【レポート】THE BACK HORN、MUCCとの共鳴に「泣きそうになるよ、あれは」

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5月31日、THE BACK HORNが約2年ぶりに全国13ヶ所で開催してきた“KYO-MEI対バンライブ”の最終公演、<KYO-MEI対バンライブ in KAWASAKI Vol.3>が川崎CLUB CITTA’にて行われた。

◆<KYO-MEI対バンライブ in KAWASAKI Vol.3> 画像

彼らのライブは、直近では<ARABAKI ROCK FEST.17>と<JAPAN JAM 2017>を観たけれど、この日はやはりそれらとは違う種類のものだった。それはフェス/ライブハウスというより、2マンの相手が盟友MUCCだったからに他ならない。“対バン”とはこのこと、全身全霊を真剣に預け火花を散らしながらも最後は抱き合い、互いの鞘に花束を差すような、熱く美しいライブだった。


先鋒はMUCC。SEが鳴り、闇の中から姿を現した時点ですでに臨戦態勢、闘気が迸っている。「5月31日、今、今宵限りの共鳴を──」(逹瑯/Vo)の口上から美麗なストロークが響く。「脈拍」による幕開けだ。まず、サウンドがとてつもなく大きい。音圧だけで言えばTHE BACK HORNより上に聴こえた。加えて非常にクリアでレンジがワイド。圧倒されてしまう。その音が、阿修羅のごとく変幻自在の歌と溶け合い至高の狂騒空間を作り出す。対するオーディエンス、夢烏(ムッカー)たちは、ここはヘドバン、ここはモッシュ、ここはジャンプと息の合い方がすごい。バンド、ファン、セキュリティも含め会場全体が絶妙な一体感を生み、壮絶なる肉弾戦が展開されてゆく。

赤黒い旋律と裏拍を強調したリズム、魂の叫びがTHE BACK HORNの「サニー」や「ヘッドフォンチルドレン」と親和性を感じさせる「りんご」「メディアの銃声」を経て逹瑯のMCへ。

「対バンしたくなかったんです、昔は。カッコいいから! カッコいいバンドと対バンしたら、自分たちがカッコよくないってバレちゃうでしょ? スゲー好きだけど、対バンしたくなかった。ところが今や、嫌々対バンさせられてます(笑)」──逹瑯

謙遜と天の邪鬼さが滲むこの言葉のとおり、年齢も出身もほぼ同じ両バンドの競演は少なかった。以前は、彼らに限らずロックシーン全体に、肉を切らせて骨を断つ的な殺気を纏うバンドが多かったように思う。馴れ合いなんてダサい、かと言って孤高でいたいわけでもない。そういったある種のギラつく感じが、個人的には好きだった。一方で、フェスの隆盛による影響か、ジャンルを始めとする各種の垣根が低くなり、融和ムードの漂う現在のシーンも好きだ。なぜならこの2組の対バンを観られるのだから。

ここからは本当にあっという間。キャッチーなグルーヴと開放的なメロディが聴く者すべてを抱きしめる「ハイデ」、メタルコアの獰猛な暴力性を一心不乱に放つ「蘭鋳」、極悪リフと美旋律が悲しみの果てへ誘う「TONIGHT」の連続投下で圧巻のフィナーレである。愛と敬意を表しながらも全力の真っ向勝負を挑んだMUCC。感動した。


満を持してTHE BACK HORNの登場。と同時に大歓声が湧き、かき鳴らされたのは「魂のアリバイ」だった。間髪入れず「ビリーバーズ」へ。切れ味鋭いグルーヴと残響を帯びたボーカルの対比が熱狂をグングン加速させる。「MUCC最高だったな〜! まだまだ行こうぜ!」(山田将司/Vo)と「声」に入ると、ギターをジェット・ファイアーバードからジェット・ファイアーバードへ、2号機から初号機へ持ち替えた菅波栄純(G)は、カラッとしたそれまでと比べ、より豊潤なサウンドを突き刺していく。

