【インタビュー】和楽器バンド、ベストアルバム発売「軌跡と奇跡が詰まっています」

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和楽器バンドが明日11月29日(水)、ベストアルバム『軌跡 BEST COLLECTION+』を発売する。

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本作は2013年の和楽器バンド結成以降これまでミュージックビデオとして発表してきた全楽曲を音と映像にて完全収録、さらに新曲3曲も収録された“和楽器バンドの過去と現在をつなぐ”記念すべき作品だ。今回BARKSでは和楽器バンドにインタビューを敢行し、本作に込められた思いを探った。

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■今このタイミングでこういう曲ができて良かった

――『軌跡 BEST COLLECTION+』は、とても豪華な作品です!

鈴華ゆう子(Vo):ありがとうございます。私たちは今デビュー4年目なんですが、5年目に向けてより多くの皆さんに知っていただきたいという思いで活動しています。そんな中、どうやってもっと知ってもらうのがいいかなと考えながらこれまでに出してきたミュージックビデオを並べてみたところ、“和楽器バンドらしさ”というものがふんだんに表現できているなと感じ、これを集めて和楽器バンドの名刺代わりの一枚としてこのタイミングでリリースするのがいいいんじゃないかと思ったんです。

――この一枚があれば和楽器バンドのことをいちから知ることができますね。

町屋(G):この作品はですねぇ、すごくボリューミーです。どれくらいボリューミーかというと、僕は最後に全部の曲を並べて調整するという作業にも立ち会っていたんですが7曲目くらいから寝そうになってしまったほど(笑)。

蜷川べに(津軽三味線):寝そうっていうのはともかく(笑)、確かにこうしてまとめてみるとボリューム感もすごいし、タイトル通りまさに私たちの軌跡を辿ることのできる作品になりました。3曲収録されている新曲も攻めた感じになっていますし。

――新曲3曲はそれぞれ味わいが違いますよね。新曲のひとつ、「花一匁」について聞かせてください。

鈴華ゆう子:この曲は、毎年やっている合宿で私が作曲し、「花一匁」というタイトルをつけて筝の聖志に渡して詞をつけてもらいました。和楽器バンドとして2人で作品を作ったのは初めてなんですが、過去には別のユニット(鈴華ゆう子、いぶくろ聖志、神永大輔の和風ユニット「華風月」)だったりで作詞を頼んでいたこともあるので彼の感性を信頼していて。深くは語らず「これは花一匁って曲だよ、よろしくね」って詞をお願いしました。

――和楽器バンドとしては「空の極みへ」「華振舞」などの曲を作詞してきたいぶくろさんですが、この曲も含め歌詞の言葉選びが美しいですよね。ちょっと女性的というか。

いぶくろ聖志(筝):女性的に聞こえるというのは、僕がゆう子さんになりきろうとして言葉を選んでいるからかもしれませんね。「花一匁」の歌詞にはゆう子さんが詩吟というものを基にして日本の伝統芸能や和楽器をもっと世界に広める活動をしたいと思った、でもそれだけだとインパクトやキャッチーさが足りないからロックバンドと融合させた新しい形態のバンド“和楽器バンド”を始める…そういう歴史や想いをできる限り物語に詰め込みました。

鈴華ゆう子:本当はあんまり言いたくないんですが私、初めてレコーディング中に泣いてしまいました。歌詞があまりにも自分と重なり合って、特にサビの「ただ一輪の花として命燃やすの美しく」っていうところが自分とシンクロしてしまったんです。

町屋:いい歌になりました。サビの歌詞とか、もの悲しさが終始漂ってる。そのいい感じの寂しさの中で、命を燃やしていこうという強さと儚さがこの曲のポイント。

いぶくろ聖志:そう、詞を書くときもの悲しさを意識したんですよ。「花一匁」と聞いたときにイメージした花は、椿だったんです。なぜかというと椿って花が咲くときだいたいが一斉に咲くんですが、たまにほかの花と違った時期に咲いちゃう花もあるんです。冒頭の「季節はずれの赤いツバキが」という歌詞にもある通り、時期を逃してポツンと咲いてしまったけどそれでもひたむきに生きようとしているという花を描きたかったんです。

鈴華ゆう子:「花一匁」というタイトルをつけたとき、私の中に“たくさん人がいる中で自分がどうあるか”というイメージは漠然とあったんです。そういうことは聖志には何も伝えてなかったのに詞に具体的に表現されていて、大満足の一曲に仕上がりました。

町屋:いつもだったら僕かゆう子さん自身かでハモりを入れるんですけど、この曲は歌一本勝負でいきましょうって久々に入れませんでした。

鈴華:一輪の花のように、心をこめて歌い切りました。

亜沙(B):つまりこの曲は今風に言うと“エモい”ってことだね。

いぶくろ聖志:一言でまとめないで(笑)!

