【チーム・フジロック座談会】世界に誇るフェスを支える鉄壁の仲間達

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■ 山がゆえのインフラ整備

──これまで大変だったことは?

施設設備・宇野氏:お客さんを受け入れるのに必要な水や電気がないから、山に生活インフラを作ったのが異常に大変でした。

▲施設設備担当/宇野雅己氏

──フジロックの水はどこから供給されているんですか?

施設設備・宇野氏:今は苗場プリンスホテルから延々とヘブンまで水を引いてますが、当初は水タンクのあるケータリングカーでしか飲食出店できなくて。トイレの水もタンクで運ぶのが追いつかなくて、近くの川からポンプで汲み上げるなど試行錯誤の連続でした。

──なぜこれほど整っているのだろうと不思議でしたが、皆さんの手によって基礎から作られていたとは驚きです。

施設設備・宇野氏:道も、毎年お客さんが歩くことで自ずと広げてできていくのですが、その他に、プリンスさんと僕らとで整地をしたり泥濘にはウッドチップを敷いたりもしましたが現在はARC(地球にやさしく環境について考えられたリサイクル砕石/アスファルト リサイクル クラッシャーラン)で整えています。

SMASH・小川氏:ARCは隙間から草も生えるからね。

音響・東氏:緑化計画もあったよね。ホワイトの観客エリアに種を蒔いたんやけれども、ぜ〜んぶ鳥に食われてしまって。

▲ホワイトステージ他多数音響担当/東雅明氏

施設設備・宇野氏:ヘブンは蒔いた翌年「ちょっと生えたね〜」と喜んでいるところにお客さんが入ったら駄目になっちゃった(笑)。

──ホワイトは晴れると砂埃が立つし暴れる系のバンドも多く出演しますしね。

総合舞台監督・岡田氏:何万人が歩くとロードローラーをかけるみたいに地面が固まっちゃうのよ。

SMASH・石飛氏:今年はかなり全面的に歩きやすくなると思いますよ。今、工事やってますから。

──ヘブンやジプシーアバロンではバイオディーゼル燃料(BDF)を使われていますよね?

電源・吉川氏:石飛さんから、「廃食用天ぷら油を使え」と言われまして。

一同:(爆笑)

SMASH・石飛氏:もう15年位経ちますね。

電源・吉川氏:冷やしてみたり混ぜてみたりと独自の試験を行い、ようやく使うに値したんです。その油を使うためにと、電源車の車検証に陸運局で「廃食用油併用」と書いてもらったのはうちが日本初です。

総合舞台監督・岡田氏:最初の頃は風下にいると天ぷら系の香ばしい臭いがしたけど、ここ数年は精製が良くなったのかあんまりにおいがしないね。

電源・吉川氏:(笑)。他にも、電気をスキー用リフトから引っ張ろうと電気会社の電気を使う試算をしましたが、雷が落ちて本部にあったPCが何台か壊れたりしたこともあり、施設用の電源とステージ電源は分けることにしたりも。

SMASH・小川氏:一般的には電力会社からの供給が一番安全安心で発電機は怖いというイメージを持っている方も多いと思いますが、僕らの業界では発電機が一番安心なんです。落雷などで停電の恐れがある電力会社のコンセントから取る電気よりも、三穂電機さんの電気を使う方が、何かあったときにすぐに対応できるシステムを積んでいるからやっぱり安心。

▲SMASH/小川大八氏

ホットスタッフ・鯉沼氏:コンサートでは音響や照明がフューチャーされがちだけど、大元の電気がなきゃ何もできませんからね。

──フジロックのステージでの電気使用量は、たとえば一般的な武道館公演の何倍になるのでしょうか?

電源・吉川氏:東日本大震災後の輪番停電時に電源車のみでやった武道館公演時の約7倍で、電源車はステージ用だけで15台使っています。

■ たかが弁当、されど弁当

──お弁当や飲料をはじめスタッフのおなかを満たす、ケータリングは縁の一番下、全てを支える最も過酷なポジションに見えますが。

運営補助・岩月氏:やれと言われれば何でも「はい」と返事します(笑)。自分は97年から全回参加、仕込みの最初からバラシの最後まで一番長く苗場にいまして、救護、スタッフへの飲食供給、蜂退治、蛇が出たと言われれば捕獲もします。

▲運営補助・ケータリング担当/岩月浩氏

──記憶に残る困難は?

運営補助・岩月氏:お弁当が350個足りなかったことですかね。

──えええ?

