9月23日/24日の両日、東京・お台場の野外特設会場にて、BUCK-TICKのデビュー30周年記念公演『BUCK-TICK 2017“THE PARADE”~30TH ANNIVERSARY~」が開催された。20周年にあたる10年前には横浜、25周年にあたる5年前には千葉の特設会場にて、同時期に発売されたトリビュート・アルバムへの参加アーティストたちが一堂に会するフェス形式での公演が行なわれたが、今回は二夜とも完全なる単独公演。アンコールを含めて両日でトータルのべ42曲に及ぶ濃密な演奏が繰り広げられ、ステージ上の5人と計20,000人のオーディエンスはまさに至福の時間を共有することになった。

◆BUCK-TICK~画像~

東京地方は前日の22日からあいにくの雨に見舞われていたが、『FLY SIDE』と銘打たれた公演初日の午後には空の機嫌も回復。雲の隙間から顔をのぞかせる三日月も祝祭の夜に花を添えた。途中、櫻井敦司が発した「30周年なので、30年より前の曲もやりたいと思います。皆さんが生まれる前の曲です」という言葉通り、時空を自在に駆け巡るかのようなセットリストにはごく短いインディーズ期から近年に至るまでのさまざまな楽曲が盛り込まれていた。ステージ上には野外の特設会場につきもののモニター環境などの問題も少なからず生じていたようだが、客席に聴こえてくるサウンドは良好そのもの。夕刻の空が徐々に暗くなっていくさまやステージの後方を通過していくゆりかもめの発する光すらも、変化に富んだ演奏内容を盛り立てる演出のように感じられるほどだった。メンバー紹介を経て櫻井が口にした「30年も一緒にやれているメンバー、幸せです」というシンプルな歓びの吐露には心を打つものがあったし、アンコール最後に披露された「DIABOLO」の余韻のなかでやはり彼が発した「どうもありがとう。続きは、今夜の夢でどうぞ」という言葉には、さすが、と唸るしかなかった。


そんな『FLY SIDE』を経て迎えた第二夜の『HIGH SIDE』。前夜と同様に、デビュー当時から現在に至るまでの歴代の写真がちりばめられたオープニング映像からのマーチング・ドラムに導かれながら祝宴は開幕。1曲目に炸裂したのは今回の公演タイトルの起源といえる「FLY HIGH」だ。インディーズ期の『HURRY UP MODE』(1986年)からセレクトされたこの曲のシンプルなビートが伝えてくれるのは、彼らが最初に立っていた座標の位置だ。が、以降の長い年月のなかで変容を重ねながら成熟を経てきた現在の彼らは、そうした楽曲を2017年度版にリニューアルして披露するのではなく、むしろ当時の形のまま届けてくれる。しかもそこで感じさせられるのは懐かしさではなく、冷凍保存されていたかのような衝動、若気の至りのようなスピード感だったりもする。こんなマジックを起こし得ること自体が、なんだか奇跡レベルのことのように感じられる。


続く「Baby,I Want You.」では今井寿がエロティックな手つきでテルミンを操り、官能的なビートがオーディエンスを無条件に揺らす。かと思えば、タイトル通りに赤い照明に一帯が染まった“真っ赤な夜”のハードな炸裂感は、それまで横揺れしていた観衆を縦にシェイクしてみせる。生まれた時代も音楽的なたたずまいも異なった振れ幅の大きな楽曲たちが、少しの違和感もなく心地好い起伏を描いていく。


「今夜も楽しんでいってください。シーサイドで、甘い歌を」という言葉に導かれて聴こえてきたのは、前夜の「人魚-mermaid-」と対をなすかのような「THE SEASIDE STORY」。そうした事実からは、ライヴの流れにおける役割に共通性のある楽曲を2日間に振り分けているように感じられなくもないが、そんな単純な理由でもないように思えるのは、次々と繰り出される各時代の楽曲を口ずさみながら、歌詞にハッとさせられる瞬間が訪れることが多々あるからでもある。たとえば中盤に組み込まれた「RENDEZVOUS~ランデヴー~」から聴こえてくるのは「あなたに会えた喜びに/心からありがとう」という言葉。ラヴソングを超えた深い感謝の歌として、この曲は耳に届いてきた。


