【インタビュー】ROLL-B DINOSAUR「織田哲郎はバンドがやりたいということがこの2ndアルバムではっきりしたよね」

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■ユカイくんは歌自体がベースにブルースがあるんだよね
■ブルースがベースにあるボーカルじゃないと俺は嫌なの


――ユカイさんが歌詞を書いた「石ころの唄」も、やるせない人生のブルース感覚満載で。

ユカイ:サラリーマンの歌だもんね。

織田:ユカイくんは、歌自体が、ベースにブルースがあるんだよね。だから俺はこのバンドのボーカリストに、ユカイくんしか思いつかなかったの。ブルースがベースにあるボーカルじゃないと、俺は嫌なの。最近そういう人、本当にいないから。

ユカイ:ある時からパタッと消えたよね。欧米でも。ロックンロールのルーツにつながってるボーカリストは。

織田:とはいえさ、向こうのミュージシャンは、音楽としてもろにブルースを歌わなくても、いわゆる伝統的なブルーノートの扱いを心得てるから。俺はそれがないと嫌なの。ミの音が短三度なのか長三度なのか、どっちかわかんないけど気持ちいいあたりで…というのがないと嫌。最近の若い子は、マイナーな曲は短三度、メジャーな曲は長三度、「ミ」の音ですという、それじゃつまんなくね?って。


――微妙なニュアンスですよね。そこにブルースが宿るという。

織田:ユカイくんの歌なんて、ブルーノートの応酬なわけ。曲がメジャーだろうがマイナーだろうが。自然にそこへ行けるボーカルなんだよね。

ユカイ:ロックンロールの血を引いてるかどうか、というところだね。ミック・ジャガーしかり。ローリング・ストーンズが“ロックの殿堂”に選ばれた時に、6人目のストーンズと言われた亡くなったイアン・スチュワートの名前を挙げて、「彼のおかげでストーンズはブルースキーを踏み外さなかった」って言ったんだけど。このニュアンスを分かる奴も本当にいなくなった。

織田:いなくなったね。まあでも海外にはそれなりにいるんだけど、日本にはぱったりいなくなった。

――でもROLL-Bはブルースの伝統を守ろうとか、そういう硬い感じは全然しないですね。サウンドはモダンですし。

織田:モダンとは思わないけど(笑)。

――でもビンテージ機材で一発録りでとか、そういう回顧的な感じとは違うような気が。

織田:ああ、それだけじゃつまんないとは思うんで。それは俺個人としても、長い間音楽をやってきて良かったなと思うのは、どの時代の音楽も、どれも俺の血になっていて、だから今作るものがあるから。その時代の流行りというのは表層的な部分で、それと関係なく音楽の本質というものは常にあるんですよ。いろんな音楽のいろんな良さがあって、それをある時代に「どうですか?」って提示する人がいると、それを吸収して次の時代に引き継ぐ人がいる。表層的な流行りとは別に、その時代時代でいろんな人が提示してくれたものをこっちは受け取って、今いるわけで。だから今俺が何をやったらかっこいいだろう?というのは、歴史の蓄積の中から生まれるわけだから、俺はミュージシャンとして、明らかに今が一番楽しいし、優れているなって自分で思うんだけど。だって、蓄積はどんどん増えていくだけだから。

――素晴らしいです。僕は4曲目の「MY BABY BLUE」が好きなんですけど、イントロでツェッペリンか?と思ったら、サビの開ける感じは80年代のLAメタルみたいで、そのバランスがすごく楽しくて。これはいろんな時代のロックのミクスチャーだなと。

織田:完全なミクスチャーですね。(作曲者の)ASAKIって面白いんですよ。俺とかユカイくんは「こういう感じで”」と言うと、ストーンズとかツェッペリンとかは、言わなくてもすぐできちゃうところがあるんだけど、ASAKIとかJOEとか、ヘタすると知らないから。

ユカイ:フリーを知らなかったよね。

織田:そうそう。フリーと言うと、バンド名じゃなくてレッチリのベーシストになっちゃう(笑)。

ユカイ:フリーを教えたら「かっこいいね」って盛り上がってたよね。そこで初めて知るみたいな。

織田:だからこっちが「同世代ならこうやっちゃうよね」というものを出しても、彼らなりの解釈で返してくるのが面白いんですよ。たとえば「石ころの唄」も、同世代の人間だけで固まってやると、「ああ、ビル・ワイマンみたいなベースね」とか言って、もっとストーンズっぽくなっちゃったりするんだけど、JOEはビル・ワイマンとか知らないから(笑)。もっとシャープに来るわけ。そうすると「これだよね」という、時代感がどこともつかないものになってくれるわけですよ。まああんまり外れたら、それは違うよって言うけど、結果的にすごく面白くなることが多くて。

ユカイ:新鮮なんだよね。彼らにとっても。

織田:そう。

――年長組と、若者組とでも言いますか(笑)。

織田:トニセンとカミセンで(笑)。

――それはこのバンドの絶対の武器だと思いますね。そして今回、ユカイさんの作曲が多いですね。1stアルバムに比べると。

ユカイ:織田さんが失踪してたからね。

――そこへ戻る(笑)。俺が書かなきゃって。織田さんももともと、書いてほしかったんですか。

織田:そうそう。もっと書いてよという話はしてたよね。

ユカイ:織田哲郎はバンドがやりたいんだな、ということがはっきりしたよね。この2ndアルバムで。だってプロデュースしようと思えばいくらでもできちゃうけど、あえてバンドのメンバーに託して、どこへ行くかわかんないような曲もあったし。最後の「DIRTY OLDMAN BLUES」なんてね、どうなっちゃうんだよ?っていうところから作られてるから。

