【連載】CIVILIAN コヤマヒデカズの“深夜の読書感想文” 第二回/中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

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こんにちはこんばんわ初めましていつもありがとうございます。コヤマです。
CIVILIANというバンドで歌を歌ったりギターを弾いたり曲を作ったりしています。
もうそろそろ春が来るような気がするんですが、本当に時間が流れるのは早いですね。自分がこの世を去るまでに発表できる音楽の数はあといくつで、ライブが出来るのはあと何回で、「ああ冬が終わるな」と思えるのはあと何回で、聴けるアルバムはあと何枚、観れる映画は、絵は、景色は、人は、とかそういうことをよく考えます。無限にあるような気がしていたものにも確実にタイムリミットが設定されていて、僕もあなたも全員そこに向かって突き進んでいます。

世界にある全ての書物を死ぬまでに全て読むことはどう考えても不可能ですが、せめて皆から勧めてもらったものは全て読もうと思っています。
それでは、二冊目の本の話をします。

(この感想文は物語のネタバレを多分に含みます。肝心な部分への具体的な言及は避けますが、ご了承の上読んで頂ければ幸いです)

  ◆  ◆  ◆
  
【第二回 中村文則『何もかも憂鬱な夜に』】

■犯罪心理と死刑制度、人が人を殺すということ、そして人生の意味について

第二回はこの方。最初から薄々気付いてはいましたが、皆さんが僕にお勧めしてくるものは何故、こう、なんというか、こういったものが多いのでしょうね。僕自身が作っているものや、あるいは僕の存在自体が、ある一定のテイストを持った作品を僕に引き寄せているのかも知れませんね。気持ちは分かります。僕がもし逆の立場だったら、コヤマに薦める本はきっと同じだったと思います。
「いや、俺が(私が)挙げたタイトルはそんな話じゃない!」という方。ごめんなさい。そもそも勧められた数多のタイトルの中から読むものを選び取っているのは自分自身だったなと今思い出しました。どうしてもこういったタイトルの本には惹かれてしまうんですね僕。でもこのタイトル、すごく素敵でした。読み終わった後にそう思った。作品の中で一カ所だけ、この言葉が出てくる瞬間がふいに訪れるのですが、その瞬間が読後もずっと印象に残っていました。

今回も可能な限り同じ方の作品を他にも読んでから書こうと思い、「何もかも~」を読んだ後で「教団X」も読んでいました。が、時期的にどうしても本業であるバンドが忙しく、「教団X」は「何もかも~」と比較すると実に3倍ほどのページ数でして、時間に追われて読むのが追いつきませんでした。残念。とても面白いのですがまだ途中です。先に読み終わったのが「何もかも~」だったのでこちらについて書いていこうと思います。「教団X」のほうはTwitterかどこかで別に書こうかな。
第一回でお話しした辻村深月さんとはまた違った視点で、しかしこの中村文則さんも「生と死」を描く方です。自分も歌を作っている時によく考えるのですが、人間が動物である以上、全ての感情の源を辿っていくと生物の本能へと辿り着きます。本能の源流から流れてきた信号はやがて性欲、食欲、睡眠欲へ、さらに複雑に絡まり合って喜怒哀楽になり、その先でも細かく分岐したり合体したりしながら様々な名前を付けられてカテゴライズされます。例えば「憂鬱」とかいう名前を付けられて。
「全人類がもれなく共感する言葉」とは一体何でしょうか。そんなものは存在するのでしょうか。仮に存在するのなら、それはきっと本能に一番近いところにある言葉なんじゃないかと思います。中村文則さんという方はそういった意味で核心を突く言葉が書ける人だと思います。作品中の言葉の数々に、何度もハッとさせられました。


さて、前置きが長くなりましたが「何もかも憂鬱な夜に」です。
先ほど書いたように、前回は辻村深月さんの「オーダーメイド殺人クラブ」を取り上げさせてもらいました。「オーダーメイド~」を仮にざっくりと「自死の話」だと言ってしまうとすると、こちらは「他人への殺意、害意、犯罪と死刑の話」です。