――一転、黒流さん作詞作曲の「拍手喝采」は和楽器バンドのテーマソングのような、勢いがある楽曲ですね。

黒流(和太鼓):“エモさ”は「花一匁」に任せて(笑)。ベストアルバムを作るにあたり、メンバー紹介的な曲も欲しいなと思っていたんです。和楽器バンドにはメンバーが8人もいるし楽器もたくさんあるし…と初めて見た方にはパッと見ではわかりづらいこともあるので、自分たちのことを知ってもらうための曲ですね。

――歌詞もメンバーさんそれぞれのことを歌っていますよね?

黒流:そうですね、「爪弾く~」という歌詞のあとに聖志の筝のソロ、「吹き千切れ~」という歌詞のあとに大さんの(神永大輔)尺八のソロ、というように各メンバーを象徴する言葉をわかりやすく組み込んでいます。山葵(Dr)にはラップ部分で「我愛迩」と言ってもらって、中国語も話せるんだっていう特徴を伝えたり。

――各楽器のソロも堪能できて、とてもおもしろい楽曲だと思います。

いぶくろ聖志:筝は今まで弾いてこなかったフレーズを弾いています。アレンジャーを担当してくれた人がもともとの知り合いで、僕が弾けそうで弾けないぎりぎりのフレーズを入れてきたんですよ。知り合いだから弾けなかったときにニヤニヤされちゃうのも嫌だと思って、頑張って挑戦してみました。

神永大輔(尺八):僕はもともとゲーム音楽が好きなので、ファミコンなんかの昔のゲームで使われているような音を尺八で表現してみました。ファミコンの音に対して尺八ってものすごい生々しい音なんで、ゲーム音楽っぽいニュアンスはどうやったら伝わるかなってのを考えながら演奏しましたね。

――それぞれの音楽的ルーツや個性も踏まえて構成されているんですね。

黒流:そうです。まっちー(町屋)のソロに関しては「より速く弾いて!」って頼みましたし。

町屋:そもそもこの曲は基本的に速いのにね(笑)。

蜷川べに:三味線も速かったー。ちょうどレコーディングの日が私の誕生日だったんですが、毎年誕生日はレコーディングとか何かしらあって忙しいんですよね。

黒流:ソロがあるのもそうですが、間奏でベースと和太鼓、箏と三味線、ギターと歌、ドラムと尺八といったようにそれぞれ今まで組んだことのない楽器同士が組んでいるのもポイントで。箏と三味線にしても、三味線っぽいフレーズを箏が弾いていたりするのも聴きどころです。

山葵:僕はラップ部分での黒流さんとの掛け合いが印象的。ライブでは僕と黒流さんの「和太鼓・ドラムバトル」という打楽器セッションを行うのが定番になっているんですが、この曲ではその片鱗を味わってもらえると思います。ドラムのフレーズに関しては、「どうしてもこのグルーヴが叩きたいんだ」ってこともずいぶん主張させてもらいました。

黒流:それぞれの楽器のフレーズに関しては「こう弾いて欲しい」と僕からオーダーしたり、山葵のように各々から意見を出してもらいました。悩ましい部分はまっちーにもアドバイスをもらったりしながら。

蜷川べに:レコーディングのときはこうやって相談しながら作り上げていったんですが、これがライブになったら大変だね…っていつも話してます(笑)。

町屋:僕なんてカッティングしながら高速ラップまでしなきゃいけないしなあ。

黒流:一番大変なのはまっちーかもね(笑)。

――鈴華さんは歌ってみていかがでしたか?

鈴華ゆう子:黒流さん、落ちサビの「絡んだ糸が~」から始まるところって私のことですか?

黒流:そうだよ。

鈴華ゆう子:やっぱり! もしかしてここは私のことなのかなって思ったので、優しい感じに歌ったんですよね。「花一匁」もだけど、私ってやっぱり儚いイメージなのかな(笑)。でもそこ以外は「元気いっぱいいくぞー!」っていう感じでライブのことを意識しながら歌いました。

――確かにライブ映えしそうな曲です。

黒流:ライブに来ていただいた方に自己紹介するイメージで、ライブの最初の方で演奏したいです。

鈴華ゆう子:ゆくゆくはそうやって定着していったらいいよね。和楽器バンドの定番曲として。

亜沙:今このタイミングでこういう曲ができて良かったと思います。

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