【インタビュー】スーサイド・サイレンス、大問題作が生まれたその真意とは?

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2月24日に世界同時リリースとなった、スーサイド・サイレンスの新作『スーサイド・サイレンス』は、一言でいうと“大問題作”だ。アルバムからのリード曲「ドリス」が発表されると、デスコア・シーンの代表格のイメージからかけ離れた音楽性の変化にファンからの批判が殺到、SNS上でも炎上状態になった。ネガティヴな意見も覚悟のうえでリリースされる今作について、ギタリストのマーク・ヘイルマンに話を聞いた。

◆スーサイド・サイレンス画像


──『スーサイド・サイレンス』でこだわった部分は?

マーク・ヘイルマン:“全員がそこにいること”というシンプルなルールを作った。だからひとりでもスタジオに来られなかったら作業はしない。気持ちをひとつにするためにね。

──制作期間はどれくらいかかりましたか?

マーク・ヘイルマン:2015年の春から曲作りを始めて完成したのは2016年の春だった。夏から秋にかけてはツアーだったから、実際の制作期間は9カ月くらいだね。

──今作のプロデューサー、ロス・ロビンソンとのレコーディングはいかがでしたか?

マーク・ヘイルマン:ロスとレコーディングしたのは7週間くらいだったと思うよ。俺たちはロスの自宅兼スタジオに住み込みでレコーディングしたんだ。スタジオは地下にあってロスは最上階に住んでいてね、余っている部屋をバンドに提供してくれたんだ。俺たちとロスはまさにチーム一丸になって日曜日以外の週6日間をレコーディングに打ち込んだ。驚いたのは、ロスの仕事熱心なところだね。彼は休みの日もスタジオに籠って俺たちのために作業していたんだ。あんなに作品に全てを捧げてくれるプロデューサーは、これまで見たことないよ。

──ロス・ロビンソンと言えば、コーンやリンプ・ビズキットを筆頭にニューメタル・シーンを生み出したプロデューサーとしてあまりにも有名ですよね。

マーク・ヘイルマン:まさに俺たちは、あの2組がシーンに出てきた1990年代中盤に少年時代を過ごしている。リアルタイムでニューメタルにのめり込んでいたんだよ。俺たちがバンドを始めた頃はモービット・エンジェルやカンニバル・コープスに近いデスメタルをプレイしていたけど、その前はみんなニューメタルを聴いていた。だから、俺たちがスタジオでプレイしている姿を見て、ロスは「ニューメタルの影響をモロに受けてるじゃないか」って驚いていたよ。俺はとても幅広いジャンルの音楽を聴いているけど、ニューメタルからの影響も多大に受けているんだ。

──今もバックでジャズが聴こえますよ。


マーク・ヘイルマン:え、聴こえていたのか(笑)。俺はメタルに限らずとても幅広いジャンルの音楽を楽しんでいる。俺の父親はジャズ・ギタリストだしね。小さい頃はギターを親父から学んでいたし、ホルン、トランペットも演奏できる。ボーカルのエディもトロンボーンをプレイしているんだ。スーサイド・サイレンスはメタルバンドだけど、メンバーは幅広い音楽を楽しめるタイプの人間なんだ。毎回ヘヴィでクレイジーなアルバムばかり作るのはつまらないだろ(笑)? これまで吸収してきたものを作品に反映させることだって大事なことだと思うよ。

──ジャズ・ギタリストの父親は、スーサイド・サイレンスを聴くんですか?

マーク・ヘイルマン:ワハハ、当たり前だろ!自分の息子のバンドだぜ(笑)、誇りに思ってくれているし、俺たちの作品は全部聴いているよ。「Wake Up」「You Only Live Once」「Lifted」が好きみたいだ。今作を聴かせたときも「これまでで最高傑作だと思う」って言ってくれたよ。

──好きなミュージシャンを教えてください。

マーク・ヘイルマン:スーサイド・サイレンスのジャンルとは異なるけど、True Widow、Big Chocolate、あとBrain Tentaclesも好きだ。俺の音楽の好みは、それが純粋でホンモノってこと。安っぽいレコーディング環境でも、演奏がパーフェクトだったりすると最高だよね。メタル/ジェント系なら、メシュガーの新作は最高だったな。あと、After the Burialの演奏力も凄いね。速い曲をテクニカルに演奏するオリンピックがあったら、奴らが一番だ(笑)。