犯罪は何故犯罪なのか、どうして人を殺したり物を盗んではいけないのか、という問いに対する答えは「放置していたら社会が成り立たないから」だと思います。皆さんはサッカーのルールを知っていますでしょうか。1チームは11人とし、必ず一人キーパーを入れなければならない。キーパー以外の選手は手を使ってはいけない。前半後半それぞれ45分間戦うものとする。などなど様々なルールを作り、全員がそれを守ることでやっとサッカーというスポーツは成り立ちます。例えばここで突然「ルールなんて知るか」と手でボールを抱えてゴールまで突っ走る奴が出てきたらどうでしょうか。相手選手を拳で殴り倒して進もうとする奴が現れたらどうでしょう。そしてそれがもし許されて得点になってしまったら。そしたら皆とてもとても困ります。そんなもの最早サッカーの体を成していません。サッカーというスポーツが根底から揺らいでしまいます。だから「やってはいけないこと」を決め、それを守らない者は審判からファウルを取られるのです。参加者達は皆そうやってサッカーというスポーツを守っています。「サッカー」を「社会」という言葉に置き換えてみると分かると思いますが、犯罪を犯してはいけない理由とはつまりそういうことだと思います。歩いていたら何の前触れもなくいきなり後ろから刺されて殺される社会なんて、人間的な社会とは呼べませんよね(その「人間的でない社会」が世界に実在しているのも事実ですが)。

ですが、それらはあくまで社会全体としての理由に過ぎません。ルールだけで生きていけるほど、人間は単純な生き物ではありません。「正しいこと」というのはいつだって間違いなく正しい。だけれど、「正しさ」に苦しめられる時も、傷付けられる時も往々にあります。中村さんの描く人物達の心情を「中二病」のひとことで切り捨てて笑うのは簡単です。「何もかも憂鬱な夜に」自体も、読む人を選ぶ作品だと思います。嫌いな人は嫌いだと思う。でも、自分自身が罪を犯すのを自分で止められなかった登場人物たちの思考や言葉が、理解できてしまう人も多いはずです。僕を含めて。

幼い頃から施設で暮らしていた主人公「僕」は、後に刑務官となり、あと一週間で死刑が確定する山井という青年と触れ合います。山井は裁判で死刑の判決を受け、このまま控訴しなければ死刑が決まってしまうのに、控訴しようとせず、黙ってそのまま死刑になろうとしています。山井はまだ何かを言わずに隠している、そう思った「僕」や「僕」の上司は、山井からその「隠し事」を聞き出そうとします。この作品は、時間の経過で言えばその「一週間」の物語です。その中で「僕」の過去へと話は遡っていき、過去に「僕」と関わった色々な人物との話が明かされていきます。

施設で暮らしていた頃に飛び降り自殺を計ったこと。施設の恩師にそれを止められて、本や映画に触れることを教えられ、かけがえのない言葉をもらい救われたこと。親友の自殺によって友達を亡くしていること。刑務官となってから、更生すると信じていた受刑者に裏切られたこと。「僕」の様々な過去に触れてゆくうちに、単なる死刑制度などの話を飛び越え、命とは、という根源的なテーマに深く潜っていきます。

僕の中で一番印象に残っている人物は、一番が佐久間。その次が真下です。病院内での佐久間の独白には、鳥肌が立ちました。それも、良い意味なのか悪い意味なのか判別できない鳥肌が。どうしようもなく醜悪で本当に気持ちが悪いのに、心の何処かでその心情がほんの少し理解できてしまう。佐久間のやっていたことそのものではなく、佐久間が犯罪行為を「サービス」だと言い、「自分が、自分の中にしっかり収まっていくような感覚」だと言ったこと。魅惑的ですらある、と、自分がそう感じてしまっていることに気付いて、ぞっとしました。そして佐久間は最後にこう言います。

「(中略)…なぜなら、こういう存在は、私だけじゃないから。
誰か教えてくれませんか!なぜこんな人間が存在するのか!」

真下が書いていたノートの内容もとても印象的でした。あのノートの中身を読んで「あれ、昔の自分がいるぞ」と思う人もきっと多いはず。あるいは現在進行形で同じことを考える人もきっと。真下がノートの最後に書いていた「焚き木」という言葉。自分が作る音楽がその「焚き木」であって欲しいと、そう思います。真下がノートの中で言っていたように、もしも真下のノートを読んで、暗い、気持ち悪い、としか思わない人間がいるのなら、それはきっと幸福な人です。