二夜を通じて楽曲を経ていくごとに感じさせられたのは、彼らが実践しようとしたのが、ありがちな形でのアニヴァーサリー・ライヴとは一線を画するものだということ。確かに今回のライヴはデビュー30周年という大きな節目の到来を記念してのものであり、同時に、レーベルの壁を越えて先頃リリースされた画期的オールタイム・ベスト・アルバム『CATALOGUE 1987-2016』に呼応するものでもあるはずだ。が、実際にステージ上の5人が繰り広げていたのは、その歴史を完全網羅するかのような集大成的ライヴでも、ファン・サービスに徹したお楽しみ企画でもなかった。もちろん僕などに彼らの真意を理解できているはずもない。が、シングル曲を並べるわけでも、全アルバムから均等に選曲するわけでもなく、ある意味、偏りのある選曲であることが、このバンドがこうした局面においてもあくまで“今”の感覚に忠実であることを思い知らされたような気がした。


この日の本編ラストに配置されていたのは「無題」。祝祭の場のクライマックスに相応しいものとは捉えがたい、きわめてダークで重々しい楽曲である。が、歌詞の後半で「愚者がゆく」「愚者はゆく」と繰り返すこの曲は、もしかすると愚者たちの群れが進んでいくさま、すなわち闇の世界でのパレードが描かれたものなのではないか、と気付かされる。彼らのアニヴァーサリーに“PARADE”という言葉は付きものだが、それはかならずしも明るく軽快なものばかりではないはずなのだ。闇を進んでいく覚悟があるからこそ、彼らが高らかに響かせるポップ・ソングには希望以上のものがあるのだと思う。

単純に言えばコントラストということになるのだが、そうした光と闇のせめぎ合いが、この第二夜もとても見事だった。“スピード”で櫻井、今井、星野英彦、樋口豊の4人がステージ上手側の花道に勢揃いした場面はシンプルに強烈だったし、空はすっかり暗くなっていたにもかかわらず「Coyote」では夕焼け空が広がっているように感じられた。残念ながらこの夜の空は厚い雲に覆われていて月も星も肉眼では捉えられなかったが、「CLIMAX TOGETHER」ではお月さまが笑っていて宇宙の果てまでイッちゃうような突き抜け感を味わうことができた。


アンコールの前半は「…IN HEAVEN…」から「MOON LIGHT」へと連なっていく必殺コースからの「LOVE PARADE」。この曲は、行進の終着点が近いことを予感させるからこそ、希望的なのに物悲しい。そして二度目のアンコールは「STEPPERS -PARADE-」から「Alice in Wonder Underground」へ、という幸福感漂う流れ。そして二夜の最後を締め括ったのはBUCK-TICKにとって最新の代表曲のひとつというべき「New World」だ。この曲を披露する前に櫻井が放った「明日からまた音楽と共に生きていけたら、と思います。新しい世界に、みんなで行きましょう」という言葉がとても印象的だった。


ステージを去る際、最後までその場に残っていたヤガミ・トールが観衆に投げ掛けた「まだまだやります! 全然疲れてません!」という頼もしい言葉が、その少し後に爆裂音とともに夜空を彩った花火以上に痛快だった。到達点ではなく通過点、というのは誰もが口にする言葉ではあるが、不動のラインナップでのデビュー30周年という大きな節目を迎えた先にも、BUCK-TICKのパレードは続き、彼らはさらなる高みを目指して飛び続けていく。そうした5人の新たな物語の起点になるに違いないニュー・シングル「BABEL」の到着が待ち遠しいところである。

取材・文●増田勇一
写真●田中聖太郎

セットリスト

【9/23 FLY SIDE】
SE. THEME OF B-T
1. STEPPERS -PARADE-
2. PHYSICAL NEUROSE
3. 独壇場Beauty -R.I.P.-
4. 惡の華
5. 蜉蝣 -かげろう-
6. セレナーデ -愛しのアンブレラ-
7. 人魚 -mermaid-
8. GALAXY
9. ILLUSION
10. ボードレールで眠れない
11. 疾風のブレードランナー
12. Ash-ra
13. ミウ
14. Django!!! -眩惑のジャンゴ-
15. MISS TAKE ~僕はミス・テイク~
16. 夢魔 -The Nightmare
<ENCORE1>
1. MY EYES & YOUR EYES
2. LOVE PARADE
<ENCORE2>
1. TO-SEARCH
2. FLY HIGH
3. DIABOLO

