【ライブレポート】セツナブルースター、<DECEMBER'S CHILDREN>で『キセキ』の再会

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年末恒例イベント<DECEMBER’S CHILDREN>が、2017年は3日間4公演の規模で開催された。すでに3公演の模様はレポートでお伝えしたが、続いては12月3日“昼の部”として行われた<DECEMBER'S CHILDREN 倉島大輔 セツナブルースター『キセキ』リリース15周年記念『キセキ』全曲演奏ライブ&モア>の模様をお届けしたい。

◆<DECEMBER'S CHILDREN>出演者 画像

2002年12月。『キセキ』というアルバムがひっそりとリリースされた。青春の光と影が強烈な美意識で放たれた『キセキ』は青春の名盤と一部で強くに支持される。怒り、苛立ち、もどかしさ、祈り、夢……。“少年季”にあるイノセンスの消失と、“大人になるってこと”への憧れととまどいの狭間で鳴っていた歌は、危うくてもろいバランスで成り立っていた。そこには、世間の大勢から外れながらも、心に灯った蒼白い炎を道灯りに、青春の荒野を歩むまっすぐな目線があった。

『キセキ』を生み出したのはセツナブルースターというロマンチックな名前を持つ3ピースバンド。彼らは高校の同級生で、当時二十歳だった。彼らは“大人になるってこと”の渦中、2008年に活動休止を選ぶ。しかし、彼らの歌は、『キセキ』は、確かに聴き継がれてきた。

あれから15年。2017年12月3日、イベント<DECEMBER'S CHILDREN>で『倉島大輔 セツナブルースター『キセキ』リリース15周年記念 『キセキ』全曲演奏ライブ&モア』が開催されることとなった。詞曲を手がける倉島大輔(Vo,G)の弾き語りと、オリジナルメンバーの島田 賢司(B)、宮下裕報(Dr)が加わったバンドセットで『キセキ』がよみがえる。


会場には当時からのファンに混じって、若い世代の姿も見える。『キセキ』に込められた青春の発露を引き継いだファンなのだろう。拍手に迎えられて倉島大輔が登場。アコースティックギターを手に「四度目の青春」のイントロを弾き始める。歓声とも、ため息ともつかない声が会場から漏れる。

うるさい大人たちとの関係をうまくやり過ごせる“周囲が見えすぎる”若者。彼は大人になるにつれ、どうも折り合いをつけられなくなっていく。僕は今、病気だってさ……。「四度目の青春」には、そんな主人公が登場する。彼は今に潰れそうになりながらも、思い出がつくる今を生き、歌を歌う。少しだけ自分を小さくして。そして、その彼の歌を口ずさんでいたのは少年野球時代の相棒だった……。過ぎ去った過去(思い出)への憧憬と感傷、身の置き場のない今。“それでも……”という頑なな決意。この痛々しくもセンチメンタルな青春像はセツナブルースターの象徴だと思う。「四度目の青春」とあるが、今、セツナブルースターの3人は何度目の青春を生きているのだろう。

“大人になった僕の変わらない歌を歌う奴等が笑われぬ様に……”と見えない仲間へ語りかけるような「かけら」。“腑に落ちないんだよ”というフレーズが耳を刺す2004年の会場限定シングル「涙の成分について」が続く。倉島のソロナンバー「トワイライト」では、大人になった主人公が少しだけ肩の荷を下ろし“きっと光の差す方向に歩いている”と言う。大人になり、あの頃の未来に立つ“僕ら”への憐憫を、優しい目線で綴る「勿忘草」。もともと時のうつろいに敏感な心情を描く倉島だが、この日はその情感がより胸に迫ってくる。


「死んで行く僕らの目に」、ソロ曲の「夕凪のうた」「菫に似ている」とステージは進み、倉島が笑顔でファンに語りかける。

「高校時代にバンドを結成して、上京してデビュー。周りを見て、自分たちはうまくいっていない気がして怖くなったこともありました。自分には自慢できることは何もない。そう思うこともありました。でも今日、こんなにたくさんの人が集まってくれて。これが僕の自慢です」──倉島大輔

フロアにいる大人になったかつての少年少女たちの表情が緩む。ヒリヒリとしたオーラをまとっていたかつてのセツナブルースター。みんな肩の荷をちょっとだけ下ろして、この日の再会を待っていたのだろう。

「僕の音楽の始まりの歌。高校時代に作って3人で演奏して、みんながほめてくれた歌です」──倉島大輔

そういって歌われたのは「ショットガン」。性急なビートに乗って、ショットガン、マシンガン、手榴弾……と武器の名が連呼される。まるで心を武装するかのような歌だった。セツナブルースターはソリッドに研ぎ澄ました攻撃性も持ち味だが、その原点が「ショットガン」だったのか。

