杉山清貴「車で聴きたい10曲」/【連載】トベタ・バジュンのミュージック・コンシェルジュ

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音楽家/プロデューサーのトベタ・バジュンが素敵なコンシェルジュをお迎えし、オススメの10曲のプレイリストを紹介するこのコーナーは、コンシェルジュの「音・音楽へのこだわり」を紐解きながら、今の音楽シーンを見つめ、最新の音楽事情を探っていく連載企画だ。

15回目のコンシェルジュにお迎えしたのは7月19日にニューアルバム『Driving Music』を発表する杉山清貴だ。杉山清貴&オメガトライブ名義での1983年デビューから、ソロ活動を経てもなお輝きを放つ楽曲をたくさん持つ杉山清貴は、前作『OCEAN』でセルフプロデュースにひと区切りを付けている。本作『Driving Music』は外部プロデューサーを招いて、アーティスト・杉山清貴を純粋に楽しめる作品になったという。ちなみにアルバム収録曲「眠れぬ夜に~I miss you~」の作詞者は、トベタ・バジュンである。


今回は、「車で聴きたい10曲」をテーマにプレイリストをセレクトしてもらった。

●杉山清貴「車で聴きたい10曲」

(1)Bi-Coastal / ピーター・アレン
(2)California Turnaround / ビル・ラバウンティ
(3)Breakdown Dead A Head / ボズ・スキャッグス
(4)You Are / ナイトフライト
(5)It Never Crossed My Mind / レイ・ケネディ
(6)Don't Mean Nothing / リチャード・マークス
(7)My Sweetness / スタッフ
(8)Going Going Gone / カラパナ
(9)Free Way Jam / ジェフ・ベック
(10)Worlds Away / パブロ・クルーズ

   ◆   ◆   ◆


(1)Bi-Coastal / ピーター・アレン

ジャケ買いじゃなくて、アレンジャー買い/ミュージシャン買いをしていた頃に、クレジットを見て「あ、これ買おう」って手にした中の1枚です。

(2)California Turnaround / ビル・ラバウンティ

この曲が好きなんです。気だるい感じの曲で、僕の一番好きなタイプの曲なんです。たまたま友だちから借りて、いいなと思って自分で買い直したアルバムです。

(3)Breakdown Dead A Head / ボズ・スキャッグス

これはね、スティーヴ・ルカサーのギターがもう絶妙で、大好きなんです。

(4)You Are / ナイトフライト

ナイトフライトって2枚しかアルバムを出していないんですけど、アレンジの宝庫なんですよね。ミュージシャンたちの隠れた名盤かと。ここら辺から、だいたい、夕暮れに向かっていってますね。

(5)It Never Crossed My Mind / レイ・ケネディ

ルカサーが入っていたりだとか、とにかくLAミュージシャンたちの音が聴きたくって買いあさったうちの1枚ですね。レイ・ケネディはもともとブルースマンなんですけども、やっぱりプロデューサーが変わると「こんな洗練された音になるんだ」って感動した1枚です。

(6)Don't Mean Nothing / リチャード・マークス

もう大好きで、この人があまり活動しなくなった時点で「あぁ、LAサウンドは終わったな」って思った。1990年代前半、リチャード・マークスぐらいから夕暮れになってきて、少し暗い感じになってくると思います。

(7)My Sweetness / スタッフ

僕らが10代後半ぐらいの頃、僕は横浜のライブハウスに勤めていて、いろんな仲間たちが出入りする中で初めて聴く音楽にも出会うわけで、そこで「インストっていうのがいいな」って初めて思ったのがスタッフでした。とにかく演奏人が素晴らしい。ほとんどの方が亡くなっちゃってますけども。スタッフのこのアルバムは、野郎どもたちで聴きながら海に行くのに合います。

