【インタビュー】TRIPLANE、温かみと煌びやかさを湛えた楽曲を軸に新たな顔を見せるアルバム『1/4802のすべて』

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前作から約2年10ヶ月ぶりとなるTRIPLANEのフルアルバム『1/4802のすべて』が、12月6日にリリースされた。同作は彼らが新たな環境で作り上げた第一作であると同時に、メンバーそれぞれの音楽やバンドに対する情熱、未来に向けた決意などが随所に散りばめられた必聴の1枚といえる。TRIPLANEの真骨頂といえる温かみと煌びやかさを湛えた楽曲を軸としつつ、新たな顔を見せていることも見逃せない。バンド結成から15年を経て、今なお進化し続ける彼らの最新の声をお届けしよう。

◆TRIPLANE~画像&映像~

■ここまで積み重ねてきた日々がテーマの作品を作りたいなと思って
■“4802”はTRIPLANEがデビューしてからの日数を現しているんです


――新しいアルバムを作るにあたって、テーマやコンセプトなどはありましたか?

江畑兵衛(以下、江畑):今までは制作に入る時は何もないところから取り掛かっていたんですけど、今回は珍しくテーマみたいなものがありました。僕らは今年の7月に独立して、その時点で今後の展開に向けた仕込みをしていたんですね。実現させたい目標の一つとして12月にアルバムを出したいというのがあって、今回は先にタイトルを決めようということになったんです。どんなタイトルにしようかなと考えた時に、独立するに際して今までの自分達の軌跡を振り返る時間が多くなっていて。そういう中で、独立してまでもう一度この4人で大きな夢を見られているという状況は、ここまで積み重ねてきた日々があるからだよなと思ったんですよね。それで、そういうテーマの作品を作りたいなと思って、新しいアルバムは“1/4802のすべて”というタイトルを付けることにしました。“4802”という数字は、TRIPLANEがデビューしてからの日数を現しているんです。

――13年間の重みを改めて感じます。初の試みとなった“テーマありき”の曲作りは、いかがでしたか?

江畑:結構大変でした。今まではアルバムを作る前にシングルが出ていたり、タイアップが付いている曲があったりして、そういうものの集合体みたいなアルバムというのが通常の流れだったんです。今回みたいに先にタイトルが決まっていて。そこに向けてゼロから曲を書き下ろしていくという作業はしたことがなかったので、ちょっととまどいがありました。苦労しながら曲を作っていったけど、7曲目に入っている「浴衣の君」が出来た時に、バラバラだったところに一本糸が“スッ”と通った感じが僕の中であって。そこで、アルバムの全体像が見えたというのはありましたね。


――その感覚は、なんとなく分かります。「浴衣の君」は、薄く和の香りがありつつスタイリッシュ&ドリーミィーという新機軸の曲ですからね。

江畑:そう。この曲を作った時は、僕にしては珍しいことですけど、日本の夏のイメージ……花火だったり、お祭りだったりを表現したいなと思って。そんなことを考えていたら、出だしの“タンタンタンッ”というキーボード・リフが降りてきて、後はもうひたすらそれに沿っていて心地好いものをいろいろ重ねていって、最後に歌と歌詞を乗せて形にしました。この曲を作っている時は、すごく楽しかった。これはボツになるかもしれないというのがあって、だったらもう好きなように作ってみようと思っていて。それが、“これは、いけるかもしれない”と思えるものになったことが、今回のアルバム作りの中で本当に大きかったです。

広田周(以下、広田):「浴衣の君」があるかないかで、『1/4802のすべて』というアルバムの印象は大きく変わっていたと思う。そういう意味で、外せない曲と言えますね。それに、僕の中では、最後に入っている「スポットライト」も印象が強い1曲です。(江畑)兵衛から話があったように、僕らは今回独立するということになって。今回のアルバムは3年弱ぶりになるんですけど、その間の兵衛は曲を作れるような雰囲気じゃなかったんです。独立したら気分が変わって、また絶対に曲は出てくるから信用してくれと言っていたけど、2~3年も曲が出来ていないと心配になりますよね。そういう中で独立して、一致団結して、もう一回4人で上を目指していこうということが決まった時に、「スポットライト」が出てきたんです。兵衛的には出来上がった時に感慨めいたものはなかったみたいだけど、この曲が持っている意味とか、これまでのTRIPLANEがやってきたこととかを考えた時に、僕はすごく良い曲が出来たなと思いました。絶対にファンの人に100%伝わるな、ライブで演奏することで、どんどん大きくなっていくなということを感じて。だから、独立するにあたって会場限定という形だったけど、この曲をシングルにしたんです。そんな風に「スポットライト」には思い入れがあるし、これから20年、30年という風に時を経ても、この曲のことは忘れないと思います。

江畑:「スポットライト」は今回のテーマとは関係なく、純粋にTRIPLANEとして良い曲を作ろうと思って作った曲です。この曲は、作ってすぐにライブで演奏したことが大きかったですね。ライブでやるまでは、僕の中では特に自信作という感じでもなかったし、広田以外はメンバーの反応も薄かったんですよ。でも、ライブでやっていくうちに自分達らしい空気とか、エネルギーとかがステージから出ているなということをみんなが感じて。そこで良い曲なんだという確信が持てて、アルバムの最後に持っていった。もしライブでやっていなかったら、最後には持ってこれなかったと思います。


