【レポート】POLYSICS、トークライブ<DAY1 -トイス前夜->「改めて、歴史があるなぁ」

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3月4日にバンド結成20周年を迎えたPOLYSICSが、3月31日から4月2日までの3日間、東京・下北沢にあるカフェ/ライブスペース風知空知で、バンド史をトークで振り返るイベント<20周年特別企画 All Time POLYSICS!!! トークライブ OR DIE!!!>を開催した。

◆POLYSICS 画像

いずれの日も、とてもディープかつレアなトークに加えて、趣向を凝らしたスペシャルな企画が用意された、濃密かつ濃厚な3日間。その各日の様子を3回に分けて紹介。まずは、初日となる<DAY1〜トイス前夜〜>のレポートをお届けしよう。

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会場となった風知空知は、ソファ席あり、カウンター席あり、オープンスペース席ありの、アコースティックライブやトークライブを楽しみながら、お酒や食事が楽しめる空間。フード類のメニューも充実している。そんな風知空知を、3日間、POLYSICSが完全ジャック。

お店に向かうエレベーターを降りると、すぐ正面には、20周年記念ライブ時にファンからのメッセージが寄せ書きされたフラッグがあり、それを背にした、POLYSICSの代名詞でもあるツナギとバイザーをまとったマネキンがお出迎え。店内は、懐かしいポスターやライブ写真で埋め尽くされており、そんな中で味わえるフードやドリンクも、すべてこのイベントのために用意された完全限定オリジナルメニュー。店内スタッフもツナギを着用するなど、まさに、風知空知が“POLYカフェ&ギャラリー”と化した3日間だった。




そして、予定時刻の19時を少し回ったところで、ハヤシ、フミ、ヤノが登場。先の20周年記念ライブでも、歴代衣装の早着替えが大きな話題となったが、この日も、まずは衣装でファンをアッと言わせる。ハヤシはインディーズ時代に着ていた赤いツナギと通称“乳首帽”を被り、フミはアルバム『A・D・S・R・M!』期の白のツナギに、当時ハヤシが手作りしたというバイザー、そしてヤノは『National P』期の黒ツナギ&バイザー姿で、立ち見を含め、所狭しと集った約70名のファンから歓声が沸き上がった。

ハヤシ:トイス! ようこそ。今回は20周年ということで、普段とは違った形で、トークと、映像と、音で20年を振り返ろうというね、企画なんです……ね。はい。
フミ:大丈夫ですかぁ(笑)?
ハヤシ:まだね、どういうキャラで行こうか掴みかねてる(笑)。
フミ:いつも通りでいいんだよ(笑)。
ハヤシ:アハハハ(笑)。

といった会話が繰り広げられ、いつものライブとはまったく違うアットホームな雰囲気で、スペシャルなトークライブは幕を開けた。


<トイス前夜>と銘打たれたDAY1は、バンドが結成された1997年から、ヤノ加入前の2003年までをフィーチャー。そのクライマックスは、いきなり冒頭から訪れた。ハヤシが高校時代に結成した、POLYSICSの前身バンド“リズムミンチ”のライブ写真がスクリーンに映し出されたのだった。

「リズムミンチの、たぶん5回目くらいのライブ。当時のギターは、“シャーベル”っていう、ハードロックの人が使うようなギターなんだけど、平沢進さん(P-MODEL)が使っていたTALBOギター風にしたくて、カッティングシートを貼って、自分で作ったんだよね(笑)」と語るハヤシに、「衣装はこれ、中田商店(上野にあるミリタリーショップ)でしょ?」とフミが補足。「そうそう。「軍服って、ちょっとYMOっぽくない!?」って、上下で1500円くらいで買ったんですよ(笑)」と答えて笑いを誘う。

ドラムレスで、シーケンス(同期)を使ってライブを行っていた「リズムミンチ」は、受験期を迎えて活動を休止。そこでハヤシが新たに結成したバンドがPOLYSICSであり、そのデビューとなる1997年3月4日、新宿JAMでの初ライブの写真も披露された。以下、そのトークを。


ハヤシ:POLYSICSの初ライブ! “ニュウェーヴバンドあるある”でね、水中メガネとガスマスクは、ライブでやりたかったんだよね(笑)。あっ、今思い出した。衣装は、実家(クリーニング店経営)の制服だ。
ヤノ:ギターが渋いっすね。
ハヤシ:グレッチのテネシアン。憧れていたんだよね。
フミ:全然ニューウェーヴじゃないじゃん(笑)!
ハヤシ:ロカビリーだよね(笑)。でも、そこもニューウェーヴ魂でね、「人とは違う、オレはコレだ!」と思って、このギターを使っていたんだよ。そして、2回目のライブで、今日の赤のツナギに変えたんだよね。

