<RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017>、検証!緊急対談!“踊れる歌謡曲”とはどんな音楽か? カネコヒデシ(TYO magazine)×仲村瞳(全日本歌謡情報センター)

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現在、約1ヶ月に渡って開催中の渋谷の街を巻き込んだ音楽フェス、<Red Bull Music Festival Tokyo 2017>。その目玉イベントのひとつとして、"踊れる歌謡曲"をテーマとしたDJイベント<歌謡浪漫 - KAYOU ROMAN>が、2017年11月11日に開催される。

この日は、日本の歌をテーマにしたクラブナイトということで、人気DJたちが日本語歌詞の音楽だけでスペシャルなDJプレイを披露することになっている。ご存知“King Of Diggin”こと筋金入りのレコード・コレクターMUROの和モノセットをはじめ、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのメンバーであり、自身の活動のほか楽曲プロデュースやトラック制作などもこなすMACKA-CHINによる和モノ7インチセット、またMONDO GROSSO名義での14年振りのアルバムであり、“全曲日本語ボーカル曲“という『何度でも新しく生まれる』をリリースした大沢伸一は最新曲を披露するのかという期待も……。さらにDJ/ビートメーカー/エディター/ラジオパーソナリティーとマルチに活躍を見せるLicaxxxは、すでにラジオで“男性アイドルをテーマにプレイするかも?”と言及しており、この夜はぜひ“日本の歌”で踊り通したいところだ。

そんな<歌謡浪漫 - KAYOU ROMAN>を存分に楽しんでもらうために、BARKSでは、ニッポンの"歌謡曲"で本当に踊れるのか?を検証すべく、ふたりの有識者に緊急対談をお願いした。

日本のいい音楽を新旧問わず紹介するプロジェクト「Japanese Soul」の主宰者で、WEBマガジン『TYO magazine/トーキョーマガジン』編集長のカネコヒデシ氏。そして、BARKSが運営する歌謡&演歌系専門WEBサイト「全日本歌謡情報センター」編集長で、昭和歌謡文化の輝きを後世に繋ぐことを目的とする「昭和歌謡文化継承委員会」の会長を務める仲村瞳氏。

今回は、このおふたりに“踊れる歌謡曲とは?”をテーマに、トコトン心ゆくまで対談していただき、さらに“踊れる歌謡曲”5曲を選曲していただいた。ニッポンの"歌謡曲"の超ディープでドープな世界。この機会に、ぜひとも"踊れる歌謡曲"を堪能してみてほしい。



──まずは、おふたりが歌謡曲にハマったキッカケを教えてください。

カネコヒデシ(以下、カネコ):学生時代からクラブやカフェでジャズやソウルなどのDJをやっていまして、その中で日本の音楽も掛けられるものは掛ける、という感じでやっていましたので、そもそもハマったという感覚はないんです。ただ、キッカケというか、とある出来事がありまして、、、13年ほど前に某オシャレホテルのラウンジのカフェで、クリスマス・イヴのDJをお願いされた時に、主宰者だった友人が最後に(山下)達郎の「クリスマス・イブ」を流したんですよ。その瞬間、カフェのマネージャーが走って来て「歌謡曲はちょっと!」って。理由を聞くと「この場所は、日本から世界に発信していく場所なんで、そういう曲はかけないで欲しい!」と。僕らは、どうあがいても日本人だし、日本語を使うのに、「日本の曲を掛けられない日本って、おかしくない?」と思ったワケですよ。それで、クラブでもカフェでも流せるようなオシャレな日本の音楽を、新旧問わず紹介していこう!と、12年前に始めたのが「Japanese Soul」というプロジェクトなんです。だから、ハマったというよりは、押し出していこうと思ったキッカケですかね。

──仲村さんはどうですか?

