【インタビュー】サンダー「体力が続く限り音楽を続けていきたい」

twitterツイート

2017年2月にニュー・アルバム『リップ・イット・アップ』を発表したサンダーのギタリストでありソングライター、プロデューサーのルーク・モーリーへのロング・インタビュー、その全2回の後編では、さらにアルバムを深く掘り下げたトークに加え、特典ディスクに収録されたロンドンの名門クラブ『100クラブ』でのライヴ、そして去っていった先達への想いなどを語ってもらった。

◆サンダー画像



──「ノー・ワン・ゲッツ・アウト・アライヴ」のギター・ソロにはジャズ風テイストがあったり、ギター・プレイやサウンドで随所にヒネリが効いていますね。

ルーク・モーリー:うん、「ノー・ワン・ゲッツ・アウト・アライヴ」は曲のメインにロックのドライヴ感があるから、中間部でジャジーなパートを入れたら面白いと思った。ジェフ・バクスターがスティーリー・ダンのアルバムで弾いたようなプレイを意識したんだ。もしくはカルロス・サンタナのような感じかな。アメリカのウェスト・コーストっぽいムードを出したいと思ったのは、いつものギブソン・レスポールだけでなく、フェンダー・ストラトキャスターを弾いたことも関係しているかもしれないね。

──ブリティッシュ一辺倒ではなく、アメリカンな要素もあるのですね。

ルーク・モーリー:そうだね。「ザ・チョーズン・ワン」には1970年代のソウル&ディスコみたいなムードがあるけれど、中間部のブレイクはアイザック・ヘイズの「シャフトのテーマ」を意識したものなんだ。グルーヴ感はもちろん、ストリングスを入れてみたり、サンダーらしさを貫きながら、あの雰囲気を出そうとしているよ。

──過去にもワイルド・チェリーの「プレイ・ザット・ファンキー・ミュージック」をカバーしていますが、ソウル&ディスコのどんなところに魅力を感じますか?

ルーク・モーリー:肉体的なグルーヴのある自然に身体が動きだすダンス・ミュージックということかな。クラブに行って踊るわけじゃないけど、ステレオやラジオからソウルが流れてくるとつい自然にリズムを取ってしまうよ。

──かつて「ハイヤー・グラウンド」という、スティーヴィー・ワンダーのヒット曲と同じタイトルを使ったのは意図的でしょうか?

ルーク・モーリー:いや、それはまったくの偶然。ダニーも俺もスティーヴィー・ワンダーのファンだけど、「ハイヤー・グラウンド」を書いたときはまるで頭になかった。リハーサルのときに当時のベーシスト、スネイクに「この曲?」とリフを弾かれて、初めて気がついたんだ。

──「タンブリング・ダウン」のリズムが、スティーヴィー・ワンダーの「ハイヤー・グラウンド」っぽくて面白かったです。

ルーク・モーリー:確かにシャッフルのリズムは似ているかもね(笑)。普段サンダーではやらないタイプの曲だし、やって楽しかったよ。アルバムには変化球を入れるのも大事なんだ。リスナーと俺たち自身を飽きさせないためにね。

──『リップ・イット・アップ』のアルバム・ジャケットはドクロが描かれていて、あまりサンダーらしくない…とも思えますが、何故このデザインを選んだのですか?

ルーク・モーリー:俺たちの現在が描かれているアルバムだし、サウンド的にもよりコンテンポラリーになっているから、アルバムのアートワークも、それを反映したデザインにしたかった。マグヌス・ヨーエンの絵は前から好きで、1枚持っているんだ。妻が「この人に頼んでみたら?」と提案してきて、本人にメールしてみたら快諾してくれた。“骨がある”ということで、サンダーらしいんじゃない(笑)?

──『リップ・イット・アップ』限定盤には、2016年1月27日ロンドン『100クラブ』でのライヴが収録されていますが、どんな思い出がありますか?


ルーク・モーリー:『100クラブ』のライブは青少年のカウンセリング団体『チャイルドライン』への寄付を募るためのチャリティ・ショーだったんだ。あれほど小さなクラブでライブをやったのは本当に久しぶりだった。300人ぐらいがギュウギュウに詰め寄せて、とんでもない暑さだったよ。俺が立ち位置を変えるたびに最前列の観客が頭をかがめて、ギターのヘッドがぶつからないようにしたほどでね、ライヴ演奏も盛り上がったし、ぜひ世界中のファンに聴いて欲しくてボーナスCDとして付けたんだ。実はこのショーは撮影もしているから、いずれ世に出したいね。

──『100クラブ』は1942年にオープンして古くはジャズ、1970年代にはパンク・ロックの聖地として人気のあった伝説的クラブですが、思い入れはありますか?

ルーク・モーリー:『100クラブ』では何度もライブを見た。最近見たのは数年前、ニール・イネスのライブだった。モンティ・パイソンの音楽や、ザ・ビートルズのパロディ・バンド“ラトルズ”の曲をやっていて楽しかったよ。ロンドンの音楽シーンを支えた2大クラブといえば『100クラブ』と『マーキー・クラブ』だけど、『マーキー』は何回か移転して、もう何年も前に閉店してしまった。『100クラブ』は同じ場所で埃っぽいまま営業を続けているから、その歴史の一部になれるのは嬉しいね。

──ロック系クラブとして、『マーキー』にはあなたも若い頃から出入りしていましたよね?