――「DIRTY OLDMAN BLUES」は、ツェッペリンの「ブラック・ドッグ」みたいだなあと思いきや、スライドギターやブルース・ハープが入って来るし、面白くてかっこいい曲になっていますね。

織田:これもね、何がおかしいって歌詞が最高なんだよね。だいたいユカイくんの歌詞ってそういう傾向があるんだけど、最後はヤケクソだよね(笑)。

――みんな消え失せちまえ、で終わってます(笑)。

織田:それと、あれも最高よ、「Mr.カサノバの恋の手ほどき」。恋の手ほどきとか言って、何の手ほどきもしてないんだから。しかも最後めんどくさくなって、“ガタガタ言わずに今を突っ走れ”(笑)。すごいよね。

――言われてみれば確かに(笑)。

織田:それでも最初は手ほどきをしようとしてるのよ。レッスンNo.1の“沈黙は黄金のルールさ”あたりはそうだけど、4あたりからめんどくさくなってるんだよ(笑)。7とか8の“ジェントルに”“アニマルに”とか、もういい加減どうでもよくなってきてて、最後は“ガタガタ言わずにロックンロール”だから(笑)。こんな破綻した詞は俺は作れないよ。すごいなと思った。

ユカイ:いやあ、ロックンロール!!

織田:ロックンロールだよ。全然破綻してるんだけど、最後に“ガタガタ言わずに今を突っ走れ”って言われると、収拾がついてる気がするじゃない。すげえなと思った。

ユカイ:混沌だよね。結局ね。でも「ガンガン」も一緒でしょ。

織田:ううん、違う(笑)。

ユカイ:だって最後は、結局は“ガンガン行こうぜ”だし。

織田:いや、俺はもっと論理的だよ。まだ器がちっちゃいなと思ったね(笑)。「カサノバ」の破綻の仕方はすごいと思うよ。

ユカイ:でも「ガンガン」から来たんですよ、「カサノバ」は。「ガンガン」があったからできた。

織田:ああ、そっか。そういう意味では、俺があそこで煮詰まった挙句に開き直った感が、ここで出たんだね。

ユカイ:織田さんの「暴言野郎」もそうじゃない。人のこと言えないよね(笑)。

――素晴らしいです。言いっぱなしのロックンロール・アルバムです。

織田:本当にね、相当スリリングな状況で作ったけど、結果的にいろんな意味でとても面白い作品になったと思いますね。

ユカイ:いろんなタイプがあるしね。これはアルバムとしても飽きないね、ここまで飛び散っちゃうと。やっぱり新しいことをやるのって、最近特に難しくなってきてるというか、CDも売れないしさ、新しいことをやるのをあんまり求められてなかったりするじゃん? コンピレーションとカバーとベストばかりが売れて、過去にあるものを編集するみたいな。でも本当にここまで新しく、まっさらなものを作っちゃうと、まず聴いてもらうところから始めないといけないからね。

織田:そうなんだよね。

ユカイ:そうじゃないともったいないというか。

――ちなみにアルバムタイトルの『SUE』というのは、誰がつけたんですか。

ユカイ:さて…

織田:いや、これはASAKIだよ。何にしようかって雑談をしていた時に、ASAKIが検索していて。SUEというのは、ティラノサウルス・レックスの有名な化石の名前なんですよ。恐竜なのに可愛い名前だから、それ面白いなということになって、決まりました。

――すべてのロックンロール好きに人に届いてほしいアルバムです。そしてアルバムが出たあとのライブ、楽しみにしてます。

織田:ぶっちゃけ、大変なんですけどね。でもライブはやるたびにどんどん良くなってきてることを、自分らでもすごい実感してるんで。とにかく見てほしいなと思います。新曲、大変だけどね。

ユカイ:新曲を引っ提げてやるわけだからね。でも1曲目の「Neverending Dream」から大変なんだよね。難しい。

織田:ミュージシャンはミュージシャンで大変な上に、ユカイくんはこれを1曲歌うだけで5曲ぶんぐらいの体力を使うという。

ユカイ:たぶん血管が切れるね、曲の後半で(笑)。よく作ったよね、この曲。しかもアルバムの1曲目に。

織田:1曲目に持ってきちゃったからね。やらないわけにはいかないよ。でもライブの1曲目にはやりたくねえな(笑)。

取材・文●宮本英夫

リリース情報

2nd ALBUM『SUE』
2017.10.11 リリース
KICS-3524 \3,000+ 税
1. Neverending Dream
2. Mr. カサノバの恋の手ほどき
3. ガンガン
4. MY BABY BLUE
5. はずれクジ
6. Interlude
7. アナスタシア
8. 暴言野郎
9. 石ころの唄
10. の~まる
11. DIRTY OLDMAN BLUES

ライブ・イベント情報

<Release LIVE>
10/27(金)「ROCK'N' ROLL BOUT Vol.1」@HEAVEN’ S ROCK さいたま新都心VJ-3
11/17(金)「ROCK'N' ROLL BOUT Vol.2」@横浜BAYSIS
11/24(金)「ROCK'N' ROLL BOUT Vol.3」@新宿ReNY
12/21(木)「ROCK’N’ ROLL BOUT Vol.4」@大阪SOMA
12/22(金)「ROCK’N’ ROLL BOUT Vol.5」@名古屋 ReNY imited

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