、とにかくあの3枚には同じ部分があったし、それは必ずしも悪いことではなかった。だが今度のアルバムには、さっきも言ったように、他の要素も取り入れられている。俺達は、既にあるものをただ使うのではなく、使うものもあるけれど、使わないものもあるという風にして、他にも良いものがあったらやるようにしようと決めた。もう少しゆとりを増やそうという感じだったかな。もう少しスローにもするし、もう少し速くしたりもして、更にロックン・ロールもやればパンクも採り入れるという風に、もっと多彩で幅の広いアルバムにしようと考えた。その結果がこの多様さになり、俺達が満足できるものになった。オーヴァーキルは、例えばone trick ponyだと言う奴らがいる。「1つのことしか上手くやれない」という意味だ。だが、それは事実ではないよ。『THE GRINDING WHEEL』は、俺達のこの音楽は多面性のあるものだということを示していると思う。俺達は、様々な要素、様々な面を、今回のアルバムでは活用して掘り下げているんだ。

――幕開け曲の「Mean, Green, Killing Machine」1曲の中にも様々な要素があります。ミドルテンポでヘッドバンギング・タイプですが、中盤以降はエピックな感じもあり、その後はブラック・サバスのようなシャッフルのグルーヴがあり、ギター・ソロ・パートはスラッシーです。そして終盤には序盤のリフに戻るという。この曲を1曲目にもってきたことに何か理由はありますか?

ボビー“ブリッツ”エルズワース:俺達が曲作りをしていると、いつも必ず「これがこのアルバムのオープニング曲になるべきものだ」とわかるものが出て来るんだ。この曲もそうだった。このアルバムはこれでスタートさせるべきだというのが明らかだった。タムタムによるシンプルなドラム・ビートから始まって、様々な要素がどんどん見えてくる。そして君の言うとおり、クラシックなヘヴィ・メタルであり、曲の中にスラッシュもあり、グルーヴもあって、まるで「これが俺達だ、これが俺達のやることだ」と宣言して「これからもっと聴いてもらうよ」とでも言っているようだ。エピックな感じも効果を上げていると思う。このアルバムのために7分以上ある曲が書けるというのも意味があるし、このアルバムの締め括りの章である「The Grinding Wheel」と合わせて、とても良いブックエンドになっていると思う。この構成によって、このバンドはいつもシリアスに、俺達が一番上手くやれると思っていることを見せようとしていることがわかる。そして「Mean, Green, Killing Machine」に、そういう要素が沢山含まれているのは確かだ。

――「Our Finest Hour」は、タイトルはとてもポジティヴですが、曲調は非常にアグレッシヴです。この曲は前作に入っていてもハマりそうですね。

ボビー“ブリッツ”エルズワース:俺もそう思う。前作、あるいは前3枚のアルバムに入っていても違和感はなかっただろう。これは恐らくこのアルバムの曲の中では最も、あの3枚のアルバムのどれかに合う曲だろう。だが、あの3枚が大きな成功を収めたアルバムだからといって、それを繰り返そうと思ったわけではない。ただ俺達が、これを書いた時点までにやっていたことが自然に表われただけだ。歌詞について話すと、これはunification(結合、一体化)についての曲だが、unificationというのは、2人の人間の間の会話の上に成り立つものだ。片方がもう片方に説明をしていて、思っているほど酷くはないし、悪化しているように思えるかもしれないけれど、2人は手を取り合って共に乗り越えていく。音楽のアプローチについて言えば、シンプルな曲だよ。だから歌詞も、俺達の誰でも経験する、2人の間の会話というシンプルなものになっている。

――「The Long Road」にはマーチ調というかアンセム調というか、新鮮な感覚があります。序盤でいきなりギター・ソロがあり、シンガロングできる唱和のパートもあります。曲のメイン・パートは「Under The Influence」のような、あのアルバムのタイトル曲のようなダークな感覚もありますね。

ボビー“ブリッツ”エルズワース:俺には、この曲が俺達のルーツがわかる曲になるということはわかっていたよ。例えば、1982年に書いていたとしてもおかしくないような曲に俺には思える。勿論、プロダクションは新鮮なものになっているし、サウンドやそのプレゼンテーションはモダンなものになっているけど、俺達がどこから出発したかがわかる曲だというのは間違いない。俺はいつも言っているし、他の多くの人達も言っていることではあるが、自分がどこを目指しているかを知るためには、自分がどこから来たかを把握しておかなくてはいけない。次のステップに進むためには、そのシンプルなイデオロギーが大事だ。そしてこの曲について、すべてのパーツが揃った時、それらを見事に繋いだのが、ギター・ソロがとても長いという事実だった。それらは、ただ個々に加えられたパートではなく、それら自体が繋がって音楽的な存在になっている。この曲の鍵になったのが長いギター・ソロだった。

――ボーナス・トラックのシン・リジーのカヴァー「Emerald」は素晴らしい仕上がりです。あなた方の音楽にシン・リジーからの影響も入っていると思いますか?