──今作はこれまでのスーサイド・サイレンスとは音楽性の違う作品です。変化を求める気持ちは前作『ユー・キャント・ストップ・ミー』(2014年)の頃から湧いていたんでしょうか。

マーク・ヘイルマン:前作を作り終えたときは、すごく幸せだった。前作はヘヴィだし、周囲から求められていることをクリアしているからスーサイド・サイレンスとしては良い作品を完成させたと思った。でも、正直なことを言うと気持ちが別のところに向かっている気もしていた。一人のミュージシャンとしては何か違うんじゃないかって葛藤があったんだ。そのときはその想いを誰にも話せなくて自分の中で整理していた。それで最終的に出した結論がもっと違うことにもチャレンジしたいってことだったんだ。自分自身がもっとハッピ-になりたいって思った。それからバンドで話し合って、次のアルバムではクレイジーで何か新しいことをやろうって意見で一致したんだ。一致団結できたおかげで、誰が何と言おうと前進しようって気持ちになれた。生きていく過程で俺たちは成長しなければならない。10年以上もこのバンドを続けてきて、今作がまさにその瞬間だった。純粋な気持ちから生まれる音楽をやるときがきたんだ。

──酷な質問ですが、(2012年にバイク事故で亡くなったオリジナル・ボーカリストの)ミッチ・ラッカーが生きていたら彼は変化を求めたと思いますか?

マーク・ヘイルマン:うーん、このことはあまり口にしたくないんだけど、前作はミッチとの最後のアルバムだと思っている。彼はクリーン・ボーカルを認めることをしなかったけど、(クリーンで歌えるための)ボーカル・トレーニングは受けていたんだ。俺たちはバンドが変化することでファンに嫌われること恐れていた。でも、今はミッチというかけがえのない友人を失って、これ以上ない恐れを味わったんだ。今作はミッチが亡くなって、現在のボーカリスト、エディ・ヘルミダにとって最初の作品だという気持ちで取り組んだ。これまで起こったことを全て受け止めて前進するための1枚なんだ。

──ミッチがボーカル・トレーニングを受けていたとは…。

マーク・ヘイルマン:ミッチは「スーサイド・サイレンスではクリーン・ボーカルはやらない」って言ってはいたけど、実は彼こそが新しいものに挑戦することに貪欲だった。俺たちは音楽を作って、それで人を驚かせてきた。バンドを続ける理由は音楽を作るためでそれ以上の何ものでもない。ミッチはもっともっと!って求める性格だったから変化を求めていた可能性は十分にある。ボーカル・スタイルだって違うことを目指していたかもしれない。彼が好きなボーカリストは、クリーン・ヴォーカルが素晴らしいアンソニー・グリーン(セイオシン、サーカ・サヴァイヴ)だったしね。ファンの希望と一致する作品があれば、バンドのメンバーの理想をカタチした作品もある。今作は後者の方だ。だから、『スーサイド・サイレンス』を聴いて激怒する人もいるだろうけど、いまの俺たちが望んで作ったリアルな作品なんだ。

Photos by Dean Karr
取材・文:澤田修


スーサイド・サイレンス『スーサイド・サイレンス』

2017年2月24日世界同時発売
【通販限定CD+Tシャツ+サインカード】¥6,000+税
【CD】GQCS-90305 / 4562387202614 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ドリス
2.サイレンス
3.リッスン
4.ダイイング・イン・ア・レッド・ルーム
5.ホールド・ミー・アップ・ホールド・ミー・ダウン
6.ラン
7.ザ・ゼロ
8.コンフォーミティ
9.ドント・ビー・ケアフル・ユー・マイト・ハート・ユアセルフ

【メンバー】
エディ・ヘルミダ(ヴォーカル)
クリス・ガーザ(ギター)
マーク・ヘイルマン(ギター)
アレックス・ロペス(ドラムス)
ダン・ケニー(ベース)


◆スーサイド・サイレンス『スーサイド・サイレンス』オフィシャルページ
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