【インタビュー】KNOCK OUT MONKEY、2年半ぶりアルバムは「アッパー過ぎて"大丈夫?"みたいな(笑)」

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■本当に好きなことを全力で
■ワクワク感が一番大きかった

──人生というものは、すべてに於いてそうですよね。そんな充実した期間を経て『HELIX』の制作に入ったということですね。テーマみたいなものは?

w-shun:特になかったですね。なかったけど、リリースタイミングを夏に戻したかったんですよ。インディーズ時代のミニアルバム以降、夏のアルバムリリースがなかったのかな、シングルはあったけど。でも、KNOCK OUT MONKEYは夏が似合うバンドやと思っているから、今回は夏にリリースしたかった。バンドをそこに戻せるんや、というワクワク感が一番大きかったですね。

▲3rdフルアルバム『HELIX』

──個人的には、今回すごくライブ感を重視した印象を受けましたが?

w-shun:それは自然と滲み出たんじゃないかな。今のバンドのリアルな状態をパッケージしたかったし、奇をてらってバラード的なものを入れたりもしたくなかった。本当に好きなことを全力で注ぎ込みたくて、“あがるぅー!ということしかやらんとこう”と思っていましたから。結果、楽曲的にもサウンド的にも、ライブ感のある作品になった。それに統一感がありつつ平坦なアルバムにならなかったのも良かったと思います。

ナオミチ:そうやね。あと、今回のアルバムは全体的にBPMがめっちゃ速いことも特徴になっています(笑)。

一同:そうそう(笑)。

w-shun:BPMに関しては、作りながらやり過ぎかなと思ったりもしたんです。あまりにもアッパー過ぎて、“大丈夫?”みたいな(笑)。でも、気持ちいいからいいかっていう(笑)。

亜太:個人的な話ですけど、今回のアルバムに向けたデモを作り始めるタイミングで、僕もやっとPCを買ったんですよ。メンバーの中では一番後乗りだけど、一番ハイスペックなPC(笑)。でも、中に入っているソフトは一番クオリティーが低い(笑)。

w-shun:そうそう、俺はそれが羨ましくて仕方ない(笑)。

亜太:あはは。誰かが持ってきた1フレーズを元に、1曲に編曲するという作業を今まではナオミチがやっていたんです。だけど、そういう環境で自分が何ができるか考えて、今回は先陣切って「俺が構築する」と。なのでメンバーから素材があがってきた時に、まず僕が自由な感覚で曲構成や基本アレンジを考えるポジションになったんですね。その後、作ったサウンドとかをチェックしてもらうためにdEnkAに投げる。彼の繊細さに僕は絶対的な信頼を寄せているので、「この雰囲気でよろしく」ってやりたいように構築することができた。もちろん曲が完成していく過程で作ったものから変わっていくんですけど、一番基礎の部分に携わることができたという意味では、より自分らしさが出せたと思います。

ナオミチ:そういうDTMだったので、今回のデモはドラムもまず打ち込みで作ったこともあって、僕はアルバムを聴いた時に自分らしくないドラムやなと感じたんですよ、亜太とは逆に。今までみたいにセッションしながら実際に叩いたドラムが元になっていないので、フィルとかも含め、今までにない感じのアプローチが多い、もちろんいい意味でね。あと、曲作りをしていく中で僕のテーマとして、“客観的な耳で聴いた時に足が止まらない”ということがあって。たとえば、ノリながら曲を聴いていて、Bメロからサビへ移るフィルで身体が止まるようであれば、それは排除したり。つまり、AメロとBメロの間のフィルは、Bメロのためにあるという捉え方をしたんですけど、今回は全体を通して、そういうことを意識して作ることができたと思います。

▲亜太(B)

亜太:ベースに関しては……意識したことは特にないんですね。ただ、さっきも話したように、自分達で1から構築していける環境になったので、プロデューサーのフィルターを通過した後も、楽曲のアレンジが大きく変わることがなくて。なので、ベースの面でも自分らしいところに落とし込むことができましたね。

──ベースはギターとユニゾンしそうなリフでカウンターリフを弾いたり、ルートでいきそうなパートでリフを弾いたり、スラップも効果的に入れ込んだり、といった個性的なアプローチが印象的です。