(8)Going Going Gone / カラパナ

これは、夕暮れから夜を越えまして、もうイケイケになってる感じですね(笑)。1970年代に、サーフィンブームと一緒に日本に上陸して大好きでした。カラパナは、僕がハワイで暮らしていたときに知り合いになって、一緒にアルバム作らせてもらったり、ワイキキで開催された20周年コンサートで、日本人で初めてゲストで出させてもらって一緒にやったりとか、僕のなかでは超アイドルのバンドなんです。

(9)Free Way Jam / ジェフ・ベック

これは10代後半ぐらいに友だちが聴いてて、僕もハマりました。このアルバムはジャジーだったりとかして、特にややこしいんですよね。プロデューサーがジョージ・マーティンで、ジェフ・ベックのなかでもちょっと毛色の違うアルバムで、生音がものすごく出てくるんです。ですから、車で聴いてると、非常に気持ちがいいですね。

(10)Worlds Away / パブロ・クルーズ

まだアマチュアだった10代の頃、サーフィン映画の中で使われてサーファーの間ですごいヒットしたんです、ハッピーになっちゃう曲で、振り返ってみるとわが青春の思い出って感じですね。

   ◆   ◆   ◆


――7月19日、アルバム『Driving Music』の完成おめでとうございます。

杉山清貴:ありがとうございます。

――今回『Driving Music』を作ろうと思ったきっかけというのは、何かあったんでしょうか。

杉山清貴:実は去年、ソロ30周年という年を迎えまして、自分の出したいものをすべてアルバムに収録したんです。できあがって聴いてみたときに「あ、俺ってこういうアルバムを作りたかったんじゃん」って初めて思ったんですよ。これまではいつも、作りながらも、どこかで軌道が変わって、最終的に「んー、求めていたものと違うな…」っていうのが、どっかしらあったんです。

――ええ。

杉山清貴:去年、そのアルバムで杉山清貴自身で等身大の作りたいものができたんです。だから、次「アルバムを作れ」って言われたらどうしようかな「いや、そんなに作りたくはないんだよな…」って悩んでいたんですよ。そしたら案の定、年が明けて「アルバム作りましょう」って言われた。ならばいっそのこと「人に任せてしまおう」と。

――なるほど。


杉山清貴:それで、プロデューサーを立てることになった。そこで紹介してもらったナガノさんというプロデューサーが素晴らしくて、「この人だったら信頼できるな」って思えたので、「じゃあ、お任せします」と。僕らが若いときには車に乗って音楽を聴いていた時代があったので、そういう音を作っていこうと『Driving Music』というタイトルが先に浮かんできたんです。あとはもう、プロデューサーにおんぶに抱っこで、できあがった。

――もともと杉山清貴サウンドって、マリンブルーな海のイメージがありますが。

杉山清貴:そうですね。やっぱり「俺は海だ!」で来ちゃってるんで、もう海以外ないんですよ。だからこそ「杉山のこういう声を聴きたい」とか、「こういう歌を歌わしてみたい」とかっていう人に頼むのが面白いんじゃないかなと思ったんです。自分で作っていくと、やっぱり自分で作りやすい、歌いやすいものになっていくわけで、キーの設定も無理はしないわけですが、でも人に頼むと「このキーで歌うの?」みたいなものがくるんですよね。それが楽しくて。

――はい。

杉山清貴:もう、アーティストというよりはシンガーになろう、と。

――料理されてしまおう、と。

杉山清貴:そうです。それで、今回こういう形になったんです。自分で3曲ほど作って、あとはナガノさんが20曲ほど楽曲を集めてきて「これはちょっとタイプが違うね」「これはおもしろそうだね」って整えたのが今回の10曲です。

――作品をイメージするキーワードはあったんですか?

