【総括レポート】PIERROT×DIR EN GREY、<ANDROGYNOS>横アリ2DAYS「ひとつになれんだろ!」

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そして翌日、僕のそうした想いはいっそう強いものになった。第二夜は当然のごとく出演順が入れ替わり、まずはPIERROTが登場。クセの強い演奏と音像でありながら、この夜の彼らのバンド・サウンドも刺激を失わぬまま安定感と機能美を保っていた。また、楽曲としてのたたずまいに異形の匂いが伴っていても、やはりこのバンドは耳に残る独特のメロディと、それを他の誰よりも効果的に伝播することのできる声を持ち合わせている。綿密に編まれたコンセプチュアルな作風や活動ぶり、キリトの挑発的な言動や、どこかイビツでありながらクセになるサウンドといったものも当然ながらこのバンドの魅力に数えられるはずだが、やはり肝心なのはそれなのだ。改めて、そう強く感じさせられた。





そして二夜の饗宴を締め括る形となったDIR EN GREYのステージは、前夜の好演をも凌駕するかのような、すさまじい密度とスリリングな落差を伴ったものとなった。ことに中盤で披露された「アクロの丘」から「VINUSHKA」へと続く流れは、ポカンと口を開けて立ち尽くしているしかないほどの圧倒的な緊迫感が、極上の快感をもたらしてくれた。それに続いた「GRIEF」のライヴでの効力の高さ、「Sustain the untruth」のヘヴィなグルーヴの説得力、一緒に歌える部分などごくわずかなのにすべての観客を否応なしに巻き込んでしまう「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」の威力についても、やはり圧倒的なものを感じさせられた。



そして、その「激しさと~」でひとたび姿を消した彼らは、アンコールで「THE FINAL」と「残」を披露。前者の冒頭、“解けてしまう意図”という歌詩が聴こえてきた時、僕の脳裏にはPIERROTの「蜘蛛の意図」が浮かんだ。そして、思った。この<ANDROGYNOS>がどのような意図のもとで行なわれたものであろうと、すべてはもはや解けているのだ、と。かつて同一シーンにおける二大勢力と目され、良くも悪くも比較対象とされる機会の多かった両バンド。しかし彼らを分断するものも、がんじがらめに縛り付けるものも、2017年の現在には一切存在しないのだ。

「THE FINAL」を丁寧に歌い終えた京は「ピエラーさん、今日も元気ですか? DIR EN GREYです」と、超満員の客席に向かって改めて挨拶をした。そして彼の言葉は、次のように続いた。

「ピエラーさんたちと、愛すべき糞ったれども。ひとつ言いたいんですけど……“丘戦争”って何?」

おそらくこの夜、SNS上などでもっとも引用されたのがこのMCだったのではないだろうか。この言葉によって、まさにその場に張り詰めていた緊張感の糸を緩ませた京は、次の瞬間、「おまえら、ひとつになれんだろ! かかってこい!」という叫びでその場に火を放ち、最後の最後、まるですべての残像をかき消すかのような「残」を披露したのだった。





どす黒いカオスを提供しておきながら、京をはじめとするDIR EN GREYの面々は、実に清々しい表情でその場を去っていった。そして実際、ふたつの夜を終えて胸に残ったのは、わだかまりや煮え切らない想いではなく、まさに清々しさそのものだった。そして同時に思ったのは、この機会を通じてPIERROTとDIR EN GREYは、この2バンドにしかできないことを実践することによって、彼らの世代なりの改めての自己存在証明をしてみせたのではないか、ということ。<ANDROGYNOS>は、いわゆる巨大フェスでもなければ、仲のいいバンドばかりが集う祭りでもない。いわば、閉ざされた世界で自分たちなりの苦闘を続けてきたバンド同士のぶつかりあいだ。たとえばそこには、彼ら自身が意図していたか否かはわからないが、対バンとはどういうものであるべきか、ヴィジュアル系にとっての成熟とは何か、といった問題提起も含まれていたかもしれない。が、何よりも強く感じさせられたのは、レジェンド枠と呼ばれつつある上の世代とも、少しだけ下の世代とも明らかに違う理想が、この両バンドにはあるということ。敢えてもっとはっきりと断言するならば、彼らの存在なしに双方の世代が繋がることはなかったはずだし、同時にどちらのバンドもそうした世代間の架け橋となることだけを存在理由としてきたわけではないということだ。

そう、他のバンドにはできないことが、この2組には可能なのだ。この二夜の目撃者となった人たちの多くがそれを確信することになったはずだ。そして、この双璧を脅かすような次世代バンドの登場にも期待したい。

取材・文◎増田勇一


■<ANDROGYNOS - a view of the Megiddo ->
2017年7月7日(金)@横浜アリーナSETLIST

【DIR EN GREY】
01.Revelation of mankind
02.audience KILLER LOOP
03.FILTH
04.空谷の跫音
05.OBSCURE
06.Chain repulsion
07.輪郭
08.INCONVENIENT IDEAL
09.Sustain the untruth
10.THE FINAL
11.AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
12.CHILD PREY
13.Un deux
14.詩踏み
15.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
【PIERROT】
01.MASS GAME
02.Adolf
03.ENEMY
04.AGITATOR
05.脳内モルヒネ
06.ドラキュラ
07.THE LAST CRY IN HADES(NOT GUILTY)
08.HELLO
09.新月
10.REBIRTH DAY
11.*自主規制
12.CREATURE
13.MAD SKY-鋼鉄の救世主-
14.蜘蛛の意図
encore
en1.HUMAN GATE

■<ANDROGYNOS - a view of the Acro ->
2017年7月8日(土)@横浜アリーナSETLIST

【PIERROT】
01.MAD SKY-鋼鉄の救世主-
02.Adolf
03.ENEMY
04.*自主規制
05.脳内モルヒネ
06.MAGNET HOLIC
07.パウダースノウ
08.鬼と桜
09.PIECES
10.PSYCHEDELIC LOVER
11.CREATURE
12.クリア・スカイ
13.HUMAN GATE
14.蜘蛛の意図
【DIR EN GREY】
01.Un deux
02.OBSCURE
03.詩踏み
04.濤声
05.audience KILLER LOOP
06.Behind a vacant image
07.アクロの丘
08.VINUSHKA
09.GRIEF
10.朔-saku-
11.Revelation of mankind
12.Sustain the untruth
13.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
encore
en1.THE FINAL
en2.残


■LIVE Blu-ray & DVD『ANDROGYNOS』発売決定

▼ANDROGYNOS Blu-ray【豪華盤 (2DAYS収録 + 特典映像)】
3枚組(本編+特典) ANDV-001 ¥23,000+税
▼ANDROGYNOS DVD【豪華盤 (2DAYS収録 + 特典映像)】
5枚組(本編+特典) ANDV-002 ¥22,000+税
<豪華盤特典>
・特典映像DISC
・特殊パッケージ仕様
・豪華ライブフォトブックレット
▼ANDROGYNOS DVD<DAY1収録>
2枚組(本編) ANDV-003 ¥12,000+税
▼ANDROGYNOS DVD<DAY2収録>
2枚組(本編) ANDV-004 ¥12,000+税
※生産数量限定商品となります。確実にお買い求めいただくには、2017年9月30日(土)23:59迄にご予約ください。
※収録内容及び仕様等は変更になる可能性がございます。
【予約受付】
予約期間:2017年7月7日(金)21:00~2017年9月30日(土)23:59迄
お届け予定日:2017年12月12日(火)
予約受付:ローチケHMV(HMVオンライン) http://www.hmv.co.jp/fl/10/1654/1/


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