【インタビュー】マキタスポーツ「音楽界のジョーカー的な役割ができればいいなあ」

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■ コットンクラブで7千5百円の価格帯でやる以上、若年層は切り捨て(笑)

──1月23日&24日には、20周年を記念したライブがあるんですよね?

マキタスポーツ:はい。2009年から2010年まで<オトネタ>というライブを4回やってたんですけど、途中震災なんかも挟まっちゃったり、それ以降自分が音楽以外で忙しくなったりして2012年で<音ネタ>は止めちゃってたんです。ネタを作るのも結構大変で両立させるのが難しくなった。ですけど、自分にとって<オトネタ>っていうライブは非常にシンボリックなものなので、20周年のこの良きタイミングでやらなくちゃって自然とそういう気分にもなりまして。

──活動して休んで復活…って、ミュージシャンの動きと同じですね。

マキタスポーツ:ははは(笑)。いえいえ。

──イエローモンキーみたい。

マキタスポーツ:いやいやいや、そんなじゃないですけど、作るのがなかなかしんどくてね…いきものがかり状態だったんですかね。しばらく放牧宣言みたいな(笑)。いろいろ社会勉強もして、特に役者としての仕事も結構したのが結構おもしろくて。

──役者活動は音楽表現に影響を与えますか?

マキタスポーツ:僕、シリアスな歌も歌うんですけど、どうも体重がのりずらくて。やっぱり照れるんですよ「僕なんかが、笑いにならないことをメッセージする」「歌にして届ける」ことに対する戸惑いがあって。

──気恥ずかしさとか?

マキタスポーツ:ええ。それがえらいもんで、役者の仕事を何回もやっていると歌とかにも影響があって。

──できるようになる?

マキタスポーツ:できるようになる。笑いの仕方ももっとおどけ、もっとふざけられる。そういうメンタリティが獲得できつつあるのは面白いですね。

──様々な経験が紐付いて、深みが出てくるんですね。

マキタスポーツ:それはすごく味わい深い体験です。だから今度の<音ネタ>に関しては、自分でも楽しみではあります…けど、なんせ久々の、ほぼ全部新ネタなんで準備が大変です。

──ライブにはどんな人に来て欲しいですか?

マキタスポーツ:7千5百円払える人ですね(笑)。

──ライブタイトルが<オトネタ¥7500>ですものね。

マキタスポーツ:場所が場所だけに、これでもお安い料金設定なんです。でもお笑いでみるとこんな値段のものはないですね。コットンクラブで7千5百円の価格帯でやる以上、若年層は切り捨て(笑)。

──ぶはは(笑)。

マキタスポーツ:だって(笑)、そんな料金でお笑いを見ようという感覚の若い人はいないはずですから。ここでやったものは、テレビやライブなどのいろんな局面で発表していくんだけど、まずは僕のシンボリックの活動の場なので、その高いハードルは飛び越えて来て欲しいとは思っていますよ。「絶対損はさせませんよ」っていうのもありますし、「損までして来よう」とする人たちと出会いたい。そこに来た人には「音楽とお笑いって素晴らしいな」って思ってもらえるようなことはすごく意識しています。昔の…なんていうでしょうかね、音楽を交えたショー的な番組ってあったと思うんですけど、そういったものも踏襲して作ってますから。

──芸人としてデビューしてから20年…今、デビュー当時に描いたシナリオの延長上にいますか?

マキタスポーツ:生意気に聞こえたらあれなんですけど…僕は高校生くらいの時に思い描いたことは全部やってます。すごく時間もかかって遠回りもしましたけど、やっぱ音楽とお笑いが融合したような形にものをやるんだっていうのは、根拠のない自信で思っていたんで。だからやっぱり、やれているなとは思います。それやらなくちゃ意味ねえなってすごく思います。

