【対談】デストロイはるきち(ミソッカス)×柴田隆浩(忘れらんねえよ)、「テンプレがハマるバンドじゃなかった(笑)」

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■お客さんはバカじゃないから、嫌々やっていたらすぐわかる――柴田隆浩

――ライブに来るお客さんにどう楽しんでもらいたい、などのイメージはお持ちですか?

はるきち:ちょっと前までは「お客さんをどう楽しませようかな?」という感覚だったんですけど、いまはあまりそういうことを考えずに、今回の<東京都心ミソ化計画>では「柴田さんをどうぶちのめすか」を考えたほうが結果的にお客さんも喜んでくれるものになると思う。ツーマンならではの面白いバトルを見せられればお客さんも楽しんでもらえるかなと。

柴田:曲を作ること、音源を作ることは本当に純粋で神聖なことで、それは自分から出てくるものだけを信じたほうがいいと思うんだけど、ライブはショー的なものでもあるし表現の場でもあるから、扱いが難しくて。俺は「どうぶちのめすか」と「お客さんを楽しませたい」のバランスをうまくとっていくのがいいのかなといまは思ってます。自分たちのやりたいことをやっているだけかのような大先輩たちのライブを観たときに、やっぱりお客さんのことを考えてるように見えたんですよね。お客さんに見せたい自分をちゃんと狙って見せている。俺にはそんなふうに見えて。

はるきち:へええ。なるほど。

柴田:俺はそういうのが嫌いじゃないのよ。フロアに降りてお客さんのところでビールを一気飲みしたくてバンド始めたわけじゃないけど(笑)、お客さんが喜んでくれるからうれしいし、お客さんも「あれやってくれないかな…」と求めているから、じゃあやりますと。でも一方で最後に「この高鳴りをなんと呼ぶ」を歌うときはお客さんのことなんて一切考えない。お客さんの期待に応えるパートと、自分のエゴを出すパートにわけて考えている。

はるきち:俺らはその境地までまだ行けてないっすね。

柴田:でも俺もこれでいいのかなと思ったりしてるのよ。お客さんの期待に応えるパートに依存しちゃってる部分もあるのかな? って。イベントによってはフロアに降りれないときもあって、そういうときに困る(笑)。本当にいちばんかっこいいのはエゴだけでイケてるのだよね、やっぱり。エレファントカシマシなんてまさにそうだよね。お客さんの期待に応えるパート、そんなにない気がするんです。表現を爆発させて、みんなそれに感動する。でも自分に合うものはいまのところバランスを取るところなのかなって。それが嫌なわけではないし。

はるきち:「嫌じゃない」って大事ですね。

柴田:嫌なことはさすがにやりたくないよね(笑)。お客さんはバカじゃないから、嫌々やっていたらすぐわかる。

はるきち:俺は3年くらい前に「どうしたら売れるのか」ってことをすごく考えていて、その結果全然わからなくなっていて(笑)、お客さんを座らせてジャンプさせたり、小話コーナーを挟んだりいろんなことをしたんですけど、どれもこれもやりたくないし、なんかすべるし!

柴田:やりたくないからすべるし、すべるからやりたくないし(笑)。

はるきち:やりたくないことにはどうしても一生懸命になれないから詰めが甘くなっちゃって。だからいまは自分のエゴをなんとかエンタテインメントに昇華させられたらと思ってますね。最新作の『ダンシングモンスター』はメンバー5人がいちばん楽しめるものを作ったんです。楽しんで音楽をやってないひとがお客さんを楽しませられるわけがないし。だからライブ自体は毎回めっちゃ楽しんでやっています。

柴田:へええ。じゃあ前にツーマンしたときとは全然違うんだろうね。

はるきち:そうですね。あのときは「ここはお客さんのためにこうしたほうがいいんだろうな」と思う部分がいくらか入っているようなライブをしていたので。

柴田:SHELTERで観るの楽しみ。

はるきち:ただ俺ら5人だけ楽しんでる可能性もありますけど(笑)。最近はよく自然に笑顔が出ます。ロックバンドで笑顔が似合うのもどうかと思いますけど、笑いながらつねに心のなかでは「殺す」と思ってたいですね(笑)。

柴田:はははは!