▲Vo/Gt.江畑兵衛

――「スポットライト」は王道的なスロー・バラードでいながら、TRIPLANEならではのものに仕上がっています。ラブソングとも、ファンの皆さんに向けたメッセージとも取れる歌詞も注目ですし。

江畑:歌詞は、ファンの人達に向けた想いが主軸になっています。それに、メンバーに向けた部分もありましたね。活動してくる中でいろんなバンドを見てきたけど、他のバンドで曲を作っている人達と比べた時に、自分は大した人間じゃないわけですよ。みんなしっかりしているし、一生懸命がんばっているのに対して自分は…と思う。なのに、この4人で続けていられるというのは本当に幸せなことだし、あり難いなというのがあって、「スポットライト」の歌詞を書くにあたって、そういう想いも織り交ぜたいなと思ったんです。ただ、そういった心情をダイレクトに書くのは恥ずかしいので、ラブソングにも取れる歌詞にしました。

武田和也(以下、武田):今回のアルバムの中で僕が一番好きなのは、「アンブレラガール」です。僕は良いものにしかリアクションしないんですけど、この曲は最初に聴いた時に良いなと思ったんですよ、珍しく(笑)。それで、もうすぐに兵衛に、良い曲じゃんとLINEしました(笑)。その時はサビしかなかったけど“ビビッ!”と来て、そのまま良い曲に仕上がったし、パワフルな曲でアルバムの良いフックになっているという意味でも印象が強いです。

江畑:「アンブレラガール」は、STVの『熱烈ホットサンド!』という番組のオープニングテーマという話をいただきまして。番組の制作サイドから元気がある、アップテンポの曲が欲しいというリクエストがあって、それを踏まえて書き下ろした曲です。そういう作り方だったので歌詞を書くにあたって、どういう風に番組側との整合性をつけようかなというのがあって。『熱烈ホットサンド!』は、お笑いの番組なんですよ。なので、お笑いというものが視聴者に提供しているものと僕らがファンの人達に提供しているものの共通項をいろいろ考えて、最終的にライブをイメージした曲にしました。

川村健司(以下、川村):僕は1曲あげるとしたら、「サクラのキセツ」ですね。「スポットライト」と同じように王道的な曲ですけど、13年やって来ても王道を作れる強さというのはあるかなと思って。この曲はサビのメロディーの中にフックがあって、それを捻り出せたのは13年活動してきた江畑兵衛の良さでもあり、強みでもあるなと思うし。それに、ライブの時にステージからお客さんを見ていると、「サクラのキセツ」で笑顔になったり、泣いている方とかがいて、やっぱり凄いパワーを持った曲だなと感じるんです。TRIPLANEの主軸になるものの最新形という意味で、ずっと応援してくれている人にも、ここ最近僕らのことを知った人にも、これから出会う人にもぜひ聴いて欲しい1曲です。

江畑:『1/4802のすべて』という作品を作るにあたって、アルバムをリードしていけるような曲を作りたいという想いが僕の中にはあったし、今回のアルバムは一つの区切りになる。そこで提示するTRIPLANEの真髄といえるものとなると、いろんな意味でハードルが高いんですよね。そういうものを形にしたいと思って曲を作っていく中で、単純に「サクラのキセツ」はサビのメロディーが歌っていて気持ち良かったんです。今までそういう曲はあまりなくて、どちらかというと考え方が作家寄りというか、シンガーよりは作家の脳になって心地好いメロディーを模索するというやり方だったけど、この曲は本当にシンガーとして書けた。そういう手法を採ることで、アルバムをリードする曲……自分達の真髄であると同時に新しいものになったんです。そういうところで、僕もこの曲には満足しています。


▲Dr.広田周

――「サクラのキセツ」も必聴の1曲といえますね。江畑さんも特に気に入っている曲をあげていただけますか。

江畑:好きなのは、「東京ヒロイン」かな。これは本当にデッサンから入って、試行錯誤を繰り返していって、自分のイメージ通りのものに出来たなというのがあって。サウンドとか歌詞の内容、アレンジといった全てが自分の好みなんですよ。だから、聴いていてすごく気持ち良い。自分の脳の中にあったものがそのまま形になったから、人にこの曲のどこが良いのと聞かれても説明できないんですけど。でも、きっと良いなと感じてもらえると思うので、ぜひ「東京ヒロイン」も聴いて欲しいです。

――同感です『1/4802のすべて』の歌詞についてもお聞きしたいのですが、“ここからまた自分の信じる道を歩いていく”という意志表明やラブソングなどいろいろな歌詞がありつつ、“永遠”ということが裏テーマとしてあるような印象を受けました。

江畑:“永遠”という裏テーマでアルバムを作ろうとは思っていなかったけど、どの曲の歌詞を書いていても、自分の中にそういう意識があったというか。“永遠”というほど大それたものではないけど、脈々と続いていく感じとか、止まらずに繋がっていくようなイメージがあった気はしますね。僕はあまり哲学的な人間ではないので、それはたぶん今の自分が置かれている状況だったり、今の自分が感じていることが無意識に反映されたんだと思います。独立する前は、あまり未来が見えてなかったんですよ。もしかすると、それこそ終わり方を考えていたかもしれない。それが独立したことによって、もう一度自分の前に道が“ガッ”とできたというのが大きくて。これからもずっとバンドマンでいるんだという一つの覚悟みたいなものが自分の中にできて、それが歌詞を書く時に自然と滲み出たんだと思います。

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