【レポート】INORAN、バースデイライヴで「これからも俺は全力で受け止める」

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INORANのソロ20周年ツアー<SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 -INTENSE / MELLOW->のファイナル公演であり、バースデイライヴ<BIRTHDAY LIVE「B-DAY LIVE CODE929/2017」>が9月29日に新木場STUDIO COASTで開催された。

◆INORAN 画像

「みんなの顔とか声とか熱を感じた時、僕はまだ20周年を超えてもここに立っていられるんだなって感想を持ちました」──INORAN

ライヴ後半のMCでこう語っていたINORANは、今からちょうど20年前にシングル「想」でソロデビューを飾ってから音楽という名の旅を続けてきた。当時はLUNA SEAの中で最も寡黙、ギタープレイもカッティングとアルペジオに徹していた彼が自ら歌詞を書き、ボーカルをとったことに驚かされたが、さらにその後、KEN LLOYD(OBLIVION DUST)とFAKE?を結成、オルタナティブで荒々しいロックへと舵を切ったことにも面食らった。考えてみたら、LUNA SEA初期からレゲエのリズムを取り入れた楽曲を生み出したことをはじめ、バンドに新しい風を吹かせてきたソングライターでもあったので、驚嘆することではないのかもしれない。それにしてもこの日のライヴでは音楽への尽きることのない好奇心でチャレンジし続けてきたINORANの歴史に想いを馳せずにはいられなかった。


この日は、ソロデビュー20周年記念セルフカバーアルバム『INTENSE / MELLOW』を引っさげて全国各地を廻ってきたツアー<SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 -INTENSE / MELLOW->の集大成的公演。20周年の作品は単なるベストセレクションではなく、旧曲をリアレンジして新録したもので、INORANの持つ二面性が表現された“動”を意味する『INTENSE』と“静”を意味する『MELLOW』の2枚のCDに分けられたもの。大胆なアレンジが施されている楽曲もあり、同じ場所に留まることを良しとしない彼らしい探究心に驚かされるセルフカバーとなった。つまり、今なお結局、驚かされ続けているという話ではあるのだが。

盛大な声援とハンドクラップの中、いくつものキャンドルの炎が揺れるステージにメンバーが姿を表した。ライヴはINORANのアルペジオにRyo Yamagataのドラムが加わり、やがてu:zo(ex. YELLOW FRIED CHICKENz、ex. RIZE)のベースとYukio Murata(my way my love)のギターが絡んでいく「Come Away With Me」で幕を開けた。“静”から“動”にシフトしていくようにどんどん激しさを増していく演奏。INORANが右手を掲げ、「東京!」と叫び、『INTENSE』収録曲のアッパーなナンバー「Spirit」が轟音で鳴らされ、間髪入れずに「Get a feeling」を投下。ライヴ前半戦はINORANのアグレッシヴな側面が全面に押し出されたセットリストだ。ステージ上のINORANは、ビートに合わせてステップを踏み、ギターをかき鳴らし、u:zoやRyoと対峙して激しくも心地いいグルーヴを生み出していく。ハンドクラップで盛り上がるフロアが惜しみない歓声を送った。


「東京!! ツアーファイナル! 会いたかったです! ぎょうさん居るな。飛ばしていこうぜ! 行けるか!?」──INORAN

ギターをかまえて歌うINORANに照明の光が集まった「Awaking in myself」ではMurataのギターのフレーズが気持ちよく絡みあうサビでフロアが一斉にジャンプ、COASTが揺れた。空間ごとすっぽり包みこんでしまうスケール感のあるメロディックなロックナンバーは近年のINORANのライヴに欠かせない。続いて投下されたのは同じくアルバム『BEAUTIFUL NOW』(2015年)から、音と音の間合いがスリリングな骨太ロックンロール「2 Lime s」だ。

続いてブルーのジャズマスターに持ち替えて奏でられたのは、スローナンバーから疾走感のあるギターサウンドへと生まれ変わった「Daylght」。青いライトがステージに溶けていき、ファンのリクエストNo.1に輝いたことがある美しいメロディの曲「千年花」もイントロでINORANがアンプの前でシューゲイザー特有のサウンドを鳴らし、原曲とはガラリと変わったアプローチで届けられた。動から静へとグラデーションを描くように移行するセットリストの流れも練られたものであり、INORANとMurataがアコースティックギターに持ち替えた新曲「Shine for me tonight」は、ミラーボールの光が回る中、柔らかなメロディラインとゆったりしたグルーヴに身体を揺らしながら聴きいっているオーディエンスの姿が印象的だった。


そして郷愁をそそるルイ・アームストロングのジャジーなナンバーがBGMで流れる中、セットチェンジを挟んでライヴは本ツアーの見どころのひとつ、“Bar Mellow”と銘打たれたアンプラグドセクションへ。Ryoがカホンを叩き、弦楽器陣が椅子に座るスタイルで奏でられたのはアコースティックスタイルとして生まれ変わった「no option」。時にアコギを抱きかかえるようにして歌うINORANの声の色気と味に惹きつけられた。キャンドルの炎と床の絨毯が映えるほの暗いステージセットはまさにほろ酔い気分が似合うバーの雰囲気だ。

「お酒飲んでますか? なんか今日の東京は和やかですね。男いますか? なんでそんなに後ろにいるんですか? 恥ずかしがり屋さんですか? あとで期待しちゃいますよ(笑)。美人さんが多いですね。僕は美人さんのくしゃっとした顔が大好きです。あとで期待しちゃいますよ」──INORAN