一同:(爆笑)

運営補助・岩月氏:突然新しい知らないセクションの分が書かれた表がきて、数えたら350個足りないとか、いきなり「うちは45個です」とか平気で言う困った人も昔は居て。お弁当発注先とは別の地元の旅館に頼み込んだりして何とかしました。

──1度に何個の弁当を用意するんですか?

ホットスタッフ・鯉沼氏:本番中は2600個位。

総合舞台監督・岡田氏:昔、釜飯で有名な“おぎのや”の釜飯が4トントラックで運ばれてきたね。食材よりも釜の方が重かっただろうけど、あれはゴージャスだった。

ホットスタッフ・鯉沼氏:あれ重くてねぇ。処分費用がドン! とかかっちゃって、今は紙包装でお願いしてます!

電源・吉川氏:キティちゃんぬり絵弁当とか新幹線弁当もありました。お弁当タイムでちょっとホッコリできる。

総合舞台監督・岡田氏:本番中は動けないから弁当。だからいろいろ変化をつけてくれるんだけど、その変化球が……

音響・東氏:たまに曲がり過ぎてぶつかってくる!

一同:(笑)

■総合舞台監督の難儀な仕事

──アーティストにまつわる苦労はありましたか?

舞台監督・菅氏:多分話できない(笑)。

ホットスタッフ・鯉沼氏:でもまあキーワードを出すと、“エミネム・ハンバーガー”、“レッチリ・楽屋”、“ニールヤング・ピアノ”?

▲ホットスタッフプロモーション/鯉沼源多郎氏

音響・東氏:あと、“ケンタッキー待ち”っていうのもあったね。

──どれも面白そうなネタですね。

総合舞台監督・岡田氏:それ全部言えないじゃん。話せるところでは、高齢のアーティストが本番中に酒をガンガン呑んで、ギターソロのたびに「小」をするから袖に簡易トイレを作ったの。で、その小屋の中のバケツに残されたものを誰が片付けるんだろうって思ってたら、まぁ、俺だったんだよな。

一同:(爆笑)

──それは外タレですか?

舞台監督・菅氏:そう、大ベテラン。

総合舞台監督・岡田氏:あとは、ケミカル・ブラザーズがフジに出る年、直前にグラストンベリーにも出るっていうんでイギリスまで観に行ったら、手伝いさせられたよな?

舞台監督・菅氏:俺たちバックヤードの屋根を直しただけなのに、向こうのクルーは「ヨシとカンが見ていったから大丈夫!」と言っていたとSMASHさんから聞いて笑いましたね。

──そういう行き来があるのは素敵ですね。

舞台監督・菅氏:たまたまです(笑)。そう言えばMUSEのドラマーが、以前は普通の格好だったのに虫がいっぱい飛んでくるのが相当いやだったらしくて、次来た時は全身タイツ状態だったね。

総合舞台監督・岡田氏:顔面以外は虫が止まっても大丈夫なフル装備。

照明・川名氏:照明の仕込みをしていると、カナブンみたいな硬いのがカン、カン、カン!て当たってくるんですよ。光源がLEDなら大丈夫なんですけど球によって違うんです。

総合舞台監督・岡田氏:同じ虫でも民生君(奥田民生)の時にマイクに止まったトンボは良かったよね。午後のいい時間にさ。

──某バンドが海外フェスで電源を落とされても演奏し続けたことが美談として報道されましたが、その辺りはフジロックはどうなんでしょう?

総合舞台監督・岡田氏:フジはアーティスト側から「お客さんが盛り上がってるからもう一曲やる」と言われれば「どうぞ」の姿勢です。ずいぶん昔ですけど、ニール・ヤングは弦が2本になってもジャーンとやるだけで15分。あれは格好良かったなあ。

舞台監督・菅氏:ヘッドライナーに至る過程ではあまりないですけどね。

SMASH・小川氏:その辺は海外アーティスト側の意識も高いですよね。

照明・川名氏:カーフュー(音止め)の意識が強いのでしょう。その点では日本人アーティストよりも海外アーティストの方がきちんとしていて苦労しません。

総合舞台監督・岡田氏:海外アーティストは契約書に書かれている内容をきっちり守るからね。逆にそこに書いてあるものが例えワイン1本なくても大騒ぎになる。どこ製のなんとかで、葡萄の種類まで書いてあったりするから適当なのを置いておいたらf**kとか言われちゃうけど、時間やハードウエアは了承して来日しているから現場に来てのトラブルはまずない。こちらも基本的に、オカネと時間、物のこと以外はNOを言いませんからね。

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