【ライブレポート】スティーヴン・タイラー、大きな愛を共有している心地にさせる圧巻のソロ・ライブ@ロサンゼルス

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4月にソロとしてキャリア初となるジャパン・ツアーが決定しているエアロスミスのフロントマン、スティーヴン・タイラー。ソロとして、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、いまから楽しみがつのる。その来日公演の予習として、スティーヴン・タイラーがロサンゼルスで行ったソロライブの模様を改めてお知らせしておこう。これを読んで、来日公演に期待を膨らませてほしい。

◆スティーヴン・タイラー~画像~

スティーヴン・タイラーの初のソロ・アルバム『サムバディ・フロム・サムウェア』と、初の全米ソロ・ツアー<…アウト・オン・ア・リム>。この2つが起こった2016年は、ロック史上において記念碑的な年であったと思う。エアロスミスのフロントマンとして半世紀近く歌い続けてきた彼は、『SPACE BATTLESHIPヤマト』の主題歌「ラヴ・リヴズ」と、もう一曲のソロ「(It) Feels So Good」以外は本格的にソロ活動に乗り出したことがなかった。

だが、2011年に米国のスター誕生番組『アメリカン・アイドル』の審査員になって以来、子供達にも人気のセレブになった彼にとって、ソロに挑戦するにはこれ以上ないほどの好機を迎えていた。そして彼は、このソロ・アルバムのリリース前に、エアロスミスが2017年からフェアウェル・ツアーに乗り出すことを発表(何年続くかは彼ら次第)。だが、スティーヴンがエアロスミスでの活動に見切りをつけたためにソロを始めたのではないことは、この夜のライヴを観てはっきりと分かった。彼の溢れんばかりのエアロスミスへの愛情が、終始ほとばしるステージであった。

『サムバディ・フロム・サムウェア』は、テネシー州ナッシュヴィルでレコーディングされたカントリー寄りのアルバムで、カントリー・チャートで初登場1位を獲得した。ツアーでは、このアルバムの曲をレコーディングしたザ・ラヴィング・メアリー・バンドを従えている。ステージ・セットはナッシュヴィルの街の一角のような雰囲気だ。客電が落ち、大スクリーンに過去のスティーヴンの映像が走馬灯のように流れる。そして短冊のようなスカーフをたらしたマイクスタンドを手に、白いパンツにカラフルなシャツと革のベストという粋なスタイルのスティーヴンが登場。20代から彼の世代まで、3世代近くに渡る幅広い層の観客は、一斉に総立ちになって大歓声をあげた。


日本公演の楽しみを損なわないようにセットリストの全てを掲載するのは控えるが、ソロ・アルバムを主に披露するショウではなく、『サムバディ・フロム・サムウェア』のサウンドとバンドで一貫性を持たせながらも、エアロスミスのキャリアのほぼ全てのヒット曲を網羅し、エアロスミス以前の彼の人生も知ることができるカバー曲を盛り込んで、ロックスター中のロックスターの人となりを過去最高に感じられる素晴らしいショウになっていた。

初期の名曲「スイート・エモーション」で幕を開け、1993年に大ヒットしたバラード、「クライン」に続いた出だしから観客は大合唱。バンジョーやチェロ、女性バックボーカルと、エアロスミスのハードなロックにはないアレンジが施されているが、68歳(3月26日に69歳)のスティーヴンのハイトーン・ヴォーカルは相変わらずエッジが効いていて、人間とは思えぬ鮮やかさ。艶があり、燃え盛る炎のような熱があり、彼の年齢を超えた渋みと深みをたたえている。

