今年7月、見事大団円を迎えたDJ Dragon、主宰の都会型フェス<SANCTUARY>。BLACK JAXXの2人とともに、都内で防音・遮音構造の賃貸マンションを提供しているMUSISIONの山下大輔氏にも参加していただき、<SANCTUARY>の振り返り対談、後編をお届けしよう。

◆[特別対談]BLACK JAXX、MUSISIONで<SANCTUARY>を爆音視聴 関連画像


■DJの存在がもっと
■分かりやすいフェス(DJ Dragon、)

── そもそも<SANCTUARY>を立ち上げようと思ったきっかけは?

DJ Dragon、(以下、D) フェスはズーッとやりたかったんですけど、どうやったらいいか分からなかったし、そんなことできないよなって思ってたんです。ただ4年くらい前に豊洲のマジックビーチがあったときに、ちょっとフェスっぽいことをやったことがあった。そのときは面白くって、浅はかながら自分の中で、この延長に僕がやりたいフェスはあるのかな、なんて思って。この話をいただいたときに、お台場でやったらそりゃ楽しいだろうなって……。でも正直何していいか分からなかった。なので、ここまで来るのに時間はかかりましたね。ただフェスをやりたいっていう思いは強くて、DJの存在がもっと分かりやすくなるようなフェスをやりたかった。その一環としての国内DJオンリー。

かっこいいとかっていろんな価値観がありますよね? 特にDJシーンって難しいことやアンダーグラウンドなことをやることがかっこいいとなりがちなんです。僕もそれはかっこいいと思いますけど、みんな、そこにいきなり来れない。インストのテクノを聴いても「長いイントロだな」って思うだけ。だとしたら例えばロック好きな人とは一生交わらない音楽になってしまうのではないか。何かその間みたいなものがないと、この世界は広がっていかないとズーッと思っていたんです。僕は常日頃からそういうイベントを意識してやっているつもりなんです。

かっこいいシーンはすでにあったし、自分がそこに行かなくてもいい。自分でやりたいことって、クラブに行ったことのない人がクラブって楽しいねって思ってもらえること、そのほうが僕は嬉しい。クラブに行ったことがなかった真治との出会いもそうだし、ここで何か一緒にやりたいねって生まれたのがBLACK JAXXだったりするし、“初めて”ってすごくいいじゃないですか? そういうのを経験させられるようなDJのフェス。そういう意味で“子供”なんです。生まれて初めてDJを体験したのが<SANCTUARY>でしたって言われたら、うれしいな。

── 武田さんはDragonさんからフェスをやるんだって聞いてどう思いましたか?

武田真治(以下、T) 凄いこと言い出したなって(笑)。でも「男の人生なんて、この指とまれって空高く指を掲げ、人を指に止めてあげてナンボだよね。フェスやる? いいことだと思うよ」って言って。で、どうする?どこでやる?って聞いたら、<ULTRA>の場所でやるって言い出して「いや、それはちょっと待て」と(笑)。

D 幾ら何でもデカすぎないかと(笑)。

T 海外のフェスに出たいと言ってる若いDJと変わらない発想。

(一同爆笑)

D はははっ。ちょっと夢物語だったよね。今冷静に考えると(笑)。

T 最初に勝算あるのかなと思って。結果そこに10,000人が集まったとしても、会場設営費、音響機材、出演者のギャラ、仮設トイレやら人件費やらで……じゃあスポンサーはどうするって話になって……。でもそこから準備は早かったよね。俺はDragon、が、このプロジェクトを途中で降りるとしても、それはそれでやろうと思って行動したことは無駄じゃないと思うよって。ホントに体制が整ったときにまた仕切り直してやればいいし、恥ずかしい撤退じゃないと思うって何度か言いました。Dragonが船を進めるなら、俺が降りるわけにはいかないなって思ったし……じゃあ付き合うよとなりましたね。


■クラブミュージックを自分たちに落とし込んで
■自分たちなりの表現として発信する(武田真治)

T クラブミュージックっていろんな形で変化していて、何がクラブミュージックでそうじゃないか分からない。そういうところでいつもトガった流行の情報しか人には届かないし、そのトガったもので集まる人ってやっぱり限られているんですよ。それがかっこいいのかどうか……クラブミュージックを自分たちに落とし込んで、それを自分たちなりの表現として発信してもいいはずなのにって思っていて。ズーッとそう思って、12年くらいやっているわけで。かっこいいってなんだってことに関してはいろいろ悩みましたけど、ここ数年はできることを精一杯やるってことで、いいじゃないの?ってことになってきて。

