【詳細レポート】SUGIZO vs INORAN、「また来年、会おうね!」

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LUNA SEAの2人のギタリストによる<SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT 2017〜L2/5〜>が6月11日、Zepp Tokyoにて開催された。その後に行われた香港およびシンガポールの“Asia Leg”も大盛況。全行程が終了した“BEST BOUT 2017”を改めて振り返るべく、先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いてZepp Tokyoの詳細レポートをお届けしたい。

◆SUGIZO vs INORAN 画像

同じバンドのギタリスト同士が火花を散らすこの対バンライヴは2016年6月9日(ロックの日)にZepp Diver City Tokyoで第一回目が行なわれ、集結したファンもレアな試みに大興奮。2人もステージ上で「またやろうか」と盛り上がっていたのだが、2017年はなんとツアースタイルに拡大して実施された。前年からちょうど1年後となる6月9日には大阪なんばHatchで開催、加えて大阪と東京が“JAPAN Leg”、香港とシンガポールでの公演が“Asia Leg”と題されて海外でも貴重な名勝負が見られることになった。

開演予定の18時を過ぎると自然と手拍子と2人の名前を呼ぶ声が高まっていき、沙幕の上手にSUGIZOがヴァイオリンを奏でる姿が映し出される。ほどなく下手にはエレキギターを弾くINORANの姿が浮かび上がった。前年もいきなり2人のセッションで幕を開けたが、アンコールではなく最初から“VS”の醍醐味を見せてくれるのも、本ライヴならでは。想いを交わすようなスリリングなやりとりではSUGIZOの激しさを秘めた演奏に対し、INORANがノイジーなギターで応酬する場面や、ヴァイオリンの弓でSUGIZOがINORANのほうを指したりと、いやがおうにも“BEST BOUT”への興奮が高まるオープニングだ。紗幕が落ちるとSUGIZO、INORANとドラマーのkomaki、そして2人をイメージして描かれた不死鳥と龍の巨大なイラストが。この絵も、もはやライヴ<SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT>のシンボルと言っていい。


歓声の中、ステージはいったん暗転。背景にSUGIZOの登場を意味する美しく魅惑的なシンボルマークが浮かび上がった。意表を突いて先攻はSUGIZO。ハンドクラップの中、ドラムのkomaki、パーカッションのよしうらけんじ、マニュピレーション&シンセサイザーのMaZDAが定位置につき、最後にSUGIZOがステージセンターで両手を広げて、まずは挨拶から。

「“BEST BOUT”へようこそ。INORANセレブのNO NAME?のみなさん、よろしくお願いします。SUGIZOセレブのSOUL’S MATEのみなさん、気合い入ってますか?」──SUGIZO

これは、先ごろ日本武道館で開催されたLUNA SEAのアニヴァーサリーライヴの映像を朝のワイドショーが流した際、“スレイブ”を“セレブ”と勘違いして伝えたことを受けてのもの。このSUGIZOのMCに場内が沸く。

が、右手を掲げ、ステージが始まるとその空気は一変した。赤く光るリボンコントローラーでモジュールシンセを操ってのオープニングナンバーは、アルバム『音』の1曲目に収録されている「IRA」だ。最新作の“怒れる電子音楽”を象徴するナンバーであり、攻撃的でいて変則的なビートと照明が脳の奥をたえまなく刺激してくる。SUGIZOのエッジーなギターと雅楽の笛に通じるフレーズ、そしてOrigaの美しいボイスがカオティックに絡み合う音世界に圧倒される。モノクロームな世界から一転、ギターをECLIPSE V-IXに持ち替え、サイケデリックな照明の中で鳴らされたのは「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」だ。心地好いトランスビートに身を委ねるフロアにSUGIZOは下手から上手へと動き、鋭利なギターカッティングで挑発。極彩色のソロを響かせて、くるくる回るパフォーマンスも印象的だった。



スクリーンに深海の映像が映し出され、ギターをヴァイオリンに持ち替えると、SUGIZOの代表曲のひとつ「FATIMA」へ。Zepp Tokyoは楽園へと姿を変えた。この季節にピッタリの甘美で優雅な旋律。海をバックにゆらゆらと身体を揺らすベリーダンサーの映像とグルーヴがあいまって、連れていかれる感200%の演奏が繰り広げられた。人間も自然の一部なのだというメッセージが根底にあるからこそ、SUGIZOの音楽はこの歪んだ世界に敏感に反応する。

