【インタビュー】黒木渚、復活を語る

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■ せっかくどん底から這い上がってきたんだから

▲シングル「解放区への旅」初回限定盤 A

── 今回のシングル、4曲入ってるじゃないですか。去年配信リリースした「灯台」は別にして、3曲はこの1年間の黒木さんのドキュメントそのものだと思うんですけど、どの順番で出来たのかな?ってずっと考えていて。悲しみに沈んでいる「ブルー」があって、そこから怒りをバネにして立ち上がる「火の鳥」があって、スピードをつけて明るく駆け抜けていく「解放区への旅」ができたのかなって、勝手に想像してたんですけど。実際どうだったんですか。

黒木:順番は、「解放区への旅」ができて、そのあとの2曲は同時です。

── 全然違った(笑)。「解放区への旅」が最初だったというのは意外かも。

黒木:できたのは先だったけど、リリースするかどうかはまた別の話で。「火の鳥」ができた時に、私はこれがリードになるのかな?と思ったんですね。けっこうアップダウンが多い病気で、今年に入ってすごく良くなってたんですよ。よっしゃ!って活力が湧いてきて、復讐に燃える「火の鳥」みたいな気持ちになった瞬間に、また具合が悪くなって。焦って練習しすぎるとまた悪くなって、いちいちへこむんですよ。それで「ブルー」が同時期にできたんです。

▲シングル「解放区への旅」初回限定盤 B

── ああ。なるほど。

黒木:「ブルー」は家の屋上で作りました。平日の昼間に屋上から街を見下ろして、むなしい気持ちでいっぱいになって。街って生きてるじゃないですか。毎日同じように生活していて、私だけが屋上でぼんやりと回復を待っている。空は最高の晴天なのに、なんでこんなに無力感があるんだろうという、これはバラードだなと思って作った曲です。

── こういう、内面の弱さと向き合うような曲って、あまりなかったですよね。

黒木:ないですね。強いヒロイン像が多かったし、自分もそうあるべきだと思っていて、女の子っぽいめめしさを人様に見せるのは恥ずかしいと思ってたんですけど。今作らないともう出すタイミングはないかもしれないし。

── 「ブルー」があることで、このシングルは深みがぐっと増してると思います。片や「火の鳥」は、復讐心で燃え上がる激情の曲。

黒木:やっぱり怒りがあるって元気ですよ。めっちゃ怒ってるのが「火の鳥」で、怒る気にもなれないのが「ブルー」。復讐に燃えるということは、生きる理由になるんですよね。でも私には明確な敵討ちの相手もいなくて、運命というか、なぜ歌手にこういう難しい病気を落雷のように落としてくるのかという、天に向かって“そこから降りてこい!”みたいな気持ちになっていて。その時にちょうど手塚治虫の『火の鳥』を読んでいて、火の鳥は永遠に生きてるんだけど、定期的に燃え尽きて、灰の中からまた生まれることが書いてあって、区切りはあるんだなと。一度ちゃんと死を通過して、次の命につなげていく、そのシステムがあったらいいのにと思ったんですね。私も何回も生まれ変われたらいいのにと思って、よし、「火の鳥」という曲を書こうと。

── あぁ。なるほど。

黒木:だけど、戦う意思はあるんだけど、心はまだボロボロみたいな。その不安定な感じを音にも反映させたくて、この曲の駆け上がっていくコード進行は“飛翔”と呼んでるパートなんですけど、そのあとに墜落したような音を入れたりとか。そうやって抗っている姿がきっと一番美しいんだという気持ちで作りました。この曲は、レコーディングがぐっときましたね。

── ライブと同じバンドメンバーですよね。

黒木:みんなすごい気合入ってました。宮川(トモユキ)さんは、レコーディングに初参加だったということもあって、一番気合い入ってたかもしれない。キムさんも、初めて会った時には私の曲を知らなくて、“歌詞を読んで、その中から踊る曲を決めていいですか?”って言われたんですよ。そしたらまっすぐに「火の鳥」を指して、“僕はこの曲で踊ります”と。

▲<音楽の乱>東京公演

── 力のある曲です。「火の鳥」と「解放区への旅」の、リード曲争いがあったわけですか。

黒木:いや、リード曲はスタッフ含め色々な人の意見も聞いて決めました。やっぱり「解放区への旅」がリードという意見が多かったですね。気持ちは「火の鳥」のほうに入ってたけど、でも「解放区への旅」でカラッと復活するのも自分らしい気がするし。「火の鳥」はちょっとヘビーじゃないですか。それよりは「解放区への旅」で、明るく笑いながら復活するほうが性に合ってると思います。

── シングルを出して、復活ライブを果たして。一つ壁を抜けた感覚はありますか。

黒木:あります。曲ができて、ライブをやって、自信を取り返したし。まだまだ、悔しい思いもしていくと思うんですよ。だけど、気持ちの支えは出来上がったと思います。

▲<音楽の乱>東京公演

── このあと、ツアーは12月まで、合計4本。

黒木:けっこう間があくので、またトレーニングしながら頑張ります。

── 伊藤キムさんとのコラボを見て思ったんですけどね。音楽だけじゃなく、アートやパフォーマンスと連動するライブのやり方は、黒木さんにぴったりじゃないですか。

黒木:そういう人になっていきたいですね。せっかくどん底から這い上がってきたんだから、ルールなしで何でもやっちゃうみたいな。映像作家とコラボとかやってみたいし、プラネタリムでも歌ってみたい。やりたいことはまだまだたくさんあります。

取材・文◎宮本英夫
ライブ写真撮影◎椋尾詩

  ◆  ◆  ◆


黒木渚 ONEMAN LIVE<音楽の乱>

9/24(日)渋谷O-EAST ※SOLD OUT
16:00/17:00
チケット料金:¥4,800-(+1 drink)

10/7(土)福岡スカラエスパシオ
17:00/18:00
チケット料金:¥4,300-(+1 drink)

[追加公演]
12/1(金)大阪 BIGCAT
18:30/19:30
チケット料金:¥4,300-(+1 drink)

12/15(金)名古屋 Diamond Hall
18:30/19:30
チケット料金:¥4,300-(+1 drink)

■9/5(火)23:59まで オフィシャルHP2次先行受付中
URL:http://eplus.jp/kn17t-hp2/
※PC&携帯(i-mode・ezweb・yahoo!ケータイ)

黒木渚 ワンマンライブ<〜幻想童話〜砂の城>

2018年2月24日(土)
昭和女子大学 人見記念講堂
開場/16:00 開演/17:00
チケット料金 ¥5,800-

ファンクラブ先行(e+のみ)※ピクチャーチケット仕様
2017年10月7日(土) 20:00 〜 2017年10月15日(日) 23:59迄
受付URL:http://sp.lastrum.co.jp/feature/?fid=sunanoshiro

シングル「解放区への旅」

2017年9月20日発売
【CD収録曲】
1. 解放区への旅
2. 灯台
3. 火の鳥
4. ブルー

■初回限定盤 A
CD+DVD(Music Video Clips vol.2)
¥2,300+税 / LASCD-0080
-DVD収録曲-
・虎視眈々と淡々と
・君が私をダメにする
・大予言
・ふざけんな世界、ふざけろよ
・カイワレ

■初回限定盤 B
CD+冊子(小説「やとわれ地蔵」)
¥2,300+税 / LASCD-0081

■通常盤
CD
¥1,200+税 / LASCD-0082

◆黒木渚 オフィシャルサイト
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