仲村瞳(以下、仲村):両親が趣味で演歌や歌謡系のバンドをやっておりまして、父がテナーサックス、母がボーカルで、そのバンドの練習場でいつも遊んでいた、というのと。家に"8トラ"、いわゆるカラオケの機械があったので、母がほぼ毎日のように歌っておりました関係で、小さい頃から自然と歌謡曲に馴染んでいたという感じなんです。

──現在の歌謡曲的な活動を教えてください。

カネコ:先ほどの「Japanese Soul」というプロジェクトは、毎月第三金曜日にDJイベントを渋谷のナイトフライというバーで開催していて、その他のイベントにも"和モノ"しばりのDJとして呼ばれることも多いですね。あとは「トーキョー シティポップス」という、日本のシティポップスサウンドに特化したプロジェクト。選曲だけで架空のコンピレーションアルバムを作って、仕事中にPCでぼんやり聴いいたらいいよ!的な曲を紹介する、いわゆるデスクトップミュージックを提案してます。ちなみに、そちらも基本毎月第一月曜日に恵比寿のタイムアウトカフェでDJイベントを開催してたり。DJ、選曲、執筆、こういった対談やトークショウ、ラジオだったり、そんな活動が中心ですかね。

仲村:私は、今年の6月からWEBサイト「全日本歌謡情報センター」の編集長として、演歌と歌謡系のイベントやコンサートの取材に行って記事を書いたり、そういったジャンルの情報を発信しております。それとは別に、2014年から「昭和歌謡文化継承委員会」という委員会を立ち上げまして……それは昭和歌謡好きが集まって、年に何度か研究発表会をやっています。

──今回、"踊れる歌謡曲"というテーマでイベントが開催されるのですが、どんな曲だと考えますか?

カネコ:そもそも音楽自体が踊るためのものだと思ってます。言ってしまえば、海外のダンスクラシックって一種の歌謡曲だと思うんですよね。みんな、クラブで歌いながら踊ったりしていますから。

仲村:私は、日本人の魂、盆踊りと音頭だと考えます。盆踊りのルーツを辿ると鎌倉時代まで行くのですが、一遍上人が、踊り念仏で日本中を廻られていたのが始まりだという説があって、その頃から日本人の魂に、本能に植えつけられたものだと考えますね。あとは漁師とか、炭鉱で働いている人の炭坑節とか、そういう労働者の魂の叫びだったりの意味もあるかと。ちなみに、「東京音頭」が出来たのは昭和8年で、東京にはあまりなかったから作ろうというコトになって出来たようですよ。


──おふたりに「踊れる曲」をそれぞれ5曲を選曲していただきましたが、カネコさんからご紹介をお願いします。

カネコ:まずは、アン・ルイスの「Alone In The Dark」ですね。山下達郎プロデュースのアルバム『Pink Pussy Cat』に収録されていまして、作詞作曲が吉田美奈子さん。ファンクに近い、ディスコです。

仲村:私の1曲目は「オバQ音頭」。リリースは1966年で、アニソン音頭の第1号だそうです。もちろんリアルタイムではないのですが、50代以上の人たちには絶大な支持がありますよ。当時、200万枚以上売れたようですけれど、レコードだけで200万枚で、ソノシートとフォノシートとあと3種類くらい出ているらしく、それを合わせると「およげたいやきくん」を越える普及率かも、という説があるくらい。とにかく、画期的な一枚です。

カネコ:次は山下達郎の「メリー・ゴー・ラウンド」。うねるような野太いベースがたまらないディスコサウンドです。

──ディスコサウンドが多いのは、当時流行っていたのでしょうか?

カネコ:それもありますが、達郎さん自体、「BOMBER」という曲が、関西のディスコシーンでヒットしたんですよね。それが、まだ「RIDE ON TIME」前の話です。だから、関西だけ「BOMBER」の別ヴァージョンの7インチがあったとか、そういう逸話もあります。達郎さん的に"ディスコには助けられた"という思いがあって、ディスコサウンドが多いんじゃないですかね。ご本人から直接聞いた話ではないので、思いっきり推測ですけど(笑)。


仲村:私の2曲目は、クック・ニック&チャッキーの「可愛いひとよ」で、日本で広く認知された、和製ディスコソングの第1号です。結成から今年でちょうど50周年。ニックさんはお亡くなりになられてしまいましたが、チャッキーさんはまだ現役で活動されています。特にニックさんは、当時ダンスステップを考案して広められた方で、日本のディスコ界の重要人物です。

カネコ:まさにダンスミュージックですね。では、3曲目。松任谷由実の「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」。「(俺たち)ひょうきん族』のエンディングテーマですね。サウンドが完全にマイケル・ジャクソンの「スリラー」を意識してる感じで、疑いようのないダンスミュージックです(笑)。

仲村:私は、やまとの「新宿ディスコナイト」。昭和50年代から60年代は、新宿のディスコが黄金時代だったんですよね。はじめは「カンタベリーハウス」とか「トゥモロウUSA」にいたDJたちが、自主制作で作った曲だそうです。やはり、映画の『サタデーナイト フィーバー』の影響が大きかったと思いますね。

