【インタビュー】クレイ勇輝「音霊を、エンターテイメント性を持つ場所として育てて行きたい」

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■これからの音霊の課題は、
■”どうしても”をどうやって作っていくか

──フェスブームと言われていますが、音霊にとってライバルは?

クレイ勇輝 ライバルではなく、ステージにも立っている僕目線でこのフェスは敵わないってフェスが2つあるんです。それは福岡の<Sunset>と、新潟市が開催している<日本海夕日コンサート>。こちらはステージを市が作って、花火の演出をくっつけて、アーティストも出演するんです。そこに35,000人が集まる。ステージも波が当たりそうな位置に組まれていて……ライブをやりながら夕日が沈んだ後に花火が観られる。僕らは2回出させていただいて。景色がいいことはもちろんですが、フェスで1ステージ35,000人が集まることってあまりないと思うんです。

──これからの音霊について構想していることはありますか?

クレイ勇輝 いま奮闘してますね。由比ヶ浜から三浦海岸に来て、みんなからは「今年は移るんですね」「遠いですね」「大変ですね」って言われますけど、僕らにとっては実務的な部分で大変なのはどんな仕事でも大変なので、そこは大したことないと思っていて。宣伝して、ブッキングして、時間をかければ大丈夫だよ、三浦海岸に”馴染むよ”って思う。

だけど、フェスがたくさんある状況で、”このフェスにどうしても行きたい”とお客さんに思ってもらうために、またアーティストにこのフェスにどうしても出たいと思ってもらうために、その”どうしても”をどうやって作っていくか。それが実務に追われないように考えなくてはいけない、ということを日々スタッフと話しています。ホットな話題なんです。

例えばディズニーランドってそれほど変わらないけど、リピーターがすごく多い。逆にUSJはコンテンツがドンドン変わっていくから人も増えていく。先ほどのライバルどこ?っていう質問でいうと、ディズニーランドがライバルというには大きすぎますけど、音霊もそういうエンターテインメント性を持つ場所になっていかないと、音楽業界が下がって行っているので、それに引きずられて行っちゃう可能性があると思っているんです。


──ブッキングにしてもビッグネームをガシガシ入れていけばいいや、という考えはない?

クレイ勇輝 ないですね。そもそもビッグネームの方は、向こう側の年間のスケジュールにハマるかハマらないかのタイミングになってしまうので。今年は小さいところでやりたいって思ってくれないと。でもそれは他力本願すぎて会社としてはキツイ。ベストな考え方はお客さんが音霊のスケジュールを見て、今年はどこに行こうかなと思ってほしい。そうなっていくといいかな。僕らはアーティスト頼みじゃない部分を作っていかないといけない。

──音霊というプロジェクトは、クレイさんの中で何%の完成度ですか?

クレイ勇輝 50%かな。

──50%の満足している部分は?

クレイ勇輝 浜辺にこれだけ立派な建物を建てて、それを73日間ブッキングできていて、宣伝できて、なおかつ13年続けていること。

──足りない50%は?

クレイ勇輝 細かな話になりますが、例えば制服/スタッフTシャツという概念ではなく、衣装という概念の伸びしろ。例えばディズニーランドのジャングルクルーズの衣装。あれってスタッフだけど演者なんですよね。そういう衣装を着て、役に入るということができている。音楽業界はなぜあれができないのかと思うんです。みんな黒いTシャツを着て黒子に徹して目立たないようにしますよね? そういうステレオタイプがあって……。 

──裏方だから、みたいな。

クレイ勇輝 そう。でもよく見るとそういうスタッフ一人一人、個性がある。そういうところもブランディングしていかないと、そりゃ音楽業界、沈んでいくよねと思ってしまうんです。例えばLDH、AKB、ジャニーズは、そのブランディングがしっかりできている気がします。

──50%をそういうところで伸ばしていきたい?

クレイ勇輝 他にも建物の作り、装飾、色、ロゴ、見せ方、媒体との絡め方、いろいろですね。あとは……ソフトの部分。例えば音霊の”媒体化”もキーワード。それに加えて例えば、去年大阪で<ビキニフェス>をやりました。帰り際にお客さんが出るときに、トンネルを作ってハイタッチをしながら帰ってもらった。お客さんとしてはライブの熱が冷めやらないうちに、「ありがとうございました」とフライヤーなんかを渡されると、そこで本当に終わっちゃったな、という気分になる。それをちょっと工夫できないかなと思ったのがきっかけです。

それに例えばBLUE NOTEスタッフのサーブの仕方。高級レストランばりに料理を出してくれます。とはいえBLUE NOTEはライブハウスです。そのライブハウス的な要素と高級感のあるサーブ、それに合わせた装飾、スタッフの話し方……だからそこに出たいというアリーナ級のアーティストたちがいると思うんです。あれはスペシャルだと。僕らもそれとは違う形で、海で、夏で、期間限定で、お客さんや出演アーティストに何か思い出を持ち帰ってもらいたい。

──お客さんの満足度を上げる50%?

クレイ勇輝 そうですね。どうしたらもう一度来たいと思ってもらえるのかなと。例えばこのアーティストのライブはどこでも行きます!って人は来る。そうじゃなくて、どのライブに行こうかなという人を引っ張ってこないといけないと思うんです。


──最後にBARKSの読者にメッセージをお願いします。

クレイ勇輝 僕の記事を読んで、何か自分たちで始められるきっかけを掴んでくれたら嬉しいですね。普通は「音霊に遊びに来て下さい」と言いますけど(笑)。これを読んでいる媒体の人や業界の人でも、お客さんでも日々生活していて何かのきっかけになったら嬉しいです。

撮影:鈴木健太


音霊 2017

■OTODAMA SEA STUDIO
2017年6月30日(金)〜9月10日(日)
神奈川県三浦市 「三浦海岸」交差点すぐ

■OTODAMA BEACH TERRACE
2017年7月1日(土)〜8月31日(木)
9:00〜20:30
神奈川県鎌倉市 由比ヶ浜海岸(滑川交差点下)

◆音霊 オフィシャルサイト
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