チープ・トリック、2年連続の新作発表で絶好調をアピール

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チープ・トリックの新作アルバム『ウィア・オール・オーライト!』が、先週末のリリース早々、快調な滑り出しをみせている。今年がデビュー40周年のアニヴァーサリー・イヤーにあたる彼らだが、通算18作目のオリジナル・アルバムとなる今作は、昨年4月に発売された『バン・ズーム・クレイジー・ハロー』に続くもの。前々作の『ザ・レイテスト』(2009年)から前作にかけては、オリジナル・ドラマーであるバン・E・カルロスの離脱問題などもあって7年ものブランクが生じていたが、“ライヴにやって来るファンは往年のヒット曲が聴きたいだけで新しい曲など求めていない”などと言いながら新作になかなか取り組もうとしないベテラン・バンドも多いなか、彼らのこのリリース・サイクルは驚異的だともいえる。参考までに、彼らが2年連続でオリジナル新作を発表したのは『スタンディング・オン・ジ・エッジ』(1985年)から『ザ・ドクター』(1986年)にかけての時期以来ということになる。これもバンド自体が健康な状態にあり、彼らを取り巻く環境が有効に機能している証拠だろう。

◆チープ・トリック 画像

バンドの創設者であるギタリストのリック・ニールセンは、Billboard.comの記事のなかで「俺たちは普段から日常的に曲を書いているが、ちゃんと発売予定があるうえで作るほうがずっと楽しいものだ。今は俺たちのことを信じてくれていて、なおかつ仕事をする気のある会社と契約があり、連中はどんどん作れとけしかけてくる。これはクールなことだ。レコード作りに対する野望というのは常に抱き続けてきたものだし、これからも消えることのないものだから」と語っている。現在、彼らが籍を置いているのは、カントリー・ミュージックの聖地というべきナッシュヴィルを拠点とするビッグ・マシーン・レコーズ。同社からのリリースは今回が二作目ということになるが、前作完成時に筆者が行なったインタビューのなかで、リックは次のように話していた。

「以前の俺たちはあれこれと問題を抱えていた。マネージャーのこと、エージェントのこと、裁判沙汰になっていたドラマーのこと。ちょうどそんな頃にビッグ・マシーンのCEOであるスコット・ボーチェッタという男と知り合ってね。彼が“長年の大ファンなんです。お役に立てることなら何でもしますよ”と言ってきたから、俺は“言ったな? 本気だな?”と答えた(笑)。結果、彼はロックンロールの殿堂入りにまつわることも手伝ってくれたし、マネージメントのことも解決してくれた。そして当然ながら、バンドには新しいレコード・ディールがもたらされた。必要なことすべてを、彼が正しくやってくれたわけさ。しかも彼は本当に俺たちのファンで、チープ・トリックのありのままの姿を好きでいてくれてる。過去にも好きだと言ってくれるやつには何人も出会ってきたが、問題はどいつもこいつも結局は“ここはこう変えて欲しい”とかぬかすようになることだった。だけど彼が変えようとしたのは、このバンドのキャリアにとってマイナス要素になり兼ねないことだけだったのさ。ありがたかったよ。カントリーに路線変更してくれとも言われなかったし(笑)」

この発言にもあるように、チープ・トリックは昨年、ディープ・パープルやシカゴ、スティーヴ・ミラーらとともにロックンロールの殿堂入りを果たしており、かねてからの再評価熱がそれを機にいっそうの高まりを見せ始めていたりもする。彼らの地元であるイリノイ州ロックフォードにおいて4月1日が“チープ・トリックの日”に制定されるといった話題も伴い、前作は全米アルバム・チャートにおいて最高31位(ロック・チャートにおいては4位/ともにビルボード誌による記録)まで到達。今作はおそらくそれを上回る実績を獲得することになるに違いない。

リックの実の息子であり、このバンドの二代目ドラマーであるダックス・ニールセンにとっては、これが二作目の参加作となる。そして今作でプロデューサーを務めているのは、『ザ・レイテスト』以来の連続起用となるジュリアン・レイモンド。アレンジ面での貢献も大きい彼は、カントリーの大御所、グレン・キャンベルとの仕事でグラミー賞受賞歴のある人物だ。アルバム本編は10曲のオリジナル・ソングによって構成されており、日本盤および海外盤のデラックス・エディションには3曲のボーナス・トラック、さらには日本盤限定で2曲のライヴ・トラックが追加収録されている。ちなみにボーナス・トラックのうちひとつは、ロイ・ウッドの作によるザ・ムーヴの1968年発表のヒット曲、「ブラックベリー・ウェイ」(全英1位)だ。チープ・トリックの人気レパートリーのひとつである「カリフォルニア・マン」(1978年発表の『天国の罠』に収録)が同じくウッド作によるザ・ムーヴの楽曲であることは言うまでもない。もうひとつ付け加えておくならば、この「ブラックベリー・ウェイ」は、かつてゴットハードにもカヴァーされている。

常にライヴ・バンドとしても精力的な動きを続けてきた彼らにとって、2017年がその例外であるはずもなく、6月23日にはスペインでのフェス出演を皮切りに、この新作に伴うツアーが開始される。さらに7月11日から9月9日にかけての期間は、彼らと同様にデビュー40周年を迎えているフォリナーのアニヴァーサリー・ツアーにも同行。昨年11月の来日公演が素晴らしかっただけに、できることならそのまま日本にもやって来て欲しいところだが、果たして、どうなるのか? 2018年には、彼らの名を世界に知らしめた名作ライヴ・アルバム『at 武道館』の40周年を迎えることにもなるわけで、その記念公演の実現などに期待したいところでもある。が、まずはとにかくこのチープ・トリック以外の何物でもない純度の高い新作、『ウィア・オール・オーライト!』に耳を傾けてみて欲しい。

取材・文◎増田勇一

■アルバム『ウィア・オール・オーライト!』

01. ユー・ガット・イット・ゴーイング・オン
02. ロング・タイム・カミング
03. ノーホエア
04. レディオ・ラヴァー
05. ロリータ
06. ブランド・ニュー・ネーム・オン・アン・オールド・タトゥー
07. フローティング・ダウン
08. シーズ・オーライト
09. リッスン・トゥ・ミー
10. ザ・レスト・オブ・マイ・ライフ
11. ブラックベリー・ウェイ (日本盤&海外デラックス・エディション・ボーナス・トラック)
12. ライク・ア・フライ (日本盤&海外デラックス・エディション・ボーナス・トラック)
13. イフ・ユー・スティル・ウォント・マイ・ラヴ (日本盤&海外デラックス・エディション・ボーナス・トラック)
14. ホエン・アイ・ウェイク・アップ・トゥモロウ (ライヴ) (日本盤ボーナス・トラック)
15. ジ・インクラウド (ライヴ) (日本盤ボーナス・トラック)

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