こんにちはこんばんわ初めましていつもありがとうございます。コヤマです。
CIVILIANというバンドで歌を歌ったりギターを弾いたり曲を作ったりしています。

もう2017年の半分が過ぎました。早過ぎる。恐ろしいくらいです。僕の周りの人達もみんな口を揃えて「早いね」「早いね」と言うので、逆に「今年の時間の進みは本当にのろいな、まだこれしか進んでいないのか」という人がいるなら是非話を聞いてみたいです。
子供の頃はどうだったろうなあ。5歳の子供にとって1年間とは人生の5分の1を占める長さで、20歳の人間にとって1年間は20分の1となり、50歳の人間にとってはそれが50分の1となるので、歳を取るごとにどんどん一年の体感時間が短くなっていくのだという。それがもし本当なら100歳の人間にとって1年とは、5歳の子の体感している1年の実に20倍のスピードで過ぎていくものとなり、一日単位で考えると朝起きて何かをやり始めたと思ったらもう夜だった、くらいのものになる筈で、そうなったらもう矢のように通り過ぎる時間に自分だけ取り残されたような毎日になってしまうんでしょうか。恐ろしいな。だからといって毎日を一秒も無駄にせず生きなさいというのも難しい。そもそも自分にとって何が無駄で何が無駄でないのかすら僕にはよく分からないので、せめて「これはひとまず全くの無駄というわけでもない筈だ」ということだけを何とかやっています。音楽を作ったり歌を歌ったり。コピーロボットを使って自分を10人くらいに増やせたらなあとも思うけれど、そうなったらなったで全員で「一番やりたいこと」の争奪戦みたいになるんだろうか。でも僕ならわりとみんな喧嘩せずに役割分担出来る気がするんだけどな。
脱線しました。そろそろ五冊目の本の話をします。

(この感想文は内容のネタバレを多分に含みます。肝心な部分への具体的な言及は避けますが、ご了承の上読んで頂ければ幸いです)

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【第五回 紅玉いづき『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』】

■不完全でありなさい、未熟でありなさい、不自由でありなさい

第五回はこの方。紅玉いづきさんの『ブランコ乗りのサン=テグジュペリ』です。とてもとても美しい話でした。
紅玉さんは『ミミズクと夜の王』で電撃小説大賞を受賞した時から読ませて頂いていたので、紅玉さんの作品の中で初めて触れたのは『ミミズク~』です。その後『MAMA』、『雪蟷螂』と合わせて俗に言う「人喰い三部作」を読みました。紅玉さんご本人にも偶然お会いする機会がありましたが、もう何年前のことだったか。

そもそも沢山の本が並ぶ書店で何故『ミミズク~』が目に留まり気になったかというと、電撃小説大賞受賞という帯の言葉もそうですが、表紙のイラストを描かれていたのが磯野宏夫さんだったから、というのが一番の理由でした。磯野さんといえばゲームソフト「聖剣伝説」のメインビジュアルを手がけたお方。「聖剣~」シリーズの大ファンだった僕にとって、この表紙は素通りすることができませんでした。つまりCDでいう「ジャケ買い」です。
そして中を読んですぐに紅玉さんのファンになり(今回は『ブランコ乗り~』の話なので『ミミズク~』の内容は割愛します、が、とても良い本です)、紅玉さんの本はその後もずっと僕の中に残っていたのですが、ある時期を境に小説というもの自体から少し離れてしまい、暫く離れているうちに世の中はどんどん先へ進んでいて、気付けば読んでいないものが沢山。BARKSさんで何か連載をやろうとお話を頂いた時、小説のことを扱いたいと言ったのにはそういった理由もあったのでした。

前述の通り、紅玉さんのお話の中で僕が読んだことのあるものは三冊です。なので、僕の中での紅玉さんのイメージはその三冊であるという前提で今回の『ブランコ乗り~』についてお話ししたいと思います。


舞台は日本。時代は今かもしれないし少し未来かも知れない。20世紀末に都市部を襲った自然災害からの復興を目的として、首都湾岸地域に「カジノ特区」が誘致されます。
(現実でも2016年末に国会でカジノ法案が可決され、2020年のオリンピック以降にカジノを合法化する動きがあります。その法案とは、国から認められた民間事業者が、定められた地域の中で特定観光複合施設を経営できるようにするもの。現実に「カジノ特区」を作ろうという法案です。)
そのカジノ特区への客寄せを目的として、「少女サーカス」という女性だけのサーカス団が作られます。

