【インタビュー】フラワーカンパニーズ「“とりあえずアルバム出しとこう”は今の時代、ナシだよね」

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フラワーカンパニーズが、16枚目となるフルアルバム『ROLL ON 48』を完成させた。2008年以降所属していたメジャーレーベルを離れ、新たに設立した自主レーベル「チキン・スキン・レコード」の第一弾リリースとなる本作。このアルバムは結果として、メジャー時代に残した『Stayin’ Alive』、『ハッピーエンド』、『チェスト!チェスト!チェスト!』といった普遍性の高い傑作群とは、全くもって気色の違うアルバムに仕上がっている。言うなれば、上記した3作がザ・ビートルズのアルバムだとするなら、『ROLL ON 48』は、ジョン・レノンのソロアルバムに質感が近い。つまり、己の感情に対してどこまでもリアルであり、尚且つ、エゴイスティックなアルバムである、ということ。

衝動的なバンドアンサンブルを聴かせるサウンド、そして、“人間・鈴木圭介”というよりは、“バンドマン・鈴木圭介”の内面性を追求した歌詞は、躁鬱感情を極端に往復しながら、時折、心と身体がどうしようもなく噛み合わなくなる、そんなアンビバレントな瞬間すらも作品の中にパッケージしている。結成28年目にして、何故、これほどまでにロックンロールに対して誠実でいられるのだろう? そう感じさせずにはいられない“生き物”のようなアルバム、『ROLL ON 48』。今、このアルバムを産み出さなければならなかった、その背景を鈴木圭介とグレートマエカワに聞いた。

◆フラワーカンパニーズ 画像ページ

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■ もう、“自分たちでやっていくこと”=“小さくなること”ではないからね

▲アルバム『ROLL ON 48』

── 新作『ROLL ON 48』は、ここ数作のフルアルバムと、まったく気色の違うアルバムだと感じました。『ROLL ON 48』というタイトルが顕著ですけど、このアルバムは、フラカンというバンドの、あるひとつの期間における変化の瞬間を捉えた生々しいドキュメント作品なのではないか、と。

グレートマエカワ(Ba):そうだね。そもそも、俺たちは基本的に“鈴木圭介が思ったことを音楽にする”っていうことをやってきたわけだから、アルバムはいつも、そのときのフラカン、そのときの鈴木のドキュメントではあるんだけど……たしかに、今回はいつも以上にドキュメンタリー性が強い作品だとは思う。ドキュメント性という点だけで言えば、27〜8年前、まだ名古屋にいた頃に売っていた2曲入り200円のデモテープに近いと言ってもいいくらいだと思う。

── 28年というキャリアを経て、今、再びそこに行き着いたのは何故なのでしょうか?

鈴木圭介(Vo):これは作り終えて思ったことだけど、前のアルバムまでは、メジャーレーベルから出していたわけで。大きいレコード会社とやっていくときって、見切り発車ができないんだよね。まず会議があって、そこで制作期間やリリース日が決まって、「じゃあ、どういう作品にしましょうか?」っていう話し合いが始まって、そこで何かしらのコンセプトを決めて、そこに向って作り出すっていう形になる。たとえば、『チェスト!〜』のときだったら、“名盤を作ろう”っていうコンセプトがあって制作が始まる、みたいにさ。でも、俺は元々、そういう作り方が得意ではないし、この数年間、自分自身のなかではもう、そのやり方では済まなくなってきていたんだよ。

▲鈴木圭介(Vo)

── なるほど。

鈴木:そもそも、計画を立てて人生やってきていないからさ。もちろん、端から枠組みがあって、それに合わせていくことが得意な人もいると思うんだよ。ある程度、制約があったほうが燃える人っていると思うし、俺も、それに燃えていたときもあって、上手くやれてきた部分もあったんだけど……。でも、今回のアルバムを作って思ったのは、今は、制約がない方がやりやすい。事前に決められたコンセプトにモチベーションを寄せていくっていう作業は、今の自分には、ちょっとキツい。それよりは、もっと自由に、“気分で作る”っていうことをやらせてほしかったんだと思うな。

グレート:だから今回は、プロデューサーやディレクターもなしで、4人だけで作ってみたんだよね。その結果として生まれるものが、新しい音楽であろうが、古い音楽であろうが関係ない。そのくらいの作品を1枚作ってみて、それから、次をまた考えた方がいいんじゃないか? 今は、そういう時期なんじゃないか?って思っていたから。

── その考えは、グレートさんのなかにもかなり明確にあったものなんですか?

