トリート、解散撤回のベストアクト

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北欧スウェーデン出身のトリートは、1985年にデビュー後、1990年の初来日公演までにメンバーチェンジを行いながら4枚のアルバムをリリースするものの、初来日以降は当時主流であったグランジ方向に音楽性が変わり、これまでの路線とは違う作品に従来のファンからの支持を失い、ほどなく最初の解散を発表することとなった。

◆トリート画像

2006年に再結成を果たした彼らは、2010年に18年ぶりとなるアルバム『Cope de Grace』を発表、バンド史上最高傑作と言える評価を取り戻したものの、2013年には再び解散を発表してしまう。2015年に最後のツアーとして<Kawasaki Rock City>にてヨーロッパ、クラッシュダイエットとともに北欧3バンドでの来日公演を行なったが、その後に解散発言を撤回、欧州各地でのフェスティバルにも多数出演するほどアクティブに活動を行ない、2016年にリリースされた最新作『Ghost of Graceland』は前作を凌ぐ傑作としてファンを歓喜させ、遂に27年ぶりの単独公演を果たす事となった。

会場は駆けつけたファンで溢れており、『Ghost of Graceland』から3曲が披露されると、観客の盛り上がりもすでに熱く、ベテランバンドで最新作の楽曲がこれほどの盛り上がりをみせるのも稀有なことだ。ロバート・アーンルンド(Vo)の歌声はやや本調子ではなかったものの、ステージも後半になると見事に復活、アンダース・ヴィクストロム(G)とポンタス・エグベリ(B)のバックコーラスもサウンドを分厚くカバーする。

リズム隊のジェイミー・ボーガー(Dr)とポンタスはアグレッシブで、アンダースのギターサウンドも時折聴こえにくい部分があったものの、レスポールとストラトキャスターを派手に使い分け、バンドサウンドの中核を担っている。パトリック・アッペルグレン(Key)の鍵盤の音色も重厚でバンドサウンドを支える肝だ。


「今回のセットリストは日本のための特別なものだ」とMCの後、3rdアルバム『Dreamhunter』の30周年を記念したメドレーが中盤に披露された。最新作から1987年発表のアルバムまでも、オーディエンスはしっかりとレスポンスしている様子が素晴らしい。

怒涛のように繰り広げられた本編ラスト3曲だったが、「Get You on the Run」のイントロは前回の来日時やライブDVDのバージョンとは違う「Organized Crime」バージョンが披露された。これは日本のファンはこのバージョンの方が喜ぶのではないかとメンバーが決めた事だという。実際にこの部分での観客の反応は「前回より更に良かった」とのメンバー談だ。サビの観客との掛け合いによる合唱は感動的で、ステージ上のメンバーも驚いた表情を見せていた。

以下は、そんな東京公演の前日に行ったインタビューである。






──単独公演は27年振りとなりますが、今のお気持ちを。

パトリック:まるで昨日の事のようだよ(笑)。

アンダース:27年経っても日本に来れるって凄い事だよね。

──前回2015年の<Kawasaki Rock City>での日本公演はいかがでしたか?

ロバート、パトリック:2日間とも素晴らしかったよ。

アンダース:個人的には2日目の方が良かったかな。初日はギターのトラブルもあってね、でもライブ全体的には両日とも楽しかった。

──前回からベーシストが変わりましたが、ポンタス(The Poodles、King Diamond)加入の経緯は?

ポンタス:2010年にプードルズとトリートで一緒にヨーロッパツアーをまわってね。その前からもちろんトリートのメンバーの事は知っていた。そしてトリートが『Ghost of Graceland』作る際にアンダースから「ベースを弾いてみないか?」と連絡があって、そのチャンスに飛びついたんだ。

──メンバーチェンジもなぜかベーシストが多いのは偶然ですか?

ロバート:それはこのバンドの謎だよね(笑)。

アンダース:これで最後になると思うよ、そうしたいと思っている(笑)。

──2013年に再度解散を発表していましたが、解散撤回は何がそうさせたのでしょうか?




