【インタビュー】千歌繚乱出演バンド・ラッコ、「音楽は先生のようなもの」

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BARKS主催ライブイベント<千歌繚乱vol.14>に出演するラッコは、2016年に始動したバンド。それぞれ多彩な音楽歴を持ち、今年11月に一周年を迎える。11月1日(水)には活動の集大成ともいえる1stアルバム『弱肉教職』のリリースも決定している。今回このインタビューでは、このアルバムがどんなものになるのかと彼らがどのような考えて音楽に携わっているのかを探った。

◆ミュージックビデオ・アーティスト写真

※本記事は10月16日(月)に渋谷REXで開催される<千歌繚乱vol.14>において、来場者限定で配布される「千歌繚乱 ARTIST BOOK」掲載のインタビューの一部を事前に公開するもの。「千歌繚乱 ARTIST BOOK」ではメンバーへの一問一答アンケートなど、より深い内容が掲載されている。

   ◆   ◆   ◆

■“ジャンル=ラッコ”になれたら

――ラッコのバンドコンセプトは?

平一洋(Vo):ラッコって水陸を使い分ける動物で、白にも黒にも染まらないグレーな部分があって…えーとあとなんだっけ(笑)。

SAN(G):って初期はよく言ってたよね(笑)。そろそろ始動してから一年がたちますが、今となってみたら自分たちがどんなバンドかってあんまり考えてないんですよね。

平一洋:ヴィジュアル系バンドって、わかりやすく「俺たちはこうです!」っていうコンセプトを置いて活動しがちですが、僕らは自分らでコンセプトを決めたくないと言うか。どんなバンドなのか自分自身でも追及しているところです。やっていくうちに“ジャンル=ラッコ”になれたらいいな、とは思うけど。


▲平一洋(Vo)

――では楽曲全体のテーマは?

平一洋:それもないですね(笑)。そのときそのときで自分が思ってることを詞には書いてるんですが、今お互いのプレイも含めみんなでラッコというものを構築している最中なんで。でも構築していく、という状態が一生続くくらいがバンドを続けていく上で一番いいなと思っています。

milk(G):ようやくメンバーのいいところも悪いところも見えてきて、それで進んでるのが今って感じですね。

――今みなさんは1stフルアルバム『弱肉教職』のレコーディング中とか。

平一洋:今年の6月くらいから構想が始まって、今も絶賛レコーディングが続いています。

milk:このアルバム制作は、ラッコの1年の活動の中で一番の思い出になりそうです。

――『弱肉教職』はどんなアルバムになりそうですか?

平一洋:僕の必死で生きてる様が詰め込まれています!

higiri(Dr):平さんのストレートな言葉が刺さるアルバムです。


▲SAN(G)

――収録曲のサブタイトルに「生物学」「化学」などの学科の名前がついているのが面白いですね。

平一洋:僕、すごい頭悪くて学校の勉強はぜんぜんできなかったんですけど、その代わりに音楽がいろいろなことを教えてくれたんです。音楽を長く続けてこれたのも、それが理由。そういう意味で音楽が学校のようなものだなと思ったので、学科をモチーフにしました。

――アルバムの中で、それぞれの推し曲を教えてください。

higiri:僕は「芸学(白昼夢)」が好きです。疾走感溢れる歌モノなんですが、途中にボサノバっぽいリズムが入るのがポイントです。デモを聴いた段階ではアルバム曲の一個って感じだったんですが、歌入れてレコーディングしてみたらめっちゃ化けた曲でもあります。

SAN:「農学(本当の自分の物にナッテイナイ物)」は何回もボツをくらったんで思い入れがあります。ラッコはライブでカスタネットを使うんですが、それがとっても合うのでラッコにしかできない独自性を持たせられたなと思います。

平一洋:これはたんぽぽの種をイメージして作ったんで、農学に分類してます。暗い言葉を使っているんですが、借りを返したい人の庭に咲きたいっていう気持ちを歌ってるんで僕の中ではアルバム収録曲で一番ハッピーな曲です。

SAN:そうそう、歌詞がすごい良い。“借りを作りすぎちまった 生きてるうちに返したい”ってのがすごく響く。

milk:アルバムの中で唯一僕が新曲という形で作った「PM5:00」も聴いて欲しい。同じセクションが最初と最後にしかないっていう変わった構成で、全コーラスサビのつもりで展開するように書いたのがこだわりです。ラッコの曲にもなかったし、ヴィジュアル系全体でみてもこういう曲はあんまり多くないかな。