サーカスの各演目を任される花形は、曲芸学校にて数限りない競争の果てに主席で卒業をし、その座を勝ち取った精鋭の少女達だけ。それぞれに作家の名前が与えられ、その名前は襲名制により代々受け継がれていきます。曲芸学校の生徒達は、そのたったひとつしかない花形という椅子を射止めることだけを考え日々切磋琢磨しています。
サーカス団の団長シェイクスピア、歌姫アンデルセン、猛獣使いのカフカ、ナイフ投げのクリスティ、パントマイムのチャペック、フラフープのヘッセ、そして一際人気を集める、ブランコ乗りのサン=テグジュペリ。
物語の中で、少女サーカスは清廉潔白なものとして描かれてはいません。主人公の双子の姉である涙海(るう)は、親に連れられて少女サーカスを初めて観た時の印象を

”大人の飲酒や性行為を覗き見るような。もしくは、凄惨な死体に釘付けになるような。”

と思い返しています。ブンランコ乗りは命綱なしの危険な曲芸、猛獣使いは前の代が猛獣に殺されて以来長らく演目自体やっておらず、パントマイムは球体人形に限りなく近づくため食事もまともに取っていない。そんな少女達を見世物として楽しむ人間達。超高額なエクストラ席を買った客へ演者の少女が身体を売ることも日常的に行われ、憧れや妬みや羨望や欲望やフェティシズムが交錯するサーカスの中で、毎夜命がけの演目が行われています。

初めてサーカスを観たその時から、涙海は「ブランコ乗りになる」と決め、脇目も振らずその道を邁進してゆきます。才能と自信に満ち溢れ、自分が将来必ずブランコ乗りになれると信じて疑わない彼女は圧倒的なカリスマを備え、思い描いた通りに八代目サン=テグジュペリの名を襲名し、喝采をもって観衆に迎えられました。

しかしある日のこと、双子の妹である愛涙(える)とブランコの自主練習をしていた涙海は、ミスによりブランコから落下、一命は取り留めたものの足が動かなくなり、起き上がることも困難になってしまいました。
このままでは、全てを犠牲にしてまで勝ち取ったサン=テグジュペリの名を失ってしまう。それを許すことの出来ない涙海は、妹の愛涙に向かってある頼み事をします。
それは、「自分が動けるようになるまで、自分の代わりにサン=テグジュペリになり、ブランコに乗って欲しい」というものでした。

双子である二人は容姿も瓜二つ、そして妹の愛涙も姉と同じく小さな頃から姉と一緒にトレーニングをしていました。姉の唯一にして絶対の望みであったサン=テグジュペリの名を守るため、もうひとりの主人公・妹の愛涙は周囲に気付かれぬように姉に成り代わり、命がけのブランコに挑みます。
やがてサーカス団を取り巻く様々な思惑にサン=テグジュペリ(妹)は巻き込まれ、アンデルセンやカフカなどの団員達、団長シェイクスピア、そしてベッドの上の本当のサン=テグジュペリ(姉)、その他少女サーカスに関わる人間達の関係は徐々に変化していき…というお話。

本編では主に、ブランコ乗りのサン=テグジュペリ、歌姫のアンデルセン、猛獣使いのカフカ、そして姉の代わりを務める偽のサン=テグジュペリ、その四人の視点によって少女サーカスと曲芸学校のことが描かれていきます。花形を射止める為に他を蹴落とす学校内の競争、その中での陰湿ないじめや嫌がらせ、少女サーカスの裏に犇めく陰謀や疑惑や思惑、そしてそれらを知り、黒い欲望をその身に受けてもなお、ほんの一瞬の輝きと観衆からの拍手を求め「見世物」としてサーカスに全てを捧げる少女達。

いきなり話が飛びますが、実はもうひとつ、同じく紅玉いづきさんの『現代詩人探偵』も合わせて読みました。あちらは詩人のお話、こちらは芸事のお話ですが、『ブランコ乗り~』や『現代詩人探偵』を読まれた方の中には、こう思う方もいる筈です。何故そこまで、と。辛いのなら、苦しいのなら、痛いのなら、芸事など(詩人など)やめればいいだけのことではないのか。他にも道はあるだろうに、世の中の大多数の人間は何らかの道を見つけて人生を生きていけるのに、何故、芸事(詩)でなければいけないのか。