ユーモアたっぷりにINORANが話しかけ、美しい旋律が際立つ「Sakura」へ。「こういうアコースティックコーナーを取り入れたのは初めて」だと話し、「ラストオーダーに1曲、感謝の気持ちを込めて」と前置きした「Thank you」ではみんなが手を振り、歌う声が場内に響き渡った。『MELLOW』サイドに収録されている曲たちが、こんなふうにアットホームなムードの中、奏でられたのもスペシャルプレゼント。INORANの曲はアコースティックにアレンジしても、湿り気がなく、会場をひとつにしてしまうオープンなムードと懐の深さがある。


そしてBar Mellowが閉店するやいなや、u:zoの「INORANさん、誕生日おめでとうございます!」の音頭により、巨大なバースデイケーキがステージに運び込まれ、フロアはバースディソングの大合唱。意外なタイミングに戸惑い、苦笑していたINORANもみんなの歌う声に耳を傾け、ロウソクを見て「これ消せばいいんですか? ケーキ、投げたら受け止めてくれますか? Jじゃないよ(笑)」と会場を大いに湧かせ、u:zoの合図で何度も歌われるバースディソングに笑顔。

「本当にどうもありがとう。47歳になりました。こんなたくさんの人に祝ってもらえるなんて、俺はすごい幸せ。たぶん、今日、この地球上でいちばん幸せな人だと思います。俺、もっと欲しいんだよ。もっと声出せますか? 東京! 信じていいですか? 今までツアーで廻ってきためっちゃ盛り上がったところ、忘れさせるぐらい俺に声をください!」──INORAN

と伝えて大歓声の中、後半戦に突入。Murataがイントロでコーラスパートをレクチャーして歌ってみせた新曲「Ride the Rhythm」が披露され、今、この瞬間の景色を祝福する名曲「Beautiful Now」ではデカいグルーヴに包まれて、この至福の時がいつまでも続けばと願った。「Rightaway」ではみんなが頭上でハンドクラップ、「Get Laid」ではコール&レスポンスで盛り上がり、テンションが振り切れたu:zoはフロアにダイブ。銀テープが放たれて、INORANが上手下手と動きまわりハンドマイクで歌った「raize」ではノイジーな音の洪水の中、INORANが衝動的にフロアに降りてしまい、大興奮の場内の中、声だけが響く場面も飛び出した。


最後のMCも感動的だった。ツアーを振り返り、「みんなの声や熱があるからこそ、今があって未来に繋がっていき、自分が生きる栄養になって、また新しい旅に出られる」と感謝の気持ちを伝え、いつも以上に熱い温度感でメッセージを届けたのだ。

「まさか20年も歌い続けると思わなかったし、まさかこんなに声が枯れる毎日を送るとは思わなかった(笑)。でも、ひとつ僕が言えることがあります。不器用でも下手くそでも想いは絶対伝えたほうがいい。恋人だったり家族だったり友達だったりにね。俺は歌うことで不器用でも下手くそでも……自分を信じられない時もあったけど、信じて伝えてきました。その積み重ねで今があると思うし、今、悩んでいるヤツとか考えてるヤツもいると思うけど、“伝わるかな?”じゃなくて絶対に伝えたほうがいい。この場所はいつでもオープンしてるから、悩んでてもいいし、悩んでなくてもいいから、また遊びに来いよ。これからも俺はそれを全力で受け止めるつもりです」──INORAN

ラストナンバーは「All We Are」。温かいメロディとグルーヴに場内はひとつになり、STUDIO COASTに大合唱が響きわたった。

音楽の旅の途中でINORANは自身の人生観や経験を楽曲の中に落としこみ、音でみんなを繋ぎ、笑顔にさせるような風通しのいい名曲をいくつも産み落としてきた。これからもきっと挑戦の旅はまだまだ続いていく。ただ、以前と違うのはINORANとファンが作りだしたホームが、いつでも帰ってこられる揺るぎない場所になったこと。そのことを改めて強く感じた一夜だった。

取材・文◎山本弘子
撮影◎RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)

■<SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 -INTENSE / MELLOW-><BIRTHDAY LIVE「B-DAY LIVE CODE929/2017」>2017年9月29日@新木場STUDIO COASTセットリスト

01.Come Away With Me
02.Spirit
03.Get a feeling
04.grace and glory
05.Awaking in myself
06.2Lime s
07.Daylight
08.千年花
09.Shine for me tonight
10.no options
11.Sakura
12.Thank you
13.Ride the Rhythm
14.Beautiful Now
15.Rightaway
16.Get Laid
17.raize
18.All We Are



■セルフカバー・ベストアルバム『INTENSE / MELLOW』

2017.8.23 Release
【初回限定盤(2CD+DVD+52P写真集スペシャルパッケージ仕様)】KICS-93516/7 ¥9,074+税
<DVD>
「Ride the Rhythm」Music Video収録
「Shine for me tonight」Music Video収録
【通常盤(2CD)】KICS-3516/7 ¥3,241+税
▼DISC-1 INTENSE SIDE
1.Ride the Rhythm ※新曲
2.Spirit ※2nd ALBUM『Fragment』収録
3.千年花 5th ALBUM『apocalypse』収録
4.Daylight 7th ALBUM『Watercolor』収録
5.Determine 4th ALBUM『ニライカナイ』収録
6.raize 3rd ALBUM『photograph』収録
▼DISC-2 MELLOW SIDE
1.Shine for me tonight ※新曲
2.Your Light is Blinding ※8th ALBUM『Teardrop』収録
3.no options ※9th ALBUM『Dive youth, Sonik dive』収録
4.Sakura ※MINI ALBUM『Somewhere』収録
5.Beautiful Now ※10th ALBUM『BEAUTIFUL NOW』収録
6.人魚 ※1st ALBUM『想』収録
7.Thank you ※11th ALBUM『Thank you』収録

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