癒しの空気を切り裂いたのは、スモークが立ち込めて照明と映像の鋭光が『音』のアートワークを思い起こさせる「Lux Aeterna」だ。前年の“BEST BOUT”で初披露されたこの曲は、引き裂かれていくものを表現しているかのよう。打ちつけるタイトなビート、危機感を増幅させるギター、変拍子のリズムとアンビエントな響き、白と黒が激しく交錯する世界。スクリーンには罪のない子供たちが映し出され、腐敗した聖母像が浮かぶ。天に向かって祈りのポーズを捧げ、激しくギターを弾く姿に「SUGIZO!」というオーディエンスの太い声が飛んだ。



後半は『音』からの楽曲が立て続けに披露された。「Decaying」ではSUGIZOが凶暴にギターをかき鳴らして、パーカッションのよしうらけんじが火花を何度も散らせて金属音を発する。そのパフォーマンスに驚きの声が飛び、インダストリアルかつプログレッシヴジャズなナンバーに脳みそをぐるぐるかきまわされるような感覚になった。続いて披露された「禊」は破壊力のあるギターがフロアを高揚させていくヘヴィでサイケデリックなトランスナンバー。よしうらがステージ前に出てきてジャンベを叩き、SUGIZOがハンドクラップで煽り、狂騒の空間へと導いた後、再びカラフルな照明が場内を照らした。

最後に鳴らされたのはライヴのキラーチューンであり、恍惚のダンスナンバー「DO-FUNK DANCE」だ。両手を高く掲げ、ピックを投げ入れたSUGIZOはメンバーを紹介。「みんな、最高でした! 次のINORAN、最高に盛り上げてくださいね。愛してます」と告げ、4人で肩を組んで挨拶。ペットボトルを投げ入れて、手を振ってステージを去った。


セットチェンジを挟んで後攻はINORANだ。ブルーのジャズマスターをかまえて「東京! 最初から飛ばしていこうぜ!」と咆哮。スモークがたちこめる中、一発目に鳴らされたのはガレージロックの荒々しさを持つ疾走感たっぷりの「grace and glory」だ。間奏でギターを高く掲げ、コール&レスポンスで会場を熱くさせていく。最新アルバムのタイトル曲「Thank you」は雄大なグルーヴと温かみのあるメロディが秀逸。続いて届けられた「Get a feeling」は密室にも陽ざしが届いてくるようなビートとメロディが心地いいナンバーで、アッという間にINORANワールドに包まれていく感覚に陥った。

「“BEST BOUT 2017”にようこそ! SUGIZO、何かしゃべりましたか?」と問いかけるとフロアは笑いに包まれた。仮に終幕前、こんな対バンが開催されていたとしたら、SUGIZOが同じことを言ったかもしれないと思うと月日の流れを感じずにはいられない。

「このイベントも去年と合わせると今日が3本目。初めての後攻なので、どうやって攻撃しようかなとSUGIZOのステージを横で見てました。兄貴のすごいステージに負けないようにしようと思ってます。それにはみんなの力が必要です! 思いきり楽しんでいくぞ!」──INORAN


フックのあるギターフレーズと伸びやかなメロディが溶け合う開放感たっぷりのナンバー「Awaking in myself」はヴォーカリストとしてギタリストとしてキャリアを重ねてきたINORANの“今”を物語っているよう。野外フェスを見ているような風通しのいい空気が会場に広がり、ジャンプする人が多数。そして、この曲が終わると彼のライヴのトレードマークといっていい、ステージに張り巡らされた電飾が点灯し、間あいがスリリングなブラックフィーリングたっぷりのロックナンバー「2Lime s」へ。

中盤ではINORANがSUGIZOをステージに呼びこんだ。「SUGIZO兄貴、SUGIZO先生、SGZ? SUGIZOのセレブよ」と笑わせ、「ここでちょっと呼んじゃう?」の問いかけに大歓声。


