【ロングレポート】雨天続きのフジロック'17が映し出したもの

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メディアやSNSで言及されている“今年の客層”についてだが、ひとりで来ている中高年の多さが気になったということはなかった。移動中にたまたま「今回は全体的に90年代に思いを馳せてる気がする」という他人の会話が耳に入ってきたのだが、そういうアーティストを目当てに来た人も多くいた年だろうし(もちろんそういったアーティストは現行のミュージシャンとしてのステージをしっかり見せてくれた)、それにフジがスタートしてから20年のあいだに年を重ねた人々がそのまま参加し続けているという素晴らしさの表れでもあるのだろう。たとえば、筆者も当時のレポートで触れたように、「邦楽が増加した」とされた2015年のフジロックは、いわゆるキッズ的な若者が会場に多く見られた。ONE OK ROCK、10-FEET、星野源、椎名林檎、[Alexandros]、the telephonesがグリーンに出演し、ゲスの極み乙女。、キュウソネコカミらもレッド・マーキーに登場したことが直結したのだろう。フェスのブッキングとは、まるでプレイリストのようにアクトの流れや自ずと湧き上がってくる開催年独自のテンションが生じるからとても興味深いのであって(今年は特にそう)、だから客層がそれに左右されるのは至極自然なことのはずだ。また、子連れの欧米人、若いアジア圏の人々などの姿が今年は多かったように関したが、フジロックがわざわざ訪れたくなる世界的な名所のひとつとして定着していることを物語っていたのだと思う。



それと改めて言っておきたいのが、まだ参加したことのない人にはフジロックの会場はまるで無人島のようだと想像している人もいるようだけれど、それはない。まず最寄り駅の越後湯沢駅には一式の服装が揃いそうなアウトドアグッズの販売店があり、場外エリアにはもしもの時に安心なATM車、あとは宅急便の受付所もあるし、会場内外のほぼ全ての飲食・グッズの購入に各種電子マネーが使用可能になったほどだ。



連れが見つからないという人は、むしろひとりで楽しむのがおすすめ。フジロックだけで再会する遠方の知り合いの存在があったり、車で大勢でワイワイと来るのも勿論楽しいが、ひとりで動いている人なんて山ほどいるから何も寂しくない。それにこのご時世、何かを人に伝えたくなったらSNSに投稿すればいい。音楽談義や批評が乱発している。好きな格好をしている道行く人の人間観察も面白いし、「隣の人がテントの神様みたいな人で、1時間悩んでたのに10分で組んでくれた!」という女子の嬉々とした話が耳に飛び込んできたりもする。自由に動き回ったり休憩できるから、ふらっと立ち寄ったオアシスで「いつもはソロだけどフジロックのためにチームを組んだ」「他の仕事を蹴って苗場に来た」と話して全身全霊でワザを披露する大道芸人に出会ったりもする。フジロックにかける気持ちの大きさはミュージシャン以外もこんなに巨大なものであり、フジロックが総合的なアート/エンターテイメント空間だと再認識したりできるのだ。

アート/エンターテイメント空間と言えば、場外エリアのパレス・オブ・ワンダーで深夜におこなわれていたフランスのバイクスタント集団“インファーナル・ヴァランズ・メガ・グローブ・オブ・デス”によるスリリングなパフォーマンスにも、人だかりができていた。このエリアは、本当に人を眠らせない(笑)。



▲パレス・オブ・ワンダー

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