【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.89 「Tom Pettyのラスト・ライブを見た日本人の話(前編)」

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10月2日に逝去したアメリカの誇るロック・アイコン、トム・ペティ。訃報に触れ、彼を知れば知るほどなぜ日本ではそれほど人気がでなかったのだろうと疑問を抱きました。時を同じくして、わりと身近な、昔からお世話になってきたギョーカイ人がトムの最後のライブを現地で観ていたことを突き止めたので、ぜひインタビューをと申し込んだところ、「トムのことなら!」と快諾してくださいました。

そこで今回は、先月9月25日にアメリカ・ロサンジェルスのハリウッドボウルで開催されたTom Petty&The Heartbreakersのラスト・ライブを観た夢番地 広島オフィス所長、朝山 徹氏のお話をご紹介します。場内で朝山氏が撮影された当日のライブ写真も独占入手。貴重なお話と写真をぜひご覧ください。

   ◆   ◆   ◆


──トム・ペティのライブを初めて観たのはいつですか?

99年の全米ツアー最終日に、先月見てきた今年のツアーの最終公演と同じ会場のハリウッドボウルで観ました。彼らの長いキャリアからみると初めて観たタイミングは遅いですが、日本には殆ど来ていなかったので…。それこそ80年代にBob Dylanと来日したのが最後だったんじゃないでしょうか?

──ハリウッドボウルはトム・ペティの本国アメリカにおけるホームグラウンド的な会場だったのでしょうか。

もともと彼はフロリダ州のゲインズビル出身ですが、早々にLAに移住してブレイクしたからLAがホームタウンみたいになってましたね。ハリウッドボウルは15,000人以上入る世界でも有名な屋外のコンサート会場です。Bowlという名前にあるとおり、山を削って作った“鉢”や“どんぶり”のような形状の客席なので前方の席にいると後方から歓声が本当に降って来る感じでした。この日はLucinda Williamsがゲストでしたが、またこの人がすごい人で。圧巻のショウでした。


──最後となったツアーも全ての公演が完売していたそうですね。40周年だからというわけではなく、ここ暫くはツアーをやるとほとんどの会場で完売していたとか。アメリカやカナダでは大変な人気のようですね?

それはもう、すごいと思います。彼らの前に演奏するゲストもMy Morning JacketやPearl Jamがやったり、Steve WinwoodやJackson Browne、CSN、The EaglesのギタリストのJoe Walsh、亡くなってしまいましたがJoe Cokerがやったこともありました。今年はそういうレジェンドばかりでなく、The LuminieersやThe Sheltersといったバンドも一緒にやっていて、毎回そうそうたる面々で強烈でしたね。

──話は戻りますが、なぜ99年のそのライブへ行かれたんですか?


もともと日本の音響会社にいらっしゃった方が渡米し、アメリカの会社で働き始められ、数年後にTom Petty & The HeartbreakersのPAクルーの一員として全米ツアーを回っているという情報を聞き、そろそろ彼らのライブを本当に観たいと思っていたので連絡してみたら「観に来れば」ということになりまして。

──活躍の場を日本からアメリカに移した音響マンがきっかけだったとは驚きですね。

そうですね、すべてはこの方との縁ですね。本当に感謝してます。でもその後は、私の仕事のスケジュールと彼らのツアーのスケジュールで観に行ける所に行っていたので、なかなか“ホームタウン”であるカリフォルニアやフロリダで観たくても観られることはなかったですね。

──では、どこで観られていましたか?


例えば、今年はテネシーのメンフィスと、ミネソタのセントポールというたまたま訪れた街で観ましたが、彼らのコンサートはどこで観てもすごい盛り上がりでした。それとホームタウンでの公演だと東京公演と同じで知り合いや会いたい人、関係者が沢山ですから逆に良かったかもしれません。

──そこはご自身がプロモーターなので最も心得られているところですよね。

まあ、ライブは勿論観たかったのですが、皆さんとコミュニケーションも取りたかったので(笑)。やはり人が多いと気を遣います。邪魔になってもいけないので。

──でも今回は、LAのあの場にいらっしゃれたわけで。今回もたまたまでしたか?