この2枚の写真だけで、楽に2時間は続きそうな勢いでトークが進んでいく。その盛り上がりをさらにヒートアップさせたのは、写真でも紹介されたPOLYSICS初ライブ、そして第2回目、第3回目ライブのお宝映像だ。初ライブで、POLYSICSの代表曲「Buggie Technica」が既に演奏されていることにも驚かされるが、その映像には、今やこの曲のサビでお決まりとなっている、手を高々とかかげるポーズが偶発的に生まれる“歴史的瞬間”も映し出された。

その後、キーボードが脱退したことで、1998年、高校時代にハヤシの軽音楽部仲間だったカヨが加入。すぐにでもライブをしたかったハヤシは、ひな祭りの日に新宿JAMで開催された女子限定ライブに、女装をしたうえで、バンド名も“POLYSICS子”として出演を懇願。OKを勝ち得たというエピソードに、場内からは笑いと拍手が起こる。


そして、POLYSICS初ライブ時の対バン相手で、「キミたち面白いねって、その日のライブも最前列で見てくれてた」(ハヤシ)というスガイを誘い、1999年、DECKREC RECORDSからインディーズデビューをした経緯が紹介されると、続いて話は、フミがサポートで参加したインディーズ2nd『A・D・S・R・M!』期へ。この時期の最大の出来事と言えば、メジャーデビュー前に出演した、1999年のフジロックだ。

「バンドが新体制になって、どう見せていこうか、まだ確信が持てていない時期で。この時のフジロックは、ほぼPOLYSICSを初めて観るというお客さんばかりだったんだよね。でもそれが、砂ぼこりが舞うくらいに盛り上がって、これで「よし!」って思えたんです」──ハヤシ

そして2000年、アルバム『NEU』でメジャーデビューを果たすことになるが、その制作は、合宿レコーディング形式で行われたのだそうだ。

「当時、チープなテクノポップ・バンドみたいに見られるのがすごく嫌で、とにかく、今あるアイデアを全部、念を込めて音にして、衝動で曲を作ろうと言って。それで、作る曲をホワイトボードに書き出していったのを、今でもすごく覚えてる」──ハヤシ

その後のツアーのステージでも、「やりたいアイデアはやりまくろう」(ハヤシ)はキーワード。スガイがローラーブレードで登場したり、アンコールの「AT-AT」で、ハヤシ以外の3人が全員ウッドベースをプレイするなど、奇想天外なパフォーマンスもどんどん取り入れていったそうだ(フミ曰く「でも、誰一人ウッドベースを弾けなくて、キメでウッドベースを回すだけだった(笑)」とのこと)。



そうした話の合間にも、宣伝用アーティスト写真のバージョン違いなどを披露しつつ、2001年に新しい挑戦としてポップな尖がり方を模索して作った『ENO』の話題や、「ドモアリガトミスターロボット」のミュージックビデオに登場したロボットは、本家本元の東映“スーパー戦隊シリーズ”チームに作ってもらったという話、その流れで『National P』期のバイザーも同チームに製作してもらったという数々のエピソードを披露。

また、2003年にリリースされた『National P』は、アメリカ在住のプロデューサー/エンジニアのアレックス・ニューポートから直接、「POLYSICSと一緒にやりたい」とメールが届いたことで、初めてのUSレコーディングが実現したことなどが語られ、そこから、アメリカ盤『NEU』のリリース、2000年の初USライブの話へとつながり、2004年、ヤノが加入する直前の話題で、DAY1のトーク第一部が締め括られた。

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約20分の休憩を挟んでの行われた第二部は、観客からの質問コーナー。事前に寄せられた質問をメンバー3人がチョイスし、質問者には展示されていた写真パネルがプレゼントされるといったサプライズもあった。そのQ&Aを簡単に紹介しよう。

【質問1】命の危険を感じたライブは?
ハヤシ:京都磔磔での感電。あれは、マジで死ぬかと思った。
フミ:2002年の<ROCK IN JAPAN FESTIVAL>。『FOR YOUNG ELECTRIC POP』の衣装で、本番後、楽屋に戻った際に暑さで倒れた時ですね。
ヤノ:2004年のイギリス・ブライトン公演は、広い会場だったけど、空調が全然効かない感じであまりの暑さで、もう目の前が“水”でした。
ハヤシ:えっ、目の前が水!? それって、三途の川?
フミ:でも、イギリスだから、サンズリバーでしょ(笑)?

