【インタビュー】YOSHIKI「新たな生き物になっちゃいました」

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3月4日に開催となるX JAPANによる英ウェンブリー・アリーナ公演が目前に迫ってきた。PATAの緊急入院により公演キャンセルから1年、リベンジとも言えるロンドン公演だ。日本では3月5日(日)午前4:30からWOWOWプライムで生中継が、夜8:00からはWOWOWライブで収録番組が放送される。

◆X JAPAN画像

YOSHIKIをキャッチしたこの日は、映画『We Are X』のジャパンプレミアが行われ、X JAPANのメンバーも全員集合となり慌ただしくもパワフルな一日だった。忙しい中にもエネルギーにみなぎったYOSHIKIは、様々な心模様を語ってくれた。

──相変わらずの多忙ぶりですね。

YOSHIKI:今は「La Venus」のミックスをやっているところです。

──今日は映画『We Are X』の完成披露ジャパンプレミアが実施されましたが、そんな日もレコーディングを並行しているんですね。

YOSHIKI:アメリカで作業していたんですけど、ちょうどミックスエンジニアに音を渡して飛行機に乗ってきたところです。今日は、これからまたスタジオに行って、続きをやります。

──「La Venus」は、ニューアルバムに収録されるバージョンですよね?いよいよ完成目前ということで。

YOSHIKI:佳境ですね。ウェンブリーが終わったら多分次はアルバムでしょうね。

──ウェンブリー・アリーナはどのような態勢で臨みますか?1年前にキャンセルとなったリベンジ公演となるわけですが。

YOSHIKI:何か特別なことをやるというよりも、“今までやってきて、今ここにいるX JAPANを見せつける”ということだと思います。違う点といえば、新曲をさらに増やすということですかね。

──海外でのライブって、国内のライブとどう違いますか?

YOSHIKI:MCが英語になるくらい(笑)。演る側としては特に変わらないですよ。ただ、オーディエンス側は多少違いがあるかもしれませんよね。「このバンドって一体どういうバンドなんだろう」と思って見ている人も多いですから。特に<YOSHIKI CLASSICAL>のロンドン公演のときは、「いったいこのオーディエンスと、どのようにコミュニケーションを取ればいいんだ?」と思うくらい、ピリピリした空気がありました。やっていくうちにだんだんといつもの感じになっていきましたけど。

──X JAPANのコンサートとはまた違うんですね。

YOSHIKI:X JAPANで初めてロンドン公演を演った時は、最初から凄く暖かかったんですよね。うわーって歓声も凄く上がっていたので。今回は会場も大きくなっているので、多少「どんなバンドかみてやろう」みたいな人も来るとは思うんですが。



──X JAPANはロックバンドでしょう?アメリカでは“ロックは死んだ”と言われて久しいですが、ロサンゼルスに住んでいて肌でどう感じますか?

YOSHIKI:ロックは決して死んではいないと思います。サイクルってあると思うんですね…ラップミュージックやヒップホップが流行ったり、EDMが来たり、R&Bが人気だったり…そういう中で、ロックの波が来るんじゃないかと思うんですけどね。僕はマリリン・マンソンともプロジェクトを行っていますし、他にも色んなアーティストとセッションしたりするんですけど、ロックミュージシャンもすごく元気があってね、“またロックが来るんじゃないかな”みたいな、そんな思いがありますよ。

──それは朗報だ。

YOSHIKI:だから、僕もロックを活性化させますよ。水面下では色んなプロジェクトも動いていますし。

──音楽が売れない、でもライブシーンは盛況…そういう状況はどう見ていますか?

YOSHIKI:もちろん、ライブはもの凄く重要だと思います。ロックバンドってそもそもライブから来ているので。色んな流行の波があると言いましたけど、“ロックって、波に乗るものじゃなくて波を作るもの”だから、一緒に波を作りましょう、と。僕はその準備ができています。

──その波はオーディエンスも一緒に作るもの?

YOSHIKI:そうですね。水面に水が落ちた時、波が生じるでしょう?ぼくはその水を落とすことができるので、その波を一緒に作ろうという感じかな。タイミングを待つのではなく、タイミングは作ればいい。そもそもX JAPANはアルバムが20年出ていないとか、イビツで理に適わないところがあるんですけど、僕には野生の勘みたいなものがあって、不思議とタイミングがバシンと合うんです。だから、X JAPANのアルバムを出す時は…もう目の前ですけど、必ず何かが起こる節目になるタイミングなんだと思っています。

──それはわかります。これまでの歴史がそうでしたから。

YOSHIKI:このまえ「日経エンタテインメント!」の人から聞いたんですけど、X JAPAN解散の年が音楽業界の最高の売上を記録した年だったそうです。つまり、その年をピークに年々下降を辿ってきている。

──ほお。

YOSHIKI:僕らはいつも節目にいるんですよ。このアルバムも節目になるんじゃないかという気がしています。

──PATAの急病によってウェンブリー・アリーナ公演が1年スキップされたのも、意味のあることだったのかもしれませんね。映画公開、ロンドン公演、アルバム発売…と、2017年はX JAPANにとって大きな年になりそうで。


YOSHIKI:個人的には2016年がものすごく忙しかったので、「もう、こんな忙しい年は無理」と思っていたんですけど、2017年はもっと過酷なスタートを切っている(笑)。ちょっと怖いくらい忙しいし、何が起こるか分からない。

──ライブも目前ですが、YOSHIKIからみて他メンバーはどんなコンディションに見えますか?

