【連載】Vol.031「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

ツイート

ザ・ローリング・ストーンズ・ファン大願成就!シーンの頂点を目指し、365日RSしていた1960年代前半~中期のBBCラジオ放送音源が遂に発売!『オン・エア』!!きっと来年は良いことがいろいろありそう!!!


1960年代初頭、ブライアン・ジョーンズ(ギター)はブルースやリズム&ブルースの黒人音楽をコピーするバンドを演りたくて故郷のチェルトナムやロンドンで活動していた。そのバンド名をブライアン・ジョーンズ・ブルース・バンドと名乗ったこともある。同じようにチャック・ベリーやジミー・リードが大好きで、ロンドンで音楽を目指していたのが4歳の時、家から近くの砂場で知り合ったミック・ジャガー(ヴォーカル)とキース・リチャーズ(ギター)。この話しは90年にミックとキースにインタビューした際、砂場エピソードとして面白可笑しく語ってもらった。機会があったら紹介したい。その後ふたりはダートフォード駅で再会し、音楽を一緒に演るようになる。リトル・ボーイ・ブルー・アンド・ザ・ブルー・ボーイズ。これはR&Bをダイレクトに感じさせるグループ名だ。そんなふたつのプロジェクトが合流、ここにスチュことイアン・スチュワート(ピアノ)がジョインしてストーンズ本体が生まれた。

ストーンズのデビューは1962年7月12日。ロンドンのマーキー・インターナショナル・ジャズ・クラブ。シカゴ・ブルースの巨匠マディ・ウォーターズの楽曲から命名したThe Rollin’ Stonesというグループ名で初めてファンの前で演奏した。ブライアンを中心にミック、キース、スチュ、そしてディック・テーラー(ベース)、ト二-・チャップマン(ドラムス)。まだチャーリー・ワッツやビル・ワイマンはいない。正式メンバーになるのは63年になってからだ。「Kansas City」「Confessin' The Blues」 「Bright Lights, Big City」「Dust My Blues」「Ride 'Em On Down」「Back In The USA」他リズム&ブルースやブルースをパフォーマンスしたのだ。ちなみに同日、BBCラジオの“Jazz Club”という番組でストーンズの超恩人でもあるアレクシス・コーナー率いるブルース・インコーポレッドの演奏が紹介されているが、このバンドのドラマーは何とチャーリー・ワッツだった。

7~8月にかけてライヴをこなし、9月から12月にかけてイーリング・ジャズ・クラブ、マーキー・ジャズ・クラブ、そしてパブなどいろいろなスポットで演奏するようになった。63年1月にはチャーリーとベースのビルが加入。数他の世話人とコネクションをもちながら、最終的にビートルズの元スタッフのアンドリュー・ルーグ・オールダムがマネージャーに就任。一気にレコード・デビューへと前進する。だが、それ以前にスチュがメンバーを外されてしまう。ロック・バンドは6人編成では多すぎるし風貌がロッカーらしくない。そんな理由で彼はサポート・ミュージシャン、ロード・マネージャーに格下げ。しかしスチュはストーンズを心から愛し、6人目のストーンとして亡くなる85年までファミリーの一員としてグループをサポートしていた。

63年6月7日、ストーンズはデッカよりレコード・デビュー。ファースト・シングルは「Come On/I Want To Be Loved」。A面がチャック・ベリー、B面がマディ・ウォーターズのカバー。63年になると連日のようにライヴを続け、デビュー月には18本のステージをこなした。しかし順風満帆とはいかなかった。「Come On」のUKシングル・チャートでの最高位は9月15日付21位だった。