僕もかつて、自分の父親にこう言われたことがあります。「お前は真剣に音楽をやっているんだろうが、俺から見ればお前はただ遊び歩いているようにしか見えない」と。僕はその時はもう経済的にも音楽だけで生きていましたから、僕にとってはこれが生きるための全てでしたが、ああ、きっとそうなのだろうな、と、傷付くよりも妙に納得したのをよく覚えています。特に父はずっと仕事一筋な人間でしたから(僕はその生き方をとても尊敬しています)、芸事でお金を貰って生きていくなど、あの人の人生からすれば理解できないことなのだろうな、と。

『ブランコ乗り~』を読んでいる最中、ひとつの歌を思い出しました。
昨年アカデミー賞を受賞した『LA LA LAND(ラ・ラ・ランド)』の中で歌われる歌。それはこう歌われています。


"A bit of madness is key
to give us new colors to see
Who knows where it will lead us?
And that’s why they need us,
So bring on the rebels
The ripples from pebbles
The painters, and poets, and plays"
(少しの狂気が鍵なの
世界に新しい色を与えてくれる
行き先なんて誰にも分からない
そしてそれが、世界が私たちを必要とする理由
だから反逆者を集めましょう
小石で生まれるさざなみを
画家を、詩人を、演劇を)


少女サーカスの彼女達は、未熟な身体で、不完全な心で、やがては老いて「少女」ではなくなる日が来ることを知っていて、それでも光り輝くほんの一瞬の美しさを掴むため、観衆にほんの一時だけ夢を見せるため、その一瞬に全てを賭けて生きています。その激しい情熱のなんと美しいことか。
最後の一文には震えました。読み終わってしまうのが寂しいと思える、とても良い本でした。
この感じは何だろう、確か前にも同じような…と思い、そうだ、これはミミズクだ、と思ったのでした。『ミミズクと夜の王』を初めて読み終わった時の感情とよく似ている。

「不完全でありなさい」「未熟でありなさい」「不自由でありなさい」

僕もそうあろうと、心から思いました。



いつも通り、個人の主観で書かれたただの感想です。細かいことはご愛嬌ということで。
ぜひ読んでみて下さいね。それではまた。

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ニューシングル「顔」

2017年8月2日(水)発売
1.顔
2.デッドマンズメランコリア
3.ハロ/ハワユ
初回生産限定盤:SRCL‐9445/6 1,800円(税込)特典DVD付
通常盤:SRCL‐9447 1,200円(税込)

自主企画ワンマン<CIVILIAN 1st Anniversary Live “ONE”>

7月18日(火) 新代田FEVER
OPEN/START 18:30/19:00
前売り¥3,500 当日¥4,000

CIVILIAN ライブ情報

<真空ホロウツアー 2017 前夜祭「いっそこめさえうけいれて」>
2017.07.14(金)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
出演 : 真空ホロウ / LUNKHEAD / lazuli rena nicole / CIVILIAN

<MURO FESTIVAL 2017>
2017.07.22(土) / 23(日)東京都 お台場特設会場
CIVILIANはDay1に出演いたします。
Day1出演:ドラマチックアラスカ / GOOD ON THE REEL / Halo at 四畳半 / ヒトリエ / THE MUSMUS / WEAVER/AJISAI / CHERRY NADE 169 / ココロオークション / 八十八ヶ所巡礼 / LEGO BIG MORL / CIVILIAN
Day2出演:BRADIO / ハルカミライ / HERE/Large House Satisfaction / LUNKHEAD/MAGIC OF LiFE / Rhythmic Toy World / 忘れらんねえよ / バックドロップシンデレラ / Brian the Sun / バズマザーズ / ircle / LACCO TOWER / SIX LOUNGE / ビレッジマンズストア / WOMCADOLE

<TREASURE05X 2017~BLOOMING SENCE~>
2017.08.20(日)名古屋 CLUB QUATTRO
出演 : パノラマパナマタウン / THE BOY MEETS GIRLS / 緑黄色社会 / LILI LIMIT / CIVILIAN 他

詳しくはコチラ: http://civi-l-ian.com/live/