ボビー“ブリッツ”エルズワース:俺が最初に観たコンサートがクイーンで、俺が15歳の時だった。その時に彼らが出したアルバムが『SHEER HEART ATTACK』(1974年)で、その後の3枚のアルバムでも俺は毎回クイーンのコンサートを観に行った。最初のが1975年のニュージャージーで、2回目が1977年のニューヨーク・シティで、『NIGHT AT THE OPERA』のツアーをMadison Square Gardenで観たんだが、その時のオープニングを務めたのがシン・リジーだったと思う。あれは俺が観たコンサートの中でもベストに入るものだった。シン・リジーのクラシックな曲を聴くと、彼らはNWOBHMと呼ばれるものの先駆けだったと俺はいつも思う。そこで、『THE GRINDING WHEEL』を聴くと、さっき「The Long Road」という曲の話をしたけれど、あの曲にはクラシックなヴァイブがあって、例えば「Emerald」のような曲を先に進めたようなところがあると思った。クラシックなギター・ハーモニーとそのインパクトを正しく理解しているというのが重要なところだが、あの曲(「Emerald」)やあの時代のシン・リジーの後に誕生したジャンル全体を、アメリカ、ドイツ、日本、南米のスラッシュ・バンドの多くが大切に受け入れた。だからシン・リジーはオリジネイターのひとつだと俺は常々考えているんだよ。彼らが意図的にそれを生み出したのかどうかはわからない。ただ自然に、ああいうギターの表現がその才能によって提示されたのかもしれないが、それが俺達に、スラッシュの連中に、それを新たな方向に進めるチャンスをくれたんだよ。だから完璧な曲だと思ったよ。バンドの連中の演奏も素晴らしいと思う。デイヴ(リンスク/G)、ロン、D.D.(ヴァーニ/B)、デレク(テイラー/G)の演奏がね。

――日本盤にはアイアンメイデンのカバー「Sanctuary」が入ります。この選曲については?

ボビー“ブリッツ”エルズワース:俺達は自分達がどこから来たのか思い出すのが好きなんだ。1980年代初期、カバー・バンドとしてアイアン・メイデンの最初の2枚のアルバムの曲の多くをカバーしていた。あの2枚のアルバムは当時のメタル・シーンに大きな衝撃をもたらした。俺達がより新しい、最近のアイアン・メイデンからインスパイアされているとは思わないけど、だからといって好きではないということではないよ。バンドがそれぞれの道を探っている時、1980年代のオーヴァーキルがそうだったように影響というものは非常に重要だ。ひとたびアイデンティティを見つけたら、影響よりもアイデンティティを活用することがより重要になってくる。アイアン・メイデンは今でもオーヴァーキルのリリースしたものの奥底で聴けるけど、俺達が作り上げた独自のものも聴けるはずさ。

――新作『THE GRINDING WHEEL』のツアーで2017年は忙しくなりそうですね。この先、2年3年はツアー続きでしょうか?

ボビー“ブリッツ”エルズワース:そうだね、最低でも2年はやりたいと思っているよ。アジアの日程についても、既にいくらか話し始めている。ヨーロッパのエージェントとも話をしているし、他のメタル・バンドとも話をして、単独で行くのではなくパッケージで行ける可能性も探っているよ。

取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Hakon Grav, Mark Weiss


オーヴァーキル『ザ・グラインディング・ウィール+ライヴ・アット・スラッシュ・ドミネーション2015』

2017年2月10日 世界同時発売
【100セット通販限定 CD+ライヴDVD+Tシャツ+直筆サインカード】 ¥7,000+税
【完全生産限定CD+ライヴDVD+Tシャツ】¥6,300+税
【初回限定盤CD+ライヴDVD】 ¥4,500+税
【通常盤CD】¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ミーン, グリーン, キリング・マシーン
2.ガッデム・トラブル
3.アワ・ファイネスト・アワー
4.シャイン・オン
5.ザ・ロング・ロード
6.レッツ・オール・ゴー・トゥ・ハデス
7.カム・ヘヴィ
8.レッド, ホワイト・アンド・ブルー
9.ザ・ウィール
10.ザ・グラインディング・ウィール
《ボーナストラック》
11.エメラルド(シン・リジィ カヴァー)
《日本盤限定ボーナストラック》
12.サンクチュアリ(アイアン・メイデン カヴァー)
日本盤限定ボーナスDVD《THRASH DOMINATION 2015》
1.アーモリスト
2.エレクトリック・ラトルスネイク
3.ブリング・ミー・ザ・ナイト
4.ハロー・フロム・ザ・ガター
5.アイアンバウンド
6.ビター・ピル
7.エリミネイション
8.ファック・ユー

【メンバー】
ボビー“ブリッツ”エルズワース(ヴォーカル)
D.D.ヴァーニ(ベース)
デイヴ・リンスク(ギター)
デレク・テイラー(ギター)
ロン・リップニッキ(ドラムス)

◆オーヴァーキル『ザ・グラインディング・ウィール+ライヴ・アット・スラッシュ・ドミネーション2015』オフィシャルページ