▲UKファースト・シングル「Come On」 from Mike’s Collection

それまでテレビには何本か出演はしたがラジオは秋に入ってから。当時イギリスのラジオはBBCオンリー。デビュー前にブライアンが出演依頼を提出しオーディションを受けたが不合格になっている。当時イギリスではラジオに対するミュージシャン・ユニオンの力が強く演奏家の仕事を守るため、ニードル・タイムと呼ばれる時間以外にレコードをかけることが禁止。BBCラジオでは放送に際しミュージシャンに実演奏してもらい、それを放送した。ギャラも支払われた。60年代後半になると録音が複雑化しスタジオでの演奏の再現が難しくなり、スタジオ・ライヴ放送形態は激減。同国の法律が及ばない海上船舶からの“海賊放送”でレコードが頻繁に紹介されたことの影響も大だ。これがいわゆるパイレーツ・ロックだ。BBCオン・エア・ヴァージョンは殆どが事前録音で勿論オーバーダブなし。生放送もあった。スタジオだけではなく、1000人くらい収容の小ホールに観客を招いてのコンサート形式レコーディングでも行われたこともある。当時のBBC音源はものすごい量で、その後多くのファンがリアルなライヴの公式化を求めた。ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ザ・フーらは早くからお目見えしていた。


▲CD『THE BEATLES ‘Live at the BBC’』 from Mike’s Collection

2017年12月、ストーンズの歴史的演奏の数々が遂に登場。まさにファン大願成就なのである。『オン・エア』!

1963~65年、英国R&Bバンド、ザ・ローリング・ストーンズはライヴを精力的に続けながらレコードをリリース。シングルだけではなく、EP(4~6曲入り7インチ・レコード。当時はUK/EPチャートが存在した)、LPを次々に発表。そしてアメリカにも進出。ジェームス・ブラウンとも共演したし、シカゴ/チェス・スタジオでもレコーディングした。

そんな彼らが本国のBBCラジオのいくつかの番組に多くの、まさにレアな生音源を残した。放送後、しっかり保管してあるのが素晴らしい。ストーンズをはじめスリー・ドッグ・ナイト、ショッキング・ブルー、ディープ・パープルほか多くのアーティストへ僕がインタビューしたラジオやテレビの番組テープはもう跡形もないけど…(涙)。

12月1日にリリースされるストーンズのBBCラジオからの演奏ぶりはまさにライヴ・バンド、デビューしたての恐れを知らない5人の姿をダイレクトに表現している。グルーヴ感溢れるブルージー&ソウルフル・ファンキーでロックな演奏ぶりは、ブリティッシュ・ロックの夜明けをストレートに味わうことが出来る。まさに歴史、文化の足跡なのだ。

まずは『オン・エア』リリース・マテリアル&収録楽曲をご紹介しよう。今回、僕らファンがオフィシャルで初めて聴ける楽曲が7曲もあるのだ。待ってたよ、大粒の涙…。


▲1CD(スタンダード)ユニバーサルミュージック/UICY-15695


▲2CD(デラックス) UICY-78515/6


*2枚組LP(ゲートフォールド/180g重量盤) UIJY-75071/2
*2枚組カラーLP【ユニバーサルミュージック・ストア限定発売】(ゲートフォールド/180g重量盤) PDJT-1001/2
*デジタル・ダウンロード
1.カム・オン
2.サティスファクション
3.ロール・オーヴァー・べート―ウェン
4.クモとハエ
5.コップス・アンド・ロバーズ
6.イッツ・オール・オーヴァー・ナウ
7.ルート66
8.メンフィス・テネシー
9.ダウン・ザ・ロード・アピース
10.ラスト・タイム
11.クライ・トゥ・ミー
12.マーシー・マーシー
13.オー・ベイビー
14.アラウンド・アンド・アラウンド
15.ハイ・ヒール・スニーカーズ
16.ファニー・メイ
17.ユー・ベター・ムーヴ・オン
18.モナ
【Bonus Tracks(デラックス)】
19.彼氏になりたい
20.かわいいキャロル
21.アイム・ムーヴィング・オン
22.イフ・ユー・ニード・ミー
23.ウォーキング・ザ・ドッグ
24.コンフェッシン・ザ・ブルース
25.エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ
26.リトル・バイ・リトル
27.エイント・ザット・ラヴィング・ユー・ベイビー 28.ビューティフル・デライラ
29.クラッキン・アップ
30.アイ・キャント・ビー・サティスファイド
31.恋をしようよ
32.南ミシガン通り2120

ストーンズがBBCラジオに初登場したのは63年9月26日、録音は23日だった。ブライアン・マシューがホストの“Saturday Club”。因みにこの番組は57年から69年まで放送されたとのこと。『オン・エア』デラックス・ヴァージョンには同プログラムをはじめいくつかのBBCラジオ番組から32曲が収められる。番組ごとに纏めてみよう。そして初登場楽曲などをごくごく簡単に…。