「僕」の恩師が「僕」に芸術の楽しみ方を教えるところも良かった。この恩師の言葉ひとつひとつが本当に良い。自殺を止めたあとで恩師が「僕」に言ったかけがえのない言葉、その言葉を聞くと、例えどんな毎日であろうと、生きなければ、という思いが湧いてきます。あの言葉を読んでどう思うかは、たぶん人それぞれだとは思いますが。そんなもの勝手に背負わされたって困る!って人ももしかしたらいるかもね。
主人公「僕」は様々な過去を思い出し、かつて恩師が「僕」にそうしてくれたように、今度は自分が山井を救おうとします。果たして、山井はこのまま何も語らずに死刑になってしまうのか…というお話。僕が大好きで何度も読んだ、別の方が書いた別の作品に出てきたとある言葉と、同じ意味の言葉がこの作品にも出てきました。どんな言葉か今ここで物凄く書きたいのだけど、それはほぼ結末を書くようなものだから、やっぱりやめておきます。
自分のこれからの人生の中に、素晴らしいものはあといくつ残っているんでしょうか。できるなら、最後の最後までそう思いながら死にたいなと、そう思ったのでした。


第一回と同様、個人の主観で書かれたただの感想です。細かいことはご愛嬌ということで。
それではまた。

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<CIVILIANコヤマヒデカズの弾き語りワンマンツアー>

■2017年3月12日(日) 19:00~
場所:大阪府・タワーレコード梅田NU茶屋町店

■2017年3月20日(月・祝) 15:00~
場所:福岡県・タワーレコード福岡パルコ店店内

■2017年3月25日(土) 17:00~
場所:北海道・タワーレコード札幌ピヴォ店店内

■2017年3月26日(日)14:00~
場所:宮城県・タワーレコード仙台パルコ店内



CIVILIAN New Single「生者ノ行進」

2017年3月1日(水)発売
TVアニメ「ALL OUT!!」(TOKYO MX、MBS、BS11ほかにて放送)第二クールOPテーマ
・初回生産限定盤(CD+DVD):SRCL-9332~3 ¥1,800(税込)
CD収録内容:1.生者ノ行進 2.君は君であることを 3.サクラノ前夜
 DVD収録内容:“2016.11.23 Major Debut Memorial Studio Live”
1.愛/憎 2.LOVE/HATE/DRAMA 3.3331

・通常盤(CDのみ):SRCL-9334 ¥1,300(税込)
CD収録内容:初回生産限定盤と共通

・期間生産限定盤(CDのみ):SRCL-9357~8 ¥1,800円(税込)
※期間生産限定盤はアニメ書き下ろし絵柄紙ジャケット仕様
CD収録内容:1.生者ノ行進 2.君は君であることを 3.サクラノ前夜 4.生者ノ行進(アニメver.)
カレンダー:2017年3月~2018年3月のアニメ絵柄カレンダー。
CDブックレットサイズの吊るしカレンダー。
各ページ切り離し可能。

■「生者ノ行進」フルver.デジタル先行配信&パッケージプレオーダー
【iTunes】http://apple.co/2kIueXl 
【レコチョク】http://bit.ly/2l6VnVc 
【mora】http://bit.ly/2koGUqr 

■「生者ノ行進」ミュージックビデオ フルver.
※2月20日(月)0:00~2週間限定公開
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00100/v10738/v0993900000000548589/

<「生者ノ行進」発売週イベント>
3/1(水)タワーレコード横浜ビブレ店にて、一日店員&スペシャルトークショー
3/4(土)タワーレコード新宿店にて、インストアライブイベント
※詳細はオフィシャルHPをご確認ください

CIVILIAN ライブ情報

Hello Sleepwalkers、Ivy to Fraudulent Gameとの3マン東名阪ツアー
<Livemasters Inc. 5th Anniversary Tour "Dreieck">
出演:Hello Sleepwalkers/CIVILIAN/Ivy to Fraudulent Game
2017.02.22(水) 名古屋CLUB QUATTRO
2017.02.23(木) 梅田 CLUB QUATTRO
2017.03.02(木) 渋谷 CLUB QUATTRO
※詳しくはコチラ: http://livemasters.jp/ticket/20161206_1991.php

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