亜太:そうですね。スラップはね、ずっとそれだけでいけるならいきたいんですけど……(笑)。

──その発言はカットします(笑)。

亜太:あはは。アクセントとしてスラップを入れることが個性になることがあるじゃないですか、そのほうがいいんですよね。あと、テクニシャンとの信頼関係ができたので、今回のレコーディング中は「この曲はこんな音がいいんじゃない?」ってあらかじめセッティングしてくれて、「じゃあ、それで」みたいな感じだったんですよ、(笑)。今までは曲調に応じて、それに合うベースを用意してもらっていたけど、今回はメインのレイクランド1本でいいかなと。ライブでも使ってるからボロボロなんですけどね。テクニシャンの判断で作った音に対して、この曲はもう少しローを削ろうかとかの微調整をするくらいでレコーディングに臨めた。肩肘張らずに制作に取り組むことができたし、それが良い結果を生んだという印象がありますね。

dEnkA:僕は今回、ギター・フレーズ全部を意味のあるものにする、ということを意識しました。すごく簡単なフレーズでも、なぜそういうフレーズを弾いたのかを説明できるアプローチ、それが全体的にできましたね。個人的に印象が強いのは「Louder」のソロというか、半音ずつ上がっていくフレーズに対して、3度でハモッているだけのパートがあって。そこでトーキング・モジュレーターを使っているんですけど、ずっと「なにが出るかな、なにがでるかな」と言いながら弾いているという、アホか!みたいなフレーズが(笑)。

一同:そうそう(爆笑)!!

w-shun:あれは、すげぇ笑った(笑)。

dEnkA:それに、今回は必要なギターだけを入れるというテーマもあって。結果的に、曲によって重ねている曲と重ねていない曲の差が激しいです。それも正解だったと思います。

▲dEnkA(G)

──同感です。それに、ギターの音色も今まで以上に細やかに使い分けていませんか?

dEnkA:音色にもこだわりましたね。たとえば、まずバッキングをダビングする時に4種類のアンプで1コーラスを録ったんです。それをエンジニアとかテクニシャン、プロデューサーとかみんなで聴き比べて、どれが一番楽曲に似つかわしいかを話し合って決めました。アンプは同じでも、シールドを替えてみたり。そういうやり方をしたことで音作りの勉強にもなりました。

──ギターサウンドが多彩なことも、起伏に富んだアルバムの要因のひとつになっています。今回のメインギターは?

dEnkA:バラバラでしたね。バッキングはフロイドローズを搭載したレスポールを主に使いましたけど。アームが付いているギターはそれしか持っていなくて、ライブのことを考えると他にもアーム付きギターが必要だなと。(事務所スタッフのほうを見ながら)今後のライブはどうしようかなと思っているんですよねぇ。

──それ、スタッフにねだってます(笑)?

dEnkA:ははは。あと、フライングVは今回結構使いました。'83年製のコリーナ材を使ったギブソン・フライングVを去年買ったんですよ。

w-shun:あー、覚えてる。『RAISE A FIST』のツアーで北海道に行くためにフェリーに乗った時、寒過ぎてdEnkAのテンションが上がったらしく。たしかフェリー乗り場だったよね、いきなりネットオークションで落札したんですよ(笑)。

dEnkA:そうそう(笑)。「いくぜぇー! よし来た!」みたいな(笑)。

w-shun:寒さのせいで金銭感覚が麻痺してた(笑)。

ナオミチ:でも、あのギターに関しては物語があんねんな?

dEnkA:そう。そのフライングVの出品者は大阪在住のご年配の方だったんですけど、結構高価な買い物だったので、住所とか連絡先とか、お互いの素性を全部交換したら、「KNOCK OUT MONKEYのdEnkAさんですよね?」とメールが来て。ビックリしたし、なんか縁を感じましたね。そのフライングVはフルオリジナルの状態だったので、“NEW PAF”という僕らの音楽にはちょっと非力なピックアップを搭載しているんですよ。だから、メインで使いたいけど音的にはちょっとムリ。でも、縁を感じているから、ピックアップ交換はしたくない。フライングVの音が合う曲があればライブでも使いたいと思っています。

w-shun:俺もあのフライングVは使ってほしいな。

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