【ライブレポート】谷山浩子、どんな曲が歌われるかという興味と名手による妙技が堪能できた<猫森集会>“ぶっつけ本番オールリクエスト”

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BARKSがお送りする<猫森集会2017>特別レポート、その第二弾は9月21日に行われたCプログラムの2日目だ。今年の猫森集会はA~Dの4つのプログラムが組まれ、初登場の橋本一子、押尾コータロー、石野真子という豪華ラインナップの真ん中に、お馴染みの顔ぶれが二人。それがこのCプログラム“ぶっつけ本番オールリクエスト”で、初日がパーカッションの山口とも、2日目がバイオリンの斎藤ネコという、何が起きてもなんくるないさ、という頼れるメンバー。特に斎藤ネコは谷山浩子とは長く深い付き合いで、「本日のゲスト…のようなもの(笑)」というざっくばらんな紹介もそこそこに、早速リクエストタイムへと突入する。


アルプスの少女を思わせる民族衣装風ワンピースの谷山浩子、青いチャイナ服の石井AQ、ラフな長袖シャツの斎藤ネコ。なにやら3人の練習スタジオに紛れ込んだようなアットホームなムードの中、抽選箱に入ったチケットの半券を谷山浩子が引き当てる方式で、最初のリクエストは「DOLL HOUSE」。「珍しいの来たなー」とつぶやく谷山浩子と、がさごそと譜面を探し始めるネコ&AQ。オリジナルは85年に斉藤由貴へ歌詞提供されたこの曲、結局斎藤ネコは譜面がないままで曲が始まってしまったのだが、一番の歌を聴きながら白い譜面になにやらコードや記号を書きつけ、やおら弓を取り上げると2番から完璧な伴奏をつける斎藤ネコ。素晴らしいを通り越して驚異的。どんな曲が歌われるかという興味のみならず、名手によるこうした妙技が堪能できるのも猫森集会オールリクエストの醍醐味だ。


続いてのリクエストもセルフカバーで、オリジナルは岩男潤子に提供した「あなたを忘れたい」。原曲は斎藤ネコのプロデュースなので楽勝かと思いきや、谷山浩子の歌詞ノートに違うコードが書いてあったらしく、三者相談の上移調して無事にクリア。続く「無限マトリョーシカ」は、リクエストに「ヘイ!付きで」という細かい指定があり、一行歌うたびに「ヘイ!」とコーラスを入れる観客全員参加型バージョンで。何度か練習を繰り返していよいよ本番、完璧なエンディングに思わずピースサインで「すごい!」とはしゃぐ谷山浩子。だんだんとコンサートというよりはアトラクションかゲーム大会のようになってくる、これもまた猫森集会ならではの独特のムードだ。さらに「紅マグロが出てくるやつ」というリクエストに応えて「素晴らしき紅マグロの世界」を。何も言わずとも紅マグロ色の赤い照明が会場を美しく染めあげる、スタッフとのあうんの呼吸もばっちりだ。


「MOON SONG」は、1987年リリースのアルバム『水玉時間』から。「やっと王道の曲が来た(笑)」と、ほっと一息の谷山浩子。どうやらオールリクエストにはマニアが多く、隙あらばレアな曲のレアなバージョンを歌わせようという、なにやら心理ゲームの色合いもある。続く「テングサの歌」も「“ひろコール”有りで」というマニアック指定つきで、歌詞の合間に「ひろこ!」とコールが入る昭和のアイドル仕様で。そうかと思えば次は「犬を捨てに行く」という、谷山浩子も思わず「すごい曲順だなー」とつぶやく、明るくシュールな民謡風→暗くシリアスな無常の歌へと急降下する展開は、通常のコンサートではありえないもの。それにしても「犬を捨てに行く」の斎藤ネコの熱演は鬼気迫るもので、毛を何本も切るほどの情熱的な弓さばきを、固唾を飲んで見守るオーディエンス。エモさで言えばこの日一番の快演だ。


ここで少々趣向を変え、三択クイズの正解者にリクエスト権を与えるゲーム形式で。谷山浩子からは「私が3日前の休みの日にしたことは?」、石井AQからは「最近僕の体の中で見つかった石は?」、斎藤ネコからは「僕が明日することは?」という、誰も答えを知るはずもない無茶振りクイズの結果、リクエストされた楽曲は「ひとみの永遠」と「夢の逆流」。どちらもタイトルが出た瞬間に拍手が起こり、歌も演奏ももちろん完璧。