本当に、今回、あの99年以来のLA、そしてハリウッドボウルで観られたのは特に感慨深かったですね。今回に関しては、もともとLA公演が9月21日、22日しか発表されていなくて、それが完売して25日が追加公演として出たんです。そんな中、私は丁度その日程でサンディエゴへU2を観に行く予定がありましたが、今回はU2を見るのが目的だったので、LAが近いと言えども日程的に諦めていました。サンディエゴには友人のミュージシャンや上司も含め8人くらいのパーティで行きましたが、そこでトムの追加公演が出たからこれは見に行こうと、その中の友人と二人で盛り上がり、旅程を変更/延長して観に行きました。だから“たまたま”ではなく、“無理やり”かな(笑)。他の方々はスケジュール上帰国しなければならずで残念がってました。

──ご友人は初めて観たわけですよね? どんなリアクションでしたか?



彼は本当に感動してましたね。行くと決めてから、99年以来の付き合いになるトムのツアー・クルーに連絡してチケットを頼んだんです。「何とかならん?」って。そしたら急な連絡に関わらず、たまたまキャンセルが出たか何かで、かなり前の席を取ってくれて。もう2時間ぶっ飛びっ放しでした。何回か観ていてもあんな距離で演奏を観たのは初めてだし、友人は勿論“動く生の彼ら”を観るのが初めてでしたから(笑)。

──だから撮られたライブ写真がトムの目の前なんですね(笑)。

そう(笑)。パスももらえたのでバックステージやステージ上にも行かせてもらえて。バンドやクルーにも全員じゃないけど会えたし、いろいろな写真も撮れて友人も喜んでました。

──それは最高な体験ですね。

この追加公演があったから観れたんですよね…本当にラッキーでした。そして今思えば・・・観られて本当に良かった。

──何かの巡り合わせでしょうね、きっと。

そうですね、何かがあったんですかね。

──今回、ツアー前にトム・ペティ本人が「こうした大規模なツアーはこれが最後になるだろう」と言っていたようですが、内容はやはりベスト的なものでしたか?

もう、ベストもベストで、彼らのキャリアを総括するかのような選曲でしたね。日によっては曲が幾つか変わったようですし。バンドのホームページには詳しくその辺りが掲載されてますので、ぜひチェックしていただければと思います。今年は40周年ということで、4月から43本、その中にはフェスティバルへの参加、スタジアムでの公演もあり、アリーナや大きな野外劇場でもやった大規模なツアーでした。全公演1曲目にはファースト・アルバムの1曲目「Rockin' Around(With You)」をずっとやっていましたね。全体的にはゲストが終わって彼ら自身は2時間超えるくらいで、いつもと同じ長さのライブだったと思います。私が観た日全てにおいても、歌も演奏もかなりの充実度でした。何よりTomを始めハートブレイカーズ全員が楽しんでいたように思えます。それがまた強力でした。


──結果として2017年9月25日のハリウッドボウルでの公演がトム・ペティの最後のライブとなってしまいましたが、それをご覧になられて改めて今感じることはありますか?

“何も変わらずいつもの彼らだった”というのが今でも思う印象です。変わらぬ佇まいで演奏を楽しむ彼らと、そんな彼らに何年かに一度会える日をとにかく楽しみにしてきたオーディエンスがいて、ある意味、そこには見事な信頼関係が見える。僕は英語が堪能なわけではないので彼のMCへの解釈が間違っているかもしれないけど、常に変わらず目の前にいるお客さんを見て、常に彼なりの目線で分かりやすい言葉とメロディー、演奏で関係を紡ぎ築き続けていたような気がしますね。人を啓蒙したり、コントロールしたりするような発言もないし…その辺りは全く変わらない。この日も変わらず腹の底から楽しめたし、大声で歌ったし(笑)、持ち帰るものも大きかったですね。それは会場にいたお客さん皆さんもそうだったと思います。

──特に印象に残った楽曲やシーンは?