松田晋二(Dr)の挨拶を経て、「聴いてくれ、始まりの歌!」という山田の紹介とともに披露された「始まりの歌」。愚直で無骨なリフと純粋な歌詞の想いがどうしようもなくグッとくる。今回のセットリストで最も観客を喜ばせたのは、続く「舞姫」「カラス」「美しい名前」の流れだろう。前奏が追加された「舞姫」が日本古来の美意識をどす黒く喚起すれば、臓器そのものの叫びのようなプレイが爆発した「カラス」は狂おしいほどの性的衝動を氾濫させる。そして「美しい名前」を前に、フロアの全員がただただ立ち尽くしていた。





「いや〜ものすごい熱い! 熱いです!」と松田が語り始めたところでMCタイム。先ほどMUCCがファンの呼称に触れたことについて、岡峰光舟(B)が切り出す。「“ムッカー”って言うんだね。“バックホーナー”と(笑)。なんかヤクルトの選手(ボブ・ホーナー)を思い出す……今笑った人アラフォーだかんね」。ここから野球と漫画のアラフォートークが延々続くので中略。

松田「本当、改めてMUCC最高のライブでしたね」
菅波「しかしカッコいいよね」
山田「しかしカッケーよ。なんなのあのシュッとした感じ」
岡峰「なんか泣きそうになったよね」
菅波「泣きそうになるよあれは。中盤とかだいぶヤバくなかった? 深くて」
岡峰「じっくり話しすぎだろ(笑)」
山田「感想を言い合ってる(笑)」
菅波「(笑)やっぱ好きだね? MUCC!」
松田「本当最高です!」



アットホームなMCも無事に終了。だがその温かい雰囲気は、次の「あなたが待ってる」でも続いていた。ここ数作のシングル作品におけるTHE BACK HORNに驚かされた人も少なくないかもしれない。歌詞も含めてざっくり言えばポップだからだ。しかし彼らはインディーズ時代からポップな根底を持ち合わせていた。ただ表現の仕方が限定的だっただけだ。つまり、変わったというよりも表現力が豊かになったということ。それはロックバンドとしての、もしかすると人間としての確かな成長なのかもしれないと、このMCと演奏を聴きながら思った。

「音楽はいろんな表現があって。MUCCもやってることは違うけど、自分が生きてることを表現しようとしてるところは一緒だなと思って。自分を表現して、みんながそれを受け止めてくれて。俺らもみんなから生きる力をもらってるし、みんなもそれを受け取ってくれたら嬉しいし。これをずっとやっていけば、生きていけるなと思ってます」──山田将司

“なぜ叫ぶんだろう”(「始まりの歌」)と歌っていた山田がそう口にしたあとは、疾風怒濤の展開へ。「覚醒」からの「上海狂騒曲」。その魂全部を叩きつける爆発力は、近年の彼らの中でも指折りだと感じた。同時に、暴風雨のような勢いの中にあって、例えばギターのピッキングはフェザータッチだ。そこに現在のプレイアビリティを観た。「シンフォニア」に続き、「刃」でシンガロングの絶景を生み出し本編を終幕させる。


アンコールでは、まず「With You」を届けてから7月5日にリリースされる26thシングル「孤独を繋いで」をいち早くお披露目。この曲、タイトルから想像できるとおり、わかりやすいTHE BACK HORNの真骨頂を濃縮還元、プラス現在のリアルが詰め込まれているという感じ。最高だった。いよいよ迎えた本当のラストは、MUCCから逹瑯とミヤ(G)を招き「コバルトブルー」の豪華競演だ。動けるメンバーがフロントで横一列になった瞬間は万感の一言。まさに今宵限りの共鳴が鳴り響く、素晴らしき一夜となった。

取材・文◎秋摩竜太郎
撮影◎橋本 塁(SOUND SHOOTER)

■<THE BACK HORN KYO-MEI対バンライブ in KAWASAKI Vol.3>
5月31日@川崎CLUB CITTA’セットリスト

01.魂のアリバイ
02.ビリーバーズ
03.声
04.始まりの歌
05.舞姫
06.カラス
07.美しい名前
08.あなたが待ってる
09.覚醒
10.上海狂騒曲
11.シンフォニア
12.刃
encore
en1.With You
en2.孤独を繋いで
en3.コバルトブルー

◆THE BACK HORN オフィシャルサイト
◆MUCC オフィシャルサイト
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