*Saturday Club
☆【1】【3】【8】63年9月23日録音 26日放送
いずれもチャック・ベリー楽曲でキースのギターの張り切りぶりが良い。初出は【3】【8】。前者は御大の56年大ヒット、Billboard/R&Bチャート2位。同誌HOT100にもチャート・イン。ビルのベースも強烈。そしてほかの楽曲でも何度も出会うのだがエンディングのチャーリーのドラム・フィニッシュ。今年ハンブルクでのライヴ時も全く同じだった。このチャーリーの演奏ぶりがストーンズの屋台骨となっている。後者はチャック・ベリー59年のシングル「Back In The U.S.A.」B面ソング。そして、記念すべきデビュー曲(【1】)でのブライアンのハープが素晴らしいのだ。



▲ブライアン・ジョーンズが使用したハーモニカ from Kiyoshi Matsumoto Collection

☆【15】【20】【23】【28】【31】 64年4月13日録音 18日放送
ここの“Saturday Night”からの初出は【15】【28】。前者はストーンズが取り上げた時期にちょうどチェス・レコードのトミー・タッカーがアメリカでヒットさせていた。HOT100で11位までランク・アップしたBillboard誌では63年11月30日付から65年1月23日付までR&Bチャートはお休み)。旬な作品からのカバー。後者はチャック・ベリー58年のシングル。HOT100で81位、そんなに話題にならなかった楽曲。ストーンズお得意のマニアックな選曲。ミックとキースは61年に既に演奏していたというから、生意気だったのだ。この姿勢こそ後のストーンズを築き上げていくパワーとなったのだ!4月16日にファースト・アルバム『THE ROLLING STONES』が発売された。そのB面最後の楽曲がルーファス・トーマスのオリジナルのメンフィス・ソウル【23】。ストーンズを敬愛するエアロスミスはデビュー・アルバムで同じようにB面最後に“ウォーキング~”を収録したことはよく知られる。
☆【19】 64年2月3日録音 8日放送
UKセカンド・シングル。ジョン・レノン&ポール・マッカートニー共作。後にリンゴ・スターのヴォーカルでお馴染になり、66年のB4日本武道館公演で登場。最近はリンゴだけでなくポールもライヴでセットリストに加えていた。


▲日本ファースト・シングルは「彼氏になりたい」 from Mike’s collection

☆【2】【11】【13】【16】65年8月20日録音 9月18日放送
【16】が初出。パーソナリティーあふれたスタイルでわが国でも多くのファンに愛されているバスター・ブラウン。彼の代表作である。59年末から60年初頭にかけて大ヒット、R&Bチャート1位、HOT100でも38位を記録している。ブライアンのハープをたっぷり味わえる展開。そして65年の夏にアメリカでベスト・セラーを記録しストーンズがビッグな存在となった記念すべきナンバーが【2】。そんな代表作をミックが♪Hey♪でちょっぴりミスしたような…、オーバーダブなしのまさにレアな放送ヴァージョンに涙があふれてくる。


*Yeh! Yeh! ホストはトニー・ホール
☆【4】【12】 65年8月20日録音 30日放送
シングルA面「サティスファクション」を演奏しないで(UKリリースは8月の20日なのだ)ナンカー・フェルジ名義のオリジナルのB面【4】を演奏しちゃうなんてもうびっくりPON。そして【12】はドン・コヴェイの64年のヒット作、R&Bカバー。このナンバーがイギリスでレコード化されるのは9月末なんだけど、ミックはこのソウルフルな楽曲をいち早くこの番組で歌ったのだ。