ルーク・モーリー:1980年代の初め、俺とダニーはテラプレインというバンドで『マーキー』でプレイしていたし、1980年代のほとんどを過ごした気がする。マリリオンのフィッシュと友達になったのも『マーキー』のバーだったし、いろんな人と飲み交わしたおかげで人脈ができて、レディング・フェスティバルにも出演することもできた。テラプレインとして『CBS』レーベルと契約したのも、『マーキー』でのライブがきっかけだったんだ。俺の青春と言ってもいいものだけど、サンダーを結成した頃に移転してしまった。俺にとっての『マーキー』は、1980年代ウォードア・ストリートにあったクラブなんだ。その後(1988年)チャリング・クロス・ロードに移って、俺の知っている『マーキー』は終わってしまった。それから何回か移転して、いつの間にかなくなってしまったのは寂しかったね。

──2002年にロンドン北部のイズリントンにあった『マーキー』で、サンダーが“ダニー&ザ・ドゥ・ワップス”名義で行ったシークレット・ライブを観ましたよ。

ルーク・モーリー:今は『イズリントン・アカデミー』という名前のクラブだね。あのクラブには何度か行ったことがあるし、良いバーがあると思うけど、俺にとってあれは『マーキー』ではないよ。

──2017年3月に行われるサンダーのイギリス・ツアーでは、ブリティッシュ・ロックの歴史を彩ってきた伝統のある会場の数々での公演が予定されていますね。ロンドンの『ハマースミス・アポロ』、マンチェスターの『アポロ』、シェフィールドの『シティ・ホール』、レスターの『ド・モンフォール・ホール』…。

ルーク・モーリー:そうだね。意図したわけじゃないけど、イギリスのロック史を代表するライヴ会場を巡るツアーになった。前回のツアーではロンドンの『ウェンブリー・アリーナ』みたいなアリーナ規模の大会場で演ったかわりに、公演数を減らしたんだ。そのせいでファンから「自分が住んでいる都市に来てくれなかった」って言われてしまった。今回はいろんな都市のホール規模の会場で何回もショーをやるし、2017年は『リップ・イット・アップ』をプロモートするツアーで世界中を回るよ。ヨーロッパ・ツアーや各国の夏フェス、それから初めてオーストラリアでもツアーをするんだ。その前後、年内には日本にも行きたいね。

──近年、ロック・ミュージシャンが相次いで亡くなっているので、お身体に気をつけて下さい。

ルーク・モーリー:誰もがいずれは死ぬけれど、やはり不摂生は身体に良くないね。ステイタス・クオーのリック・パーフィットが去年亡くなったけど(2014年12月24日、68歳)、彼を知っている人だったら誰も驚きはしなかったと思う。彼はとてつもないパーティー好きで、浴びるほど酒を飲んでいた。ギリギリの一線を乗り越えそうなライフスタイルだったんだ。俺はステイタス・クオーを聴いて育ったし、リックとは友達だったから、とても残念だったよ。ロバート・パーマーとはザ・パワー・ステーションのツアーで18ヶ月を一緒に過ごしたけど、彼もクレイジーだった。とんでもない量の酒を飲んで、タバコを吸ってコカインもやって…何でもアリだった。「健康な人生ほど惨めなものはない」って言ってたな。彼は54歳で亡くなったけど、それは彼自身の選択によるものだった(2003年9月26日、54歳)。彼らの生き方は批判しないけど、俺は健康でいることが好きなんだ。ライヴは重労働だから、ベストな状態でステージに上がりたい。さっきも1時間前までジムで運動してきたところだよ。どうせなら長生きしたいし、体力が続く限り音楽を続けていきたいからさ。

取材・文:山崎智之
Photo by Jason Joyce


サンダー『リップ・イット・アップ』

2017年2月10月発売
【100セット通販限定 直筆サイン入りカード付きCD+2枚組ライヴCD+『ブロークン・ミラー』EP+直輸入2枚組LPレコード】 ¥8,500+税
【完全生産限定盤CD+2枚組ライヴCD+『ブロークン・ミラー』EP】¥4,500+税
【初回限定盤CD+2枚組ライヴCD】 ¥3,800+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ノー・ワン・ゲッツ・アウト・アライヴ
2.リップ・イット・アップ
3.シー・ライクス・コカイン
4.ライト・フロム・ザ・スタート
5.シェイクダウン
6.ハートブレイク・ハリケーン
7.イン・アナザー・ライフ
8.ザ・チョーズン・ワン
9.ジ・エネミー・インサイド
10.タンブリング・ダウン
11.ゼアズ・オールウェイズ・ア・ルーザー
《2016年1月27日 ライヴ・アット・ザ・100クラブ/イギリス》
[DISC1]
1.ワンダー・デイズ
2.ブラック・ウォーター
3.リヴァー・オブ・ペイン
4.チェイシング・シャドウズ
5.ブロークン
6.ザ・デヴィル・メイド・ミー・ドゥ・イット
7.バックストリート・シンフォニー
8.アイル・ビー・ウェイティング
[DISC2]
1.レザレクション・デイ
2.ザ・シング・アイ・ウォント
3.ラヴ・ウォークド・イン
4.アイ・ラヴ・ユー・モア・ザン・ロックン・ロール
5.ザ・ロッカー
6.ダーティ・ラヴ

『ブロークン・ミラー』EP
1.ファイア・イン・ザ・マウンテン
2.ブルー・アイド・ガール
3.ビヨンド・ザ・スターズ
4.アイ・ウィル・リターン

【メンバー】
ダニー・ボウズ(ヴォーカル)
ルーク・モーリー(ギター)
ハリー・ジェイムズ(ドラムス)
ベン・マシューズ(ギター/キーボード)
クリス・チャイルズ(ベース)

◆サンダー『リップ・イット・アップ』オフィシャルページ
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報