再び半券抽選スタイルに戻り、曲は「向こう側の王国」から「約束の海」へ。前者は2002年のアルバム『翼』から、後者は93年のアルバム『天空歌集』から。ここまで数えてみても、70年代、80年代、90年代、00年代、10年代とまんべんなく。それだけの長い時間、名曲を生み出し続けている谷山浩子もすごいが、すべての年代に名曲を発見するファンもすごい。つくづくこのオールリクエスト大会は、両者の思いが重なり合う大切な場所だという思いを新たにする。実はこのあと「鳥は鳥に」が続くはずだったが、思わず立ち上がって曲解説を始めてしまう谷山浩子。あっ!と気づいて曲に戻る前に、「今の曲で私は終わりました(笑)」。「約束の海」がそれほどに思いのこもった名唱であったことに加え、「鳥は鳥に」も素晴らしい歌唱だったことを合わせて書いておこう。ちなみに、斎藤ネコの前に置かれた「鳥は鳥に」の楽譜は栗コーダーカルテット用のパート譜だったらしく、頭の中でバイオリン譜に置き換え、弾き終えたあとでぼそっと「勉強になります」とつぶやく斎藤ネコ。素晴らしいを通り越して超人的だ。

「宴もたけなわですが。最後の2曲になりました」


ここからは、全員参加のじゃんけん大会によるリクエスト権争奪戦へ。選ばれた一人目のリクエスト「落ちてきた少年」に、「最後の曲とか全然考えないリクエスト、いいと思います(笑)」と笑う谷山浩子。さらに二人目が選んだ曲は「世界一不幸なトナカイ」。どちらがラストにふさわしいかを吟味し、まずは「世界一不幸なトナカイ」を厳かに歌い始めた…のだが、どうやら譜面に書かれた構成に不備があったらしく、途中でまさかの緊急停車――実はこれもオールリクエストでは時々あることなのだが――気を取り直してもう一度。斎藤ネコはアクシデントにむしろ気合が入ったようで、エモーショナルなバイオリンを弾きまくり、ラストの「落ちてきた少年」は3人揃って完璧な演奏で締めくくり。本当に何が起きるかわからない、しかし何が起きてもなんとかなる、必ずや感動的な後味を残してくれる素晴らしいコンビネーションだ。


アンコールは、90年のアルバム『冷たい水の中をきみと歩いていく』からの「流星少年」。なのだが、実は紆余曲折あり、あまんきみこの童話『車のいろは空のいろ』シリーズからの未発表曲を…というリクエストが、メロディを思い出せないという理由で採用されず。代わりにリクエストされた「ゆりかごの歌」も、歌詞が相当にダークなため、「これが最後だと嫌だという人がいたら」やめましょうということになり、結果選ばれたのが「流星少年」。「最後はお礼の歌です」と言って歌った「流星少年」は、打ち込みを交えたロック調で、素晴らしくエモーショナルに深く胸を打つものだった。

終わってみれば2時間半で15曲。懐かしい曲も新しい曲も、王道曲もレア曲も、名手たちの名演によって一つのコンサートとして成立させる、即興劇のようなスリルと感動がそこにはあった。猫森集会の中でも異彩を放つ“オールリクエスト”とは、リクエストするファンとの会話の中で、谷山浩子と彼ら彼女らとの絆をきゅっと結び直すような、とても親密で心通いあうもの。マニアをうならせ初心者にうれしい、谷山浩子ワールドの入り口の深さと奥の深さを堪能できる素晴らしい一夜だった。

取材・文●宮本英夫

ライブ・イベント情報

「谷山浩子ライブツアー2017~デビュー45周年大収穫祭 ソロ編~」
11月11日(土)17:00/17:30 仙台市戦災復興記念館記念ホール
お問合せ:ノースロードミュージック 022-256-1000 http://www.north-road.co.jp/
11月18日(土)17:00/17:30 高知ライラホール
お問合せ:デューク高知 088-822-4488  http://www.duke.co.jp/
11月19日(日)17:00/17:30 松山MONK
お問合せ:デューク松山 089-947-3535 http://www.duke.co.jp/
11月25日(土)17:00/17:30 鎌倉歐林洞ギャラリーサロン
お問合せ:キャピタルヴィレッジ 03-3478-9999 http://www.capital-village.co.jp/
12月03日(日)17:00/17:30 新潟県民会館小ホール
お問合せ:FOB新潟 025-229-5000 http://www.fobkikaku.co.jp
12月09日(土)17:00/17:30 大阪ザ・フェニックスホール
12月10日(日)16:30/17:00 大阪ザ・フェニックスホール
お問合せ:夢番地(大阪) 06-6341-3525 https://www.yumebanchi.jp/

「谷山浩子コンサート2017」
12月16日(土)  開場17:00/開演17:30 江東区文化センターホール
お問合せ:ネクストロード 03-5114-7444(平日14:00~18:00)

「谷山浩子ひとりでオールリクエスト180分」
2018年2月4日(日) 開場17:00/開演17:30 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
2018年1月6日(土)チケット発売
お問合せ:ネクストロード 03-5114-7444(平日14:00~18:00)

「谷山浩子ライブツアー2017~デビュー45周年大収穫祭 ソロ編 京都スペシャル~」
2018年2月17日(土) 開場17:00 / 開演17:30 京都文化博物館 別館ホール
12月16日(土)チケット発売
お問合せ : ナウ ウエスト ワン 075-252-5150
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