ステージに登場したSUGIZOは、INORANから再び「MCでしゃべったんですか?」と突っ込まれるも動じることなく、「盛り上がっておりますか? 今回、2回目ですね。もうライフワークみたいになってきたなと思って」と今後もこのイベントが続いていくことをほのめかして拍手喝采。しかし、まだまだと言いたげなINORANが「今日次第だよ。だって日本最後だもん」と言うとSUGIZOも「キミたち次第だよ。日本が永遠に最後になるかも」とザワつかせた。「せっかく俺らのステージに来てくれたんだから、美しい景色を見せてくれよ!」というINORANの煽りで、SUGIZOを迎えて演奏されたのは、まさに美しいこの瞬間を切り取ったようなナンバー「Beautiful Now」だった。スケール感たっぷりの曲にSUGIZOのギターのカッティングが加わることによってさらに厚みと力強さが増し、2人が向かい合ってギターを弾き、歌うINORANにSUGIZOがガチで接近する場面も。オープニングのセッションが刺激的なバトルなら、この曲は兄弟の絆が垣間見えるような共演だ。

「スペシャル! スペシャル! スペシャル! SUGIZOでした!」とSUGIZOを送り出し、「体温が上がりましたか? 鼓動が早くなりましたか? 溢れる想いが強くなりましたか?」とライヴは後半戦に突入した。INORANのライヴに欠かせない「Rightaway」はイントロのYukio Murataのギターからしてひきこまれるナンバーで、タイトでパワフルなRyo Yamagataのドラミングも最高。ハンドクラップで盛り上がり、INORANは下手に、ベースのu:zoが上手に出て煽る。「Get Laid」はおなじみのINORANのレクチャーでコール&レスポンス。野郎とレディースに分かれて、みんなが声を上げ、一体感を生み出した。


「ずっとこの場所にいたいよ」と叫んだINORANはソロデビュー20周年を記念して8月23日に2枚組のセルフカバー・ベストアルバム『INTENSE / MELLOW』をリリースすることを報告。「曲をチョイスしてめちゃめちゃアレンジしてるから楽しみにしてて」と語った。さらには9月29日に恒例のバースディライヴを開催、9月1日を皮切りに全国12都市を廻る<SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 - INTENSE / MELLOW ->を行なうことも報告した。そのベストアルバムに収録されている曲だと前置きし、披露されたのはグルーヴが最高に気持ちいい「raize」。ラストを飾ったのは大地と流れる雲が浮かんでくるような「All We Are」だった。みんなが歌う声に幸せそうに耳を傾けていたINORAN。感動的な光景が目の前に広がった。

INORANのステージが終わってもアンコールを求める拍手と声は鳴り止まず、2人が揃ってステージに登場。大阪公演で写真を撮り忘れてしまったSUGIZOにINORANが「写真、忘れないように」と突っ込みを入れ、客席をバックにカメラを向けるSUGIZOがINORANを呼び寄せて、一緒に収まる場面も微笑ましかった。


「すげえ楽しかったよ。素晴らしかったのでみんなのせいで今日が永遠に最後の“BEST BOUT”ということはなくなりました」とSUGIZOが宣言するとINORANが先走って「来年の6月9日に会おうな! ウソウソ」と発言、SUGIZOが「今から小屋とらなきゃね。でも、LUNA SEAが入ってるかもしれない」と言うと、客席が喜びと困惑が入り混ざったパニック状態に。

「何回も言ってるんですけど、同じバンドで同じギター同士で対バンするなんて、めちゃくちゃなバンドですけど(笑)、やってよかったと思います。こんなに素敵なみんなとこんなに素晴らしいバンドのメンバーと、こんなに素晴らしいスタッフと作り上げる。一生、忘れられない時間です」とINORANがまとめ、SUGIZOが締めた。「そしてみんな、最高でした! また来年、会おうね!」

最後は出演者8人が横に並んで深々とお辞儀。どうやら、この超超スペシャルな対バンライヴはまた実現しそうだ。運が良ければ2018年の6月9日に。

取材・文◎山本弘子

■<SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT 2017〜L2/5〜>
2017年6月11日@Zepp Tokyoセットリスト

【SUGIZO】
01.IRA
02.TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?
03.FATIMA
04.Lux Aeterna
05.Decaying
06.禊
07.DO-FUNK DANCE
【INORAN】
01.grace and glory
02.Thank you
03.Get a feeling
04.Awaking in myself
05.2Lime s
06.Beautiful Now
07.Rightaway
08.Get Laid
09.raize10.All We Are


◆SUGIZO オフィシャルサイト
◆INORAN オフィシャルサイト
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