【インタビュー】vistlip 智×海、“魂削って作った”シングル2作品

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■一番大事にしているのは自分たちがいいか悪いか、やりたいかやりたくないか

――いっぽう、シングル「Timer」に収録されている2曲は“愛”がテーマだということでよろしいですか。

智:そう、ラヴソングを書きたくて。「Timer」が智が書いたラヴソングなら、「LEVEL 1」は世によくあるラヴソング。

――ドラマティックでバンド感に満ちた「Timer」のことから聞きますと、“愛”について疑問を呈して、投げやりになって、最後に真理を見出すという歌詞の流れが見事ですが、文量も多いですし組み立ては大変だったのではないですか?

智:大変でした。音符が多いんだもん(笑)。

海:確かに音符多いよな。歌詞は結構ぎりぎりまで書いていたよね。

智:うん。完成形の5倍くらい書いた。その上で一番簡潔に伝わるように持っていきたかったし、言葉のチョイスが難しかったかな。あくまで“剥製”の作り方として…。。

――ちょっと間違えると猟奇的な歌詞になってしまいますよね。

智:そうそう。グロテスクなものになっちゃうでしょ? っていうところで、試行錯誤を重ねました。


――そんな「Timer」の歌詞で綴っているのは、智さんが愛に対して思っていることでもあるのでしょうか。

智:それもあるし…瑠伊がね、新しい犬を飼い始めたんですよ。前に飼っていた犬が死んでしまってから彼がすごく落ち込んでいたのを知っているから、新しい命を迎えるということはいずれまた彼が哀しんでいる姿を見ることになるのかなと思ったんですね。でも、それをわかっていて、強い気持ちで飼うわけじゃないですか。…っていうのが考えるきっかけになって、そのあとにYouTubeで生と死にまつわるいろいろな動画を観るうちに、書きたくなったんです。この歌詞の主人公は、一度痛みを味わった人。でも、恋する気持ちって止められないから、それを“病気”っていう言葉で表して。

――恋煩いという言葉もありますしね。傷ついたときには、いつか終わりが来るんだったら最初からその愛を知らないほうがいいと思うときもありますけど…それでも限りある時間の中で誰かを精一杯愛して生きようっていう。“何にでも終わりは来る。だから僕たちは愛なんて語るのか。”という最後の一節に、どうしたって心動かされます。そういう気持ち、海さんも共感できますか。

海:それは、あんまりわかんないかな。人のそういう話を聞いて理解はできるけど、そういう感覚が自分にはあまりないというか。

――…と、言っているだけですかね。

智:ホントは泣いちゃうんでしょ?

海:いやぁ…俺もペット飼ってたけど、ペットロスっていうのもわかんないもん。

智:なんで? 愛してないんじゃないの?

海:いやいや、それはもう、自然の摂理だからさ。

智:やっぱドライだ。

海:だって、もしいつか結婚して自分が先に死んじゃうとするじゃん? そのとき相手に泣かれたらイヤだし、自分がされてイヤなことを相手にするのかっていうね。だから、誰にも知られずに死んで、何年か後に発見されるっていうのが理想。

智:なかなか難しそうだな(笑)。

――でも、海さんがいつか本当に大事な人に出会ったら…。

智:コロっと変わるかもね。でも、そんなウェットな海を見るの、それはそれでイヤかも(笑)。


▲智(Vo)

――そう言わずに(笑)。そして先ほど智さんが「世によくあるラヴソング」とおっしゃった「LEVEL 1」の歌詞には驚かされました。智さんが珍しく“側にいてよ”って歌っている!王道のラヴソング!?だと思ったら、落ちサビでまさかのどんでん返し。痛快でした。

海:俺も、初めて「LEVEL 1」の歌詞を読んだときにこいつどうしちゃったんだと思ったけど、最後に爆笑したからね(笑)。

智:ふふふ。書かなかったけど、ほかにも香水の香りで失った恋を思い出したりとか、いろいろ閃いちゃって。この歌詞、書くのが楽しかった。

――さっき、海さんが智さんのことを「普通の人と同じ場所に目がついていない」と言っただけに意外(笑)。

智:それがね、俺も意外と書けるんですよ(笑)。

海:同じ発売日に、そういう王道なラヴソングがリリースされたらおもしろいな(笑)。

智:日本人的な正解は「LEVEL 1」なんだろうと思う。そういう歌詞の内容を重ねられるシチュエーションって、たいがいの人が味わっていて、だから世の中にたくさんあるんだろうし。