グレート:もっと鈴木の濃い部分が出た方がいいんじゃないか?っていうのはあったね。そもそも、「TRASH RECORDS」(02〜07年まで作品をリリースしていた自主レーベル)でやっていた頃も、ディレクターはいたけど4人だけでやっていたようなものだったんだけど、そこから、もっと俯瞰で見ることができる人、言うなればアイデアマンが欲しいと思って、08年からもう1度メジャーに入ったっていう流れがフラカンにはあって。実際、そこではいろんなアイデアをもらって、今まで知らなかった世界にバンドを広げることができたなって思うんだけど、7〜8年やっていたら、なかなかアイデアも出てこなくなるからさ。

▲グレートマエカワ(Ba)

── 先ほどの鈴木さんの話も踏まえると、やはり、今作が非常にドキュメント性の強い作品になったことと、今作からメジャーを離れ、自主レーベル「チキン・スキン・レコード」を立ち上げての活動にシフトチェンジしたバンドの動きとは、密接に繋がっているわけですよね。

グレート:そうだね。ただ、今回のアルバムのレコーディングは4人だけでやろうっていうことは、次もまたメジャーで出すのか、それとも自主レーベルから出すのかっていうことが決まる前から考えていたし、実際、レーベルの話が決まる前から、アルバム作りは進めていたのよ。ディレクターという存在がいなくても、この4人と、ここ10年くらい一緒にやってきたエンジニアがいれば、なんとか1枚作れるだろうって思っていたから。それと同時に、50歳を越えたら、もう活動の全ては自分たちで回していくべきだっていうことも、何年か前から考えていたんだよね。やっぱり、音楽業界の流れも変わってきたじゃん。

── そうですね。

グレート:俺らが最初にメジャーデビューしたのが20年以上前だけど、その頃と比べてもCDが全然売れなくなっているのは数字を見てもわかるし、“このくらいの売り上げ枚数でも、チャートのベスト10に入っちゃうんだ”とか、この数年間、いろんな現実を見ていたから。そんな中でも、俺たちは“死ぬまでやる”って言い続けてきたし、そのつもりだからさ。長くやるためにはどうやって活動していくのが一番いいのか? っていうことは、この数年間もずっと考え続けてきていて。

鈴木:今の音楽業界全体の流れを知っている人はわかると思うけど、もう、“自分たちでやっていくこと”=“小さくなること”ではないからね。

グレート:そう。とにかく、なあなあな感じではやりたくないんだよ。もちろん、俺たちだって、この先、まだまだ売れるつもりでいるからさ。そのためにも、“とりあえずアルバム出しとこう”とか、“作れば誰かが宣伝してくれるだろう”とかさ……そういうのは今の時代、もうナシだよね。

▲フラワーカンパニーズ

── おっしゃる通りだと思います。だからこそ、このタイミングで、このアルバムが産み落とされたことは、とても必然性的なことだったんですよね。僕は資料を頂いたとき、まずタイトルがすごいなと思ったんです。この“48”という数字は、皆さんの年齢ですよね?

鈴木:うん、そう。AKBではないよ。

── わかってます(笑)。当たり前ですけど、年齢って、1年ごとに重ねていくものじゃないですか。だからこそ、この『ROLL ON 48』というアルバムは、そのタイトル自体が、“産み落とされたその時、その瞬間に対して、過剰なほどリアルである”という、このアルバムの性質を表している。

鈴木:タイトルには絶対に、年齢は入れておきたかったんだよね。だって、“ここから新しいレーベルです”っていうときに、“48”っていう年齢を入れておけば、後々わかりやすいでしょ?

── ははは(笑)、そうですね。

鈴木:できればこの後に出るアルバムのタイトルにも、全部、年齢をつけたいぐらいなんだよ。1個1個のアルバムを記録として残しておきたいっていう気持ちが今は強い。

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