【インタビュー】リンキン・パーク、「このアルバムには純粋さが宿っている」

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リンキン・パークの新作、『ワン・モア・ライト』がついに発売を迎えた。衝撃のデビュー作『ハイブリッド・セオリー』(2000年) 以来、常に挑戦と実験を重ねてきた彼らだが、今作ではとても音楽的にベーシックな部分においてそれが実践されている。今回は、ファンの間でもすでに論争が繰り広げられているに違いないこの作品に関する、ブラッド・デルソン(G) とジョー・ハーン(DJ) のインタビューをお届けする。

◆リンキン・パーク 画像

この取材が行なわれたのは、レコーディング終了から間もない3月上旬、L.A.でのこと。筆者が作成した質問をもとに、現地の関係者による代行という形で実践された。当時、アルバムから先行公開されていた「ヘヴィ」以外にはまだ筆者自身が1曲も試聴できていない状況にあったことのみ、あらかじめお断りしておきたい。

   ◆   ◆   ◆

■『ワン・モア・ライト』というタイトルの意味は
■アルバムを聴く人によって違うものになる──ブラッド・デルソン

──まずは基本的なことから確認させてください。前作の『ザ・ハンティング・パーティー』は、マイク(・シノダ) とブラッドによる初のセルフ・プロデュース作品となりましたが、今作でも引き続き同じ制作体制がとられているようですね。

ブラッド:うん。ただ、新作のサウンド・プロダクションは前作とは違うものになっているよ。前作では、メタルからの影響が多大で、ギターとドラムが主体のサウンドになっていた。でも、今回の『ワン・モア・ライト』では、“曲”を重視したんだ。ギターのリフやドラムのビートを作ることから始めるのではなくて、毎日、「今日の自分は何を考えているか、何を感じているか?」ってことを話したり、お互いに尋ねたりすることから作曲を始めていった。それで、すべての曲がメロディと言葉によって導かれていったんだ。まず曲の骨格を完成させてから、そのまわりにトラックを築いていったんだよ。(これまで常にトラックから先に完成させ、メロディなどは後から作っていた) 俺たちにとっては、めずらしい挑戦になったといえる。しかも他の共同プロデューサー/ソングライターたちや、バンドのメンバーたちの才能にも頼りながら進めていくという、とても大きく開かれたプロセスだったんだ。『ワン・モア・ライト』の制作モチヴェーションのひとつは、外部の人たちとコラボレーションして、そこから学んで、いろいろな人たちの創造方法を理解する、ということでもあったからね。

──なるほど。今作では、海辺で遊ぶ6人に子供たちの写真がアートワークに用いられていますよね。このタイトルとジャケット写真の持つ意味、関連性について知りたいのですが。子供たちの数が6人であることから、メンバー6人と重ねて見てしまいがちなところもありますけども。

ジョー:あ、6人いるんだ? そこには気付いてなかった。面白いね!

ブラッド:俺たちがこの写真に共感をおぼえたのは、そのせいかもしれないね(笑)。

▲アルバム『ワン・モア・ライト』

ジョー:これは、ファースト・アルバム以来すべてのアルバムのアートワークを手掛けてきたアート・ディレクター、フランク・マドックスの作品なんだ。俺たちの長年のいいクリエイティヴ・パートナーでね。俺は、画家やヴィジュアル・アーティストたちと一緒に仕事をするのが好きなんだ。絵やヴィジュアル・アートにしかできない表現というものがあるからね。もちろん、それ以外のアイディアに対してもオープンでいるけどさ。それで、今回もフランクと一緒にいろいろ考えていたんだけど、彼が写真を何枚か持っていて、そのうちの一枚がこれだった。すごく素敵な瞬間を捉えた写真だし、“若さというものが大人になった自分たちにどんなふうに影響を与えるか?”という話をバンド内でしていたこともあって、これを選んだんだ。神秘的でありながら、自然に忠実でもある。なんだか水平線の向こうに、子供たちの姿を超えた未知の大きな存在がある感じがするんだ。その点が、僕らが作っていたアルバムの雰囲気を的確に要約してるように思えて、アートワークに適していると感じたんだよ。

ブラッド:俺は最初からずっと、リンキン・パークというのは、俺たちの芸術性のための基盤だと考えてきた。なぜ芸術性という言い方をするかといえば、あくまで音楽がその土台になってはいるけど、そこからさまざまな分野に広がっていくことになるからなんだ。特に俺たちの音楽におけるヴィジュアルの領域というのは、常に優先させてきた部分だった。それはジョーとマイクがアーティストの魂を持っていて、アーティストとしての鍛錬も経てきて、他の人よりも高い次元でヴィジュアルについて考えられるからこそだ。そのおかげでメンバーたちも、自分たちがやるべきことを耳だけで考えるんじゃなく、目でも考えるように背中を押されているんだ。

──さらに基本的な質問です。『ワン・モア・ライト』というシンプルなタイトルに込められているのは?

ブラッド:タイトルの意味は、このアルバムを聴く人によって違うものになると思う。今回初めて、収録曲自体のタイトルをアルバム・タイトルに掲げたんだ。俺にとっては、その表題曲がすごく特定のことを意味していて、アルバムのタイトルはそれとは少しだけ違う意味を持っているんだけど、それはとてもパーソナルな次元のものなんだ。このアルバムの大半の収録曲のテーマとストーリーは、作曲中に俺たちが感じていたことを直接的に表現していて、感情を通して描かれている。そして同時に、すごく私的な特定のテーマについて書かれているんだ。それによって結果、リスナーに魔法をもたらすことができるような曲になっていると思う。アートというのは会話だと俺は思っていてね。俺たちはアートを作ることが必要だから作っているけど、君たちが自分なりのアイディアや感情、意味をそこに加えることによって、そのアートというものが成立すると思うんだよ。だから、君たちにとってのこのタイトルの意味は、俺にとっての意味とは違うものになると思うし、ジョーにとっても違うものになるんだ。本当にリアルで強力なタイトルは、それぞれの人に違う意味をもたらすことができるものだと思う。

ジョー:実はアルバムのタイトルを決めるのに、数ヵ月かかったんだよ。アイディアが沢山あったんだ。でも、これはマイクがいちばん気に入ったタイトルだったんだよね。マイクは最初、トップ5に入るタイトルのアイディアを挙げていた。その時点ではまだ躊躇っていて、これがいちばん好きだとまでは明言していなかったけども。今回のアルバムで、マイクには語りたいことが沢山あったから、それに相応しいタイトルについて確信が持てていなかったんだと思う。彼は完璧主義なところがあるからね。でも、結局「わかった、これにしよう」とマイクが言って、俺たち全員が賛成した。全員がすごく気に入っていたタイトルだったからね。

◆インタビュー(2)へ
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