――それを重々わかった上でのこのどんでん返し。

智:今回は、僕のゲームにみんなをつきあわせた感じです(笑)。そういう歌詞をのせたくなる、いい曲だしね。

――そうなんですよね、海さんによる曲が本当にきれいで。

海:最初はもうちょっと泥臭かったんですけどね。より聴きやすい、きれいな感じに仕上げました。

――なにしろvistlipって自由度が高く表現欲に満ちた魅力的なバンドだなと、あらためて思わせてくれる素敵な4曲です。さて、現在(取材は11月初旬)は過去ツアーのセットリストや演出を可能な限り再現し、ブラッシュアップした内容で構成する<10th Anniversary Tour Encounter the Phantoms>を開催中なわけですが、どんなことを感じていますか。

海:もうね、地獄のようなツアーです(苦笑)。過去にやった演出の再現度をどれだけ上げるかっていうのがキツい。あと、あまりに久しぶりの曲とかやり慣れていない曲は、手こずるメンバーもいたりね。智も、「closed auction」(アルバム『ORDER MADE』に収録)をどう歌うか悩んだりとか。

智:昔はライヴを楽しむというよりがむしゃらだったから、よく見せなきゃっていう意識のほうが強かったんですよ。でも最近はまず楽しんだ上で、どう昔の曲を今の自分が歌うか、どう感情をのせるかっていうことを気にするようになっちゃって。

海:でも、リハやっていても楽しいよね。

智:そうだね。ただ、海は鬱陶しい(笑)。

海:「なんでもいいからもう1曲やろう!」ってせがむからね、自覚はある。

智:リハーサルなのにYuh(G)がギターソロを弾いている間、Tohyaに絡んだりとか。俺と瑠伊はそれを引いて見てる(笑)。でも、当時楽しめなかった部分っていうのは絶対あって、今だから楽しめていますよ。


▲海(G)

――そういうバンドの状態って健全だし、10年続けることがまず大変なのに変わらない規模感でツアーをまわれているっていうのは、それだけvistlipの音楽を求める人がたくさんいるということ。そういう状況をお二人はどうとらえているのでしょうか。

智:本当に言ってもらった通りで。バンドって浮き沈みの幅が大きいけど、たとえば福岡だったらずっとDRUM LOGOSでライヴができていたりとか。もちろんさらに上を目指したいという気持ちはありつつも、そういう今の現実っていうのは素直にうれしいですよ。

――それができているのは、どうしてなのでしょうね。

智:それは…魅力的だから…ですかね(笑)?

――曲、歌詞、演奏、歌、ライヴパフォーマンス、キャラクター…そのどれもが。

海:っていうのはあるかもしれないけど、その理由を本当に理解しちゃったら、俺たちたぶん解散しますよ。

智:え、理解してその理由をうまく利用するんじゃなくて?

海:そういうの、vistlipのメンバーは絶対にできないから。よくわかんないけど好き勝手やってみたっていうのが、全部うまくいっているわけで。逆に器用に算段しちゃったらダメなタイプ。

――思うままにやるのが一番だと。

智:そう。この子(智)はじめ、メンバーみんなファンのことをすごく考えているけど、根本的に一番大事にしているのは自分たちがいいか悪いか、やりたいかやりたくないか。そこが絶対的な判断基準。そうすると人のせいにできないわけで、だから死ぬ気でやれるし。…っていうのを続けていけば、まだまだがんばれるんじゃないかなって。正直、10年やってきてもまだバンドとして足りない部分ってありますからね。

――vistlipとしてこの先目指すもの、夢を、メンバーみんなで語ることもあるのでしょうか。

智:うん、ありますよ。「1万人集められるようになりたいね」とか。

――たとえば、日本武道館公演とか。

智:やっぱり、武道館には立ちたい。それも、ただやるんじゃなくて自分たちが納得出来る時期に。

海:それには俺たちの存在をヴィジュアルシーンでも、ほかのところでももっと広く知ってもらわないとね。これだけ長くやってきても、結局まだ知ってもらえていないのかって感じることがすごく多くて。CDはひとつの宣伝ツールという捉え方になってきたところもあるけど、俺たちは魂削って作っているし、そういう楽曲をどう手に取ってもらうか、その方法を考えたいなと。

智:とにかく、広く知ってもらうしかないからね。

――ちなみに、BARKSの読者さんに自分たちの言葉でバンドの自己紹介をするとしたら、どうアピールしますか?

