【対談】YUKIYA(Kαin) × Tohru(PROJECT TO EVIL)、「JILSとはまた違う自分の音楽を」

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■5人の関係性や空気感が崩れかかってしまって
■そこを僕は守りたかったのかも──Tohru

──そうして2000年1月に加入したものの、翌年11月には脱退することになってしまったわけですが。

YUKIYA:ただ、Tohruくんの場合は脱退といっても、当時の状況としては実質解散みたいなものだったんですよ。メンバー5人のうち僕と舜くん以外は残らなくてね。

──はい。

YUKIYA:簡単に言うと“大人の言うことを聞いてメジャーデビューするか、それとも解散するか”みたいな状況だったんです。で、子供っぽい言い方になっちゃいますけど、D≒SIREのときに“大人にかき回されて解散しちゃった”経験のあった僕には、メジャーデビューしたときにバンドが失うものが見えていたんですね。だから僕はメジャーデビューしないで自主独立のままで行く道を選んだんですけど、まさか音楽業界がこんなことになるなんて当時は思ってもいないから、やっぱりデビューにこだわってたメンバーもいて。冷静に考えてみると“メジャーデビューか、解散か”なんて、そんなこと全然ないはずなんですよ。その時点で僕らどこかと専属契約してるわけじゃなかったし、動員もあったし。バンドなんてメンバー4人なら4人、5人なら5人だけで本当はできるはずなんだから。

▲Kαin

──なのに外部の横槍がキッカケで、メンバー間にズレが生じていってしまう。

Tohru:うん。それで5人の関係性や空気感が崩れかかってしまって……そこを僕は守りたかったのかもしれない。それまで僕がいたバンドは、ヴォーカルとギターがメインで自分は半分サポート、みたいな感じばかりで、5色あるようなバンドは初めてだったんですよ。そういう部分ではやり切っちゃった感があったのかな?わかんないけど。だから、JILSを辞めて他のバンドをやるつもりは一切なかったし、自分の中に“もうバンドは終わりだな”という想いがあったので、そこは十何年経っても変わることがなかったんです。

YUKIYA:うん。だから、Tohruは俺が作ってる音楽や歌が嫌いになって脱退したわけではない。それはハッキリ言える(笑)。

Tohru:もう全然!

YUKIYA:実際、脱退後も割と早い段階で僕のソロでは叩いてもらったりしていたしね。でも、ホントに考えてみたら変な話ですよ。結成するときには“こいつとやりたい”とか“こういう音楽をやりたい”からバンドを作るわけで、別にマネージメントやデビューが決まっているから結成するわけでもない。だけど契約が切れたからとか、マネージメントがなくなったから解散するケースって、すごく多いでしょ? なぜかバンドって、そうなっちゃうんですよね。魔法がかかったみたいな感じで、だから僕は怖かったですよ。D≒SIREがバラけたときもJILSもバラけたときも、“なんだこれ?”ってキツネにつままれたような気分だった。

──だから今、そういった利権渦巻く大人の世界からは距離を取って、Kαinは活動しているわけですね。

YUKIYA:まぁ、エラい人たちには「距離を取ったら潰れるぞ」って言われましたけどね。何回も脅迫めいたことを言われたりもしましたよ。でも、今でもやっていけてるのはインターネットが発達したおかげで、よくわかんない業界の闇が暴かれていったり、個人でも情報が発信できるようになったからだと思うんです。仲のいいライヴハウスだけに出て、そこに来てお金を払ってくれるお客さんが全て。そういうスタンスで、どうにか生き残ってこれた。

──そこはインターネットの功罪のうちの“功”ですよね。ちなみにお2人が一緒に活動していた当時、印象に残っているエピソードなどありましたら教えていただきたいんですが。

Tohru:今だから言える話ですけど、名古屋ダイヤモンドホールで“名古屋系”バンドが集まるイベントに出たことがあったんですよ。JILSも割とダークなSEで始まって、バーン!と音を鳴らしてYUKIYAさんが「名古屋いけんのか!」って煽ったら、クリックが来てドラムが入る……っていう流れだったのに、なぜかクリックが来なくて。当然ドラムが入れなくて、曲が止まり、シーケンスだけがパーッと流れるっていう、もう顔面蒼白な状況になったんです。

──あら。

Tohru:でも、社長は動じることなくMCで繋いでて……しばらして「クリックきました!」って再開したんですけど、その時の社長の動じなさが“すごいな!”と印象に残ってるのと、その事件って実は、知らない間に僕自身がミュートスイッチを押してしまってて音を消してただけだったということが原因だったんです……。でも、それがバレたら殺される!と思って、当時は“機材トラブル”で押し通したという(笑)。ただ、そういうアクシデントが起きて、ヴォーカルがドラムを殴るような場面って俺、いっぱい見てきたのに、JILSでそういうことはなかったですね。

YUKIYA:いや、ライヴの本番でミスをしたから人を殴るっていうのは、僕はしないですよ。だって一生懸命やってるんだから、トラブルは仕方ない。ただ、そのライヴが終わった直後に機材をチェックしても異常はなかったんで、ずっと不思議に思っていたんですよ。そうしたら、何年か経ってからTohruに「自分でミュートしてました」ってカミングアウトされて、「お前か!」と(笑)。

Tohru:あれは告白するのに5年くらいかかりましたね……。それ以来ミュートは必ずチェックするようになりました。本番前のクリックチェックも(笑)。

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