【質問2】理想のデートコースと、そこで聴きたい曲は?
ハヤシ:東急ハンズとかで、「紙ヤスリって、こんな種類あるの?」とか、面白くない? 曲はミニストリー「Twitch」。インダストリアルな“ドッ、カッ、ドッ、ドッカッ!”って感じの曲(場内爆笑)。
ヤノ:そうだなぁ、「行きたいところに行くよ」って、相手に任せちゃうかも。
フミ:私は、ポマードとか付けてそうな年下の男の子に「行きたいとこあるんすよ」「じゃあ付き合うよ」って感じで、ドライブに連れてってもらいたいかな。BGMは、じゃあSuchmosで。

【質問3】メジャーデビュー当時の雑誌企画「見切れてスマンス」連載、正直ツラくなかった?
ハヤシ:この連載、たとえば『笑っていいとも』のオープニングで手を振ったりして、テレビ画面に見切れて映るっていう企画で。でも、どの現場も、番組スタッフがめちゃくちゃ厳しくて、そのプレッシャーに耐えられずに「もう無理、帰る!」と現場を放棄したら、その後ろ姿がバッチリ見切れて映ったっていうミラクルが起きた(笑)。でも本当に、これは大変でしたね。

【質問4】メンバー以外、誰に誘われたらバンドを組んでみたい?
ハヤシ:中尾憲太郎(ex.ナンバーガール)がベース、オレがギターで、打ち込みドラムが“ダダダダダダダダッツ!”って鳴ってて、ずっと頭を振っているようなバンドをやりたいね(笑)。
ヤノ:僕は、同期のない、ゆったりした歌モノとかやってみたいかも。
フミ:私は、ピコピコしてないやつかな。ラモーンズみたいな。でも誰かとなると……難しい。パッとは出てこないかな。

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まさにハヤシの部屋で、お酒を飲みながら昔話に花を咲かせている、そんな穏やかな雰囲気での楽しいトークの中にも、POLYSICSの本質が垣間見えたDAY1。ヤノ加入前の期間ということもあり、この日、彼の出番は少なかったものの、その分、「改めて、歴史があるなぁって。今のPOLYSICSにつながるものが多かったですね」というヤノの感想に、多くのファンは頷いたことだろう。

とにかく、「楽しいことをやりたい」「観ている人にアッと言わせたい」「人とは違ったことをやりたい」といったバンドの意志。それが、既にPOLYSICSの初ライブの時から、強く、明確にハヤシの中に宿っていたことがよく分かるトークであった。そうしたアイデアの“伝え方”という点において、20年のキャリアの中で磨き上げられていったであろうことは間違いないが、POLYSICSとしての意志の在り方は、現在に至るまで、何ひとつ変わっていないということを、改めて感じることができたDAY1だった。

撮影・文◎布施雄一郎


■<POLYSICS結成20周年記念2マンTOUR!!! POLYMPIC 2017>

2017/06/03(土) 京都磔磔
OPEN 17:15 / START 18:00
w/wienners
(問)清水音泉 06-6357-3666
2017/06/04(日) 高松MONSTER
OPEN 17:15 / START 18:00
w/TBA (※To Be Announced)
(問)DUKE高松 087-822-2520
2017/06/10(土) 水戸LIGHT HOUSE
OPEN 17:30 / START 18:00
w/OKAMOTO'S
(問)VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900
2017/06/14(水) 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
w/TBA
(問)JAILHOUSE 052-936-6041
2017/06/15(木) 梅田CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
w/キュウソネコカミ
(問)清水音泉 06-6357-3666
2017/06/17(土) 広島セカンドクラッチ
OPEN 17:30 / START 18:00
w/赤い公園
(問)YUMEBANCHI広島 082-249-3571
2017/06/18(日) 福岡BEAT STATION
OPEN 17:30 / START 18:00
w/岡崎体育
(問)BEA 092-712-4221
2017/06/24(土) 仙台CLUB JUNK BOX
OPEN 17:30 / START 18:00
w/TBA
(問)GIP 022-222-9999
2017/06/25(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
OPEN 17:30 / START 18:00
w/SCOOBIE DO
(問)FOB新潟 025-229-5000
2017/07/01(土) 札幌BESSIE HALL
OPEN 17:30 / START 18:00
w/アルカラ
(問)WESS 011-614-9999
2017/07/07(金) 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
w/TBA
(問)VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900
2017/07/08(土) 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 17:15 / START 18:00
w/TBA
(問)VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900
2017/07/09(日) 渋谷CLUB QUATTRO
OPEN 16:15 / START 17:00
w/銀杏BOYZ ※弾き語り
(問)VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900
▼チケット
前売:¥4,000(D別)
一般発売:2017/05/14(日) e+ / ぴあ / ローソンチケット


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