【インタビュー】人間椅子 鈴木研一が語る、郷土愛とこだわりの音詰めた新作『異次元からの咆哮』

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■和嶋くんは気分悪いんじゃないかな(笑)

──鈴木さんも「曲作り期間にはパチンコにも行かなくなる」ってコラムで言っていましたが、生活が変わるってことですか?

鈴木研一:変わります。どこかに行っても楽しめない。夏休みの宿題を先にやらないと残りの夏休みが楽しめないのと一緒で、最低5曲ぐらいは浮かばないと、もう他に何もできないですね。

──自ら集中モードに突入するんですね。

鈴木研一:逆に和嶋くんは違うんですよ。前半はほとんど何もしなくて、最後の数週間で全部作る。背水の陣に立たないと浮かばないんだって。

──スタイルが間逆だ。

鈴木研一:それで浮かぶっていうのはすごい。自分だったら、背水の陣に立っても3コードのブルースぐらいしかできないんだろうけど、和嶋くんは違うんですよね。原稿もそうで「締切はあってないようなものだ」が持論。

──なんですかそれ。

鈴木研一:「編集者の言ってくる締め切りっていうのは、本当の締め切りじゃない」って和嶋くんは言うんだよね。

──あのね…怒りますよ。

鈴木研一:「だから大丈夫だ」って。そこから本気出すって(笑)。

──むちゃくちゃだな(笑)。リフ作りは、ひたすら降りてくるのを待つ感じですか?

鈴木研一:ほんとにたまにしか降りてこなくて、だけど才能が無いなりにいっぱいギターを弾くと、ごくたまに指が変な動きして「これいいリフだな」って思う瞬間がある。それを録音機に入れて番号をノートに書いておく。作りすぎて、聴き直すのも大変なんですけどね。それをAメロとサビくらいにまとめてスタジオに持っていって、2人の感じを見る。「どうもイマイチらしいぞ」って思って練り直すんだけど「直しても直してもよくないってことはよくないんだな」って思って捨てる。「会心のリフだったけど、ダメだったからゼロから考え直そう」って切り替えて作ってみると、意外といいのが1日でできたりしてね。2曲目の「風神」はそうですよ。ダメだったから持ち帰って、一晩で作ったのがこれ。

──アルバムには12曲入っていますが、その裏にはたくさんの曲の屍があるんですね。

鈴木研一:特に、リフとサビぐらいだけ作って捨てた和嶋くんのいい曲がいっぱいありますよ。もったいない。それが次のアルバムに入るかっていうと、そんなこともなくて、こっちもあっちも捨てちゃってる。でも「すっげーいい曲あったな」っていうのは毎回どのアルバムにもありますね。



──レコーディングはいつも基本一発ですよね?

鈴木研一:3人でまずベースを作って、ギターは必ずLRに振っているからもう一方のギターを入れて、歌を入れてソロを入れるっていう同じ流れですね。

──そこはブレないですね。

鈴木研一:なるべくシンプルに作って、そこに和嶋くんがキラッと光るアレンジをしてくれる。

──シンプルなのは、ライブでの再現性を意識してのことですか?

鈴木研一:もともとごてごてしたのが3人とも好きじゃないからじゃないですかね。ギタリストだから和嶋くんも重ねたくなる部分はいっぱいあると思うけど、あんまりやると僕が「これやりすぎじゃないか?」って文句つけるもんだから、和嶋くんは気分悪いんじゃないかな(笑)。

──ロバート・フィリップ先生しかり、オタク気質で研究熱心なギタリストって、ダビング志向も強かったりするものですが。

鈴木研一:あんまりギターを重ねると、「なんだこれ、クイーンみたいだな」って僕が皮肉交じりに言っちゃって「ああ、せっかく頑張ってくれたのに、悪いことしたな」って思うんだけど、言っちゃったものはしょうがないって思って。そう言われるのは和嶋くんもわかってるから、あんまり詰め込まないようにしてると思う。なんだかんだ言って、ツェッペリンだってディープ・パープルだってサバスだってシンプルっすよ。そんな中でも和嶋くんは今回新しい楽器にチャレンジしてるのもあります。6曲目「宇宙のシンフォニー」はテルミンを大々的に使ってるし、ユニヴァイブも使っているし。

──あー、あの変態モジュレーションはユニヴァイブか。

鈴木研一:「いつの時代のエフェクター使ってんだよ」って(笑)。あと、弓でボーイング奏法もやってるし、1970年代によく先人が遊んでたのをこのアルバムにいっぱい入れていますよ。5曲目の「もののけフィーバー」は「シカゴみたいにする」って言い出して、どうやるんだろうって思ったら、ホーンセクションを1人でハーモニカでやってて。ハーモニカを4本ぐらい重ねてるんですよ。

──重ねてあの薄さかい(笑)。全然シカゴじゃないけど、でもすごくおもしろいと思いました。普通ならホーンかストリングス、いなたく行くならハモンドで演りそうなところですよね。力の入れ方が完全に間違ってる(笑)。

鈴木研一:今だったらシーケンサーで簡単にカッコいい音で瞬時にできるんだけど、それをあえてものすごい時間かけて、しかも悪い音でイマイチな音程で演ってるところがカッコいいですよね。ハーモニカって力の入れ具合で多少音が狂うじゃないですか。それをまた逆にいなたい感じにしてるんですよね。4本入れればそれもバレない…バレないじゃねえや、えーと分厚くなるというか、コーラス効果が、ね。

──和嶋さんはいつからハーモニカを吹いていたんですか?

鈴木研一:大学時代によく吹いてましたよ。ブルースの曲でソロの代わりにハープソロを。「ジョン・レノンは唇が切れるくらい練習して「ラヴ・ミー・ドゥ」を吹いたんだ」っていう話を僕にしてきて、それで自分も練習するって。

──ハーモニカとの付き合いは古いんですね。

鈴木研一:でも、半音ずつ出すのに「キーが足りない」って言って、慌てて楽器屋に買いに行ってたけど。確か「もののけフィーバー」ではハープを3本ぐらい使ってますよ。

──ブルースハープじゃなくてクロマティックを使えば簡単だったのに(笑)。

鈴木研一:いやー、ブルースハープで演りたいんじゃないですか?おもしろいですよね。だからライブじゃ絶対再現できない。

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