【ライブレポート】プリティ・メイズ、30年を経ても色褪せぬ音楽のマジック

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2017年5月末から6月初頭、<Melodic Power Metal Night Vol.22>と題して、プリティ・メイズのジャパン・ツアーが開催された。

◆プリティ・メイズ画像

2012年と2013年の来日、2015年の<ラウド・パーク15>参戦と、連続しての来日。あまりに来すぎなのでは…?と観客動員を懸念する声もあったが、それは杞憂に過ぎなかった。むしろ一連の日本公演がファンの心に火を灯したのだろうか。最新アルバム『キングメーカー』がプリティ・メイズ健在!を高らかに宣言する充実作だったこともあり、東京会場の渋谷クラブクアトロはほぼ満員の盛況ぶりとなった。

ライヴの1曲目は『マザーランド』(2013)からの「マザー・オブ・オール・ライズ」。2013年と2015年、そして今回と、オープニング・ナンバーに定着した感のあるこの曲のイントロ・テープが流れ、バンドが1人ずつ姿を現すごとに、歓声のボリュームは高まっていく。


1981年にデンマークで結成、ハード・ロック界の第一線で活動してきた彼らだが、ロニー・アトキンスのボーカルは今こそがピークといえるものだ。伸びやかな声量とメロディの説得力、フロントマンとしての存在感を兼ね備えるロニーの一挙手一投足に、観衆は喜びと驚きの声援を送る。

実はこの日、ギタリストのケン・ハマーはハードな移動スケジュールに体調を崩し気味で、当日のインタビューを中止にするほどだったが、ステージ上ではいつも100%だ。貫禄を増したボディから弾き出すギター・プレイは重厚かつエモーショナルな表現力を放つ。ギタリストとしての魅力に加えて、“ハマさん”と愛されるスマイルは、バンドとファンの間に親密な一体感を生み出していた。

もはやバンドの重要な一角を占める一員となったベーシストのレネ・シェイズ、そしてキーボード奏者兼セカンド・ギタリストのクリス・レイニー、ドラマーのアラン・ソレンセンが加わった現在のラインアップだが、アランはロイヤル・ハントでの活動で日本のファンにも知られる存在であり、新天地であるプリティ・メイズでもタイトなビートを叩き出す。


最新アルバムのタイトル曲「キングメーカー」から初期の名曲「レッド・ホット・アンド・ヘヴィ」へと、新旧ナンバーを取り混ぜたステージには、1曲ごとに驚きを込めた声援が湧き上がる。「ウォーク・アウェイ」や「サヴェイジ・ハート」のようなフックのある楽曲、「イエロー・レイン」や「パンデモニアム」などの疾走系チューンなど、起伏に富んだライヴでファンを魅了した。

長い歴史を誇り、クラシックスには事欠かない彼らだが、随所で挟み込まれるカバー曲もファンにとっては楽しいものだ。この日は後半、スコーピオンズの「ロック・ユー・ライク・ア・ハリケーン」を披露。さらに「I.N.V.U」のイントロとしてピンク・フロイドの「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を挿入したり、ロニーがドリー・パートンの「ジョリーン」を歌ってみるなどして、場内を盛り上げてくれた。

そしてカバー曲といえば、「プリーズ・ドント・リーヴ・ミー」をプレイしなければプリティ・メイズのショーは終わらない。ジョン・サイクスの曲というより、もはや彼らの代表曲のひとつとなったこのナンバーに会場はひとつとなり、声を限りに熱唱。新加入メンバー達は驚いた表情を見せ、ロニーとケンは顔を見合わせてニッコリと笑みを浮かべる。



日本のファンの盛り上がりに気を良くしたのか、彼らは当初東京では予定されていなかった「アイ・オブ・ザ・ストーム」をプレイ。前日の大阪公演でも演奏されたこの曲で歌わせた後に流れるのは、カルル・オルフの「カルミーナ・ブラーナ」だ。もちろんファン達はそれが何を意味するかを熟知しており、場内の温度が一気にヒートアップする。ケンが研ぎ澄まされたリフを弾き、ロニーと共にフロアのほぼ全員が「ラーイ!」と叫ぶ。初期の名曲「バック・トゥ・バック」はバンドと観衆が火花を散らしてぶつかり合い、お互いに高め合う、本編クライマックスに相応しいエネルギーの交歓だった。

アンコールでも出し惜しみのない彼らは「フューチャー・ワールド」「リトル・ドロップス・オブ・ヘヴン」「ラヴ・ゲームス」の3連打でトドメを刺す。そのうち2曲が『フューチャー・ワールド』(1987)というのは、彼らの音楽の持つマジックが30年を経ても色褪せていないことを証明していた。ちなみに2017年12月にはデンマークとスウェーデンで、その『フューチャー・ワールド』30周年アニヴァーサリー・ライブが開催されることも発表されている。

バンド結成から35年を超えて、近年ハイペースで来日している彼らだが、そのステージは何度見ても飽きることがない。見たばかりのライヴの熱気と余韻に浸りながらも、早くも次回のジャパン・ツアーに想いを馳せずにいられない魅力でいっぱいのショーだった。







文:山崎智之
Photo by Ariga Mikio

2016年10月21日
プリティ・メイズ『キングメーカー』
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◆プリティ・メイズ『キングメーカー』オフィシャルページ
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