【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.91「子連れでフェスろう!(4) <朝霧Jam編>

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我が家のベランダからは富士山を臨むことができます。遠くの建物に遮られて完全なる形ではありませんが、いつも「今日は見えるかしら?」と確認してしまうのは日本人だからでしょうか。

さて、朝霧Jamから帰宅した翌朝のこと、キャンプから持ち帰った大量の洗濯物を干していたときに秋晴れの空の下に富士山がよく見えたので、朝霧Jamで見ていた富士山を覚えているかどうかを息子に尋ねてみました。


「あのお山、わかる? あれは富士山。あそこでキャンプしたね。楽しかった?」という母の誘導尋問に対し、「キャンプ…、オヤマ…」と少し考えること数秒、それからパッと顔を輝かせて「ケロポンズー! オヤマー!」と大声で言い、オヤマ(=富士山)、そしてケロポンズを見たことを覚えていることを知らせてくれました。その後、続けて息子との関わりが多かった人たちの名前を間違えることなく順に挙げていき、「ミーンナ キャンプ シタネェ!」とニコニコ顔で話していました。


それ以降、朝霧Jamが終わってすでに3週間ほどが経過していますけれど、ベランダに出るたびに抱っこをせがみ、富士山を目視できると「オヤマデ キャンプ シター!」や「ケロポンズ マタ イコウネ!」と言っては笑顔を見せてくれるようになりました。とても嬉しい変化です。

「親になっても諦めない」とこのコラムに初めて書いた2年前、3歳前の子を抱えてキャンプインフェスにまで参加できるとは予想していませんでしたが、サマーソニック、フジロック、そして朝霧Jamへとステップアップできたのは家族と仕事仲間のおかげでした。また、そうした音楽フェスへの参加を重ねたことで、世の中には逞しい子連れファミリーがわんさかいることも知れましたし、彼らとふれ合うことで以前の自分がいかにおっかなびっくりでいたことかと気づくことができ、もっともっとアクティブに行動しなくてはと思うようになりました。



気がつけば息子も3歳を迎え、感情を言葉、或いは態度で示せるようになってきつつあるので、コミュニケーションは俄然取りやすくなりましたし、他にもいろんなことが一人で出来るようになりました。成長すればするほど手はかからなくなると言うのは正にその通りで、新生児の頃のように気を揉んだり必要以上の心配をすることはなくなりました。

しかし、日々の暮らしでは家事、育児、仕事に毎分毎秒が勝負であることには変わりなく、可愛い我が子なのに成長の度合いを測るための時間を取ることをおろそかにしてしまいがちです。だからこそ、今回の朝霧Jamに参加して、年に数回くらいは子どもを自分の好きなエリアへと連れ出して、そこで子をしっかりと見つめるということはとてもいい時間であると改めて思いました。


私がそう感じた場所は会場内に設けられた子どもが遊ぶためのエリアである朝霧Jamのキッズランドでした。芝生の広がる敷地内の中央部にあったプレーパークの象徴的な遊具でもある竹で組まれた巨大なタワー、それは今年の夏、フジロックの開催直前に近所のプレーパークで遊んだ時には登れなかった代物です。今回息子は自分の力だけでその一段目を登ることができ、筆者もその瞬間を見守ることができました。子が初めて何かを成し遂げた時に見せる表情や子の喜びを共にすることは、子育てをしている自分への極上のご褒美ですし、それを自分の好きな音楽フェスという場で得ることができるのはとても嬉しいことです。



そんなこんなの子連れでの朝霧Jamでは例によってライブはほぼ観られませんでしたが、他の子連れファミリーの話を聞いても「ウチもケロポン定食しか観てないですよ~」と耳にしましたし、いずれは息子の成長と共にライブも観られるようになることでしょうから悲観していません。近頃ではライブへの関心が高まっているのか、ステージに照明が点ると「アソコヘイク!」とバギーから降りようとして暴れる息子の、そして自分自身の感性を養うため、そして成長するために、親子にとって相応しい学び場をこれから先も求めて開拓していきたいです。

写真・文=早乙女‘dorami’ゆうこ

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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