【インタビュー】奥華子、『遥か遠くに見えていた今日』にこめた“後回しにしない”気持ち

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デビューから12年、通算9枚目のオリジナルアルバム『遥か遠くに見えていた今日』を5月17日にリリースする奥華子。彼女の得意の失恋ソングやラブソングの中に横たわるのは、「なんでも後回しにしてしまう」という自分への戒めも込めつつ、「今」を大切に生きようというメッセージ。ミュージシャンシップが感じられるバンドアレンジや、緊張感のある弾き語り楽曲など、ステップアップしたサウンドと奥華子の王道が融合した作品だ。

◆奥華子 画像

■まずは自分でやった方が良いのか?出来るのか?って考える

──シングル「キミの花/最後のキス」のインタビューの時には、これからアルバムの楽曲作りがスタートしているという感じでしたよね。「曲ができなくてジタバタしている」と言っていましたが、やはりあのあと更にジタバタしたんですか?(笑)

奥華子(以下、奥):しましたね。楽曲のストックがないので、毎回、空っぽの状態からスタートするので、「アルバムの制作、どうしよう!?」っていっぱいいっぱいな状態は相変わらずでした。ただ、シングルを作っている時に、同時に作っていた何曲かは今回のアルバムにも入っているんですよ。そういうストックはありましたけど、とはいえ、曲が足りなくて(笑)。だから、1月くらいから、バタバタっと集中して作った感じですね。曲は毎回、産みの苦しみでしかないけど、アレンジやレコーディングは、今までよりもスムーズだった気がしますね。

──それには何か理由が?

奥:奥華子として、実現させるにはこうしたらいいというのが自分の中でわかってきたというのは大きいかもしれません。


▲『遥か遠くに見えていた今日』初回限定盤

──前回のシングルの「最後のキス」で、信頼しているミュージシャンと一緒にスタジオに入って、「せーので一発録りをしたら凄く納得できる物が出来た!」って言ってたじゃないですか?そういう事が影響していたりするのかな。

奥:そうなんですよ。「最後のキス」のレコーディングが決まった時に、「この人たちがスタジオに集まるなら、アルバムの一曲目に収録した「Rainy day」も録りたい」と思って、一緒に録ったんですね。この曲はインディーズ時代からある曲で、もう十何年間も前に作ったもので。でも、インディーズ時代に弾き語りで出しただけで、メジャーでは出してなかったんですね。いつか出したいと思ってたんですけど、気に入ってる曲だったから下手な形では出せなくて。でも、この人たちとなら絶対にいい形になるだろうと思っていたら、自分の想像以上に最高にいい演奏をしてもらえて。「最後のキス」があったから、「Rainy day」ができたという感じなんですよ。

──アルバムの作業の中では最初のほうですよね。この曲があったから、その後のアレンジで迷わなかったとか、そういう感じ?

奥:アプローチの仕方は曲それぞれなので、あまり関係ないかも。「最後のキス」と「Rainy day」はセッション的に「せーの」で録りましたけど、他の曲は自分でスタジオで一人でアレンジしたり、曲ごとにという感じでしたね。曲ができてからはアレンジで迷うことはなかったんです。

──いつも以上にしっとり大人っぽい作品ですよね。

奥:大人ですもの(笑)。

──まぁ、実際、そうなんだけど(笑)。前からはじけていて若々しいという感じでもないけど、昨年はアニバーサリーイヤーで一区切りつけて、新しいところに行きたいという話をしていたから、その感じが現れているような気がしたんですね。さんざん過去を振り返ったからこそ、1ステップ成長した感じというか。

奥:なるほど。なんでだろう? たぶん、曲は変わってないかもしれないんですけど、アレンジの面で今回はちょっと普通と違うモードだったからかも。いつもだったら、曲が出来たら「アレンジャーさんどうしよう?」って、担当ディレクターに言われるんですけど、今回は、まずは自分でやった方が良いのか?出来るのか?って考えるというか、