──20年後はどうでしょう。

マキタスポーツ:僕の予定で言うと、20年後はちゃんとヒット曲とかを出していたい。ヒット曲が欲しいですね。自らのヒット曲をパロディにしたいですから。

──それはたけしさんと同じ系譜ですね。

マキタスポーツ:あの人は「俺は偉くなりてえんだよ」「偉くなったらより馬鹿なことができるだろ」っていう考え方ですから。たとえばKANさんは「最後に愛は勝つ」ってヒット曲がありますけど、あの人は音楽ネタみたいなことをファンサービスでずっとやりますよね。ああいうのいいなって思います。あと、音楽が国境の壁を越えるといいますが、それにチャレンジしてみたい。お笑いが無理ならば言葉だけに頼らず、世界的な名曲やみんなが知っているあんな曲こんな曲で、中国やアメリカやヨーロッパ…どこでもいいんですけど、そういうところでショーをやってみたい。

──いいですね。

マキタスポーツ:文化と文化の接地面で穴を通すっていうか、韓国人のPSYも、半笑いの状態からいつのまにかみんな「おもろいやんけ」って乗っかったりするじゃないですか。ピコ太郎とかもそうですけど、僕はあれをノベルティソングだと思っています。ああいうのはすごくゾクゾクしますよ。<オトネタ>はこれから毎年やろうと思ってるんです。少なくとも10年くらいのスパンでやらなくちゃ。新ネタ下ろして、今まで会ってない人たちに会うのが一番のテーマですね。コミケとかの世界で「同人」って言葉がありますけど、同人だらけの世界だから僕も同人向けなんですけど、僕は「別人」って言っています。「others」…Othersに会いに行くこと。

──「別人」って初めて聞く言葉だなあ。

マキタスポーツ:『THE MANZAI 2017』のウーマンラッシュアワーの漫才、ご覧になりました? あれの何が一番意義があったかっていうと「テレビでやった」ということですよね。スタッフも気骨のある人たちだったし。

──政治風刺が強烈でしたね。

マキタスポーツ:ウーマンラッシュアワーとフジテレビとの信用/信頼関係があった上で、急にあのネタやりたいっていうのじゃなくて、ああいう活動をしばらくやり続けていくから、やる意義があるんです。ネットでやっても意味ないですから。リベラルな漫談をする人はいますけど、それは好きな人たちにしか向けてやっていないから「同人」で、ウーマンラッシュアワーは完全に「別人」に向けてやっていることに意味がある。「あれ、笑えなかった」って言う人もいますけど、僕はそんなのどうでもよくて、「笑う」というよりも「価値観をひっくり返すこと」に重きを置いている。日本アカデミー賞が権威があった頃──なぜ権威があったかというと森繁久弥がいたからなんですけど、そういう場にたけしさんが鞍馬天狗の格好をして行ったりしてね、日本アカデミー賞をこけにしてきてオールナイトニッポンで「森繁にすげえ怒られた」とか言ってることがものすごい面白かった。現場はものすごい滑ってましたけど、僕らも暴走族を見物に来た客みたいな気分で「やれ!やれ!」って見てました。

──ウケるはずのないことを承知の上でね。

マキタスポーツ:ウケるはずないことをやってるんですよね。当時のお茶の間や映画界なんか「そんなこと絶対許されない」っていう空気の中でやってる。

──マキタスポーツという人の活動が、閉塞感のある今の音楽業界を救ってくれるかも。

マキタスポーツ:それは目指したいですね。僕もずいぶんヒヨっちゃったなっていう反省点もあるんで、僕ができることっていうのは仰るとおり、そういうことなのかもしれない。その上で、本丸というかしっかりとカッコいいものをカッコいいままにやってくれる人がいれば、もっと面白くなるんじゃないかな。僕は音楽界のジョーカー的な役割ができればいいなあって思う。その辺に関しては、まだ力不足だったここ数年だったかな。

──音楽界のジョーカーか…。

マキタスポーツ:僕がスペードやキングになろうということではないと思うんですよね。ジョーカーならジョーカーらしく極めていくことをやらないといけないかな。

──ジョーカーの使い方って、まさにセンスですよね。

マキタスポーツ:そうですね。がんばりますよ。

取材・文◎BARKS編集長 烏丸哲也

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<マキタスポーツ Presents オトネタ¥7,500>

2018年1月23日(火)、1月24日(水)@COTTON CLUB
OPEN19:00 / START20:00
チケット:前売り 全席指定 7,500円(税込)
[問い合わせ]
コットンクラブ 03-3215-1555(平日11:00〜22:30、土・日・祝11:00〜21:00)
ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999(平日12:00〜18:00)

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