個人的には以前から耳にこびりついている好きな曲が2曲あって。彼の曲の中ではそんなに有名ではないかもだけど、どちらもアルバムの隠れたような場所にある曲で、1曲は96年のサントラ盤『She's The One』に入っている「Walls」と、いう曲と、もう1曲アルバム『WILDFLOWERS』の中の「Crawling Back to You」なんですが、本当久しぶりにセットリストに入ってましたね。今までこの2曲を聴きたくても聴いた事がなかったので、これは嬉しかった(笑)。あっ、あと、もう2曲あって。「Louisiana Rain」と「Southern Accents」という曲は結局聴けなかった(涙)。これらもいい曲なんですよ。

──40年やっていても、毎ツアー何回も観に行っていても、初めて聴く曲があったんですね(笑)。

ぶっちゃけ、またこの曲?(苦笑)って時もありましたけど(笑)。

──そりゃ長年のファンならありますよね。


そう思っちゃいますね、ファンだから(笑)。僕が彼らに挨拶へ行くと、きまって最初に「1泊、2泊で来る人」(=「クレイジー」)と言われたりもしていましたけど、彼らのライブを観たら眠気なんか吹き飛びましたね。それがどんな選曲であろうとも。気候や時差、環境が変わろうが、全く関係ない。それくらい彼らのライブ、彼らの歌、演奏が好きでした。この間のハリウッドボウルの時は「今回は何泊するんだ?」と聞かれて「5泊」って答えたら「へー!」って驚いてた(笑)。今回はU2もあったから少しだけ長めでしたので(笑)。

──5泊で長めとは、なかなかのクレージネスだと思います(笑)。海外視察はいつもそうのような弾丸日程なんでしょうか?

視察じゃないですね(笑)。ただ、彼らのライブを観に、人に逢いに行っているだけです。でもそんな時間を作らせてもらえるのは、これはもう、ひとえに会社のおかげです。本当に感謝しています。

──毎年アメリカに行かれているイメージがありますが、もしやトム・ペティのツアーが主な理由でしたか?

実はそれが大きいですね。毎年彼らのツアーがあったわけではないけど、ツアーある毎に行っていました。ツアーごとに少なくとも2回は観に行って、多いときは3回観てた。仲がいいクルーの皆とはメールや年の瀬の挨拶をずっとやりとりもしているから「来年はツアーだぞ!」「おっ! 行くよ!」みたいな感じで。トムのように、他にも日本になかなか来ない人たちがいるから、そういう日本で観るのが難しくなった好きなミュージシャンを観に行くのが一つの趣味みたいにもなっちゃった感がありますかね。

──それだけ通えばオフィシャル・サイトで映像が残されるはずですね。

ありましたね(笑)。2012年でしたか…お恥ずかしい。でも、あれはあれで嬉しかったですね…今でも嬉しいです。<次回へ続く>

■朝山 徹氏(株式会社夢番地 広島オフィス所長)

日本一素敵な名前を持つ会社・夢番地は、中国四国/関西地方のコンサート・プロモーター。99年、筆者が担当していた女性シンガーのプロモーション活動並びにコンサート開催のご縁で朝山氏と出会う。その後はフジロックでご飯を食べるタイミングがピタリと合ってしまい、数年連続でオアシスにて奇跡的に遭遇したり、筆者イギリス滞在時には視察で訪れていたアイルランドのダブリンやロンドンのアビーロードにて観光をお供するなど帰国後も外タレツアー現場で会うと何かと励ましてくださるお方。アーティストからの信頼も分厚く、とっても素敵な音楽ギョーカイの重鎮のお一人。(写真はロンドンのナショナルギャラリー前にて電話を受けた朝山氏を筆者が激写したもの。どこにいてもお忙しい。)


取材・文=早乙女‘dorami'ゆうこ
写真=朝山 徹

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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