【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.90 「Tom Pettyのラスト・ライブを見た日本人の話(後編)」

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10月2日に逝去したアメリカの誇るロック・アイコン、トム・ペティ。訃報に触れ、彼を知れば知るほどなぜ日本ではそれほど人気がでなかったのだろうと疑問を抱きました。時を同じくして、わりと身近な、昔からお世話になってきたギョーカイ人がトムの最後のライブを現地で観ていたことを突き止めたので、ぜひインタビューをと申し込んだところ、「トムのことなら!」と快諾してくださいました。

そこで今回は、先月9月25日にアメリカ・ロサンジェルスのハリウッドボウルで開催されたTom Petty&The Heartbreakersのラスト・ライブを観た夢番地 広島オフィス所長、朝山 徹氏のお話をご紹介します。場内で朝山氏が撮影された当日のライブ写真も独占入手。前編に引き続き、貴重なお話と写真をぜひご覧ください。※前編はこちら(https://www.barks.jp/news/?id=1000148301)

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■トム・ペティの魅力は「音楽への真摯さ、姿勢」にある

──トム・ペティの長年のファンとして、彼の魅力をどう感じていますか?

音楽への真摯さと姿勢じゃないでしょうか。それ故に感じさせる孤高さとブレなさがある。何度観ても、何にこんなに惹かれるんだろう、って。それが解らないから、何度も観たいと思うのかもしれませんね。彼らのコンサートは、何回観ても何回でも観たいと思わせる一期一会の空間。決して大きい事も言わないし人を揶揄することもない。ただ良いと皆が思い感じる音楽を作って、音源を出して、コンサート・ツアーをやる。その繰り返しの結果として各地に待っている人がたくさんいる。これはできそうでなかなかできないですよね。ミュージシャンにも彼らのファンは多いと思いますよ。作品やテクニックは勿論、やはりその姿勢が好きで、皆、尊敬してるんじゃないかなと思います。

──ブルース・スプリングスティーンと比較されることが多いようですね。

そんな時もあったようですね…。トムにはThe HeartbreakersがいたようにブルースにはE Street Bandがいて、お互い自分のパーソナルなバンドと一緒でしたし。二人とも素晴らしいソングライターだと思いますね。あまり接点がなかったように思えますが、一度二人が一緒のところも観てみたかったですね。ブルースのトムへの追悼コメントは泣かせる内容でした。

──「American Girl」など自分が投影しやすい歌詞の代表格とされるなど作詞への評価が非常に高いシンガーソングライターであるトム・ペティのソングライティングについてはどう捉えていますか?


歌のモチーフは身近な恋や愛、望郷などで、自分とすごく近いところに視点を置いていて、目を閉じればその歌、歌詞の中に自分を投影出来たり風景が浮かぶ。でも、そうした中に、確実に強い意志を感じさせていたんじゃないかと思います。「Runnin' Down A Dream」や「I Won't Back Down」などで見られるような“引き下がらない”とか“夢に向かって進もう”という身近なところにメッセージを込めた曲があり、コンサートではそれを皆で歌える。身近ですけど作品は奥深いと思います。

──「I Won't Back Down」が911の後でラジオでのオンエア・リクエストが増えたという話もありますね。

その時の皆さんの気持ちに共感させた、あるいは寄り添えたんじゃないでしょうか。ブルース・スプリングスティーンもそうですが、皆さんが近いところに置いておきたい歌だったり歌詞だったり、そんな歌い手なんだと思います。

──私は音を聴いて大きな優しさを感じたのですが、亡くなったから知るというのは大変な皮肉と感じています。

ミック・ジャガーもポール・マッカートニーもリンゴ・スターも、ボブ・ディランも皆コメント出しましたし、ジャンルに関わらず、自分たちのコンサートでトムの曲をカバーしてトリビュートしているミュージシャンも多いです。先日来日したジャクソン・ブラウンも東京公演の1曲目はトムの「The Waiting」で始めていました。二人は仲が良かったと思いますし、おそらく同志のような感じだったのでしょう…。現ハートブレイカーズであるスコット・サーストンは、80年代後半から90年代にかけてジャクソンのバンドにいてプロデュースをやっていたということもありましたし、観ていてすごく嬉しかったですね。

──日本と海外メディアでの取り上げ方がまったく異なる理由は何だと思われますか?