杉山清貴:「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」ですね。やっぱり、AORに帰っちゃおうかなっていうところ。

――「SHINE SHINE」という曲は、自身の作詞・作曲ですね。

杉山清貴:ギターのコジマさんと2人でスタジオに入って、僕もギターを弾いて2人で録っただけです。

――今回は私も光栄にも「眠れぬ夜に~I miss you~」という曲の詞を書かせていただいて。


杉山清貴:はい。ありがとうございました。いい詞ですね。ものすごくストレートな詞ですし、最近ああいう歌は歌ったことがないなって思ったんですよね。成田(忍)さんのメロディーも非常に変わっていて、たぶん1回でハマったと思います。

――ほんとですか。

杉山清貴:あのサウンドと詞を、どう料理するかっていうのが僕の役目ですから。意外に好きな世界なんです。照れくさくてなかなか自分では作らないですけども(笑)。

――すみません(笑)。

杉山清貴:でも、そういうのがいいんじゃないですかね。

――7月にはライブがありますが、『Driving Music』の曲も?

杉山清貴:2曲くらいかな。このアルバムは室内でじっと聴いてほしいから、だから、野外ライブじゃなくて屋内ライブで、ぎっちり、みっちりやりたいなと思っています。今僕のコンサートに来てくれている世代の人たちは、昔の音源を聴く機会が多いですよね。そういう人たちに、新しいアルバムを提供してあげたいっていう気持ちなんです。オメガトライブの時代を10代で過ごした人たちは、やっぱりあそこの音を求めて、いまだに聴くって言うんですよ。

――今聴いてもいいですし。


杉山清貴:僕も大好きです。でも、確かにあの世界はもう演っていないので、“大人になった皆さんが、昔の曲ばっかり聴いてたとこに、最新のものを入れてみたらどうですか”みたいな感覚です。

――旧曲に混ぜてシャッフルで聞いてもサウンド的に馴染みますよね。

杉山清貴:そうですね。ちゃんと大人になっているこの年齢だから、こういう詞が歌えるんだなっていうのもありますしね。

――普段は、どんな音楽を聴いているんですか?

杉山清貴:ノンジャンルですね。興味があったやつは何でも聴いちゃう。3年ぐらい前かな。カナダのアーティストで、バハマズって人がいるんですよ。<Apple Music Festival>でライブを観ることができたんです。オープニングで出てきて、いきなり歌い出したら、ものすごいインパクトがあったんで、すぐハマって、アルバムをがーっと買いまくった。誰も知らないんですけどね。でも、仲間に聴かせると「かっこいいね!」って乗ってくるんですよ。そういう聴き方が多いです。何かでちょっと聞いて、気になったらすぐ調べて買ってしまったりとか。

――買うときはCDを?

杉山清貴:CDを買います。ダウンロードもしますけど、「これはパッケージ欲しいな」ってときにはCDを買います。

――最近の音楽マーケットの変貌をどう見ていますか?

杉山清貴:全然分かんないですよ(笑)。気にしないというか、あまり周りを見ないんで。ずっとマイペースでやってきてますんで。ただ、市場っていうんじゃなくって、ミュージシャンが自由に音楽を作れる時代になったのはいいなと思いますね。

――なるほど。


杉山清貴:1980年代に、1970年代っぽいシャッフルのドラムとか入れようとすると「古いよ、そんなの」って言われてね、「古い古い」って言われてた時代が1980~1990年代にあったじゃないですか。それが2000年になって世代が変わったら、1970年代も1980年代も全部OKになって、世の中にいろんな音が出るようになった。それがいいなと思います。その時代の音って、あとから聴くと恥ずかしかったりとか…特に1980年代のゲートリバーブ(註:ドラム・エフェクトのひとつ。ピーター・ガブリエル、フィル・コリンズ周辺が代表的とされている)とか体験した人間は「ちょっとなぁ…」って思っちゃいますけど、今は何でもありなんだと思います。

――これからの杉山清貴サウンドは、どのようになりますか?

杉山清貴:「どうしても俺はこういう作品が作りたい」っていうときがあれば、そっちにいくでしょうけども、ずっと気持ちよくいたいなっていう感じでは、今作の流れで、いくつか作品を作っていけたらなと思います。『Driving Music 2』『3』『4』…という構想が自分のなかではありますよ。

――やっていきたいことも?