平一洋:歌詞はタイトルのまんま、PM5:00~6:00くらいの夕焼けが見える時間帯ことを歌ってます。僕、夕焼けを見ていると「尊いなあ」って思うんです。そういう気持ちや、楽しかった日に夕焼けを見て「帰りたくないなあ」と思う気分なんかを表現しました。

higiri:歌詞に「それ」っていう言葉がたくさん使われてるのもおもしろいよね。「それ」ごとに違う意味があって、読み解いていくのもおもしろいかも。

平一洋:そう、その中に「“それ”になるために音楽やってるよ」っていうメッセージも込めてるんで、歌詞も読んで欲しい曲ですね。


▲milk(G)

――「PM5:00」はミュージックビデオにもなっていますね。

Ivy(B):普通は曲を聴きこんだ状態でミュージックビデオを撮影するんですが、今回はそれができていない状態で撮影だったんです。現場で初めて聴いてリピートしてたんで、すごい印象に残ってます。

平一洋:スポット映像が公開されたばかりですが、ひたすらゴミ袋を拾うというストーリーになっています。最近Instagramとかも流行ってますし、みんなきれいなものばかりに注目しちゃうじゃないですか。でもその裏側にある汚いものを誰かが回収している、みたいな映像に仕上がっています。で、きれいな夕焼けを入れたいなと思ってたんですが撮影当日は雲が厚くて映せなかったんですよー。あれ、現代技術で夕焼けに変わってたりするのかな(笑)? 最終的にどんな仕上がりになるのか、楽しみにしててください。

――平さんの推し曲は?

平一洋:「音楽(冷えきった魂について)」って曲か「数学(7/8)」です。「音楽(冷えきった魂について)」は、今回レコーディング期間がタイトでぜんぜん練習する時間とかもなくて。でもこの曲はいざレコーディングするぞってなって初めて歌ったら、僕が歌うために生まれてきた曲なんじゃないかなって思うくらいすっと歌えたんです。好き嫌いとかじゃなくて、すごく僕にフィットしてる曲。

――僕が歌うために生まれてきた曲、って良いですね。

平一洋:「数学(7/8)」は計算通りにいかない世の中について歌った曲。世の中に対して伝えたいことを、あえて歌ではなく語りにしています。これは仮歌の段階では難しすぎて歌えなくて…。

SAN:僕も曲を作った段階で「歌うの難しそうだな」って思ったんですが、いざ平さんがレコーディングブースに立ったらスラスラ言葉が出てくるしどんどん曲を自分のものにしていった。見ててすごく頼もしかった。

平一洋:ね、これも歌える奇跡が起きたよね。なんか、今回のアルバムはこれまでのバンド人生の中で一番レコーディング中に奇跡が起きたなーって思うんです。


▲Ivy(B)

――奇跡とは。

平一洋:6月くらいから曲作りが始まったけど、一回曲が出来上がっても急にそれをはずしたりとか、レコーディングが全然終わる気がしなかったんです。でももちろん期限もあるし。僕、追い詰められれば追いつめられるほどできなくなっちゃうタイプなんで苦しかったんです。「数学(7/8)」も歌詞が完全にできてなかった中でレコーディングで。でもいざ歌うとなったら言いたいことがばーっと出てきたりしたんです。そういう意味で、奇跡が起きたと言うか、音楽に生かされてるなってことをすごく感じました。

――なるほど。他のみなさんは本作についてどういう印象ですか?

higiri:今の時代ドラムって打ち込みばっかだけど、今作は無理言って全曲ドラム叩かせてもらったんです。お金も時間もかかるけど、レコーディングすると自分の実力が知れるんで、とても勉強になった作品です。自分の音を作品として世の中に出せることが嬉しかったです。

milk:確かに勉強になったかも。ラッコとしての伸びしろも、プレイヤーとしての伸びしろもすごく見えた作品です。

SAN:時間があるようでない状態でレコーディングが続いて、その間にもライブがたくさん入ったりしてて。限られた時間の中で制作してきたんで多少無理をした部分はあるんですが、そういう中でこそ出来るものもあるし、あながち時間がないという状態だけが悪いってわけでもないなって気づかされましたね。

Ivy:いやでもやっぱり時間って大事だなって思いました(笑)。

平一洋:次いつリリースする、みたいな話も出始めているんですが、今絶賛生みの苦しみを味わっている最中なんで、次は余裕をもって進めたいですね(笑)。


▲higiri(Dr)

――10月16日の<千歌繚乱vol.14>では、『弱肉教職』制作期間を経てまたひとつ成長したラッコの姿を見ることができそうですね。最後に、みなさんにとって“音楽”とは何なのか教えてください。