智:なんだと思う?

海:ヴィジュアル系のことを知っている人たちには、「バカの集まりだからよくわかんないかもしれないけど、いいから黙って観に来い」って言うんですけどね。

智:でもさ、ヴィジュアル系のファンじゃない人たちに向けてのセールストークができないと、営業に行ったときにどうするのさ。契約獲れないじゃん。

海:そうなったら、俺はカバンの中にパソコンとライヴDVDを入れていって、営業先で観てもらうね。それこそBARKSの読者であるということは、インターネットへのアクセスはできるわけじゃないですか。だからまずYouTubeで「vistlip」と検索してもらいたいですね。するとミュージックビデオと、違法にアップロードされているライヴ映像(笑)、そしてひたすらラーメン食べたり5人でくだらないことをやっている動画がたくさん出てくるので。それを観れば、こいつらよくわかんないなっていうことが、よくわかると思います(笑)。ちなみに男性アイドルが好きな方には、うちのベース(瑠伊)の顔がすごく整っているのでおすすめしたい。

智:海は自分を誰におすすめするの?

海:音楽だけじゃなく、服とかデザインに興味があったりちょっと普通のギタリストじゃない人が好きっていう人向けかな(笑)。で、ザ・ギタリストが好きな人には、上手ギターのYuhがぴったり。彼は技巧派なので。

――智さんは、歌と歌詞の世界がとにかく無比ですし。

海:そう、高めのキーでほかになかなかいない声だし、歌詞をちゃんと読みたいタイプの人の心は絶対につかめると思う。

――Tohyaさんは?

海:あ、ドラムはちんちくりんです(笑)。

智:急に雑!

海:彼は笑いをとることに一生懸命な人。ちょっと品がないんですけどね、そういうのが好きな人にははまる可能性はあります(笑)。つまりvistlipは色んな人を惹きつける力を持っていると思うから、食わず嫌いせず一回知ってみてください。

取材・文◎杉江優花

20thシングル「Timer」

発売日:2017年12月6日(水)
タイトル:「Timer」
3タイプ同時発売

【LIMLTED EDITION】CD+DVD(初回生産限定盤)
品番:MJSS-09209~10
価格:¥1,500+税
[CD]
M1:Timer
[DVD]
ROUGH the vistlip~花やしき大好きvistlip~

【vister】CD+DVD
品番:MJSS-09211~12
価格:¥1,500+税
[CD]
M1:Timer 
[DVD]
「Timer」Music video&making

【lipper】CDのみ
品番:MJSS-09213
価格:¥1,000+税
[CD]
M1: Timer
M2: LEVEL1

※初回生産仕様:メンバートレーディングカード(全10種類)

19thシングル「It」

発売日:2017年11月8日(水)
【LIMLTED EDITION】(初回生産限定盤)(CD+DVD)
品番:MJSS-9200〜9201
価格:¥1,500+税
[CD]M1:It
[DVD]ROUGH the vistlip

【vister】(CD+DVD)
品番:MJSS-9207〜9208
価格:¥1,500+税
[CD]M1:It 
[DVD]「It」Music video&making

【lipper】(CDのみ)
品番:MJSS-9202
価格:¥1,000+税
[CD]
M1:It
M2:Persona

※初回生産仕様:メンバートレーディングカード(全10種類)

ライブ情報

<vistlip 10th Anniversary Tour「Encounter the Phantoms」>
12月13日 札幌PENNY LANE24
~[GATHER To the THEATER]~

<智&Tohya HAPPY BIRTH DAY TO THE CENTER LINE~season3~>
2018年1月12日(金)shibuya duo MUSIC EXCHANGE

◆vistlip オフィシャルサイト
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