カネコ:続いて、南佳孝さんの「Midnight Love Call」。80年のアルバムですが、70年代後半からのレゲエブームからのレゲエサウンドを、いち早く取り入れた人のひとりですね。

仲村:私はBLACK CATSの「抱きしめてクレイジーナイト」。80年代に原宿のホコ天で踊っていた竹の子族とかローラー族の時代に、ロックンロールを愛する人たちの聖地だったお店、「CREAM SODA」の店員たちで結成されたバンドです。「CREAM SODA」は、"原宿を作った男"と呼ばれる山崎眞行さんが経営されているお店で、伝説的なバンドの中の一曲として選びました。作詞が森雪之丞さんで、日本のロカビリーを代表する曲ではないかと思っています。ちなみに「CREAM SODA」も今年で50周年らしいです。

カネコ:最後は、吉田美奈子さんの「恋は流星 Part II」。ドラムビートから始まるのですが、いわゆる人力ハウスミュージックです。美奈子さんの歌唱力もすばらしく、ゴスペルハウス的な感じの一曲です。

仲村:私は少年隊の「ABC」ですね。今、ボイストレーニングに行っているのですが、その先生が、羽島亨先生という、当時の少年隊や田原俊彦さんをはじめ、ジャニーズ系のディレクターをされていた方で、先生によると、ジャニー喜多川さんがボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」がお好きみたいで。あの曲のインスパイア系の楽曲がジャニーズの中で脈々と歌い継がれているらしく、その中の一曲だそうです。

カネコ:またスゴい情報ですね(笑)!

──最後に、おふたりにとって歌謡曲とは何でしょう?

カネコ:ニッポンの魂、まさに「Japanese Soul」なんじゃないかと(笑)。

仲村:私も日本人の本能を揺さぶるモノだと思いますし、次世代に受け継がれていくべきものだと、あらためて思いました。

──ありがとうございました!


カネコヒデシの「踊れる歌謡曲」5曲

・アン・ルイス
「Alone in the Dark」
『Pink Pussy Cat』
1979年

・山下達郎
「メリー・ゴー・ラウンド」
『MELODIES』
1983年

・松任谷由実
「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」
『SATURDAY NIGHT ZOMBIES 7'』
1987年

・南佳孝
「Midnight Love Call」
『MONTAGE』
1980年

・吉田美奈子
「恋は流星 Part II」
『恋は流星 ep』
1977年

仲村瞳の「踊れる歌謡曲」5曲

・石川進・曽我町子
「オバQ音頭」
1966年

・クック・ニック&チャッキー
「可愛いひとよ」
1971年

・やまと
「新宿ディスコナイト」
1978年

・BLACK CATS
「抱きしめてクレイジーナイト」
1985年

・少年隊
「ABC」
1987年

文:カネコヒデシ(BonVoyage)/写真 :西角郁哉/編集協力:高橋美穂/撮影協力:渋谷DOOR


◆TYO MAGAZINE
◆全日本歌謡情報センター


<歌謡浪漫 - KAYOU ROMAN 歌謡浪漫限定宴会>

日程:2017年11月11日(土)
開場・開演23:30〜
場所:clubasia(渋谷)
料金:前売2,500円 >>チケット購入 *20歳未満は入場不可。顔写真付き身分証必須。
出演:MACKA-CHIN, MURO, Shinichi Osawa, DJ IKU, Licaxxx, 北澤フロアーサービス

<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017>

2017年10月22日(日)〜11月17日(金)
会場:都内各所(渋谷・恵比寿・六本木など)
チケット:https://eplus.jp/ath/word/114863
オフィシャルサイト:http://tokyo.redbullmusicfestival.com #redbullmusic
主催:レッドブル・ミュージック・フェスティバル実行委員会
後援:一般財団法人渋谷区観光協会
*未就学児は入場不可。一部イベントは20歳未満入場不可
*実施内容は予告なく変更となる場合がございます
*会場内での出演者及びライブの撮影・録音・録画等は禁止いたします
*客席を含む、会場内のオフィシャル映像及び写真は公開されることがあります

◆<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017> オフィシャルサイト
◆<レッドブル・ミュージック・フェスティバル東京2017> BARKS内特設サイト
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