【ライブレポート】the GazettE、咲き誇る“大日本異端芸者”の夜。「まだまだ未来に夢を見続けています」

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2017年3月10日。<大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」>。国立代々木競技場第一体育館で、the GazettEがファンに贈ったその時間は、とてもノスタルジックなものだった。

◆the GazettE <大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」>ライヴ写真

会場内の照明すべてが落とされた真っ暗な空間に、美しく桜が舞い散った──。
うっすらと光を放ち始めた照明に照らされた桜の花びらたちは、不気味な影を宿しながら客席へと舞い降りた。天を仰ぎ、桜を浴びるオーディエンス。いよいよ、彼らが集まったファンたちに贈る15年目の幕が開いた。和太鼓の音が響きわたり、ステージの両脇には“大日本異端芸者”、“暴動区 愚鈍の桜”の文字が刻まれた緞帳が誇らしげに掲げられた。と、その瞬間。バンド初期を思わせる揃いの真っ白な衣装に身を包んだ5人が、ステージ上段に姿を表したのである。


1曲目は「貴女ノ為ノ此ノ命。」。オーディエンスは、麗が響かせたイントロのギターフレーズで、どうやら即座にその曲が何であるかを察し、この特別な夜の方向性を一瞬のうちに理解していた様だった。それほどまでに、この曲が1曲目を飾るライヴは珍しいことである。今回のライヴは、事前にファンたちから“やってほしい曲”を投票するアンケートを取り、それを参考に構成していくと公言していたこともあり、the GazettEの15年をなぞる内容になるであろうことは予測されてはいたのだが、アンケートなどでファンたちからの意見を集めた場合、往々にしてそこを“なんとなくの目安”とすることが多い。それは、やはりライヴとしての美しい流れを考えた場合、致し方ないことであるのと、その時のバンド側のテンションとして“今、1番魅せたい自分たちのスタイル”を優先すると、なかなかリクエストどおりにはいかないものである。

しかし。今回、彼らが選んだ周年ライヴの形は、リクエストのほぼ上位でセットリストが組まれていたという、完全に振り切ったライヴであったのだ。セットリストを実際に組んだのはRUKIだと言うが、メンバーすらも“この曲やるの!?”と驚きを隠せなかったほど、封印に近い状態だった楽曲も敢えて選曲してライヴに望んだのである。「舐〜zetsu〜」、「十四歳のナイフ」「センチメンタルな鬼ごっこ」と間髪入れずに投下されていく過去曲たちに、オーディエンスは曲の始まりと共に感涙の声を上げた。


「貴女ノ為ノ此ノ命。」、REITAのベースソロが印象的な「十四歳のナイフ」などの、邦楽ならではの独特な個性と言える歌謡曲テイストのメロを宿す過去曲も、今の彼らのスキルが加わることで奥行きを増していた。当時のシーンの流行を感じさせる「センチメンタルな鬼ごっこ」に至っては、「赤いワンピース」同様に初期も初期、彼らの始まりの音でもあるが、「赤いワンピース」ほどライヴでの登場率が高くない曲とあり、オーディエンスはその選曲に驚きを隠せなかったようだ。当時のとおり、真っ赤な拡声器を持ち、声色を変えてシニカルに歌うRUKIの姿がとても印象的だった。

「今日は祭りだからよ! ここに居る全員で盛り上げていくぞ、いいか! 俺らが何処までも引っ張ってってやるからよ! 気合い入れてかかって来いよ!」と煽るRUKI。その言葉は、オーディエンスに投げられたものであったが、それと同時に、己を掻き立てる言葉でもあったように思えた。“もうないでしょうね、この先こんなライヴは(笑)”と、ライヴ前のインタビューで語っていた言葉を思い出した。この先、アンコールなどで何曲か現在の曲の流れの中に取り入れることはあっても、ここまでイキきったセットリストでライヴをするのは、きっとこの日だけ。そんな、とことん腹をくくって真っ向から過去の自分たちに向き合おうとする、彼らの周年魂を素晴らしく思った。誇り高くある為の弁解も反論も偽りもない時間。この日の彼らには、そんな力強さが宿っていたように思う。煽りから繋げられた「Back drop Junkie[nancy]」や「蜷局」や、アカペラで始まった「Last bouquet」では、悲鳴にも似た声が客席から上がっていた。