平一洋:今回のアルバムが学科をモチーフにしていることにも繋がるんですが、僕にとって音楽は先生のようなもの。高校を中退してからずっと音楽をしてきて、ライブハウスに行くことが学校に行くことみたいな感じだったんです。その中でだんだん出会う人が増えてきて、悔しいこともあればハッピーなこともあって。普通の人が学校とかで学んだことを、俺は音楽から学んできたんじゃないかなと思ってます。

milk:僕も音楽というものを通して、音楽以外のことを学ばせてもらったと思っています。対人関係だったり、生活するうえで必要なことだったり。そういう意味では平さんと似てるかも。

――音楽が先生というの、おもしろいですね!

higiri:僕にとっての音楽は生き様だったり恋人だったり。上手くいかないなと思ったら恋人と喧嘩するように、僕もドラムのことを嫌いになったりする時期もあった。でも好きなときはとても好きだし結局ずっと一緒にいるし。そういう僕とドラムの関係をリスナーに聴いてもらえるというのは、僕の生き様を聴かせているのと同じなのかなって思います。

SAN:僕は秋元康さんが言っていた「音楽は思い出の栞」というのに共感しています。音楽を聴いてそのときの情景を思い出したりすることって実際あるみたいで。自分で作った曲も聴けばそのときの情景を思い出すし、『弱肉教職』を聴けば今のことを思い出すんだろうなーって。作った曲を振り返れば、人生の栞になってるのかも。

――おふたりにとっては音楽が人生を現すものなんですね。Ivyさんは?

Ivy:音楽は何か、なんてわかんないっすね。でも、わかんないからこそ今自分は音楽をやってるのかもしれない。探究者も探究するものの結果がわかればそれ以上探求しない。音楽が自分にとって結果がでたものなんだったら、自分はもう音楽をやってないんじゃないですかね。とはいえ、今まったく音楽を聴かなくなっちゃって。それは多分、自分の中で何かを知ってしまったからなんですけど…。みんなが言っていることもすごくわかるんだけど、結局音楽とは何か、なんてよくわからないです。

――わからないからこそやっている、というのも興味深いです。みなさんの考えをちょっと知れて良かったです。<千歌繚乱vol.14>を楽しみにしています!

取材・文◎Yoko Hattori(BARKS)


<千歌繚乱vol.14>

日時:2017年10月16日(月) 開場17:00/開演17:30
開場:渋谷REX
出演:Sick./ZERO MIND INFINITY/ハクビシン/まみれた/未完成アリス/ラッコ
料金:【先行チケット】3,500円 【一般チケット】3,800円 【当日券】4,000円

チケット受付スケジュール
9月12日(火)12:00~10月15日(日)
チケット購入ページURL:
[イープラス]
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002235976P0030001

1st FULL ALBUM『弱肉教職』

2017年11月1日(水)2type同時リリース

【初回盤】GLK-050 ¥3200(税抜き)
10曲入りCD+DVD
[CD]
1.教育
2.生物学(幽囚谷のバッタ)
3.化学(色彩皆無)
4.時間学(PM5:00)
5.精神分析学(青年ナイフ)
6.心理学(火花散らしたら)
7.芸学(白昼夢)
8.葬学(循環)
9.農学(本当の自分の物にナッテイナイ物)
10.音楽(冷えきった魂について)
[DVD]
時間学(PM5:00)MV+オフショット

【通常盤】GLK-051 ¥3000(税抜き)
11曲入りCD
1.教育
2.生物学(幽囚谷のバッタ)
3.化学(色彩皆無)
4.時間学(PM5:00)
5.精神分析学(青年ナイフ)
6.心理学(火花散らしたら)
7.芸学(白昼夢)
8.葬学(循環)
9.農学(本当の自分の物にナッテイナイ物)
10.数学(7/8)
11.音楽(冷えきった魂について)

LIVEスケジュール

<1周年記念単独公演>
11月3日(金・祝)新宿BLAZE
※入場料無しの半公演無料。半公演有料也

<冬の陣 単独武者修行 収穫変>
11月12日(日)大阪アメリカ村CLAPPER
11月18日(土)新潟CLUB RIVERST
11月23日(木・祝)仙台 BARTAKE(アコースティックLIVE)
11月25日(土)26日(日)札幌colony
12月15日(金)金沢vanvan V4
12月17日(日)名古屋Zion

<冬の陣 単独武者修行 最終公演>
12月30日(土)新宿Zirco Tokyo

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