はるきち:自分の人間性をどれだけ音楽を通してお客さんに伝えられるか…ってところかな。

柴田:大先輩ってとにかくすごく人間性を伝えてくるよね。エレカシの宮本さんとか、どんな状況でもライブで全然動じない。太いんだよね、人間が。人間力は大事だよね。だからもっと自分を磨いていけたらと思います。

はるきち:ライブを良くするなら私生活のことを考えたほうがいいのかな? と最近思って。僕は決めたことが全然続かないタイプなんですけど、決めたことを頑張って2週間くらい続けられたときはライブも調子いいんですよ。それで油断してやめたら次のライブが微妙になったりして。だから私生活はライブに出るなって思いました。

柴田:不安に思いながらステージに上がるのと、緊張していても頑張るぞ! と思ってステージに上がるのとでは、全然変わるよね。歌の内容も、声の張りも絶対変わる。

はるきち:特に最近はライブが強いバンド多いですしね、負けてられませんね。

柴田:そうだね。あと、ヒット曲持ってるバンドはやっぱライブでも強いよね(笑)。だからヒット曲作りたい! それがいまのいちばんの目標かな。

はるきち:ヒット曲か…難しいですよね。100万枚とか売り上げがあると、それだけで「いい曲だ」と思われたりもするんだろうし。それはそれで悔しいし。

柴田:そういういろんな悔しい気持ちが消えてないことにはホッとするんだよね。「あ、まだ俺、悔しいって思えてる」って。

はるきち:あー、わかります。それがなくなったら終わりですね。

柴田:その一方で、本当にすげえ曲がバン!と売れたら感動する。竹原ピストルさんとかさ。あれこそ痛快。うらやましいけれど、悔しいとは思わない。野狐禅のころから最高に良いアーティストで、それがいまこうやって勢いがあって。あのひとも声、歌詞、人間力がある。顔から人間力が滲み出ている。俺らもそういうヒット曲、作りたいですね。

はるきち:うちの親からは「いい日旅立ち」みたいな名曲を作るまで音楽をやめるなと言われているので。でも「いい日旅立ち」みたいな曲を僕が歌ってもヒットしないと思いますけど(笑)。

柴田:でもミソッカスがいまこのタイミングで正統派の曲を歌う説得力もある気がするけどな。嘘なくはるきちくんの中から出てきたとしたら、それはアリだと思う。

はるきち:「泥臭い」というキーワードは絶対にハズせないので、たぶん正統派の歌ものができたとしたら、レゲエにすると思います(笑)。初期のころによくレゲエを取り入れてたんですけど、2年くらい前からスタイリッシュなものに憧れて…いまはそれがなくなってきて「やっぱりまたあの泥臭い感じがやりたい」という思いで。

柴田:いまミソッカスにレゲエと聞いて、パッと思いついたのがRADWIMPSの「いいんですか?」だった。あの曲もすごくシンプルな音で、すごくシンプルな言葉で…それでいて超名曲じゃん。ああいうのができたらいいよね。すごくいい気がする。

はるきち:あとは徐々にバンドを汚くしていこうと思っていて、ある一定の汚さに来たらそれまでにできなかったことができるようになるかもしれない。汚いバンド、いなくなりましたからね。

柴田:そうだよね、だからチャンスでもあるよ。代えの効かない唯一無二のバンドは、いける気がする。

はるきち:あぶらだこくらい行きたいですね!(笑)

――そろそろお時間が迫っているのですが、本日の対談はいかがでしたか?

はるきち:柴田さんが何を考えているのかすごく知りたかったので、すごく良かったです。柴田さんが名古屋に来たとき、一緒にご飯でも行きましょう。Twitter見ていて柴田さんが名古屋にいるなと思ったら電話するかもしれない。

柴田:ぜひぜひ。連絡してください。それでイケてるバンドみたいに一緒に写真を撮って、Twitterにアップしましょう(笑)。

はるきち:あははは!

取材・文◎沖 さやこ


<ミソッカス3ヶ月連続2MAN 東京都心ミソ化計画 >

5月25日(木)w/忘れらんねえよ
場所:下北沢SHELTER
時間:開場 18:30/開演 19:00
チケット:Adv:¥2,500/Drink別

<2ndフルアルバムリリースツアー ミソパニッククーデター~ダンシングモンスターたちに会いに行くツアー~>

※既に終了した公演は割愛5月4日(木・祝)岡山CRAZY MAMA 2nd Room
5月5日(金・祝)福岡Queblick
5月13日(土)稲毛K's Dream
5月14日(日)北浦和KYARA
5月20日(土)music zoo KOBE 太陽と虎
5月21日(日)広島Cave-be

ファイナルシリーズ
6月17日(土)心斎橋Music Club JANUS [ワンマン]
7月1日(土)TSUTAYA O-Crest [ワンマン]
7月9日(日)名古屋 CLUB QUATTRO  [ワンマン]

◆ミソッカス オフィシャルサイト
◆忘れらんねえよ オフィシャルサイト
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