YOSHIKI:頼もしいです。すごく疲れて日本に帰ってきたけど、ToshI、PATA、HEATH、SUGIZOの顔を見たら、元気をもらった。というか、逆に色んな意味で僕は精神的に彼らに引っ張られている感じがする。

──それはどういう意味ですか?

YOSHIKI:普通ね、こんなリーダー…はっきり言ってめちゃくちゃじゃないですか。

──いやなんとも…。ノーコメントで(笑)。

YOSHIKI:世の中の半分くらいの人は、そう思っていると思うんですけど(笑)、これだけ笑顔で付いてきてくれるなんてありえないと思うんです。その、彼らに対する感謝の気持ちっていうのかな…。

──メンバーが頼もしい。

YOSHIKI:どこかで“ちゃんとやってくれるんだろう”と思ってくれているのかもしれないですし。X JAPANというバンドの一員となってしまったから、“もうしょうがない”と思っているのか(笑)。

──絶大なる信頼関係があるのは間違いないですけどね。それは映画『We Are X』の中でも描かれていますし。

YOSHIKI:当時、メンバーに「人生を俺に預けてくれ」「必ず何かを起こすから」と言っていたわけで、HIDEは当時「YOSHIKIはきっと何かを起こすよね」と言っていたから、そういう意味ではHIDEからも絶大なる信頼を得ていたと思うんです。だから逆に、僕もHIDEを頼ったよね。「どうするべき?」と訊くと「YOSHIKIの好きなようにすればいいんだよ」って言ってくれた。今ではToshIとかもそのように言ってくれるから、だからこそ前に行けるのかもしれない。

──メンバー全員でウェンブリー・アリーナを成功させて、半年後はどうなっていますか?


YOSHIKI:アルバムが出てて、何かのツアーの発表が始まってて…。

──いろんなコラボレーションも発表されたり?

YOSHIKI:そうですね、コラボレーションもあるかもしれないですね。ただね、ウェンブリーが終わってアルバムがリリースされたら、正直休みたいというのもちょっとある。ずっとスイッチONの状態で、機械でいったら煙が出てて燃えちゃいそうなところまで来ているから。

──と言いながら、いつも休まないで動き続けてきたわけだけど。

YOSHIKI:結構大丈夫な方なんですけど、でも初めてちょっと生命の危機を感じるくらい疲れているな、という。だって、地上では寝ていないですもん。空の上で寝ていますけど、ここのところ地上で寝た経験がないですよ(笑)。

──地上で寝ない…ってなんかウケる(笑)。

YOSHIKI:“地上では寝ない新たな生き物”になっちゃいました(笑)。

──進化しちゃった?

YOSHIKI:ホントですよ。地上に降りるとほとんど起きているくらい過酷なスケジュールで、ドクターストップも数ヶ月前からかかっているんで、“アルバム完成”と“休憩”が僕の2大課題ですね。でも、恐ろしいくらいいろんなことが起こり始めているんで、ミュージシャンとしては幸せなことです。

──YOSHIKIに枯渇の文字はないですね。作曲に関しても、産みの苦しみとか聞いたことないし。

YOSHIKI:ないですね。むしろ降りてきすぎちゃうくらい。今はバンバン降りてきますね。そもそも譜面に向かった時点で必ず降ろしますし(笑)。苦しみはないわけじゃないんですけど……だいたいね、1年に何曲も毎年毎年できるはずがないんです。

──どういう意味ですか?

YOSHIKI:それはレーベルが作った商業ベースのスケジュールで、芸術家の観点でいくと、そんなコンスタントにできるはずがない。クラシックの作曲家だって、いいときもあれば悪いときもある。僕はたまたま、何年もリリースしなくても良かった環境に身を置けたから。

──なるほど。

YOSHIKI:普通であれば、商業ベースに乗って毎年どんどん曲を作って出さなくちゃいけないんです。そうした場合、いくらオリジナリティがあっても曲がダブったりしてね、「あの曲と似ているなあ」とかいろんな葛藤が出てくるわけです。それが産みの苦しみにつながる。そういう意味では僕は世の中に曲を出していないから、まだまだ隠し玉はいっぱいある。もともと曲はいっぱい書くので、そういう点で産みの苦しみが少ないのかもしれないです。

──アーティストとしては健全な状況かとも思います。

YOSHIKI:そうかもしれないですね。“音楽ビジネス的には狂っている”かもしれないですけど、それは何をどうとるか…見方次第ですよね。

──YOSHIKIの発言が、未来のアーティストのヒントや希望になればいい。

YOSHIKI:ミュージシャンでいる以上、生活もありますから、本来であれば2つくらい職業を持ったほうがいいんじゃないですか?音楽家であり、何かであり。本当に書きたい曲を書きたいときに提供すればいいんですから。それが本当の芸術なんじゃないでしょうか。僕はそう思います。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也

生中継!X JAPAN LIVE 2017 at the WEMBLEY Arena in LONDON

3月5日(日)午前4:30[WOWOWプライム]※生中継
3月5日(日)よる8:00[WOWOWライブ]※再放送
収録日:2017年3月4日
収録場所:イギリス・ロンドン SSEアリーナ・ウェンブリー

◆X JAPAN オフィシャルサイト
◆X JAPANウェンブリー・アリーナ公演 生中継番組サイト
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