【インタビュー】YUKIYA [Kαin]、充実と葛藤の10年を語る「当日何をどう話すか、大きな課題です」

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■何も考えず出てきたものを言葉に
■歌詞を書かないままステージで歌う

──今、非常にバンドがいい状態にあるということですが、ライブで歌う上でのYUKIYAさんの気持ちにも変化が生まれていますか?

YUKIYA:言葉の選び方が難しいんですけど、バンド人生の中でいちばん楽に歌えていると思います。前のメンバーを信頼していないとか、そういう意味ではなくて。ずっとリーダーだったので、以前は「自分が引っぱらないと」と思っていたし、メンバーともお客さんとも勝負している気持ちがありましたね。メンバーを引っぱって、お客さんを盛り上げていくというか。

──戦っている感覚があったんですね。

YUKIYA:そうですね。肉体的にも限界までやっていたので、ライブが終わった後は動けなくなることが多かったんです。ライブの次の日には何もスケジュールを入れられないような状態で30代半ばまできて、「こういう生活、ずっとは続けてられないな」っていう気持ちもありました。今は曲アレンジの構築の仕方にしても精神的な部分でも、メンバーが「ここがYUKIYAさんの立ち位置ですよ」っていうのを作ってくれている感じがするので、すごく楽なんです。

▲YUKIYA (Vo&G)

▲SHIGE (G)

──若い時はメンバーがライバルじゃないけど、ステージの上でぶつかりあうのが刺激的だったりしますよね。

YUKIYA:ありますね。JILSはライブ中にドラマーがリハーサルではなかった変拍子のオカズとか入れてきて、「オマエ、これでも歌える?」って勝負を挑まれているような感じがあったりとか。でも、それで化学反応が起こって自分でも予想しなかった良いライブになることもあるし、逆の場合もある。それはロックバンドの醍醐味のひとつですよね。Kαinは音数が多くて楽曲が緻密に作られているのに、僕がライブ中にアドリブでメロディや歌詞を変えても対応できる技術力があるメンバーだし、支えられている感があるんです。

──自由に歌えているんでしょうね。

YUKIYA:そうですね。むちゃくちゃなことしても平気でついてきてくれるメンバーなので。

──会場販売されているCD「NUMBER SIXXX.」はライブで盛り上がる絵が浮かぶグルーヴが気持ちいいナンバーですよね。踊れるビートでもあり。

YUKIYA:「NUMBER SIXXX.」はKαinの中でもアッパーでいちばんライブ向きの曲ですね。この曲、結成直後ぐらいからライブで演奏しているんですけど、アレンジもどんどん変わっていったんですよ。あと僕、ライブで新曲を歌う時は歌詞を書かないようにしているんです。だから、この曲の歌詞も完成したのはつい最近なんですよ。

──ライブでずっとやっている曲にも関わらず?

YUKIYA:はい。自分で言うのもあれですけど、D≒SIREの頃からファンの方が「歌詞がいい」って言ってくださって、自分もその期待に応えたいと思って活動してはきたんですけど、Kαinで旧約聖書の「創世記」をテーマにしたアルバム『paradiselost』(2007年)を作った時に題材が題材なので人生の中でなかったぐらいに勉強していろいろな文献を読んで、自分の中で膨らんだものを歌詞として落とし込んだんですね。詞の世界観も重くなったんですが、その時にこれ以上、こういう物語の生み出し方はできないなと思ったんです。

──突き詰めちゃったんですね。

YUKIYA:で、次はどうしようと思った時に人生の中で感じたことや覚えたこと、ボキャブラリーは全部自分の中にあるはずだから、何も考えずに出てきたものを言葉にしていこうと。歌詞を書かないままステージに立って歌うのは最初は怖かったんですけど、挑戦していく内に「俺、この曲のサビのこの箇所では毎回、この言葉を歌ってるな」っていうのが出てくるんですよ。で、ライブの後で映像を見返して「ここはこの言葉がハマってるんだ」って。そうやって出てきた言葉ってむちゃくちゃメロディとの相性がいいんですね。で、PCにパズルみたいな図形を作って、しっくり来たところを埋めていったんです。そういう作業をこの5〜6年やってますね。

▲SANA (G)

▲ATSUSHI (Dr)

──ということは、音源化されていない新曲は毎回、歌詞が違う?

YUKIYA:どんどん変わっていきます。例えば最近の曲でいうと“見つめていたんだ”と歌っていたところを“終わりがきたんだ”って歌っている自分に自分でビックリして。その時の心境や状況が反映されるんですよね。「NUMBER SIXXX.」は全部埋まったから音源にしたんです。

──そうなると完成まで相当、時間がかかっていますね。

YUKIYA:8〜9年ライブでやってきて、やっと自分の中でしっくり来ましたね。すぐ全部が埋まる曲もあれば、ある日、突然、変わる曲もあるし。

──だから、「NUMBER SIXXX.」はビートと言葉が気持ちよくハマっているんでしょうね。

YUKIYA:まさにビートと字数のハマり具合ですね。英語の歌詞はひとつの音符にひとつの意味を与えることができるのである意味、簡単なんですけど、日本語には独特の文節の美しさがあるから、“この言葉はこの字数じゃないと綺麗じゃない”っていうのがあるんですよね。言葉とビートの親和性は昔から重要だと思っていて意識はしていたつもりだったんですけど、今はそういうところをより大切にしていますね。

──なるほど。現在は<結成10周年記念名阪ワンマンツアー「by the end of the decade moon」>の名古屋公演が終了したところですが、このライブは集大成的なセットリストになっているんでしょうか?

YUKIYA:はい。名古屋は2DAYSだったので、2日間1曲もかぶらないセットリストにしました。僕ら、フルアルバムを1枚しか出していないので、半分以上の曲がCDになっていないんですよ。地方のお客さんは聴いたことがない曲も多いと思ったので、この機会にふだん東京でしかやらないような実験的な曲も入れて、2日目はほぼCDになっていない曲で構成しました。大阪も本当は2DAYSやりたかったんですけど、スケジュールがうまく組めなくて1日になってしまったんです。

──じゃあ、名古屋2DAYSの曲をミックスしたようなセットリストに。

YUKIYA:そうなると思います。音源化されていなくても、いつもやっているキーになるような曲はサビの歌詞をお客さんが覚えてくれているので、大合唱になったりするんですよ。そういう在り方も原点回帰なんですよね。現在はインディーズのバンドでもCDを普通に出してますけど、昔はレコードを出すなんて大変なことでしたし、例えばBUCK-TICKの『HURRY UP MODE』(1987年)なんて、発売された当時はライブに通っているファンからしたらベストアルバムみたいな感覚だったと思うんですよ。「やっと音源が出た」って。

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