アンダース:あの頃はバンドが帰路に立っていたんだ。ちょうど30周年を迎えていてライブも行ったけど、その時点ではニューアルバムを作る予定もなかったのが解散発表した理由のひとつ。このバンドのキャリアを続けて行くにあたって、アルバムを作らないという選択肢は僕らにはないんだ。つまり、懐メロばかりでライブをやるつもりはない。ノスタルジーなバンドではなくて、アルバムが作れないならお終いと思っている。新しい音楽を生み出して、ライブを行う事がまた力になって行くんだよね、結果的にまたニューアルバムを作れる事になったから継続できると思った。

──最新作『Ghost of Graceland』はバンドの集大成的な作品ですが、ルーツ的なサウンドにも感じます。

ロバート:凄いね、その通りだよ。

アンダース:本当にそうなんだ。僕ら独自のサウンドをキープしたいし、それは滲み出てしまうものだしね。自分たちのやってきた事を壊そうとした事もある。でも僕らの得意とする良いリフ、良いコーラス、心に残るタイトル…そういうものを受け継いで行きたいから、それがきちんと出たアルバムになったと思う。

──前作『Cope de Grace』と最新作『Ghost of Graceland』のどちらがバンドキャリアの代表作になりますか?

アンダース:『Cope de Grace』は長いアルバムで実は今となっては聴かない曲もあるんだ。僕らの中では良い曲とそうでもない曲が混在しているんだよね。リリースされた当時は良いレビューもあったけど、レビューされなかったところも実際多かった。数年後に実は傑作だったと言ってもらえる事が多くて、あのアルバムを消化するのにそれだけ時間が必要だったのではないかなと思う。一方、『Ghost of Graceland』はまとまりがあって、どの曲も均等に良くていわゆるクラシックロックアルバムになった。今、クラシックロックと言われている例えばディープ・パープルの「Smoke on the Water」とかも、リリースしてすぐではなく、時間をかけて人々の心に浸透してクラシックロックになって行っただろ?僕らが子供の頃に聴いていたものが熟成して行く良さがある。僕らももう若くないし。

ジェイミー、パトリック:え~、若くないって(笑)。

アンダース:成熟した良さが出たと思うよ、この2枚のアルバムは趣きが違うものではあるけど比較するには良いよ。

──今、トリートのサウンドと世のタイミングが一番かみ合っていると感じますが、いかがですか?

ロバート:そうかもしれないよね、きっとポンタスがいるからだよ(笑)。

ポンタス:僕は新しく入ったメンバーだから言えるけど、トリートはこれまでも素晴らしいバンドだけど最新の2枚のアルバムは特に別次元の素晴らしさだからね。

──ヨーロッパのフェスは、3rdアルバム『Dreamhunter』30周年を記念した特別な内容になるのですか?

全員:それは明日もだよ。





アンダース:日本公演でもお楽しみがあるよ。夏のスウェーデン・ロックでは『Dreamhunter』の30周年記念の内容になる。アナログ盤でジャケット違いの再発もするんだ。今年は、ニューアルバムの制作をする。インスピレーションがどれだけ湧くかにもよるけど、2018年のリリースを目指しているよ。トリートがこれまで出したアルバムはどれもタイプが違うんだけど、レッド・ツェッペリンもそうさ、別タイプのアルバムだけど全体を通して見るとやはりレッド・ツェッペリンだよね、ってトリートもそういうところを目指しているんだ。どういう方向性になるかはまだわからないけど、トリートらしいものになるのは間違いないし、これまでと違うものでありながらもトリートだと思えるものをね。

ジェイミー、パトリック:明日は、ライブを楽しみにしておいてね。

ロバート:こうして日本に来れたのはファンのみんなのおかげ、とても感謝しているよ。

アンダース:日本のファンはとても誠実でありがたい。最近はSNSで直接交流する事もできるので嬉しいよ。

ポンタス:日本に来れて本当に嬉しいし、明日からのライブが待ち遠しいね。


取材・文:Sweeet Rock / Aki
編集:BARKS編集部
写真:Yuki Kuroyanagi

<TREAT ~Japan Tour 2017~>

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