しかしながら、とても厳しい目線で言葉を選ばずに書かせてもらうとするならば、やはり、初期の楽曲たちは発展途上段階であったことから、現在の彼らの作曲スキルと比べると明らかに劣っていることもあり、現在の演奏力をもって挑んでも、曲によっては“そこ”に引っ張られてしまい、現在のthe GazettEの色とスキルが100%出せていないと感じさせられた部分もあったのだが、そここそ “若気の至り”的な勢いに完全に立ち返ることが出来ない、むしろ成長したが故のハンディであると感じた。そんな自身の過去の初々しさを、今の彼らがなぞるのも、やはり誇り高き時間。この時代無くして今のthe GazettEは居ない。そう思うと、放たれる音の1音1音が、そして、歌われる歌詞の1言1言がとても尊く、愛おしかった。

そして同時に、例え彼らが“そこ”に止まっていたとしても、今のthe GazettEは居なかったであろうことを痛感させられた。彼らは自らの音楽性を大きく磨き上げ、ヴィジュアル面も含め、憧れや複写や焼き直しではない、自らが切り開いて作り上げた自分たちだけの個性を作り上げてきたからこそ、今こうしてこの規模で15周年を迎えることが出来たのである。それだけ彼らはこの15年という歳月の中で、しっかりとthe GazettEという個性を磨き上げてきたのである。誰にでも出来ることではない。故に、彼らは積み重ねてきた努力ももちろん、潜在的に潜んでいた天才的感性を実らせた選ばれた存在なのである。


イントロとアウトロの葵のギターアプローチに客席が沸く「Sugar Pain」や、RUKIがギターを持って歌いあげる、美しくも切ない旋律の「Cassis」らは、見事に今のthe GazettEの音として表現出来ており、彼らの成長と共に楽曲も成長していたのが解った。

「よう! 楽しんでるか!? 今日さ、なんかいつもと違う曲ばかりやってるけど、オマエ等、ノリがわからねぇんだろ? 思い出そうとしてる間にどんどん先に進んでいっちゃうから、どうせついて行けてないんだろ? おう、いいか! 頭使ってんじゃねぇよ! いつものオマエ等らしくないんじゃないの? まだまだぶち込んじゃうよ! まだまだ声がちいせぇよ! もっと突っこんで来いよ! 派手にやろうぜ!」──RUKI

フロアには“当時”を知らないファンたちも居たことだろう。たしかに、RUKIの言うとおり、曲によっては盛り上がっているところと、昔のノリに着いていけずただただ聴き入るオーディエンスも見受けられた。そんな最近からのファンにとっては、もう遡って見ることが出来なくなった過去をここまで曝け出してくれたライヴは、とても貴重な時間であったに違いない。


後半ブロックで届けられたREITAのベースのアタック感が印象的な「COCKROACH」では、現在のthe GazettEに出逢えた瞬間であった。フロアのノリもここまでと違い、素晴らしき地獄絵図をそこに描き出していたのだった。間髪入れず、戒のフロアタムを軸とした低く重めのドラミングから繋がれた「ワイフ」も、ハイスピードで畳み掛けられる「Ruder」も、現在のthe GazettEの演奏力によって、重厚感のあるヘヴィサウンドに生まれ変わっていた。「Ruder」の始まりではボーカル台にRUKIと麗が寄り添い、切れ味の鋭いギターフレーズで曲をスタートさせオーディエンスを煽りまくった5人。ギターソロではボーカル台で美しいツインギターパフォーマンスも魅せてくれた。ここで葵が麗にキスし、会場の熱気に拍車をかけたのだった。

「関東土下座組合」で締めくくられた本編そのものがアンコールのような選曲であったことから、アンコールはどのような攻め方をしてくるのかと思いきや、「泥だらけの青春」「赤いワンピース」「「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」」さらには「☆BEST FRIENDS☆」と「LINDA~candydive Pinky heaven~」で、オーディエンスの“聴きたかった曲たち”に徹底的に応える形で盛り上げたのだった。
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