──へぇ。

奥:でも自分のアレンジだと「素人っぽいかな?」という不安もあって人にお願いしたりするんですよ。ただ、その「素人っぽさ」とか「正解が何か」って考えると、自分の曲なんだから、自分が表現したいことが出ていればそれが正解なんじゃないかなと思って。自分じゃできないから、誰かにアレンジをしてもらったり、演奏してもらったりするという考えのもと、今回は思い切って自分でアレンジもやっているので。そこが今までとは違うかもしれないですね。


▲『遥か遠くに見えていた今日』通常盤

── 一人で全部やると、思考のパターンが似てきて、逆に悩んだりしそうなものだけど、そういうのもなかったんですね。

奥:曲を作る時はそれで悩むんだけど、アレンジに関してはあまりないですね。あと、今回はギタリストもバイオリニストも身近に、友達みたいにいてくれたから、自分ができない部分を補ってもらえたというのもあるかもしれない。自分のアレンジ曲は、だいたいその人達にお願いできたというのは大きいですね。だから、名前を出すと森本君と伊藤彩ちゃんなんですが、彼らの存在がなかったらできないから。

──セッション的にやった2曲以外もミュージシャンシップにのっとって出来ているんですね。

奥:そうなんですよ。「スタンプラリー」もスタジオでセッション的にやってるんですよ。同じ日に、ちょうど「彼女」という曲もレコーディングだったんですけど、「彼女」ではストリングスカルテットがあって、バイオリンの二人が残ってたんですよ。それで「次の曲はこんな感じなんだ」って聞いてもらったときに、「めっちゃいいじゃん!」って、その場のノリで弾いてくれたんです。「いいね、いいね」ってなって、彼女たちにもレコーディングに参加してもらうことになって。その場の雰囲気で、アドリブで弾いたものが収録されているんですけど、ツインバイオリンでアドリブってなかなかないんですよ。一人でだったら自由に動けるけど。仲の良い二人だからこそできる阿吽の呼吸の掛け合いで弾いてくれたんです。面白いレコーディングでしたね。

──すごく音楽を楽しんでいる感じが伝わってくる。

奥:え~~! 私からそれが伝わる?

──え!? 違うの!? 普段、曲作りの産みの苦しみを語ることが多いから、苦行っぽさの方が伝わってくるんですけど、「最後のキス」のインタビューの時から、レコーディングの話をする時は、その苦行感が薄らいでいると感じるんですよ。

奥:確かに……。仲間というか、「この人に頼めば大丈夫」という、自分の音楽を理解してくれている人がいる安心感がそう感じさせるのかもしれない。これまでももちろん、そういう存在の人はいたんですけど、信頼度がより増したと思います。

──信頼関係って、一回や二回でできるものじゃないものね。これまで積み上げてみたものだから。曲作りは相変わらず産みの苦しみが大きそうなので苦行かもしれないですけどね。

奥:そうですね。曲作りをしていると、何も出来ないまま一週間、二週間、時間が過ぎてしまうんです。その二週間、自分は何をやっていたのか振り返ると、まったく意味のない人間に思えてくるんです。価値のない人のように感じてしまう。ご飯を食べてても、「曲もできていないのにご飯を食べる資格なんてない!」って、自分を責めるモードになってくるし、どこにも出掛けられないし、出掛けている場合じゃないし、人に会ってリフレッシュする余裕もないし。どんどん出口がなくなってくる……という繰り返しですよね。終わりはあるのか? アルバムも出るの?って、だんだん人ごとになってきて。

──そういう話を聞くと、本当に華ちゃんが猫を飼って良かったなぁって思えてきますね。

奥:はははは(笑)。確かに!チロ(※愛猫)を見ると、癒される。

──自分を責めて、ダメ人間って思った時に、チロがいると「この子は私がいないと生きていけないんだ」と思うでしょ? それで頑張れそうね。

奥:そう! その価値はあるなぁと思ってる。特にチロは私にしか懐いてないから、私がいなくなったら大変だっていう理由で自分が生きてると思う(笑)。

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