ファースト・シングルの「ラヴ・イズ・ユア・ネイム」を始めとするソロ・アルバムからの曲は、エアロスミスの代表曲の数々の狭間に自然にブレンドされていた。ブルースやファンクのみならず、カントリーの牧歌的な雰囲気にも、スティーヴンの声は実によくフィットする。エアロスミスとしてはポップすぎるとみなされたであろう彼の新境地が、陽気なカントリー調の「アイ・メイク・マイ・オウン・サンシャイン」では見事に開花している。ジャニス・ジョプリンの「心のかけら」のカバーもアルバムには収録されているが、彼は「ベンツが欲しい」のアカペラを歌ってから、この曲を歌い上げた。

ソロだから聴くことのできる貴重な曲のパフォーマンスに加えて、彼はエアロスミスのステージでは聴いたことのなかったような思い出話を曲間に挟んだ。饒舌な語りも、このショウをさらに貴重なものにしていた。ジャニスのカバーの前には、60年代半ばに彼女の曲をラジオで聴いて、「彼女のようになりたい」と思ったことを語り、フリート・ウッド・マックの「がらがらへび」のカバーでは、「ある日、俺の“兄弟”ジョー・ペリーに、彼の“ジョー・ペリー・ジャム・バンド”を見に来いって誘われたんだよ」と話し始め、彼らがこの曲を演奏した瞬間、「俺がジュリアード卒の親父から学んだ音楽にこいつのロックンロールを融合して、俺が歌ったら凄いもんになる」と思ったと明かした。

ショウの締めの2曲とアンコールの4曲は、ソロ・アルバムのタイトル曲の他は「ウォーク・ディス・ウェイ」や「ドリーム・オン」、「ジェニーズ・ゴット・ア・ガン」といったクラシック曲の連打で、最高潮の盛り上がりの中、約1時間半のショウは幕を閉じた。オープニング曲を歌い始める前に、スティーヴンは、「俺達はみんな、音楽と愛し合ってるんだ。それを今夜、みんながここで聴くことになるぜ」と宣言した。その誓い通り、スティーヴン・タイラーという男の音楽によって、全員が大きな愛を共有しているような心地になる見事なステージだった。昨年の全米ツアーを終えてバンドとの結束もより強くなったであろう今年、日本でこのショウを見られるファンは恵まれていると思う。スティーヴンにとって、個人的に大変だった時期にも熱心に応援を続けたファンが大勢いる日本は、特別な思い入れのある国の一つ。この夜以上に感動的なショウを生み出してくれることだろう。
(2016年7月5日 ロサンゼルス、ドルビーシアター)

取材・文●鈴木美穂


ライブ・イベント情報

<Steven Tyler LIVE IN JAPAN 2017>
モンスターバンド「エアロスミス」のフロントマン=スティーヴン・タイラー、ソロとしてキャリア初となる奇跡のジャパン・ツアー。
大阪公演2017年4月8日(土)Zepp Osaka Bayside
東京公演2017年4月11日(火)日本武道館

リリース情報

『サムバディ・フロム・サムウェア (デラックス)』
2017.03.24発売
UICU-1285 \3,672
1 マイ・オウン・ワースト・エネミー
2 サムバディ・フロム・サムウェア
3 ホールド・オン(ウォント・レット・ゴー)
4 イット・エイント・イージー
5 ラヴ・イズ・ユア・ネーム
6 アイ・メイク・マイ・オウン・サンシャイン
7 ジプシー・ガール
8 サムバディ・ニュー
9 オンリー・ヘヴン
10 ザ・グッド、ザ・バッド、ジ・アグリー&ミー
11 レット、ホワイト&ユー
12 スウィート・ルイジアナ
13 ホワット・アム・アイ・ドゥーイン・ライト?
14 ジェイニーズ・ガット・ア・ガン
15 心のカケラ(with ザ・ラヴィング・メアリー・バンド)
DVD
1 ラヴ・イズ・ユア・ネーム(From the TV Music Series“Front and Center”)
2 クライン(From the TV Music Series“Front and Center”)
3 心のカケラ(From the TV Music Series“Front and Center”)
4 ラヴ・イズ・ユア・ネーム(ミュージック・ビデオ)


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