* Blues in Rhythm ホストはロング・ジョン・ボールドリーやアレクシス・コーナーが務めた。番組名らしく他のプログラムに比べて黒っぽいムードがしっかり醸し出されていて、この時代のストーンズ・サウンドにはとてもマッチングしている。
☆【5】【7】【17】【18】64年3月19日録音 5月19日放送 DJ/LJB
ストーンズとも深い関わりがありコンサートのMCも務めたことのある英国ロックの創始者のひとりがロング・ジョン・ボールドリーだ。もちろんこの番組でMCするだけでなく演奏も披露していた。この4曲はカムデン・シアターにファンを呼んでの公開ライヴ・レコーディング。ストーンズの敬愛するボ・ディドリーのカバーからのブルージーな【5】。ミックのトーキング・ブルース、ブライアンのハープ。番組ぴったりの選曲。2012年リリースの5CDs&1EP『GRRR!“スーパー・デラックス・エディション”』のEPに登場。CD化は今回が初めて。


▲『ザ・ローリング・ストーンズ GRRR!~グレイテスト・ヒッツ 1962-2012(スーパー・デラックス・エディション)』ボーナス7”EP:BBCセッション フロント・カバー from Mike’s Collection


▲『ザ・ローリング・ストーンズ GRRR!~グレイテスト・ヒッツ 1962-2012(スーパー・デラックス・エディション)』ボーナス7”EP:BBCセッション バック・カバー from Mike’s Collection

そしてジャングル・ビート、ボ・ディドリーの生み出したこのリズムをストーンズもしっかり継承している。【18】はストーンズ・ジャングル・ビート、もちろんマラカスはミックだ。
☆【27】【32】 64年10月8日録音 31日放送 DJ/AK
この2曲もプレイハウス・シアターでのライヴ。ここでのホストは英国ロックの元祖として知られるアレクシス・コーナー。無名時代のストーンズのメンバーたちを機会あるごとに後押しした。【27】が初出。ストーンズの敬愛するブルースマン、ジミー・リードの代表作、56年にR&Bチャート3位を記録。そして憧れのシカゴ/チェス・スタジオを訪れた時の喜びを作品化したのが【32】。タイトルはチェス・スタジオの住所。シカゴに行った際にはぜひとも足を運んでほしい。

*The Joe Ross Pop Show
☆【21】【26】 64年4月10日生放送
イギリスで多数のヒット作を発表しているジョー・ロス(JR楽団)がホストを務めたこの番組からは5曲。【21】【26】は64年4月10日プレイハウス・シアターから生放送。ファンの歓声が入ってライヴな雰囲気がダイレクトに伝わってくる。前者はハンク・スノウの代表作。カントリーの名作として知られる。ストーンズのUKサードEP『GOT LIVE if you want it』に65年のライヴ・ヴァージョンが収録。


▲EP『GOT LIVE if you want it』 from Mike’s Collection

☆【6】【22】【24】 64年7月17 日録音 23日放送
ブルースやR&Bに真摯に取り組むストーンズの演奏ぶりは今聴いてもドキドキする。【6】での間奏のスタイルはまさに64年英国を表現しているのだ。分るかナァ~!?【22】でのソウルフルなミックの歌いっぷりに大拍手。当時FCを結成した細川君や岡井君やMikeはこのミックR&B声にシビレテいたのだった…。

*Top Gear ホストはブライアン・マシュー
☆【14】 【29】 【30】 64年7月17日録音 23日放送
ギターが大きくフィーチャーされ、オーディエンスの声援も加わり、ライヴをダイレクトに感じる。プレイハウス・シアター録音。リズミックな【29】が初出。59年にボ・ディドリーでR&Bチャート14位を記録している。
☆【9】【10】【25】 65年3月1日録音 6日放送
R&Bの名作【25】でのピアノはスチュだ。


▲66年3月UKリリースされたボビー・ミラーのシングル「Everywhere I Go」B面にイアン・スチュワート&ザ・レイルローラーズの「Stu-Ball」が収録された from Mike’s Collection

☆☆☆

尚、32曲詳細分析は12月に入ってから何回かに分けてじっくりと…。手伝ってくださ~い、鮎川誠さん、甲本ヒロトさん!!

*参考文献:『ROLLING STONES ON AIR IN THE SIXTIES TV AND RADIO HISTORY AS IT HAPPENED/Richard Havers』(HARPER DESIGN)


▲参考文献フロント・カバー from Mike’s Library


▲参考文献バック・カバー 同

*『オン・エア』ジャケット写真&アーティスト写真提供:ユニバーサル ミュージック

◆「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」まとめページ
この記事をツイート

この記事の関連情報