杉山清貴:今回、素晴らしいプロデューサーと出会って、まだまだいろんなことができるなって思っています。新しいミュージシャンたちと出会うことも多くて。今まで付き合いがなかった人たちとの付き合いが、ちょっと楽しくなってまして。

――いいですね。


杉山清貴:どんどん新しいものが入ってくるんだったら、そりゃ採り入れていきたい。今までは「杉山清貴というアーティストを、自分でどう料理していくか」っていうことだけ考えてきたんですけど、去年でそれが完結したので、「あとは誰かやって!」みたいな感じです(笑)。

――今までやらなかったようなサウンドも、これからはあるかも?

杉山清貴:はい、もちろん。やりたいですね。シンガーとして「自分だったらこのキーじゃ作んないよな」って曲もやっていくことによって、自分の新しい歌の世界も広がってくる。まだまだいろいろ勉強できるなと思っています。



杉山清貴『Driving Music』

2017年7月19日発売
KICS-93501(初回限定盤) CD+DVD ¥3,241+税(MV、メイキング、オフショット映像)
KICS-3501(通常盤) CD ¥2,778+税
NKCD-6797(会場限定盤) CD ¥2,778+税
1.Lost Love(作詞・作曲:澤田かおり)
2.REALY, SEE THE LOVE(作詞:杉山清貴 作曲:南 佳孝)
3.Woman(作詞:和悠美 作曲:Dick Lee 編曲:成田 忍)
4.Hold My Hand(作詞:渡辺なつみ 作曲:杉山清貴)
5.雨粒にKissをして(作詞:杉山清貴 作曲:Manzo)
6.Feel So Sweet(作詞:杉山清貴 作曲:Manzo)
7.SHINE SHINE(作詞・作曲:杉山清貴)
8.Night Bird(作詞:和悠美 作曲:Dick Lee 編曲:成田 忍)
9.眠れぬ夜に~I miss you~(作詞:トベタ・バジュン 作曲:成田 忍)
10.THE END OF SUMMER(作詞:渡辺なつみ 作曲:杉山清貴)
11.S.E
- Special Thanks
12.真夏のイノセンス(作詞:売野雅勇 作曲:林 哲司 編曲:新川博)
13.Hello Summer(作詞・作曲:杉山清貴 編曲:住友紀人)南 佳孝with杉山清貴
14.No.1(作詞・作曲: 馬場俊英 編曲:五十嵐宏治)馬場俊英with杉山清貴
-Bonus track-
15.PURPLE RAIN(2016 Mozart Hall Live)(作詞・作曲:Prince Rogers Nelson 編曲:高瀬順)


<SUGIYAMA,KIYOTAKA The open air live “High & High” 2017>

7月8日(土)
@東京・日比谷野外音楽堂
16:45 open/17:30start(雨天決行・荒天中止)

7月15日(土)
@大阪・大阪城野外音楽堂
16:00open/16:30start(雨天決行・荒天中止)

<アコースティックソロツアー2017>

8月5日(土)14:30 open 15:00 start @高知 X-pt.
8月6日(日)14:30 open 15:00 start @徳島 P-Paradise
8月11日(金・祝)13:30 open 14:00 start @なら 100年会館・中ホール
8月12日(土)13:30 open 14:00 start @京都アルティ
8月19日(土)14:30 open 15:00 start @静岡 焼津文化会館・小ホール
8月20日(日)15:30 open 16:00 start @静岡 クリエート浜松
8月27日(日)15:30 open 16:00 start @神奈川 ハーモニーホール座間・小ホール
9月3日(日)14:30 open 15:00 start @東京 よみうり大手町ホール
10月15日(日)14:30 open 15:00 start @茨城県立文化センター小ホール
10月21日(土)14:30 open 15:00 start @千葉 京葉銀行文化プラザ 3 階音楽ホール
10月22日(日)14:30 open 15:00 start @埼玉 サンシティ越谷市民ホール 小ホール

◆杉山清貴オフィシャルサイト
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