日本では何故かあまり名前を聞かなかったですよね…、失礼な話ですが。でも作品はいいし、プロモーション・ビデオもクオリティが高いものを作ってましたしね。日本ではもしかしたら何か違う印象だったんですかね。私はスタイルどうこう関係なく、あのMTV全盛期にいい映像と良い曲ばっかりだったから新作も楽しみだったし、コンサートを早く観てみたいとずっと思ってました。

──日本へはあまり来なかったようですしね。

フジロックが一度オファーしたことがあったと聞いて「それはぜひ呼んでください!」とスマッシュの人に重ねてお願いした事がありました(笑)。

──え!?

ぜひ苗場で観たい! と思いましたね。ただ、日本、アジアに関わらずアメリカ、カナダ以外でそんなにやってないようでしたから。まあ、アメリカ、カナダは広大ですから、それだけ国内でツアーをやると時間もかかりますからね。

──そんな舞台裏があったとは。さて、ここまでお話を聞きながら愚問のような気もしますが、トム・ペティは朝山さんの最も好きなミュージシャンですか?

僕の中では好きなミュージシャンがたくさんいすぎて一番は決めれないです。でも一番に近いです(笑)。

──そうでしたか(笑)。他にも交友のある海外アーティストはいますか?

好きだったり、尊敬している方はいますよ。ジャクソン・ブラウンもそうだし、パティ・スミスもそうですね。あと、いろいろなバンドのサポートとして来日する、スタジオなどでも活躍されているミュージシャンでお会いする方もいます。年齢やキャリアに関係なく、“音楽まっしぐら”を感じる人たちと話をさせていただけることは大変光栄な事ですし、嬉しいですね。ツアーで広島に来られたら、お好み焼き屋で乾杯する事がありますが、これがいい時間なんですよ、広島ならではで(笑)。皆さん好きですよ、お好み焼き(笑)。

──(笑)。では、日本のフェイバリット・ミュージシャンは誰でしょう?

たくさんです。最近はザ・クロマニヨンズの新作をよく聴いています。この秋から始まったツアーを早く観たくて仕方がないです。特に今、本当に観たい!

──その昔、ダブリンで私の連れのイギリス人に「日本には素晴らしいミュージシャンがたくさんいるんだよ!」と熱弁されるのを目の当たりにし、日本の音楽に対する愛情の深さに感動したのを思い出しました。


さっき話していたトム・ペティの「I Won't Back Down」の歌詞には「楽な逃げ道なんてないよ/俺は俺の力でやりきってやる/けして負けたりしない」という歌詞がありますが、いつも日常にこうした言葉が自分のどこかにあって、万人に平等に時間が過ぎる中、音楽を糧に出来る今を大切に、真摯に過ごしていこうと思います。そんなことをTom Petty&The Heartbreakersの音楽と姿から教えてもらえたような気がしてます。それくらい尊敬出来るミュージシャンであり、尊敬できる音でした。

──その音楽と仕事への愛情深さの根源はTom Petty&The Heartbreakersでしたか。今日は貴重なお話を有難うございました。余談ですが、この記事用にお借りした写真がトムのオフィシャル追悼映像に映っているのを拝見し、朝山さんとトムたちとの関係の深さを感じ入りました。
映ってましたね(笑)。

■朝山 徹氏(株式会社夢番地 広島オフィス所長)
日本一素敵な名前を持つ会社・夢番地は、中国四国/関西地方のコンサート・プロモーター。99年、筆者が担当していた女性シンガーのプロモーション活動並びにコンサート開催のご縁で朝山氏と出会う。その後はフジロックでご飯を食べるタイミングがピタリと合ってしまい、数年連続でオアシスにて奇跡的に遭遇したり、筆者イギリス滞在時には視察で訪れていたアイルランドのダブリンやロンドンのアビーロードにて観光をお供するなど帰国後も外タレツアー現場で会うと何かと励ましてくださるお方。アーティストからの信頼も分厚く、とっても素敵な音楽ギョーカイの重鎮のお一人。(写真はロンドンのナショナルギャラリー前にて電話を受けた朝山氏を筆者が激写したもの。どこにいてもお忙しい。)


取材・文=早乙女‘dorami'ゆうこ
写真=朝山 徹

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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