【ロングインタビュー】Linked Horizonが見てきた『進撃』の世界…新作『進撃の軌跡』10000字調査報告

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Linked Horizonのニューアルバム『進撃の軌跡』が5月17日に発売となる。この4年間、アニメ『進撃の巨人』シリーズと共に楽曲発表を続けてきた中でファンからも待望されていたアルバムの誕生だ。そこに詰め込まれているのはLinked Horizonによる溢れるほどの表現と『進撃』世界への真摯な眼差し。今回BARKSではインタビュアーにライターの冨田明宏氏を迎え、完成したばかりのアルバムパッケージとともに、Linked Horizon主宰であるRevoへのロングインタビューに臨んだ。

◆Linked Horizon 画像

■このアルバムが『進撃』への入口になる人もゼロではないと思うんです。なので、誤解を与えるようなアルバムにはできない

──『進撃の軌跡』がついに完成しましたね。パッケージを前にされて、どのような思いが湧いてきますか?


▲『進撃の軌跡』初回限定盤

Revo:制作を終えた直後はいつも「今回も大変だった……」「終えることができて本当に良かった……」という感想がまず先に来てしまいますね。パッケージも含めてこのように形になり、“制作が終わった”というタイミングが来るまでは、心のどこかで常に「何か手を加えたい」という気持ちが湧いてきてしまうから、「(制作を)終わらせたいけど、終わらせたくない」というギリギリのせめぎ合いを常に繰り広げているんですよ。でもこうして作品を目の前にすると「本当に終わったんだな。良かった」という感想が湧いてきます。

──さまざまなことを乗り越えて、ここまでたどり着いたと。

Revo:感想にするとあっさりしているようにも聞こえるかもしれないけど、やっぱり感動はしていますよ。ただ、何度も何度も何度も修正を繰り返しているから、今このタイミングになると、この初回限定盤パッケージも見慣れてしまっていて(笑)。でも最初の打ち合わせをしたところから、少しずつ形になっていく過程は何度経験したって感動します。音楽の制作が後半になる頃にパッケージや歌詞カードなどブックレットの制作も佳境になるから、監修作業はなかなかドタバタしていました。スタジオに入る前に打ち合わせでパッケージの修正点を僕から挙げさせてもらって、僕がスタジオに入って音楽の作業をしている間にデザイナーさんに直してもらい、明け方頃にまたスタジオに来てもらって「修正したものはこうなっています」という報告を受ける……そんなことを繰り返していました。一筋縄ではいかないんですよね。デザイナーさんは楽しんでやって下さっているように見えたのが幸いでしたけど……LHは彼のほかの仕事より間違いなく面倒な仕事だろうね(苦笑)。ここまで大変なものはほかにないと思うから。

──このような仕様のパッケージ、生まれて初めて見ました(笑)。

Revo:せっかくの『進撃の巨人』ですから。僕は必要だと思いましたよ。スタッフたちも「それは無駄じゃないですか?」なんてことをもはや誰一人言わないんだよね。当然だけど、通常のパッケージより制作費は数倍になるんです。だけど「そうですよ!『進撃』ですから必要ですよ!」と言ってくれるから(笑)。

──Revoさんが中心となりチーム一丸となって完成させた本作は、Linked Horizon(以下LH)として4年ぶりのCDとなります。

Revo:自分の中では、実はあまりブランクを感じていないんですよ。期間としては確かに空いているのですが、僕の中で連続性を感じていて。漫画で常に読み続けているし、劇場版や『進撃!巨人中学校』にもテーマソングを提供させてもらってきたからだと思うんですけど、常に『進撃』の世界に飛び込むスタンバイをしていたような状態でした。少なくとも、月一の連載を読むことで『進撃』とは向かい合っていますから。でも、それをアルバムにしようと思うとやはり大変でしたね。もう何度も何度も読んでいるはずなのに、さらに何度も読み返しましたから。

──どのエピソードを切り取り音楽としてフォーカスするか、という作業も簡単ではないだろうなと感じました。

Revo:そうですね。原作があるので、みなさんにはぜひアニメと合わせてコミックスも読んでもらいたいけど、このアルバムが『進撃』への入口になる人もゼロではないと思うんです。なので、誤解を与えるようなアルバムにはできない、という責任感がまず生まれますよね。『進撃』の面白さをまずは伝えないといけない。そして〈その先で待っている作品世界へと導けるような1枚〉にならないといけないなと。ほとんどの方が少なからず『進撃』の物語を知ってから手に取ってくださるとは思うんですけどね。ちゃんとしたアルバムになっているので、どのタイミングで手に取って頂いても間違いないものになったと思っています。そしてこのアルバムを聴いて「はい、おしまい!」というものではなく、いずれ知ることになる“すべて”を見届けなければならなくなる……僕はそんなアルバムだと思っています。