拍手のなか、静かに「心臓」が歌い出される。『キセキ』の最後に収録された名曲だ。『キセキ』で描かれる、今に押しつぶされそう主人公はこの歌で“勇気を出して一つだけ挑戦してみよう”とつぶやく。そして最後に“涙を一粒だけ我慢する。それだけの事。それができたらみんなの為に『声』を枯らして歌うたうんだ”と叫ぶ。この日、倉島はサビのフレーズの切れ目で“それだけの事”と小さく、はっきりと言った。

「心臓」のエンディングを、息を呑んで見守るファンたち。と、ここで島田と宮下が登場。予期せぬ現れ方に歓声が上がる。2人は楽器を取り、位置につく。これまで椅子に座っていた倉島が立ち上がる。セツナブルースターが解散休止後、初めてステージに立つ。逆光を浴び、3人が「心臓」のエンディングを壮大に激しく演じる。15年前、「心臓」を最後に持ってきた彼らのライブを見たことがあったが、あの頃の景色が現れた。


フロアのざわめきを加速させるように、蒼白いライトに照らされて「なないろ」が始まる。『キセキ』のオープニングを飾るナンバーだ。静と動が細やかに織り重なるこの歌には、ストイックで誇り高い心意気が詰まっている。うねるようなビートの波が押し寄せるエンディング、倉島は“僕は誰にも負けないから君の声よ美しくあれ”と叫ぶ。

ブランクを感じさせない、あうんの呼吸で次々と演奏が繰り出される。「みんなの歌」から「車窓から」、「エレジーへ」。このライブの前に行ったインタビューで倉島は「久しぶりにリハスタに入ってみると、皆、体が覚えていた」と言ったが、その言葉通り、島田のぶっといベース音も宮下のパワフルでタイトなドラミングもあの頃のまま。倉島の切り裂くようなギターのカッティング音も然り。セツナブルースターのナイフは錆びついてはいなかった。




フィナーレがやってくる。『キセキ』のリード曲「少年季」だ。このタイトルにある「季」という言葉がいい。セツナブルースターの3人も、ファンも、いくつもの季節を越えてここまで歩んできた。

“嘘はつかないでおこう それで僕を歩こう 今日のスピードで”。子どもの頃にプレゼントされた自転車をモチーフにした「少年季」で倉島はこう歌う。刹那ではあるが、背筋がシャキッと伸びた青春の歌だ。食い入るようにステージを見上げるファンたち。再会を喜び、力を振り絞った演奏が終わった。


アンコール。3人はリラックスしたムードでこのライブに至るまでの数カ月を振り返る。島田も宮下も楽しそうだ。やりきった充実感がステージからフロアへと伝わっていく。最後に「帰り道」と「君に宛てる手紙」を演奏して、3人はステージを去った。

『キセキ』が生まれてから15年。ある青春のひとときをともに過ごした3人、胸いっぱいに『キセキ』を聴いていたファンたち。今、歩む道は違えども、あの頃と同じ未来を目指して、今も自分のスピードで歩いているのだろう。その道のりの途中には、違う道を歩む仲間の姿を目にすることもある。ときには、この日のように幸せな再会が訪れる日もある。それは約束事のようなものだ。そして、今もって大人になるってことはわからなくても、人生を歩んでいくことは少しだけわかってくる。そんな思いを抱かせてくれるステージだった。

『キセキ』はたくさんの仲間に囲まれた明るく楽しい青春が描かれているわけではない。だけど、思春期の難しい思いにこんがらがった『キセキ』の歌に登場する主人公のような少年少女はいつの時代にもいる。この日、今の少年少女も『キセキ』を目撃しにやってきた。この奇跡のような青春のかけらがいつまでも聴き継がれますように。

取材・文◎山本貴政
撮影◎河本悠貴


■<DECEMBER'S CHILDREN 倉島大輔 セツナブルースター『キセキ』リリース15周年記念『キセキ』全曲演奏ライブ&モア>2017年12月3日@赤坂BLITZセットリスト

【弾き語り】
01.四度目の青春
02.欠片
03.涙の成分について
04.トワイライト
05.勿忘草
06.死んで行く僕らの目に
07.夕凪のうた
08.菫に似ている
09.ショットガン
10.心臓
【バンド】
01.なないろ
02.みんなの歌
03.車窓から
04.エレジー
05.少年季
encore
En1.帰り道
En2.君に宛てる手紙
▼出演
倉島大輔
スペシャルゲスト:島田賢司、宮下裕報

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