【インタビュー】あいくれ、凝ったアレンジで洗練感と抒情性を聴かせる『アンシャンテの手紙』で全国デビュー

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独自のエモーションを備えたバンドとしてインディーズ・シーンで大きな注目を集めていたあいくれが、1stミニ・アルバム『アンシャンテの手紙』のリリースで全国デビューを果たすこととなった。力強さと繊細さ、鋭さと柔らかみ、洗練感と抒情性といった様々な要素を融和させて深みのある世界観を創出する彼らの手腕は、同作でも遺憾なく発揮されている。注目作といえる『アンシャンテの手紙』を軸にしつつ、彼らの素顔に迫ったインタビューをお届けしよう。

◆あいくれ~画像&映像~

■“アンシャンテ”という言葉は“はじめまして”という意味なんです
■“これが私達の音楽です”と伝わる作品にしたいなと思って作りました


――まずはバンド・プロフィールを、お願いします。

ゆきみ:あいくれは、元々高校の同級生で組んだバンドです。私達はみんな高校1年生の時から軽音楽部に入部していて、私が一緒にバンドをやりたいと思ったギタリストの小唄君と、ドラマーのこめたに君を誘ったんです。最初はベースもいて、4人編成であいくれを始めました。

――メンバーに声をかけた時点で、どんな音楽をやるかも決めていましたか?

ゆきみ:いえ、こういう音楽をやりたいというヴィジョンはなくて。そういうことよりも、ギタリストとして、ドラマーとして魅力を感じた人と一緒にバンドを組みたいという気持ちが先に立っていましたね。バンドを結成した後に、それぞれの好きな音楽やルーツを知って、それからバンドの方向性が見えていったという感じです。


――特定のバンドやアーティストなどのコピーバンドから始まったパターンではないんですね。では、それぞれの音楽的なルーツは?

ゆきみ:私は4才の時からクラシック・ピアノをやっていて、音楽大学に通っていたんです。それくらい自分にはクラシックというものが根づいています。そういうバックボーンがありつつ、J-POPとかも聴くようになって。シンガーとして一番影響を受けているのは、多分YUKIさんですね。YUKIさんのマネをしようという意識はないので、そう言うと意外に思われることが多いんですけど。でも、YUKIさんはシンガーとしても、存在としても、本当に尊敬しています。

こめたに:僕は小学生の頃にMr.Childrenさんを聴いたことがきっかけになって、音楽に目覚めました。そこからバンドもやりたいと思うようになって、軽音学部のある高校に入って、このバンドを組みました。それと並行して、高2くらいの頃から立川のライブハウスに足繁く通うようになったんです。その店で地元の先輩がやっているハードコアのバンドに出会って、すごく感動したんですよね。それで、バンド・スタッフになって、遠征に付いて行ったりするようになって。その影響で、高校の頃はちょっとシブめのハードコアとかを聴いたりしていました。その後オーバーグランドの音楽も好きになって、最近は原点回帰する感じで、小学生の頃に好きだった歌物のバンドさんとかも聴いています。

小唄:僕は小学校の頃からこの歳になるまで、もうYUIさんをずっと聴いていまして。ギターを弾くようになったのもYUIさんの影響だし、コードとかギターの弾き方とかも全部YUIさんから教わりました。あいくれの曲でも、YUIさんで知ったコードを結構使っています。そんな風に、とにかくYUIさんが大好きです(笑)。

――皆さん自身のルーツやリスペクトを、良い形であいくれで活かしていることを感じます。では、3月22日にリリースされる1stミニ・アルバム『アンシャンテの手紙』は、どんな構想のもとに作られた作品でしょう?

ゆきみ:タイトルにもなっている“アンシャンテ”という言葉は、“はじめまして”という意味なんです。その“はじめまして”ということが、大きなテーマとしてありました。今回の作品はあいくれとして初の全国流通音源ということで、全国のCDショップとかに置いてもらえることになって、このタイミングであいくれを知ってくれる人も多いと思うんです。そういう人に対して、“これが私達の音楽です”ということが伝わる作品にしたいなと思って作りました。

こめたに:そういうテーマだったので、出来るだけ自分達のいろんな面を知って欲しいという想いがあって、テイストが違う5曲を入れたんです。同じような曲が並んでいる作品は、つまらないというのもあったし。『アンシャンテの手紙』に入っている曲は、どれも気に入っています。そういう中で特に印象の強い曲をあげるとしたら、1曲目の「ノンフィクションドラマ」ですね。ゆきみも言ったように、今回の音源は初めての全国流通ということで、自分達の中ではここからやっとスタートだという感覚があって。「ノンフィクションドラマ」は曲調的にも、歌詞的にも、“ここから始めよう!”という気持ちを感じ取ってもらえると思うんです。そういうところで、1曲目はこれしかないなと思っていたし、楽曲自体もすごく好きです。

ゆきみ:私は『アンシャンテの手紙』の中で特に気に入ってる曲は、どれだろう? うーん……。今回の5曲は、本当に全部すごく好きなんですよ。だから、1曲だけあげるのは難しいですね。全曲じっくり聴いて欲しいです。

小唄:5曲ともカラーが違うしね。でも、強いて推し曲をあげるとしたら、僕も「ノンフィクションドラマ」です。一番何も考えずにアレンジ出来た曲だなというのがあって。自然体でアレンジしたけど、ダイナミクスが効いていて、ドラマチックさもあって、良い感じに仕上がったなと思って。この曲は、ぜひ聴いて欲しいです。

――「ノンフィクションドラマ」もそうですが、凝ったアレンジを活かしていることは、あいくれの特徴の一つになっています。スピーディーに場面が変わりますし、Aメロ→Bメロ→サビの繰り返しではないフォーマットの曲も結構あるでしょう?

こめたに:構成に関しては僕が仕切ることが多いんですけど、それこそAメロ→Bメロ→サビ、Aメロ→Bメロ→サビという構成はつまらないなと感じてしまって。それで、イレギュラーな構成にすることが多いですね。

ゆきみ:その結果、Aメロが1回しか出てこない曲とかもあるんですけど(笑)。

こめたに:そう(笑)。前回自主制作した音源とかは、逆にほとんどAメロみたいな曲があったりしたんです。だから、構成に関しては、僕らはかなり柔軟だと思います。

――ソリッドなアップテンポの「リビルド」の中間にワルツ・パートを入れ込んだりしていることが印象的です。

こめたに:「リビルド」は、僕がとんでもないものにしようと思って作りました。ちょっと暗い感じだけどアッパーな曲調で、ただアッパーなだけじゃつまらないなと思って、途中に3拍子のパートを入れることにしたんです。

ゆきみ:この曲は、途中で変拍子も出てくるしね。

こめたに&小唄:そうそう。

――アイディアもさることながら、違和感なくアレンジしているのはさすがです。

ゆきみ:それは、ここに無理やり変拍子を突っ込んでやろうとか、急に3拍子にしてビックリさせようというような意図でやっていないことが大きい気がしますね。私達は“こう行ったら面白いよね、気持ち良いよね”みたいな自然な感覚を活かしてアレンジすることが多いんです。だから、違和感がないんだと思います。

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