──その思いはM1「二ヶ月後の君へ」からしっかりと込められています。いつの視点から“二ヶ月後”なのかと気になっていたのですが……歌詞にある通り、作詞されたタイミングのRevoさんから、アニメ『進撃の巨人 Season 2』をスタートさせるエレンに投げかけられたメッセージで。

Revo:主題歌の多いアルバムなのですが、それぞれは別々のタイミングで作ったものじゃないですか。最初から「紅蓮の弓矢」(Season 1 前期OP主題歌)ではじめるようなアルバムも構想してみたのですが、ちょっと違うなと。アルバムの“軸”ってなんだ? と考えたときに、まず初めに“アルバムのテーマ”があったうえで、1曲ずつ聴いてもらう構成こそが正しいだろうと。『進撃』の中で起こる出来事でほぼ曲が構成されていますが、中には“僕視点”の曲があってもいいだろうと思ったんです。「お前がどう思おうと知らねーよ!」と言われかねないけど、最近はもう開き直っています。もう僕は“僕”ではないというか、〈Revoという一つのキャラクターでいいのではないか〉と。『進撃』本編には出てこないけど、光栄なことに『進撃!巨人中学校』には出させていただいて(笑)。だから、というわけではないけど、もうキャラクターの一つと捉えていただけると嬉しいなと思っています。

──それは『進撃』の観測者のような?

Revo:『ブレイブリーデフォルト』で『ルクセンダルク大紀行』を制作したときもそうだったけど、僕が物語を先に知って、体験しているという視点なんです。Sound Horizon(以下SH)でもそうだけど、自分のオリジナルの物語を表現するときも、まず僕が一番のリスナーであるはずだし、そういう部分を押し出していくとこういう形になりますよね。それは僕自身の衣装やヴィジュアル的な部分でも同じです。『進撃』は現実世界の物語ではないけれど、Revoという存在は物語と現実を行ったり来たりができる。そういう存在だと思っていただきたいんです。LHとはそもそも、Revoが作品世界へダイブして、そこで見たこと、聞いたことを音楽にするプロジェクトですから。


▲『進撃の軌跡』通常盤

──なるほど。アルバムはM2「紅蓮の弓矢」から『進撃』の世界の出来事が時系列で展開されていく構成になっていますが、この作り方も最初から想定を?

Revo:何パターンか考えたんですよ……4~5パターン考えたのかな。でも、時系列を敢えてずらして収録しよう、というイメージにはならなかったかな。アルバムの仕上がりと『進撃の軌跡』というタイトルに表されている通り、もう一度最初の主題歌「紅蓮の弓矢」から物語を振り返ることになるんですよ。そして最新の主題歌である「心臓を捧げよ!」に至り、その先へと続く物語に思いを馳せて欲しいんです。

──「紅蓮の弓矢」は今回、アルミン役の井上麻里奈さんがイントロでナレーションを入れています。満を持して、ですね。

Revo:そうですね。オリジナルverには入っていないものですし、実は曲全体のミックス自体も変えているので、すでにオリジナルの「紅蓮の弓矢」を持っている方にとっても魅力的に感じてもらえると思っています。アルバムとしては本編に突入する一発目にアルミンのナレーションが入るのは、すごく良い演出になったと思っています。僕の中では、アルミンのセリフの通り「紅蓮の弓矢」で放たれた矢が、未来に向かってずっと飛び続けているイメージなんですよ。彼のあの熱い言葉と思いを乗せて、アルバムを最後まで聴いてもらいたいですね。そして『進撃』という物語は、まだどこにも着地をしていない。その矢はどこまで飛んで行くのか、まだ誰も知らない。つまり矢は今もまだ飛び続けています。そういう僕の思いは、今回のアルバムジャケットにも込めたつもりですね。アルバムを聴いてもらうとわかると思うけど、すでに先の展開まで知っている人からしたら、ネタバレだと分かるような要素も含まれていて。だけど知らない人にとっては“何か引っかかる表現”程度のものだと思うので、それがいつか分かる日が来るので、その“引っかかり”は忘れないでほしい。そしてそれは、できれば人から教えてもらうのではなく、自分自身で見つけてもらいたいんです。僕が作るものは、常にそういうエンターテイメントにしたいと思っているので。とはいえ隠し過ぎると何も伝わらないものになってしまうので……バランスって難しいですね(苦笑)。でも、聴き込めば聴き込むほど発見がある。そういうアルバムであることは約束しますよ。

◆インタビュー(2)へ
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