【インタビュー】フラワーカンパニーズ「“とりあえずアルバム出しとこう”は今の時代、ナシだよね」

■ 『田園に死す』みたいになればいい
■ 閉じた部屋のまま広がっていく響き方

▲アルバム『ROLL ON 48』

── 個人主義的なスタンスという点で、このアルバムが今の社会状況とリンクするっていうのは、すごくよくわかります。ただ、そのスタンスが政治や対人関係の中で立ち現れることと、このアルバムのように“表現”として立ち現れることには、大きな違いがあると思うんですよね。僕は、この『ROLL ON 48』というアルバムが一貫して聴き手に投げかけている“問い”があると思っていて。それは、“お前は誰だ？”という問い。

鈴木：うん……なるほど。

──「ピースフル」の＜お手てをつないで 共感共有 お前は誰だよ？＞という歌詞から、ラストトラックの曲名「あなたはだぁれ？」に至るまで、このアルバムは、鈴木さんが自分自身をとことん突き詰めることによって、結果として、聴き手にも、自分自身と向き合うきっかけを与えている作品なのかな、と。

鈴木：俺が、“俺はこういう者だ”って言う。そのことが、“じゃあ、君は誰だ？”っていう問いかけになっているっていうこと？

── そうです。フラカンはいつもそうだと言えばそうなんですけど、今作はいつも以上に鈴木さんの内面性が濃く出ている分、問いかける力も濃くなっているなと思います。

鈴木：なるほどなぁ……。まぁ、若いお客さんに向かって“人生とはこういうものなんだ！”なんて言えるタマじゃないからね。ある程度の年齢に達したら、そういうものを背負えって言う人もいるかもしれないし、お客さんも、“フラカンを観に来たら安心する”とか、そういう確固としたものを求められているのかもしれないけど……。悪い言い方かもしれないけど、お客さんがセミナーに行くぐらいの気持ちでライブに来るような、宗教じみた求心力を持っているバンドっているじゃない？

── むしろ今は、若いアーティストほど、そういった求心力を持った人たちは多いかもしれないですね。

鈴木：でも、やっぱり俺たちは、そういうタイプではないんだよね。もうすぐ50歳になるのに、確固たる“答え”みたいなものなんて未だにわからない。もっと若い人たちの方が堂々としているように見えるもん。俺は未だにその辺の川っぺりを泳いでいる奴と変わらないというか……。

グレート：“川っぺりを泳いでいる奴”って誰だよ（笑）。

鈴木：魚だよ、魚。海に出られない魚。

グレート：なるほどね（笑）。

鈴木：若い頃に比べたら、そりゃ生活安定しているんだけどさ、根本がずっと変わらないんだよ。いつまでも青春をやり続けるつもりもないし、もう枯れちゃっているのかもしれないし、それすらももうわからないんだけど……とにかく、ずっと安定はしてないし、ずっと自問している。いいのか悪いのかよくわからないけど、それが自分なんだと思う。いつも不安定。俺は、誰かとご飯を食べに行ったりもしないし、パソコンをやるわけでもないから、ものすごく狭い情報範囲のなかにいるしね。ハムスターみたいな感じだよ。ずっと同じ輪のなかを走り続けている。

▲鈴木圭介（Vo）

── 今回、2曲目に「人生Roll On」という曲が収録されていますけど、かつて「人生Goes On」という曲もあったじゃないですか。この「Roll」と「Goes」の違いって、そこにあるのかなって思いました。この『ROLL ON 48』というアルバムは、終らない禅問答のようにひとつの場所を回り続ける、そんなフラカンのバンドとしての強度を伝えている作品なのかもしれないですよね。

鈴木：そうかもしれないね。「ROLL」って、“転がりながら先に行く”っていう意味にも取れるけど、“ずっと同じところを回り続けている”っていう意味にも取れるもんね。ずーっと同じ観覧車のなかにいる、みたいな。それは、言われてみればそうかもしれない。あのさ、寺山修司の映画で、主人公がすごく狭い部屋にずっといるんだけど、最後、突然、バタバタバタバタ！と壁が倒れて、外にはすごく広い景色が広がっているっていう映画があったんだけど──。

グレート：『田園に死す』？

鈴木：そうそう。ああいうふうになればいいなって思うんだよね。やっぱり、今回のアルバムはすごく狭い範囲のことを歌っていると思うんだよ。今までで一番狭い空間で作ったアルバムだと思う。関わっている人数も少なければ、歌っていることもすごく狭いからね。でも、それがある瞬間にブワーッと響く、みたいなさ。閉じた部屋のまま広がっていく、みたいな、そういう世の中への響き方、伝わり方になればいいなぁって思うな。

取材・文◎天野史彬

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