D カッコつけてる場合じゃないって感じになってきたよね(笑)。もうお互いあと何年やれるか分からないんだから、かっこつけてる場合じゃない(笑)。ただ「かっこいい」ってことが少しずつ、変わってきたんですよ。

T かっこだけつけて一部の数少ないクラバーに受けていることだけが“かっこいい”んじゃないなって。

D なんか変わってきましたね。昔は汗かいて一生懸命やってる人ってかっこ悪いなって思ってましたけど、スポーツもそうだけど、結局人はそこに感動する。汗や涙に感動するんです。そういうことを若い頃は理解できなかったけど、歳を重ねて受け入れられるようになってきたのかな。……だからこういう昼間のライブなんて以前は考えられなかったよね。

T 逆にあの昼間の時間で、あの場を盛り上げられるのは俺たちしかしなかったかもしれないね。

D そうだね。僕らは積んで来た経験があって……例えば真治の札幌教育文化会館のコンサート(編注:2016年、2017年に“故郷”北海道で開催した<武田真治presents スペシャルライブ「Breath of Life」>)もそうだったけど、クラブ以外のまったくアウェーの場所。お客さんは一緒に出演された大御所を期待している方が多かったので、年配の方も多い。そうなるとクラブミュージックなんて接点がない。武田真治のコンサートなのにサウンド的にはアウェーだった(笑)。でもBLACK JAXXが始まると、一番盛り上がるのが、そういう年配のお客様だった。

T 子供とか、おじいちゃん、おばちゃんは羞恥心がないから、逆に盛り上がるのかもね。目から鱗の発見だったね。

D そういう風にいろんなところでやってきた経験が、今回のフェスでも生かされたなって思いますね。

── 10年前のBLACK JAXXだったら今回の16時からのライブは……。

D 怒ってたと思う(笑)。

T あの頃は気が短かった(笑)。この時間なんだよって文句を言ってたときもあったし、下向いてやってたときもあった。

D 当時は暗いところでやるのがかっこいいと思ってたからね。そういうのがなくなったね。あんまり関係ない。

T クラブミュージックって人にとって必要だから生まれてきてるモノなのに、ちょっと前までは、それが必要な人でも無理矢理取りに行かないと手に入らない、日常には降りてこない音楽だった。でも、それってもったいない。僕らは今、逆にバナナのように叩き売ってやろうと思っていますよ(笑)。

── 持っていけー的な(笑)。

D 誰でも来いっていうね(笑)。僕らの中で変わったかもしれないですね。

T そうだね。それに社会的認識も変わってきたと思うよ。

D 来てるお客さんたちもね。そういうことに慣れてきたんだって感じますよね。フェスがたくさんあるのもそういうことだと思う。昔のロックコンサートの映像を見るとお客さんはみんな真面目じゃないですか? 今のロックフェスの乗り方を見ると……まあ時代も変わってきたなと感じますしね。

T 俺、小学生の時、横浜銀蝿の解散コンサートのアルバムレコード持っていたんだけど、始まりの挨拶が「オメーラ、最後まで席立つんじゃねえぞ!」だったもん(笑)。横浜銀蝿の解散なら立ち上がりたい時とあるでしょ(笑)?

D そういう時代だよね。


── 今のフェスに関してはどういう感想を持ってますか?

T いいと思います! SNS時代で、音楽の「楽しみ方」も音楽とともにシェアされているのは、俺たちにとってもやりやすい状況を生んでくれていて。海外のセレブたちがフェスを楽しんでいる開放的な写真をインスタとかに挙げていることで「あれを体験したい!」って外側から入って来ている人も増えていると思います。その代表と言えるのが<tomorrowland>とか<ULTRA>、そういう新しい流行、新しい日常、新しい休日の過ごし方……を提案してくれたって意味で偉大だと思っています。

D フェスって特別なものだった。例えば<フジロック>が始まったときは、すごいことになってんなって思った。だけど、今これだけフェスが増えて、特別ではない身近なものになった。より身近になってきて、僕でいうと週末は必ずどこかでフェスをやってる。それくらい音楽が一般に浸透していったらいいなと。それはジャンルに関係なくね。<ULTRA>とかはまるで遊園地みたいで、やっぱり特別なものに感じるけど、僕は気軽に行けて、音楽を家族で楽しめるフェス、そういうものを目指したつもりなんです。<SANCTUARY>がそういう場所のひとつになれば、そう思ってます。

── それでは<SANCTUARY>のBLACK JAXXライブを見てみましょう。


◆対談(2)