【9/24 HIGH SIDE】
SE. THEME OF B-T
1. FLY HIGH
2. Baby, I want you.
3. 真っ赤な夜
4. THE SEASIDE STORY
5. 薔薇色の日々
6. ORIENTAL LOVE STORY
7. スピード
8. RENDEZVOUS ~ランデヴー~
9. DADA DISCO - G J T H B K H T D ?
10. Coyote
11. Cuba Libre
12. CLIMAX TOGETHER
13. 美 NEO Universe
14. DIABOLO
15. 無題
<ENCORE1>
1. …IN HEAVEN…
2. MOON LIGHT
3. LOVE PARADE
<ENCORE2>
1. STEPPERS-PARADE-
2. Alice in Wonder Underground
3. New World

■リリース情報

30th Anniversary Best Album「CATALOGUE 1987-2016」
2017.9.20 Release
初回限定盤A(4SHM-CD+Blu-ray)/ VIZL-1238(5枚組)/ \12,000+税
初回限定盤B(4SHM-CD+DVD)/ VIZL-1239(5枚組)/ \11,000+税
通常盤(2SHM-CD)/ VICL-70235?70236(2枚組)/ \3,000+税
※初回限定盤A・B:スペシャルパッケージ仕様
■初回限定盤A・B ディスク内容
Disc-1 & 2 「CATALOGUE 1987-2016」 : ファンリクエスト投票結果にメンバー選曲を加えたスタジオ音源収録 
※通常盤と同内容
Disc-3 & 4 「LIVE AUDIO SELECTION」 : ライブ音源収録 ※2SHM-CD特典ディスク
Disc-5 「LIVE VISUAL SELECTION」 : ライブ映像収録 ※Blu-ray / DVD特典ディスク
■通常盤 ディスク内容
Disc-1 & 2 「CATALOGUE 1987-2016」: ファンリクエスト投票結果にメンバー選曲を加えたスタジオ音源収録 
※初回限定盤と同内容

【初回限定盤A・B&通常盤共通】
Disc 1 & 2「CATALOGUE 1987-2016」スタジオ音源全30曲収録オールタイムベストとなるDisc-1 & 2 「CATALOGUE 1987-2016」にはファンリクエスト投票結果のシングル収録曲TOP10、アルバム収録曲TOP10に加えて、メンバーが選曲した10曲を収録した2枚組全30曲を収録!
※すべてのCDプレーヤーで再生できる高品質CD「SHM-CD」を採用

Disc-1「CATALOGUE 1987-2016 Vol.1」
01. MACHINE [from 5th ALBUM『狂った太陽』]
02. JUPITER [from 5th SINGLE『JUPITER』]
03. HEARTS [from MINI ALBUM『ROMANESQUE』] ※2017MIX
04. UNDER THE MOON LIGHT [from 2nd SINGLE『惡の華』] ※2015MIX
05. MOON LIGHT [from REISSUE ALBUM『HURRY UP MODE(1990MIX)』]
06. MY EYES & YOUR EYES [from 1st ALBUM『SEXUAL×××××!』]
07. サファイア [from 11th ALBUM『ONE LIFE, ONE DEATH』]
08. Coyote [from 16th ALBUM『memento mori』]
09. 夜想 [from 18th ALBUM『夢見る宇宙』]
10. 謝肉祭 -カーニバル- [from 12th ALBUM『極東 I LOVE YOU』]
11. ドレス[from 6th SINGLE『ドレス』]
12. ROMANCE[from 22nd SINGLE『ROMANCE』]
13. DIABOLO[from 22nd SINGLE『ROMANCE』]
14. ノクターン -Rain Song-[from 21st SINGLE『幻想の花』]
15. 愛の葬列[from 20th ALBUM『アトム 未来派 No.9』]

