【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.70 「MONOを日本から追っかける!(8)〜Hostess Club Weekender〜」

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コラム内特別企画「MONOを日本から追っかける!」。
ここでの内容の9割はMONOの海外での活動についてであり、情報を逆輸入する形で取り上げていますが、今回は年に1度か2度の日本滞在時の活動を文字通り‘追いかけて'まいりましょう。


日本でMONOを2回も観ることができた2月。
まず、一つ目のライブは12日に開催された『"Requiem For Hell" Release Party - Live In Tokyo -』。冷たい突風が吹き荒れる夜の代官山、UNIT前には開場を待つオーディエンスが列を成していました。
この日、仕事もしますが音楽的英才教育を推奨する母でもある私のバディは2歳の息子。潰される恐れを知らずに前へ行きたがる彼の欲望をどうにか鎮め、最後列で鑑賞。バンドの紅一点である麗しいTAMAKI氏の姿を人の間から3秒くらい目にしたのを除いては、人の山と柱以外何も見えませんでした。
しかしながら、会場限定で発売されたオーストラリア・メルボルンで行われたライブ音源CD化された作品は無事入手できましたし、新譜『Requiem For Hell』を筆頭に、彼らの出す音をリアルに体感できるだけで心は充分チャージ可能、正にノープロブレム。

そして2本目は、2月25日、26日に新木場スタジオコーストで行われた「Hostess Club Weekender」(以下、「HCW」)の初日でした。


2012年から開催されてきた「HCW」は、良質な洋楽を紹介すると謳う主催者・ホステスの言葉通り、レーベルに関連する海外アーティストのみで構成され、日本のアーティスト出演は一切ありませんでした。しかし、昨年6月に発表されたマグ二フとのパートナーシップによって日本のアーティストとも手を組むようになったホステスが、自社発のパフォーマンスの場である「HCW」に初めて出演させる日本のアーティストとして白羽の矢を立てたのがMONOだったという流れと言えるでしょう。

一方で、自ら書いていながらおかしな話ですが、MONOのメンバーが日本人であるというだけでMONOを‘日本のアーティスト'と表現することに強烈な違和感を感じますし、音楽を語る時にそのミュージシャンの国籍などはどうでもいいこと。今回は、たまたまMONOが日本のアーティストだったというだけで、重要なポイントは「良い音楽かどうか」。とりわけ「HCW」は‘外れなし'で有名なイベントですから、MONOに続く今後の日本アーティスト出演者には注目が集まることでしょう。


さて、肝心のライブはと言いますと、ベートーヴェンの「月光」が流れる厳かな雰囲気となったステージへメンバーが登場し、闇を切り裂くように奏でられた「Ashes in the Snow」で一気にMONOの世界へと誘われ、耳を懲らせば轟音の中に存在する美しくも儚いメロディが心に響き届く彼らの申し子たちが、現行のワールドツアー内容と大きく変わることなく披露されました。
「Pure As Snow」の最後の音が消える時、静寂が意志によって生み出されるその瞬間などにはいつものことながらゾクっとさせられ、アルバム・リードトラックの「Requiem for Hell」では、地獄の苦しみや痛み、悲しみの渦の中から何度も這い出ようとして最後にようやくギリギリ解放されたかのような錯覚を味わい、こちらもまた違った意味でのゾクゾク感を得たのでした。
また、この日は放たれた音の粒が一際くっきりと美しく聴こえたため音響の良さにも意識が傾きましたが、それに比例するかのように、身体を揺らす人やステージに向かって行く人が続出していたのが印象的でしたね。

こんなにもエロティックで繊細で、時には鋼鉄のように重厚で鋭くもある、悲哀や痛みが切実に描かれる混沌の中に、美しい光が存在するという複雑の極みとも言えるMONOの音楽の良さを、どのように言語化して伝えればよいのかと毎回頭を悩ませますが、やはりライブを体感することが一番の方法だと思われます。動画では伝わらないものがたくさんあります。どうか足を運んで、苦痛ではない轟音での快楽をご自身で確かめて欲しいです。




次にMONOのライブが観られるのは、4月9日(日)に東京・渋谷にある4つのライブハウスで開催される、envy、MONO、downyらアーティスト発信型の音楽フェスティバル「AFTER HOURS」。この志の高い日本のアーティストが集結する音楽フェスのチケットは完売間近とのことですので、興味のある方はお早めにチェックを!


文:早乙女‘dorami'ゆうこ
写真:古渓一道、After Hours

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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