Disc-2「CATALOGUE 1987-2016 Vol.2」
01.ANGELIC CONVERSATION [from 4th SINGLE『M・A・D』]
02. New World [from 34th SINGLE『New World』]
03. BOY septem peccata mortalia [from 20th ALBUM『アトム 未来派 No.9』]
04. SANE -typeII- [from 30th SINGLE『エリーゼのために』]
05. 極東より愛を込めて [from 19th SINGLE『極東より愛を込めて』]
06. 絶界 [from 15th ALBUM『天使のリボルバー』]
07. Cuba Libre [from 20th ALBUM『アトム 未来派 No.9』]
08. 形而上 流星 [from 33rd SINGLE『形而上 流星』]
09. 無題 [from 19th ALBUM『或いはアナーキー』]
10. ボードレールで眠れない [from 19th ALBUM『或いはアナーキー』]
11. セレナーデ -愛しのアンブレラ- [from 27th SINGLE『GALAXY』]
12. THE SEASIDE STORY [from 20th ALBUM『アトム 未来派 No.9』]
13. MISS TAKE ~僕はミス・テイク~ [from 31st SINGLE『MISS TAKE ~僕はミス・テイク~』]
14. COSMOS [from 9th ALBUM『COSMOS』]
15. LOVE PARADE [from 32nd SINGLE『LOVE PARADE / STEPPERS -PARADE-』]

●Disc-3 & 4「LIVE AUDIO SELECTION」
ライブ音源全30曲収録
※2SHM-CD特典ディスク
<収録曲>
Disc-3「LIVE AUDIO SELECTION Vol.1」
01. PHYSICAL NEUROSE [日本武道館 (1989.01.20)]
02. JUPITER [横浜アリーナ (1992.09.10)]
03. D・T・D [大宮ソニックシティ (1993.07.29)]
04. 青の世界 [大宮ソニックシティ (1993.07.28)]
05. ヒロイン [日本武道館 (1998.05.08)]
06. GLAMOROUS [日本武道館 (2000.12.29)]
07. 細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM [日本武道館 (2000.12.29)]
08. 残骸 [日比谷野外音楽堂 (2003.06.29)]
09. 誘惑 [大阪厚生年金会館 大ホール (2005.07.03)]
10. DOLL [大阪厚生年金会館 大ホール (2005.07.03)]
11. 見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ [日本武道館 (2005.12.29)]
12. Memento mori [NHKホール (2009.07.02)]
13. Django!!! -眩惑のジャンゴ- [NHK大阪ホール (2010.12.16)]
14. Alice in Wonder Underground [日本武道館 (2011.12.29)]
15. 夢魔 -The Nightmare [日本武道館 (2011.12.29)]

Disc-4「LIVE AUDIO SELECTION Vol.2」
01. LOVE ME [千葉ポートパーク (2012.9.22)]
02. MY EYES & YOUR EYES [千葉ポートパーク (2012.9.23)]
03. エリーゼのために [日本武道館 (2012.12.29)]
04. MISS TAKE ~僕はミス・テイク~ [日本武道館 (2012.12.29)]
05. ミウ [郡山市民文化センター 大ホール (2013.12.23)]
06. RHAPSODY [郡山市民文化センター 大ホール (2013.12.23)]
07. NATIONAL MEDIA BOYS [渋谷公会堂 (2014.07.31)]
08. 形而上 流星 [渋谷公会堂 (2014.07.31)]
09. Devil'N Angel [NHKホール (2014.09.26)]
10. ICONOCLASM [NHKホール (2014.09.26)]
11. 独壇場Beauty -R.I.P.- [Zepp Tokyo (2014.12.14)]
12. スピード [横浜アリーナ (2016.09.11)]
13. MACHINE -Remodel- [横浜アリーナ (2016.09.11)]
14. メランコリア -ELECTRIA- [中野サンプラザホール (2016.11.10)]
15. 無題 [日本武道館 (2016.12.29)]

●Disc-5「LIVE VISUAL SELECTION」
ライブ映像全10曲収録   ※Blu-ray / DVD特典ディスク<収録曲>
ICONOCLASM [SUMMER SONIC 03 (2003.08.03)]
Baby, I want you. [RISING SUN ROCK FESTIVAL 2007 in EZO (2007.08.17)]
極東より愛を込めて [イナズマロック フェス 2009 (2009.09.20)]
夜想 [COUNTDOWN JAPAN 12/13 (2012.12.28)]
独壇場Beauty -R.I.P.- [COUNTDOWN JAPAN 12/13 (2012.12.28)]
夢見る宇宙 [DEDICATE to … ~gang 451~ (2013.02.11)]
エリーゼのために [氣志團万博2013 (2013.09.14)]
CLIMAX TOGETHER [氣志團万博2013 (2013.09.14)]
メランコリア -ELECTRIA- [LUNATIC FEST. (2015.06.28)]
無題 [LUNATIC FEST. (2015.06.28)

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